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区域清掃 side
区域清掃 side:ブラッド
しおりを挟む地味な仕事である区域清掃は正直気が乗らねェ案件だが、姐さんがいるから仕方なく出勤した。
朝集合場所である公園へ行くと、掃除屋のセシリオとその弟妹も来ていた。
セシリオとガキが互いに挨拶をすると、オットーとリタが兄貴に駆け寄って抱きついた。
二人は兄貴のセシリオに自己紹介を促されると、自分が上だと主張した。
正直兄妹でも姉弟でもどっちでもいいが、この二人にとってはどっちでも良くないらしい。
いつものようにどっちが上か言い争っていると、セシリオに窘められていた。
あのガキの挨拶が終わると、オットーは素直にガキを弱そうと評した。
子供は遠慮がない分たまにとんでもなく酷い事を言う時があるが、アイツが弱そうというのは俺も同意見だった。
しかし兄貴であるセシリオはオットーに謝るよう頬を掴んでいた。
ガキは大丈夫だと言っていたが、兄貴はオットーの代わりに謝っていた。
オットーは痛みに頭を押さえている。
どうもエッシが来ていない事にオットーは拗ねているらしかった。
オットーはシェルアさんにやんわり注意されると、顔を赤くしていた。
俺はわざと挑発するように、オットーの顔を覗き込んだ。
からかってやると案の定オットーは言い返してきたが、馬鹿と言い返すと倍で馬鹿と言われた。
攻撃を仕掛けられても、ガキの攻撃なんざ痛くも痒くもない。
弱いと笑うと、オットーは悔しそうに拳を握った。
ルイスが戻ってくると、リタがそわそわしだした。
鈍感なルイスはリタの想いに気付いていないようだ。
ルイスの馬鹿に蹴りの一つでも入れたくなったが、リタと姐さんの前では我慢するしかなかった。
清掃は二手に分かれて行う事になった。
こっちのチームは姐さん、オットー、俺の三人である。
姐さんはオットーが一人俺達といて大丈夫か気にしていたが、オットーは自分は兄ちゃんだからと胸を張って答えた。
セシリオはリタを抱き上げてルイス達の所に向かう。
兄貴と離れて本当に大丈夫かと聞くと、オットーにビビって泣くなよと言われた。
掃除如きで泣く訳がない。
言い返すと姐さんに喧嘩はするなと仲裁された。
姐さんはオットーは俺の小さい頃に似ていると言った。
オットーはそれをあからさまに嫌がると、似るなら兄ちゃんがいいと言う。
適当な事を言わないでくれと姐さんに苦言を呈すと、今度はやんちゃな所はそっくりだと言われてしまった。
——出会ったのがガキの頃だから仕方ないのだが、もう少し俺を大人として見てほしい。
でも口に出すともっとガキっぽくなりそうで、俺は無言で落ちていた缶を拾った。
結局はこの人にとっての"俺"はあのガキだった頃のの“俺"で止まっているのだ。
男として意識して貰わなければ意味がない。
姐さんは俺の思惑に一切気付かず、作業を続けている。
しばらくゴミ拾いをしていると、中身が満杯になった。
この辺は空き缶や酒瓶が多く、やけに道に転がっていた。
ふとオットーに目をやると、明らかに重そうに袋を持って歩いている。
……重たいならそう言やいいのに。
コイツにも男の意地があるのはわかるが、袋が破れると後が面倒くせェから横からぶん取って、代わりにまだ軽い自分のゴミ袋を持たせた。
オットーは重くても楽勝だと言う。
引きずって手間を増やされる方が困ると言い返すと、オットーは怒って俺を追いかけてきた。
馬鹿と言うオットーに馬鹿と言った方が馬鹿だと教えてやると、ウルトラスペシャル百倍バカと馬鹿の考えた言葉を言われて足を蹴られた。
また蹴られないように逃げると、オットーは追いかけ回してきたが、途中で飽きたらしくゴミ拾いを再開していた。
「なんだもうへばったのか?」
「うるさい。おれ今いそがしい」
俺を追いかけ回すのはやめたようだ。
一時間もすると予備のゴミ袋も使い切って、荷物が増えた。
片手にゴミを三つまとめて持つと、オットーがじっと見てきた。
何かあったか聞くと、大きくなったらそれくらい持てるようになると目を逸らしながら言った。
精々頑張れと適当に返事をすると、オットーは兄貴よりデカくなると豪語していた。
やっぱりガキはガキである。
「兄貴の身長超えるなら嫌いな食べ物も食べられるようにならねェとな~」
「うぐぐぐ……ソレとコレとは関係ないだろ!」
オットーは地団駄を踏んだ。
俺達は最初の集合場所に戻ると、借りていた道具を係員に返却した。
すると今日の礼にとペットボトルのお茶を渡された。
炭酸のが良かったと独り言を呟くと、姐さんに聞こえたようで、飲み物の交換を提案された。
姐さんが持っているのは炭酸飲料だった。
飲み物を交換して、ルイス達が戻ってくるのを待っているとオットーがお菓子を両手で掲げて食べたいと要求した。
姐さんが一つだけと母親みたいな事を言うと、オットーが不満の声を上げたため、食いすぎたら昼食が入らなくなって兄貴にシメられるぞと言ってやった。
オットーは嫌だと言いながらチョコチップクッキーの袋を開けている。
クッキーに齧り付くと、食べかすを口周りにくっつけていた。
「オットー、付いてるよ」
「えー? 食べ終わったらふく!」
笑って言うオットーに、姐さんはつられて笑う。
可愛らしい笑顔に飲んでいた物を咽せると、姐さんは俺の背中をさすった。
オットーは微妙な目つきで俺を見てきたが、何も言うなと無言で訴えた。
そうしてしばらくすると、ルイス達が戻ってきた。
姐さんがおかえりと言って、オットーがおつかれと手を振る。
何故かルイスとあのガキの手に菓子の袋があって、俺は疑問符が頭に浮かんだ。
お前らまで貰ってんのかと言うと、ルイスはいるかと普通に聞いてきた。
菓子は余ったから普通に貰ったらしかった。
いらねェと返事をすると、オットーが馬鹿にしたようにお菓子がほしいのは子供だと言ってきたから、菓子食ってるお前の方が子供だと頭を鷲掴みにしてやった。
オットーはすぐに姐さんに助けを求めた。
痛くしてねェのに大袈裟である。そのおかげで姐さんに注意されてしまった。
頭を掴んでいた手を離すと、オットーは姐さんの後ろに逃げて俺に向かって舌を出していたが、兄貴にバレて拳骨を喰らっていた。
ルイスとリタとあのガキは、三人で何やら仲良く話しているようだった。
リタはあのガキに気を許したらしく、やけに懐いている。
姐さんが仲良くなったなと言うと、ガキはリタがいい子だからと言った。
姐さんはガキの返事に微笑むと、いい子だと言って頭を撫でた。
そこまではまだ良かったが、赤らんでいるガキの頬が見えて俺は苛ついた。
——何ちょっと照れてんだこのガキ。
死角から睨んでやると、顔ごとソイツに逸らされて余計に苛ついた。どういうつもりだこのクソガキ。
苛立ちを態度に出さないように鎮める。
セシリオ達と挨拶をして別れると、オットーの次は勝つ発言に舌を出して手を挙げてやった。
オットーとリタの二人は見えなくなるまで大きく手を振っている。
ガキ二人に振り回される兄貴は兄貴で大変そうだった。
姐さんが楽しかったかとガキに問いかけると、ガキは勢いよく肯定した。
あまりの素直な反応に姐さんとルイスは笑っていて、ガキの方は少し恥ずかしそうにしていた。
姐さんに色々気にかけられているコイツは個人的に気に食わねェ事の方が多いが、今はまだ姐さんにも周りの人間にも危害が出ていない。
だがコイツが本性を出していないだけかもしれないため、油断は禁物である。
俺は姐さん達の一歩後ろを歩きながら、今後どうするか思考を巡らせた。
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