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しおりを挟む「オデット。これ、やっておいて」
「……え?」
さらっと呼び捨てにされたことにまず驚いた。キルデリクと婚約した時に自己紹介をしたが、大して仲良くなんてないのだ。
それが、こんなもの言いで呼び捨てにされたのだ。驚かないわけがない。公爵令嬢のオデットにそんな風に話しかけて来る者はいない。
オデットとしては、何と言うか。片割れの話題すら嫌がるだろうとは思っていたが、どうやってオデットにブランシュの代わりをやらせるのかと思っていたが、想定外だった。
当たり前な態度で、しかもこんなに偉そうに現れるとは思わなかった。
「何よ? このくらい、できるでしょ?」
できるけど、そうは言いたくなかった。だって、宿題ができないっておかしいはずだ。
「なぜ、私がやらなけれはまならないんですか? これ、あなたのやるべきことですよね?」
「は? 私がやるべきことですって? おかしなことを言うのね。こんな誰にでもできることをわざわざ私が何でやらなきゃならないのよ。それより、私にしかできないことで忙しいのよ」
オデットは、それでも色々言ったが、エルマンガルドはやらせる一択しかない人だった。話せば話すほど、これのどこがこの国でも一番だと思われているのかがわからない令嬢だった。
あまりの酷さに論破しそうになったが、それでも話が通じる気はしなかったのとそんなことをしたら、計画が台無しになるため、適当なところで引き受けた。
引き受けるなんてしたくなかった。だって、一度やるとなると次があるわけで……。
「ったく、探すのが手間でしょうがないわ」
「……」
なら、探すのやめて自力でやればいいとはオデットは言わなかった。言わなかったが、毎回、そろそろ来そうだと思うとついつい会わずに済むように動いてしまっていた。
もっとも、会わずに逃げ切っても次の日には見つかって、必ずやらせるしつこさは凄かった。自分でやる気は欠片もないのだ。忙しいと言いながら、そんなしつこさを見せているのだから、頑張るところを間違えている。
ブランシュは、幼い頃から、こんなことをやらされてきたのかと思うと大変だったことは容易に想像できた。まだ、オデットはエルマンガルドに使われるようになって2週間ほどしか経っていないというのに既に疲れてきていた。色んな意味で。あちらは、同じ家にいたのだ。逃げ切れるわけがない。留学したくもなる。
そんなのが兄と婚約してしまったわけだ。それが、兄と結婚したら義姉になるのかと思うとげんなりするばかりだった。
オデットは嫁ぐのだから、今だけだとしても、あの2人が結婚したら我が家が残念なことになるのだけは簡単にわかる。
そうなると父が心配でならなかった。今は仕事で忙しくしていて、家の中のことを把握しきれていないが、知ってしまったら大変がっかりするだろう。
その顔をだけはオデットはできれば見たくないと思っていた。
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