137 / 166
第六章 茜岩谷に吹く風が
第十六話 海をめざして
しおりを挟む
ロレンは自分の家の商会の名前を使って、行商人のルートで『海辺の街の教会にいる女性の治療師、又は言葉が話せない女性』という条件に当てはまる情報を集めてくれていた。
砂漠からサラサスーンへ戻ったタイミングで入ったのは『海辺の街で耳なしの娘さんから、教会宛の手紙を預かった』という有力情報。
そして今、おそらくロレンは、俺が目指すべき街の情報を持ってきてくれた。
「ヒロト、ハル! 以前、教会宛の手紙を届けたと言っていた行商人と連絡が取れました。どうやら、耳なしから預かった手紙らしいです」
声を潜めて耳元で囁く。設定上俺の耳はフードの付け耳なのだが、実際の耳のあたりで囁いているロレンは、実は慌てているのかも知れない。
「おかーさん、どこにいるかわかったの!?」
「ハルくん、ナナミさんかも知れない耳なしさんです」
ロレンがハルの耳に口を寄せる。だからそこじゃない、もっと上だ。まあ、いいか。
ハルがこそばゆそうに首をすくめてから、俺の方を見て頷く。
「その耳なしの場所は?」
「間に人が入っていますからね。わからないそうです」
「手紙、届けた街、名前、わかるか?」
「はい。ザドバランガ地方の『トルルザ』という海辺の街、そこの教会へ手紙を届けたそうです」
「そうか」
そこに行けば、耳なしからの手紙の内容を教えてもらえるだろうか。手紙を見せてくれるだろうか。ナナミからの手紙だとしたら、俺に渡る事を想定したものだろう。行ってみる価値はある。
「行きますか」
「ああ、行く。ロレン、たくさん、ありがとう」
「ザドバランガは黒猫の英雄譚の舞台となった地方です。耳なしは悪の権化ですよ」
「うまくやる」
「せめてハザンかアンガーを連れて行きませんか」
「奴らにも生活、ある」
俺の事情に巻き込むにも限度がある。なによりも、俺は対等でありたいと思っているのだ。付いて来てもらうのも、金を払って守ってもらうのも真っ平御免だ。
俺のそんな強がりのような、子供じみたプライドは捨てるべきだろうか。ハルとハナを守る事が、俺に出来るだろうか。そもそも危険な旅に、ふたりを連れて行く必要があるだろうか。
ふたりの寝顔を見ながら、毎晩のように自問自答した。
俺は、もうハナの手を放す事は出来ない。ハルが一緒でなければ、旅立つ意味があるとも思えない。なにが正解かなんて、きっと全て終わったあとにだって、わからないだろう。だったら、やってみるさ。
三人でナナミを迎えに行こう。俺とハルとあくびで、ハナを守ろう。俺に出来る精いっぱいで、ハルとハナを守ろう。
それしかないじゃないか。
「ありがとうロレン。でも、決めた事なんだ」
準備が出来次第、ザドバランガに向けて旅立とう。三度目になる旅も、やはり海を目指す。
『七海』を探して海を目指すのか。まさか、七度目の旅じゃないと見つからないとかいうオチじゃないだろうな。そんなダジャレじみた事を考えて、ついため息が出る。
七回でも八回でも旅立つさ。そんな覚悟は転移初日に出来ている。あとは見つけるだけだ。ナナミは逃げも隠れもしていない。鬼ごっこより、隠れんぼうより簡単じゃないか。
砂漠からサラサスーンへ戻ったタイミングで入ったのは『海辺の街で耳なしの娘さんから、教会宛の手紙を預かった』という有力情報。
そして今、おそらくロレンは、俺が目指すべき街の情報を持ってきてくれた。
「ヒロト、ハル! 以前、教会宛の手紙を届けたと言っていた行商人と連絡が取れました。どうやら、耳なしから預かった手紙らしいです」
声を潜めて耳元で囁く。設定上俺の耳はフードの付け耳なのだが、実際の耳のあたりで囁いているロレンは、実は慌てているのかも知れない。
「おかーさん、どこにいるかわかったの!?」
「ハルくん、ナナミさんかも知れない耳なしさんです」
ロレンがハルの耳に口を寄せる。だからそこじゃない、もっと上だ。まあ、いいか。
ハルがこそばゆそうに首をすくめてから、俺の方を見て頷く。
「その耳なしの場所は?」
「間に人が入っていますからね。わからないそうです」
「手紙、届けた街、名前、わかるか?」
「はい。ザドバランガ地方の『トルルザ』という海辺の街、そこの教会へ手紙を届けたそうです」
「そうか」
そこに行けば、耳なしからの手紙の内容を教えてもらえるだろうか。手紙を見せてくれるだろうか。ナナミからの手紙だとしたら、俺に渡る事を想定したものだろう。行ってみる価値はある。
「行きますか」
「ああ、行く。ロレン、たくさん、ありがとう」
「ザドバランガは黒猫の英雄譚の舞台となった地方です。耳なしは悪の権化ですよ」
「うまくやる」
「せめてハザンかアンガーを連れて行きませんか」
「奴らにも生活、ある」
俺の事情に巻き込むにも限度がある。なによりも、俺は対等でありたいと思っているのだ。付いて来てもらうのも、金を払って守ってもらうのも真っ平御免だ。
俺のそんな強がりのような、子供じみたプライドは捨てるべきだろうか。ハルとハナを守る事が、俺に出来るだろうか。そもそも危険な旅に、ふたりを連れて行く必要があるだろうか。
ふたりの寝顔を見ながら、毎晩のように自問自答した。
俺は、もうハナの手を放す事は出来ない。ハルが一緒でなければ、旅立つ意味があるとも思えない。なにが正解かなんて、きっと全て終わったあとにだって、わからないだろう。だったら、やってみるさ。
三人でナナミを迎えに行こう。俺とハルとあくびで、ハナを守ろう。俺に出来る精いっぱいで、ハルとハナを守ろう。
それしかないじゃないか。
「ありがとうロレン。でも、決めた事なんだ」
準備が出来次第、ザドバランガに向けて旅立とう。三度目になる旅も、やはり海を目指す。
『七海』を探して海を目指すのか。まさか、七度目の旅じゃないと見つからないとかいうオチじゃないだろうな。そんなダジャレじみた事を考えて、ついため息が出る。
七回でも八回でも旅立つさ。そんな覚悟は転移初日に出来ている。あとは見つけるだけだ。ナナミは逃げも隠れもしていない。鬼ごっこより、隠れんぼうより簡単じゃないか。
0
あなたにおすすめの小説
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界に迷い込んだ盾職おっさんは『使えない』といわれ町ぐるみで追放されましたが、現在女の子の保護者になってます。
古嶺こいし
ファンタジー
異世界に神隠しに遭い、そのまま10年以上過ごした主人公、北城辰也はある日突然パーティーメンバーから『盾しか能がないおっさんは使えない』という理由で突然解雇されてしまう。勝手に冒険者資格も剥奪され、しかも家まで壊されて居場所を完全に失ってしまった。
頼りもない孤独な主人公はこれからどうしようと海辺で黄昏ていると、海に女の子が浮かんでいるのを発見する。
「うおおおおお!!??」
慌てて救助したことによって、北城辰也の物語が幕を開けたのだった。
基本出来上がり投稿となります!
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる