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しおりを挟むアグニュー侯爵夫人は、ジャクリーンと息子を婚約させられないかと思って動き出そうとしていたが、それより先にジャクリーンは婚約していた。
それをしばらく悔しそうにしていたが、ジャクリーンに嫌味を言って来ることはなかった。
アグニュー侯爵夫人のことをヴァージルに話をしたことで、すぐにそれを両親に話してくれたのだ。
「ジャクリーン」
「はい」
「そういうのは、早く言ってくれ」
「っ、申し訳ありません」
父に言われて、ジャクリーンはまた迷惑をかけると思って身を小さくした。
「謝るな。アイリーンの方で不甲斐ないところを見せていたからな。あー、ジャクリーンには解消してから、婚約したいと言われているんだ」
「え?」
「すまん。ジャクリーンが、元婚約者のことをそれなりに好きだったのではないかと思って、すぐに婚約の打診が来ているというと困らせるかと思って待ってもらっていたんだ」
「あなた、それはどなたなんですか?」
「あー、それがな」
父が、その後、お相手のことを教えてくれて、オールストン子爵家で驚くことになったのは、ジャクリーンだけだった。
「まぁ、ジャクリーンなら、そのくらいの相手から見初められていても無理はないな」
「そうね。あなたったら、ジャクリーンに決めてもらえば良かったのに」
「そうだな。頭が回っていなかった」
「……」
「ジャクリーン?」
「……あの、お会いしてみてから決めたりしたら、やはり駄目ですよね?」
「いや、身分で婚約を決められるより、会ってから決めてもらえた方がいいとおっしゃっていたから、大丈夫だ」
「父さん。それも重要なことだと思いますよ」
「あ、そ、そうだな。すまん」
ヴァージルにそう言われて、母も同じような目で見ていてアグニュー侯爵は縮こまっていたが、ジャクリーンは気にもしなかった。
そこから、忙しいだろうに何度か会ってくれて、婚約が決まったのだ。
「ジャクリーン。おめでとう!」
「ありがとう」
親しい令嬢が嬉しそうに祝福してくれて、他の令嬢も笑顔で祝福してくれたが、中には不満たらたらにしているのもいた。
ジャクリーンが婚約したのは、この国の王太子だった。どうやら、ジャクリーンは王太子に一目惚れされていたようだ。エグバートと婚約した時に見初められていたようだが、婚約していると知って諦めようとしたが、できずに解消となってから父に打診していたようだ。
それを父がジャクリーンに話さずにとどめているとは知らずに王太子は、ジャクリーンに何とも思われていないのではないかと思っていたようだ。
「オールストン子爵が言ってなかったとは思わなかった」
「すみません。父は、私を思って黙っていてくれたんです」
「そうだな。ジャクリーンは、色々大変な目にあっていたからな」
王太子も、学園でのアイリーンたちの騒ぎを知っていたので、すぐに納得してくれた。
アグニュー侯爵夫人の誘いを断るためとは、ジャクリーンは言うことはなかった。
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