Rasanz‼︎ーラザンツー

池代智美

文字の大きさ
45 / 132
区域清掃 side

区域清掃 side:ブラッド

しおりを挟む

 地味な仕事である区域清掃は正直気が乗らねェ案件だが、姐さんがいるから仕方なく出勤した。
 朝集合場所である公園へ行くと、掃除屋のセシリオとその弟妹も来ていた。
 セシリオとガキが互いに挨拶をすると、オットーとリタが兄貴に駆け寄って抱きついた。
 二人は兄貴のセシリオに自己紹介を促されると、自分が上だと主張した。
 正直兄妹でも姉弟でもどっちでもいいが、この二人にとってはどっちでも良くないらしい。
 いつものようにどっちが上か言い争っていると、セシリオに窘められていた。

 あのガキの挨拶が終わると、オットーは素直にガキを弱そうと評した。
 子供は遠慮がない分たまにとんでもなく酷い事を言う時があるが、アイツが弱そうというのは俺も同意見だった。
しかし兄貴であるセシリオはオットーに謝るよう頬を掴んでいた。
ガキは大丈夫だと言っていたが、兄貴はオットーの代わりに謝っていた。
 オットーは痛みに頭を押さえている。
どうもエッシが来ていない事にオットーは拗ねているらしかった。
 オットーはシェルアさんにやんわり注意されると、顔を赤くしていた。
 
 俺はわざと挑発するように、オットーの顔を覗き込んだ。
 からかってやると案の定オットーは言い返してきたが、馬鹿と言い返すと倍で馬鹿と言われた。
 攻撃を仕掛けられても、ガキの攻撃なんざ痛くも痒くもない。
 弱いと笑うと、オットーは悔しそうに拳を握った。
 ルイスが戻ってくると、リタがそわそわしだした。
 鈍感なルイスはリタの想いに気付いていないようだ。
 ルイスの馬鹿に蹴りの一つでも入れたくなったが、リタと姐さんの前では我慢するしかなかった。

 清掃は二手に分かれて行う事になった。
 こっちのチームは姐さん、オットー、俺の三人である。
 姐さんはオットーが一人俺達といて大丈夫か気にしていたが、オットーは自分は兄ちゃんだからと胸を張って答えた。
 セシリオはリタを抱き上げてルイス達の所に向かう。
 兄貴と離れて本当に大丈夫かと聞くと、オットーにビビって泣くなよと言われた。
 掃除如きで泣く訳がない。
 言い返すと姐さんに喧嘩はするなと仲裁された。

 姐さんはオットーは俺の小さい頃に似ていると言った。                
 オットーはそれをあからさまに嫌がると、似るなら兄ちゃんがいいと言う。
 適当な事を言わないでくれと姐さんに苦言を呈すと、今度はやんちゃな所はそっくりだと言われてしまった。
 
——出会ったのがガキの頃だから仕方ないのだが、もう少し俺を大人として見てほしい。

でも口に出すともっとガキっぽくなりそうで、俺は無言で落ちていた缶を拾った。
 結局はこの人にとっての"俺"はあのガキだった頃のの“俺"で止まっているのだ。
 男として意識して貰わなければ意味がない。
 姐さんは俺の思惑に一切気付かず、作業を続けている。

 しばらくゴミ拾いをしていると、中身が満杯になった。
 この辺は空き缶や酒瓶が多く、やけに道に転がっていた。
 ふとオットーに目をやると、明らかに重そうに袋を持って歩いている。

……重たいならそう言やいいのに。

 コイツにも男の意地があるのはわかるが、袋が破れると後が面倒くせェから横からぶん取って、代わりにまだ軽い自分のゴミ袋を持たせた。
 オットーは重くても楽勝だと言う。
 引きずって手間を増やされる方が困ると言い返すと、オットーは怒って俺を追いかけてきた。
 馬鹿と言うオットーに馬鹿と言った方が馬鹿だと教えてやると、ウルトラスペシャル百倍バカと馬鹿の考えた言葉を言われて足を蹴られた。
 また蹴られないように逃げると、オットーは追いかけ回してきたが、途中で飽きたらしくゴミ拾いを再開していた。

「なんだもうへばったのか?」
「うるさい。おれ今いそがしい」

 俺を追いかけ回すのはやめたようだ。
 一時間もすると予備のゴミ袋も使い切って、荷物が増えた。
 片手にゴミを三つまとめて持つと、オットーがじっと見てきた。
 何かあったか聞くと、大きくなったらそれくらい持てるようになると目を逸らしながら言った。
 精々頑張れと適当に返事をすると、オットーは兄貴よりデカくなると豪語していた。
 やっぱりガキはガキである。

「兄貴の身長超えるなら嫌いな食べ物も食べられるようにならねェとな~」
「うぐぐぐ……ソレとコレとは関係ないだろ!」

 オットーは地団駄を踏んだ。
 俺達は最初の集合場所に戻ると、借りていた道具を係員に返却した。
すると今日の礼にとペットボトルのお茶を渡された。
炭酸のが良かったと独り言を呟くと、姐さんに聞こえたようで、飲み物の交換を提案された。
 姐さんが持っているのは炭酸飲料だった。
 飲み物を交換して、ルイス達が戻ってくるのを待っているとオットーがお菓子を両手で掲げて食べたいと要求した。
 姐さんが一つだけと母親みたいな事を言うと、オットーが不満の声を上げたため、食いすぎたら昼食が入らなくなって兄貴にシメられるぞと言ってやった。
 オットーは嫌だと言いながらチョコチップクッキーの袋を開けている。
 クッキーに齧り付くと、食べかすを口周りにくっつけていた。

「オットー、付いてるよ」
「えー? 食べ終わったらふく!」

 笑って言うオットーに、姐さんはつられて笑う。
 可愛らしい笑顔に飲んでいた物を咽せると、姐さんは俺の背中をさすった。
 オットーは微妙な目つきで俺を見てきたが、何も言うなと無言で訴えた。

 そうしてしばらくすると、ルイス達が戻ってきた。
 姐さんがおかえりと言って、オットーがおつかれと手を振る。
 何故かルイスとあのガキの手に菓子の袋があって、俺は疑問符が頭に浮かんだ。
 お前らまで貰ってんのかと言うと、ルイスはいるかと普通に聞いてきた。
 菓子は余ったから普通に貰ったらしかった。
 いらねェと返事をすると、オットーが馬鹿にしたようにお菓子がほしいのは子供だと言ってきたから、菓子食ってるお前の方が子供だと頭を鷲掴みにしてやった。
 オットーはすぐに姐さんに助けを求めた。
 痛くしてねェのに大袈裟である。そのおかげで姐さんに注意されてしまった。
 頭を掴んでいた手を離すと、オットーは姐さんの後ろに逃げて俺に向かって舌を出していたが、兄貴にバレて拳骨を喰らっていた。

 ルイスとリタとあのガキは、三人で何やら仲良く話しているようだった。
 リタはあのガキに気を許したらしく、やけに懐いている。
 姐さんが仲良くなったなと言うと、ガキはリタがいい子だからと言った。
 姐さんはガキの返事に微笑むと、いい子だと言って頭を撫でた。
そこまではまだ良かったが、赤らんでいるガキの頬が見えて俺は苛ついた。

——何ちょっと照れてんだこのガキ。

 死角から睨んでやると、顔ごとソイツに逸らされて余計に苛ついた。どういうつもりだこのクソガキ。

 苛立ちを態度に出さないように鎮める。
 セシリオ達と挨拶をして別れると、オットーの次は勝つ発言に舌を出して手を挙げてやった。
 オットーとリタの二人は見えなくなるまで大きく手を振っている。
 ガキ二人に振り回される兄貴は兄貴で大変そうだった。

 姐さんが楽しかったかとガキに問いかけると、ガキは勢いよく肯定した。
 あまりの素直な反応に姐さんとルイスは笑っていて、ガキの方は少し恥ずかしそうにしていた。

 姐さんに色々気にかけられているコイツは個人的に気に食わねェ事の方が多いが、今はまだ姐さんにも周りの人間にも危害が出ていない。
だがコイツが本性を出していないだけかもしれないため、油断は禁物である。
 俺は姐さん達の一歩後ろを歩きながら、今後どうするか思考を巡らせた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。 しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は賑やかになった。

処理中です...