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26いつまでもあなたと
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髪を撫で梳かれる気配で目覚めると、既に日は高く、昼時を告げていた。
「起こしてしまったか、ティア」
シグルドは気遣うように顔を覗き込んできた。
「大丈夫、よ」
少し掠れていたけれど、声が出ることにホッとする。
「また……その、無理をさせてしまった、すまない……」
いつかのようにシグルドは叱られた犬のような目をしていた。私は節々が痛む身体に鞭打って、シグルドの頭を撫でる。
「あなたは私の願いを聞いてくれただけ、何も悪くないわ。それに今日は声が出るもの。前よりましよ、ね?」
「ティア……」
シグルドは切ない吐息を漏らすと、縋り付つくように私を抱き締めた。
「君がいい女過ぎて困る……」
ピッタリと身体を合わされ、下肢に当たるそれは、既にとんでもない怒張を示していた。
「まあ……」
明け方まで散々私を啼かせておきながら、何という元気さだろう。思わず苦笑する。
「暫くこのままで……」
シグルドはぎゅうと私を抱きすくめ、愛してる、と耳元で囁いた。胸の奥がじわりと甘い喜びで満たされる。私はシグルドの胸にしがみついてそっと目を閉じた。
結局その日は寝台から起き上がることができなかった。そんな私の食事も入浴も、シグルドが付きっきりで世話をしてくれた。
正直食欲はなかったけれど、入浴だけは我慢が出来なかった。介添えを侍女に頼もうとしたところ、これは夫の役目だ、とシグルドは頑として譲らなかった。
あとは……予想通りの展開だった。碌に動けない私を気遣いながらも、全身隈なく(淫らに)洗い上げ、優しく緩やかに貫かれた。
「ずっと……こうしていたいな」
湯船の中でシグルドは、深く繋がった処を下からゆっくりと揺すりながら、胸の膨らみを甘噛みする。そしてマッサージするように体中を優しく(淫らに)撫で摩る。
昨晩の疲労で砕けながらも、快感に慣らされた私の身体は、どんな刺激も敏感に拾ってしまう。
「ん……私も同じ気持ちよ。でも……ふぅ……ほんの少しでいいの……ぁん、待ってシグルド…っは、休暇も欲しいわ」
「……分かった、善処する」
シグルドは苦しげに眉根を寄せた。この男は一体どれだけ私を求めるというのだろう……全く仕方のない人――そう言って結局私はシグルドの全てを許してしまう、そんな気がした。
翌日、どうにか起き上がれるようになった私は、シグルドに付き添われて庭園を散策することにした。
ロジーヌ家の庭園に出るのは、幼い頃ユージンと遊び回っていた頃以来だった。
「相変わらず素敵な庭園だわ」
朝露に濡れる真っ赤な薔薇に触れると、シグルドは止める間も無くそれを手折った。そして呆気に取られる私の目の前で、丁寧に棘を除くと髪に刺した。
「綺麗だティア」
眩しげに目を細めて掠めるように唇を奪う。
「もう……あなたの行動力はいつも私を驚かすのよ」
苦笑しながら、シグルドが再会したその日に婚約の申し入れをしてきたことを思い出していた。
本当にシグルドの行動力は私の想像の遥か上を行く。一度心に決めた事は必ず実現させる、そういう男なのだろう。
「俺は欲深いからな。必ず手に入れるまで諦めないんだ」
「正に願えば叶う、ね。そんなに私が欲しかったの?」
下から顔を覗き込むと、シグルドは時折見せる苦みを孕んだ切ない笑みを浮かべていた。途端に私の胸はぎゅうと痛い程締め付けられる。
「頭がおかしくなる程、欲しくて堪らなかった……」
いつから、とか、どうして、なんて今問うことは出来なかった。私はシグルドの背に腕を回した。
「もうあなたのもの、よ」
シグルドは私を抱き締めながら、ああ、と囁いた。
「まだ実感が湧かないのかも、な。やはり実感出来るまで――」
「私を抱き潰す免罪符にはならないわよ?」
「……だめか?」
「……本当に……仕方のない人」
伸び上がって口付けると、シグルドの瞳にはしっかりと情欲の炎が滾っていた。少し困ったように笑うと、シグルドは額と額とをコツンと合わせた。
「ティアの優しさに付け込んでる自覚はある」
「優しくなんてないわ。あなたと釣り合うくらい悪い女だもの」
「ふ……なら付け入らせてくれてるのか?やっぱり優しいなティア」
「好きなように思えばいいわ。私……どんなあなたもきっと、愛してるから」
「ティア……」
私を抱き締める腕にぐっと力が籠る。全身に溢れるほどの愛を感じる。ああ、泣きたくなる位に私は幸せだ。
ねえ、前世の私。こんな日が来るなんて想像もつかなかったわね。
――これが……真実の愛?
私はそう信じているわ。
――そう……とても暖かいものね。
ええ……「願えば叶う」かしら?
――私の好きだった言葉……その言葉が何一つ願いの叶わなかった私の希望だった。
知ってるわ。あなたの願いは「リーティア」が叶える。
――ありがとう……でもあなたは私に囚われる必要はないのよ。この記憶、私が持ってゆくこともできる。
いいえ、あなたは私の一部よ。あなたも含めて私は「リーティア」なのよ。
――幸せだった記憶なんて何一つないのに……ありがとう、私を受け入れてくれて。
一緒に、幸せになりましょう。もう一人の私――
そっと目を開く。
何故だろう。いつもより少しだけ世界が鮮やかに輝いて見えた。そして今私を抱き締めているのは誰よりも愛しい最愛の男。
「シグルド」
シグルドは少し腕を緩めて私の顔を覗き込んだ。整った精悍な面立ち、燃えるような赤毛に透き通るアイスブルーの瞳。私は少し無精ひげの生えた頤にちゅっと口付けた。
「あなた本当にイケメンね」
「いけ……めん?」
怪訝な顔をするシグルドが妙に可愛らしくて、ふふっと笑いが込み上げる。
「誰よりハンサムって言ったのよ、愛する旦那様」
途端にシグルドがボッと顔を赤らめた。こんな反応は初めてだ。まさか――
「照れてる?」
「ダメだ、見るなティア!」
顔を覗き込む私から、シグルドは必死に逃れようとするので、私はその頭ごと胸に抱いた。
「ふふ、シグルド可愛い」
「……流石に嬉しくないぞ」
「可愛いシグルドも愛してる」
シグルドは声にならない声を上げると、私の耳朶をがぶりと甘噛みした。
「んっ……」
「今夜は容赦しないからな、ティア……」
どうやら今夜も寝かせてもらえないようだ。でも構わない。全身で愛を感じられるシグルドとの情交はただただ幸せで、どこまでも私を満たしてくれるのだから――
これがおとぎ話だったら、リーティアは真実の愛を得て、いつまでも幸せに暮らしました。めでたしめでたし――で終わるのだろうか?
でも現実はそうではない。
だって私とシグルドの愛の物語はまだ始まったばかりなのだから――
「起こしてしまったか、ティア」
シグルドは気遣うように顔を覗き込んできた。
「大丈夫、よ」
少し掠れていたけれど、声が出ることにホッとする。
「また……その、無理をさせてしまった、すまない……」
いつかのようにシグルドは叱られた犬のような目をしていた。私は節々が痛む身体に鞭打って、シグルドの頭を撫でる。
「あなたは私の願いを聞いてくれただけ、何も悪くないわ。それに今日は声が出るもの。前よりましよ、ね?」
「ティア……」
シグルドは切ない吐息を漏らすと、縋り付つくように私を抱き締めた。
「君がいい女過ぎて困る……」
ピッタリと身体を合わされ、下肢に当たるそれは、既にとんでもない怒張を示していた。
「まあ……」
明け方まで散々私を啼かせておきながら、何という元気さだろう。思わず苦笑する。
「暫くこのままで……」
シグルドはぎゅうと私を抱きすくめ、愛してる、と耳元で囁いた。胸の奥がじわりと甘い喜びで満たされる。私はシグルドの胸にしがみついてそっと目を閉じた。
結局その日は寝台から起き上がることができなかった。そんな私の食事も入浴も、シグルドが付きっきりで世話をしてくれた。
正直食欲はなかったけれど、入浴だけは我慢が出来なかった。介添えを侍女に頼もうとしたところ、これは夫の役目だ、とシグルドは頑として譲らなかった。
あとは……予想通りの展開だった。碌に動けない私を気遣いながらも、全身隈なく(淫らに)洗い上げ、優しく緩やかに貫かれた。
「ずっと……こうしていたいな」
湯船の中でシグルドは、深く繋がった処を下からゆっくりと揺すりながら、胸の膨らみを甘噛みする。そしてマッサージするように体中を優しく(淫らに)撫で摩る。
昨晩の疲労で砕けながらも、快感に慣らされた私の身体は、どんな刺激も敏感に拾ってしまう。
「ん……私も同じ気持ちよ。でも……ふぅ……ほんの少しでいいの……ぁん、待ってシグルド…っは、休暇も欲しいわ」
「……分かった、善処する」
シグルドは苦しげに眉根を寄せた。この男は一体どれだけ私を求めるというのだろう……全く仕方のない人――そう言って結局私はシグルドの全てを許してしまう、そんな気がした。
翌日、どうにか起き上がれるようになった私は、シグルドに付き添われて庭園を散策することにした。
ロジーヌ家の庭園に出るのは、幼い頃ユージンと遊び回っていた頃以来だった。
「相変わらず素敵な庭園だわ」
朝露に濡れる真っ赤な薔薇に触れると、シグルドは止める間も無くそれを手折った。そして呆気に取られる私の目の前で、丁寧に棘を除くと髪に刺した。
「綺麗だティア」
眩しげに目を細めて掠めるように唇を奪う。
「もう……あなたの行動力はいつも私を驚かすのよ」
苦笑しながら、シグルドが再会したその日に婚約の申し入れをしてきたことを思い出していた。
本当にシグルドの行動力は私の想像の遥か上を行く。一度心に決めた事は必ず実現させる、そういう男なのだろう。
「俺は欲深いからな。必ず手に入れるまで諦めないんだ」
「正に願えば叶う、ね。そんなに私が欲しかったの?」
下から顔を覗き込むと、シグルドは時折見せる苦みを孕んだ切ない笑みを浮かべていた。途端に私の胸はぎゅうと痛い程締め付けられる。
「頭がおかしくなる程、欲しくて堪らなかった……」
いつから、とか、どうして、なんて今問うことは出来なかった。私はシグルドの背に腕を回した。
「もうあなたのもの、よ」
シグルドは私を抱き締めながら、ああ、と囁いた。
「まだ実感が湧かないのかも、な。やはり実感出来るまで――」
「私を抱き潰す免罪符にはならないわよ?」
「……だめか?」
「……本当に……仕方のない人」
伸び上がって口付けると、シグルドの瞳にはしっかりと情欲の炎が滾っていた。少し困ったように笑うと、シグルドは額と額とをコツンと合わせた。
「ティアの優しさに付け込んでる自覚はある」
「優しくなんてないわ。あなたと釣り合うくらい悪い女だもの」
「ふ……なら付け入らせてくれてるのか?やっぱり優しいなティア」
「好きなように思えばいいわ。私……どんなあなたもきっと、愛してるから」
「ティア……」
私を抱き締める腕にぐっと力が籠る。全身に溢れるほどの愛を感じる。ああ、泣きたくなる位に私は幸せだ。
ねえ、前世の私。こんな日が来るなんて想像もつかなかったわね。
――これが……真実の愛?
私はそう信じているわ。
――そう……とても暖かいものね。
ええ……「願えば叶う」かしら?
――私の好きだった言葉……その言葉が何一つ願いの叶わなかった私の希望だった。
知ってるわ。あなたの願いは「リーティア」が叶える。
――ありがとう……でもあなたは私に囚われる必要はないのよ。この記憶、私が持ってゆくこともできる。
いいえ、あなたは私の一部よ。あなたも含めて私は「リーティア」なのよ。
――幸せだった記憶なんて何一つないのに……ありがとう、私を受け入れてくれて。
一緒に、幸せになりましょう。もう一人の私――
そっと目を開く。
何故だろう。いつもより少しだけ世界が鮮やかに輝いて見えた。そして今私を抱き締めているのは誰よりも愛しい最愛の男。
「シグルド」
シグルドは少し腕を緩めて私の顔を覗き込んだ。整った精悍な面立ち、燃えるような赤毛に透き通るアイスブルーの瞳。私は少し無精ひげの生えた頤にちゅっと口付けた。
「あなた本当にイケメンね」
「いけ……めん?」
怪訝な顔をするシグルドが妙に可愛らしくて、ふふっと笑いが込み上げる。
「誰よりハンサムって言ったのよ、愛する旦那様」
途端にシグルドがボッと顔を赤らめた。こんな反応は初めてだ。まさか――
「照れてる?」
「ダメだ、見るなティア!」
顔を覗き込む私から、シグルドは必死に逃れようとするので、私はその頭ごと胸に抱いた。
「ふふ、シグルド可愛い」
「……流石に嬉しくないぞ」
「可愛いシグルドも愛してる」
シグルドは声にならない声を上げると、私の耳朶をがぶりと甘噛みした。
「んっ……」
「今夜は容赦しないからな、ティア……」
どうやら今夜も寝かせてもらえないようだ。でも構わない。全身で愛を感じられるシグルドとの情交はただただ幸せで、どこまでも私を満たしてくれるのだから――
これがおとぎ話だったら、リーティアは真実の愛を得て、いつまでも幸せに暮らしました。めでたしめでたし――で終わるのだろうか?
でも現実はそうではない。
だって私とシグルドの愛の物語はまだ始まったばかりなのだから――
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