14 / 18
第3章 第3章:呪われ(てない)男装騎士は拳で運命を切り拓く
第14話 片想いのプロまっしぐら
しおりを挟む
焼き菓子を食べ終え、恋バナも変な感じで終わった私とフェルナン陛下は、その後広場で大道芸を観賞。森林公園の池をボートで三周し、池に向かって石切勝負を十戦。
そして公園を散歩していた一般の方々から声援を受けるという、「お忍びデート」ってなんだっけ状態のデートを楽しんだ。
「やった! また私の勝ちですね!」
「いいや、まだだ! 俺は絶対にあきらめない!」
「正義のヒーローみたく言われましても」
私は大笑いしながら、勝負とは関係なく石を水面に向かって投げた。ピョンピョンピョン……と石は十回水面を跳ね、まるで今の私の心のようだと思った。
(楽しい。フェルナン陛下といると、すごく楽しくて幸せ)
極貧時代、玩具ひとつなかった私が暇潰しにやっていた石切で、フェルナン陛下とこんなにも愉快に遊ぶことができるなんて。
それだけじゃない。
仕事ではあるが、今日は二人で町を歩き、たくさん話してたくさん笑った。
私が男としてお傍にいる時だって、同じくらい一緒にいて色々と話すのだが、今日は主従の壁を越え、まるで友人のように接してくださる。
(【女体化の呪い】様様だ。男のアルヴァロじゃあ、こんな贅沢な体験、できなかっただろうし)
フェルナン陛下の方をちらりと見ると、彼はせっせと平たい石を探していた。
本当に負けず嫌いというかしつこいくらいだが、そこが可愛い。
一国の王が石切に必死になる姿なんて、誰も見たことがないし、想像もできないだろう。
もしこのままずっと、私が【女体化の呪い】を受けたフリを続けたら――。
(ワンチャンある……⁉ いや、でも陛下はまだ女嫌いだもんね……)
女だろうが男だろうが、関係ない。フェルナン陛下は私のことを従者アルヴァロとしか見ていない。だから今日も女である私を連れて、視察デートをしてくださっているのだ。
脈なんてドクンとトゥンクもありはしない。
私は片想いのプロ殿堂入りまっしぐらだ。
するとフェルナン陛下は、自問自答で想像以上に精神的ダメージを受けた私の異変に気がついたらしい。心配そうに「疲れたか? 何か飲み物を買って来よう」と言ってくれた。
「ありがとうございます」
(ちょうど、愚かな自分にストレートをぶち込みたかったんです)
優しい陛下の背を見送りながら、私は彼への恋心を再び心の奥の奥へとしまい込む。
その時だった。
一人になった私の背後に怪しい影が近づいたのは。
そして公園を散歩していた一般の方々から声援を受けるという、「お忍びデート」ってなんだっけ状態のデートを楽しんだ。
「やった! また私の勝ちですね!」
「いいや、まだだ! 俺は絶対にあきらめない!」
「正義のヒーローみたく言われましても」
私は大笑いしながら、勝負とは関係なく石を水面に向かって投げた。ピョンピョンピョン……と石は十回水面を跳ね、まるで今の私の心のようだと思った。
(楽しい。フェルナン陛下といると、すごく楽しくて幸せ)
極貧時代、玩具ひとつなかった私が暇潰しにやっていた石切で、フェルナン陛下とこんなにも愉快に遊ぶことができるなんて。
それだけじゃない。
仕事ではあるが、今日は二人で町を歩き、たくさん話してたくさん笑った。
私が男としてお傍にいる時だって、同じくらい一緒にいて色々と話すのだが、今日は主従の壁を越え、まるで友人のように接してくださる。
(【女体化の呪い】様様だ。男のアルヴァロじゃあ、こんな贅沢な体験、できなかっただろうし)
フェルナン陛下の方をちらりと見ると、彼はせっせと平たい石を探していた。
本当に負けず嫌いというかしつこいくらいだが、そこが可愛い。
一国の王が石切に必死になる姿なんて、誰も見たことがないし、想像もできないだろう。
もしこのままずっと、私が【女体化の呪い】を受けたフリを続けたら――。
(ワンチャンある……⁉ いや、でも陛下はまだ女嫌いだもんね……)
女だろうが男だろうが、関係ない。フェルナン陛下は私のことを従者アルヴァロとしか見ていない。だから今日も女である私を連れて、視察デートをしてくださっているのだ。
脈なんてドクンとトゥンクもありはしない。
私は片想いのプロ殿堂入りまっしぐらだ。
するとフェルナン陛下は、自問自答で想像以上に精神的ダメージを受けた私の異変に気がついたらしい。心配そうに「疲れたか? 何か飲み物を買って来よう」と言ってくれた。
「ありがとうございます」
(ちょうど、愚かな自分にストレートをぶち込みたかったんです)
優しい陛下の背を見送りながら、私は彼への恋心を再び心の奥の奥へとしまい込む。
その時だった。
一人になった私の背後に怪しい影が近づいたのは。
51
お気に入りに追加
229
あなたにおすすめの小説

断罪された挙句に執着系騎士様と支配系教皇様に目をつけられて人生諸々詰んでる悪役令嬢とは私の事です。
甘寧
恋愛
断罪の最中に前世の記憶が蘇ったベルベット。
ここは乙女ゲームの世界で自分がまさに悪役令嬢の立場で、ヒロインは王子ルートを攻略し、無事に断罪まで来た所だと分かった。ベルベットは大人しく断罪を受け入れ国外追放に。
──……だが、追放先で攻略対象者である教皇のロジェを拾い、更にはもう一人の対象者である騎士団長のジェフリーまでがことある事にベルベットの元を訪れてくるようになる。
ゲームからは完全に外れたはずなのに、悪役令嬢と言うフラグが今だに存在している気がして仕方がないベルベットは、平穏な第二の人生の為に何とかロジェとジェフリーと関わりを持たないように逃げまくるベルベット。
しかし、その行動が裏目に出てロジェとジェフリーの執着が増していく。
そんな折、何者かがヒロインである聖女を使いベルベットの命を狙っていることが分かる。そして、このゲームには隠された裏設定がある事も分かり……
独占欲の強い二人に振り回されるベルベットの結末はいかに?
※完全に作者の趣味です。

騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています
21時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。
誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。
そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。
(殿下は私に興味なんてないはず……)
結婚前はそう思っていたのに――
「リリア、寒くないか?」
「……え?」
「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」
冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!?
それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。
「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」
「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」
(ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?)
結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?
【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。
お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。
少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。
22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

心を病んだ魔術師さまに執着されてしまった
あーもんど
恋愛
“稀代の天才”と持て囃される魔術師さまの窮地を救ったことで、気に入られてしまった主人公グレイス。
本人は大して気にしていないものの、魔術師さまの言動は常軌を逸していて……?
例えば、子供のようにベッタリ後を付いてきたり……
異性との距離感やボディタッチについて、制限してきたり……
名前で呼んでほしい、と懇願してきたり……
とにかく、グレイスを独り占めしたくて堪らない様子。
さすがのグレイスも、仕事や生活に支障をきたすような要求は断ろうとするが……
「僕のこと、嫌い……?」
「そいつらの方がいいの……?」
「僕は君が居ないと、もう生きていけないのに……」
と、泣き縋られて結局承諾してしまう。
まだ魔術師さまを窮地に追いやったあの事件から日も浅く、かなり情緒不安定だったため。
「────私が魔術師さまをお支えしなければ」
と、グレイスはかなり気負っていた。
────これはメンタルよわよわなエリート魔術師さまを、主人公がひたすらヨシヨシするお話である。
*小説家になろう様にて、先行公開中*
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる