お父さんがゆく異世界旅物語

はなまる

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第四章 砂漠の旅とパラシュ

第四話 底の街

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 ガーヤガランの街を出て三日目、巨人が大地の中身が見たくて割り開いたという伝説がある『大地の裂け目』と呼ばれる場所へ到着した。

 その巨人は、なぜ途中で止めたのか気になる。見たかった気持ちはどーしたんだよ! とも思ったが、割り開かれてしまっても困る。大地はピスタチオじゃねぇっての。

 亀裂きれつは全長十五キロに及び、開口部分も広い所では千メートルを超える。そして恐ろしい事に、この裂け目の底に街があると言う。

 地質学的に地割れが起きて、それが元に戻る事はほぼあり得ないらしい。だが、どうにも落ち着かない。開いたら閉じるんじゃないかと思ってしまうのが人のさがというものだ。

 奈落ならくの底へと降りて行くような気分で、壁につづら折りに彫り込まれた欄干らんかん付きの通路を下って行く。俺は高所恐怖症ではないつもりでいたが、この世界に来てからこういった場面では、やけに股間と足元がスースーする。花やしきの乗り物が怖いのと、近い心理かも知れない。

 やがて馬車が最深部へと辿り着く。巨大な穴の中にいるようなものだ。さぞかし暗いのだろうと思っていたが、木漏れ日のような柔らかな光が、四方から差し込んでいる。

 地表近くに、大きな鏡がいくつも取り付けられていて、光を取り込んでいる。鏡は角度を調節できるらしく、太陽を追いかけて光を反射するのだろう。

 丁度雲の多い日の、日が昇る直前くらいの明るさだ。そこに鏡に反射した光が、雲の切れ間から差し込む陽の光のように降り注ぐ。

 切り立った壁の、鉱石の鉱脈がむき出しになっている部分が、金属の輝きでキラキラと光る。なんとも幻想的な光景だ。

 この街の名前は『底の街アポートス』。 鉱石の街だ。

 ざっと見ただけでも、ネコ科の人たちばかりが目につく。暗い坑道では、高性能な眼が必要になるからだろうか。

 底の街では主に食料を降ろす。さすがにこの条件では、食料自給率が低いのだろう。ロレンに「鉱石、仕入れ、しない?」と聞いたら、重いものは帰りだと言われた。なるほど。

 今回の旅は、暑い方へ、乾いた方へと向かっている。みんなの食と健康を預かる者としては、この先の葉物野菜や果物の不足が気になる。そんな事をぶつくさ言ったら、

「アポートスはドライフルーツや乾燥野菜の種類が豊富です。少し仕入れましょう」

 と言ってくれた。

 少しと言わず、たっぷりお願いします!


 この街の家は、サラサスーンらしく赤茶色のレンガ造りだ。家の形はシュメリルールやガーヤガランと同じく、茶筒やサイコロを重ねたり、くっつけたりした感じ。たぶんこれが、このへんの建築様式なのだろう。

 トプルに、サラサスーンやガーヤガランの家はなぜ白いのか聞いてみたら、この辺りの土は、一定の温度以上で焼くと白くなるのだと言っていた。なるほど、日干しレンガと焼きレンガの違いだった訳だ。

 アポートスの街は、荷物の積み下ろしをしてすぐに出発だった。そう言われるとちょっと、鉱石掘ってるところとか見てみたい。夜になったらランタン持って「どうりで石が騒ぐわけだ」とか言いたい。

 まあ、帰りにも寄るらしいので、その時のお楽しみにしよう。

 入る時は、地獄じごくの入り口のように感じていたアポートスの街は、出る時には『また今度ね』と言われて素通りした遊園地のように思えた。

 つづら折りの通路を登る。ゆっくりと眼下に遠ざかって行く街を、ハナが作ってくれたまだら模様のパステルで描いた。

 うーん、このハナ仕様パステルは、使いどころが難しいな。
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