殿下、頂いたDTはあくまでも治療行為ゆえに!

アマイ

文字の大きさ
上 下
7 / 12

しおりを挟む
胸に暖かい温もりを感じて目が覚めた。視界に飛び込んできたのは光り輝くようなプラチナブロンド。
ああ、と思い出す。

一緒に寝て欲しいとしつこいアウリスのおねだりに、セリシティアンが押し負けて共寝してくれたのだった。

離すまいとするかのように、寝た時同様アウリスはセリシティアンをしっかりと腕に抱いていた。

少し身を離してセリシティアンの顔を眺める。こうして改めてゆっくり顔を見るのは初めてかもしれない。

セリシティアンは美しい。
これまで美しい女はたくさん見てきたけれど、彼女の美しさはどこか浮世離れしていた。

造作の美しさはさることながら、例えるなら精霊や天使のように清らかで尊い、そんな清廉な気を纏っている。

実際彼女は天使のように慈悲深く情に脆い。だから気を許した者には線引きをしたギリギリの境界まで侵入を許してしまうのだろう。

付け込んでいる自覚はある。
どこまで許してくれるのかと試している自覚も。

卑怯だと分かってはいても近づきたくて、もっと深いところに触れたくて堪らないのだ。

これは初めての女故の執着なのだろうか。そう考えた時、強烈な違和感が湧く。違う、そんな生やさしいものではない。

諦められた命に、こんなにも誠意を尽くし情細やかな慈悲を与えられ、どうして心動かされずにいられようか。

感情の呼び名などどうでもいい。
ただ自分はこの女に堪らなく惹かれている、それだけだ。

「ん……」

抱きしめる腕につい力が篭っていたらしい。セリシティアンが苦しげに身じろいだ。

「アウリス、起きていたか。おはよう」

半覚醒なのか無防備にふにゃっと笑うセリシティアン。

可愛い過ぎる……

大分回復した体は明確な肉欲を伝えるけれど、ぐっと堪えてちゅっと額に軽くキスをする。

「おはようセリ」

「うむ、大分顔色が良いな」

そう言って起き上がると、セリシティアンは昨日のようにクルっと空に円を描いた。次の瞬間掌の上にはホカホカの緑色の物体が。

アウリスは虚無の表情になる。

「分かる、気持ちは分かるぞ。じゃがな、これが最後故我慢するのじゃ」

忍耐強いアウリスは、半ば嘔吐きながら3分の2も平らげた。
セリシティアンが、「こんなに飲んでくれた人は初めてじゃ!」と大いに喜び褒めてくれたので良しとした。

それにしてもあのスープには睡眠作用でもあるのだろうか。また少し寝るようにと促され、アウリスはストンと深い眠りに落ちていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

パート先の店長に

Rollman
恋愛
パート先の店長に。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!

奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。 ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。 ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!

ちょいぽちゃ令嬢は溺愛王子から逃げたい

なかな悠桃
恋愛
ふくよかな体型を気にするイルナは王子から与えられるスイーツに頭を悩ませていた。彼に黙ってダイエットを開始しようとするも・・・。 ※誤字脱字等ご了承ください

処理中です...