恋愛捕食者

瀬文奥六

文字の大きさ
1 / 12

プロローグ

しおりを挟む
 その瞬間は突然訪れた。彼女を見た瞬間、脳天から足先に電流が走ったようだった。僕はそれが愛だとすぐに気づいた。友愛でも性愛でもない。本当の「愛」。僕はそれを恋愛と名付けた。その人に恋し愛するこの感覚こそが本当の愛。
 今まで僕は人を好きになったことがないわけではない。でもそれは、「その人と良好な関係を築きたい」であったり、「セックスをしたい」であった。それを愛と呼んでいいのだろうかという思いは前々からあった。愛とは、もっと神秘的で普遍的なものだ。
 僕はこれまで何の変哲もない、つまらない人生を送っていた。なんとなく朝起きて、何となく学校で授業を受け、何となく家に帰り、何となく寝る。そんな毎日に嫌気がさしていた。死んでもいいとさえ思った。僕には生きている意味はない。そう思い込む度、自己暗示のように体から魂が逃げていく気がした。
 それを変えてくれたのが彼女だ。僕に生きる意味を与えてくれた。希望を、喜びを与えてくれた。死んでもいいとさえ思っていた僕に、生への執着心を抱かせてくれた。今では、彼女のために生きようと、彼女の分まで生きようと思う。どんなに他人の死を踏み台にしてでも生きなくてはいけないという使命感に変わった。
 生物学的な生死の話をしているわけではない。ただ心臓が動いているだけなら今までと変わらない。もっと人間的で生産的な生を生き抜いてみせる。
 僕の人生で長く続いていた曇天の隙間から一筋の陽光とともに女神が舞い降り、僕にささやいた。
「愛しています」
 生きる意味は愛だったんだ。僕は彼女を愛している。彼女も僕のことをきっと愛している。いや、愛しているに違いない。
 僕は彼女とつながりたい。
 愛するということは一心同体であること。この真実にたどり着いたのはおそらく僕一人だ。みんな本当の愛を知らない。かわいそうな人たちだ。だから僕は、全人類の中で一番人間的に生きている。幸せ者だ。
 彼女と一つになりたい
 僕は強く願った。
 彼女と一つになること。それが僕の願いだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

小児科での話

ゴマペースト
恋愛
小児病棟の子供のお話 文が幼稚なので見たい人だけ 覗けるようにしたいので詳しく書きません

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...