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「タケル様。禊のお時間です」
「分かった」
まだ日が登りきらない空。
部屋はロウソクの明かりが無ければ真っ暗だ
「おはよう、」
「……」
タケルが挨拶をするが、起こしに来た執事は目を伏せて頭を下げるだけだ
まだまだコミュニケーションを取らねばならない。
「…ぁっ、」
「…タケル様っ」
薄衣に着替えている最中に、強い目眩がした
この世界に来てからというものの、あらゆる理由で食事がまともにとれない。
その最たる理由は、気持ち悪くて喉を通らないのだ
「…大丈夫…ありがとう、…んっ、」
「…っ申し訳、ありません…」
執事の支えてくれた手がタケルの腰を強く抱いたが、執事服の胸に着いてあるブローチが薄衣越しに乳首を掠めてしまった
執事は仕えるべき、神聖なお方の艶かしい声を耳元で聞き、狼狽えた
「平気…行こう」
腰に添えられた手をそっと握って、タケルは執事を見上げた
「タケル…様…」
普段は乱れることは許さぬと、キッチリと撫でつけられた髪が一筋額にかかっていた。
タケルはそっと指でそれを耳にかけてやり、悲しげに笑って見せた





















ドッドッドッ
タケルは心臓を抑えながら汗をタラタラと流した。
今ここは禊の泉。神に祈りを捧げる神聖な場所だ
「俺めっちゃハレンチ……!」
冷た過ぎる水は今は丁度いいかもしれない。
「もうやだ!あんなビッチムーブもうできん!俺を誰だと心得る…!ちょっと前まで友達と馬鹿騒ぎしてた猿ぞ!!」
ウッキー!と水面を叩いてしまい、やべっと我に返る。



タケルは、そこらにいる何の変哲もない普通の男子高校生だ、男子高校生だった。

部活帰り、水溜まりに吸い込まれ何が何だか分からぬまま渦にグルグル回された結果
この世界に来ていた。
最近深夜アニメで追っている異世界転移ものだとオタク脳が瞬時に察知するが、転移した世界が良くなかった。

まず、飛ばされた先が「うっぷ」思い出しただけでも吐きそうになるタケルだが、それ程の光景だった。
人の内臓や皮、切断された手足が転がる場所、タケルはどうやらそれらの血の海から這い出てきたようだ
全身が真っ赤に染まったまま呆然としていると、周囲からは人がワラワラと出てきてタケルを神子だ、神の使いだと騒ぎ立てる
そこからの記憶は無く、次に目が覚めたら煌びやかな趣味の悪いベッドルームにいた。
周りにはきっと地位ある人々が立っていて、タケルを囲んで目覚めるのを待っていたのだ。
そして、美しい、美しいとかけられた言葉。
それは容姿の事では無い
何故ならばタケルの容姿は女性的でも中性的でも、かといって男らしさがある訳でもない。日本人らしい平面な顔に平均的な身体

彼らがタケルを美しき神子だとした最大の理由が瞳だ。夜を閉じ込めたかのような美しい黒を纏った瞳は、何処までも澄んでおり、それは決して罪人共の血を全身に被ったかとて、霞むことは無かった

が、タケルにはそんなの知ったこっちゃないのである。それに今まで日本で生きてきて瞳が綺麗なんて言われたことは無い
澄んだ瞳というが、正直、この世界の住民の病んだ目に比べ、異世界人なら誰でも澄んだ瞳と言われると思う。

何故ならば

「今日も……やるのかな……」

























「来たか、タケル殿。」
王太子が指輪を付けた手を優雅に差し出してきた。「…ぁっ、」
そっと伸ばすと、ぐいっと引かれ腕の中に閉じ込められる。
「瞳を見せてくれ。」
「…殿下が、濡れてしまいます…」
「…いじらしいお方だ」
ささやかに手を突っぱねて抵抗すると、耳元で蕩けた声音を出される。どこがやねんと口に出さなかった自分をタケルは褒めた
全身の鳥肌は抑えられなかったが、禊を終えた薄衣のままだからバレないだろう

そうなのだ。タケルは今、凍えるような禊という名の自己嫌悪と戦った後着替えもせず、濡れた身体のまま王族帰属達が待つ大広間に来ている。これはしきたりなのだそうだ
そしてここでは毎朝、とある習慣が行われている
皆、午前中は磨かれた床に柔らかな布とクッションを敷き、そこで食事をとるが、それだけではない

王太子が、片手を上げると
待ちわびたかのように貴族達が歓声をあげる
「っ、」始まってしまう
タケルの体が無意識に強ばる
不気味に開いた真ん中の広間に、ガラガラと巨大な鉄の球体が運ばれてきた。
タケルは、これを1度見た事がある
「ふ、どうしたタケル殿。寒いのか」
この根性の悪い最低野郎め!と心の中で悪態をつきながらも、タケルは周囲の様子を注意深く観察した
多くの貴族は笑っているが、どことなく顔色が悪い人間もいるし、無理やり笑っているような人も。タケルはそれらの人物の顔を頭に叩き込む

タケルがこの世界に来た理由は、分からずじまいだが 確実に言えるのはもう元の世界には戻れないということだ。
ならば、この神子という立場を使ってこれから暮らしていかなければならないこの国を、少しでも居心地のいい場所にしたい


少なくとも、一切れのパンを盗んだだけの罪人が、惨殺される所を見ながら食事を取らなくて済むように
















熱された鉄の球体の中には、人が居る
中の人間の叫び声は聞こえないが、声を上げれば振動して球体が動く。球体が激しく動けば動くほど苦しんでいるということだ

これは、以前王太子にほぼ耳に口付けられながら告げられた言葉だ。

「どうされた、タケル殿。」
口元に葡萄のような果実を押し付けられるが、タケルは頭を振った。
この王太子は間違いなくタケルの様子を楽しんでいる
ベタベタと大きな手で身体を触られて気持ち悪いことこの上ないが、神子という立場が何処まで強固なものかはかりかねているのだ。
ここに来たばかりの時、こんな残酷な事やめてくれと声を大にして言っていたがそれらは聞き分けのない幼子の相手をするようにいなされてしまった。
それに一歩間違えば、タケル自身もあの球体の中かもしれないと思うと
「っ、王太子様、寒いんです…」
よく鍛えられた厚い胸板にキュッと寄り添うと「おお、」と感激したような声が頭上から聞こえる。タケルは自分の仕草や声音に吐きそうになりながらも、この残酷な場所から逃れる為に媚びた。
「タケル殿、私の気持ちを知っているはず。そのような艶かしい姿で温もりを求められては、」
まずいまずいそっちの方向はまずい
と心のなかの男子高校生が叫んだ。
「お、王太子様…!私は…っ」
「分かっている。……貴方が神のお言葉を私に話せば、どんな手を使ってでもそれを果たしてやるというのに。その身が神から離れた時、貪り食ろうてやる」
最後は悪戯気味に笑いながら告げられるが、王太子は野性的な火のごとく燃える赤い髪を持つ美形だ。厚い唇から覗く白く丈夫そうな歯を見ると全くもって冗談に聞こえない。
タケルは色んな意味の寒気で自然に浮かんだ涙を零さぬように耐えながら、王太子に曖昧に笑った
「…そのような顔をするな、本当にいじらしいお方よ。よしよし、私が抱いて陽の当たる東屋に連れて行って差し上げよう」
お前の言ういじらしいって何だよ
と、タケルはまた声に出さなかった自分を褒めて、王太子に黙って抱き上げられてやった。食事の後王太子は仕事なので、東屋に着いたらすぐに去るのは分かっている
「皆の者、楽にしろ」
王太子が立ち上がりお言葉を投げかけると、貴族達は頭を垂れて見送る

そのなかに、ほっとした顔が何名もいた事も
タケルは見逃さなかった





















「タケル様。またお食事を取られなかったのですか」
「うん、平気だよ」
「いいえ、随分お痩せになられました。どうか」

予想通り、王太子は東屋にタケルを連れ、柔らかなソファに壊れ物のように寝かせると仕事に向かった。耳朶に口付けるという爆弾を残していったが、あの残酷な場所でベタベタ触られるよりマシだ

そして今、まるでここに来るのが分かっていたかのように控えていた執事がタケルが寝そべるソファの横で果物を差し出してくる
正直本当に食欲が無い。よく、異世界転移ものではスキルが付与されたりするが
タケルはこれでも力や魔法の代わりにもしかしたら精神的に強くなる何かを貰ったかもしれない。

人が泣き叫びながら残酷な方法で死んでいるのを見たら、普通は気が狂ってしまうだろう。元々タケルはスプラッタ映画なども大の苦手で画面越しでも吐いてたくらいだった

それなのに今はどうだ、身体的には食欲が無くなった以外の影響が無い。
一時はそんな自分が残酷で酷い人間に思えて、そっちで病んだくらいだ

だが、今までの自分を考えるとやはりこの程度で済むはずがない。この世界に本当に神が存在すると言うのならば、神子と呼ばれる自分に何かしらのスキルが備わっている可能性も否定できなかった。

「貴方の名前、知りたいな」
「…ただの、執事にございます」
寝転がったまま白い手袋を嵌められた指先を、控えめに握ってみると
執事はあからさまに動揺した
「おねがい」

この執事はタケルのそばに居る人間で唯一、人が無惨に死ぬ場所にいないのだ。
出来るならばもっと距離を縮め、他愛のない会話が出来るようになれたらと思っている。
この世界で一生生きねばならないのだ
友達のひとりやふたり、欲しいのは当然だろう
「……おねがい」
重ねて、もう一度言う。
拒絶される度、友達になろう!いやだ!と言われているようで悲しいような恥ずかしいような気持ちになってしまう。
だが執事から返事はなく、タケルは目を伏せて控えめに握っていた手をそっと離した

「…っ、ヤガル…と」
「……ヤガル…?」
「……はい」

言われた言葉は聞き馴染みが無い。
それが名前だと気付くのに一拍遅れた
「ヤガル、ヤガルかぁ…ふふ、ヤガル」

タケルの嬉しそうに笑った顔。澄んだ瞳。薄い体がソファに力なく横たわり、そこにはヤガルに対して一欠片の警戒も無かった。
頭に浮かぶのは、衣を裂いて細腰を跡がつくほど掴み、泣き喘ぐタケルの体に己を押し込み奥深くで種付けをする様。神聖なタケルの身体を貪った想像を一瞬でもしてしまったヤガルは、タケルと距離を取った。

それがタケルにはふらついたように見えて、慌てて起き上がる。
「ヤガル…!どうした?ヤガル、」
護衛も兼ねているのか、しっかりした身体付きのヤガルの胴を支えるように抱き締めると、「…どうか…はっ、…どうか……っ」
苦しそうなヤガルは、片手で顔を多い、もう片方の震える手でタケルの肩を掴んで自分から引き離した
「…神よ、どうかお許し下さい…」
ボソリと告げられたヤガルの言葉に、タケルの脳内は心底はてなマークだった





















ただいま深夜。
夜の禊を終え、ベットに入り就寝
のはずが
「寝れねぇよ!!」
ばふん、と枕を投げつけた。
阿鼻叫喚が壁をつきぬけて四方八方から聞こえてくるのだ
こんな時間にスプラッタを楽しんでる連中がいるのかとこの国のやばさを改めて強く認識したが、これでは眠れない。
明日も朝早くに禊なのだ
寝不足で冷たい水に浸かったあと変態王太子に撫で回され拷問を見ながら食事なんて、最悪極まる
タケルはベットからそろりと降りると、足音を立てないように極力カーペットの上を歩いてバルコニーに向かった。物音を立てたらせっかく休んだヤガルが気にして来てしまう

そして、これまたこっそりゆっくりと鍵を開け、外を窺う。因みにここは王宮の6階だ。
近くにつたう木々も無い上、下には護衛兵達がうじゃうじゃといるから侵入者の心配は無い。

不思議だ、部屋の中より外の方が叫び後が薄い。恐らく、日本の夏のように虫の鳴き声がするからだろう。現状それは強い癒しだ
いっそここに布団を持ってきて寝てやろうかと思った時、下の護衛がタケルに気付いたようだ。カーテンを開けたので部屋のささやかなロウソクの明かりが漏れてるのだろう。
何か問題が会ったのかと慌てて数人駆け寄ってきたが、兵からタケルに声をかけることはできない。
「ぁ、」
心配をかけてしまったと焦ったタケルは、少しだけ身を乗り出して大丈夫だよ~の意で手を振った。
護衛兵達はビシリと背筋を伸ばして固まり、タケルがバルコニーから居なくなるまで姿勢を崩すことはなかった。
翌日、宿舎ではあれは俺に手を振ったんだ、いいや俺だ と言い争いが起きた
















「ヤガル、これ結んで欲しい」
「畏まりました」
今日は王太子の息子、第1王子の誕生パーティーが開かれる。仮病を使ってサボろうとしたが、今年14歳の第1王子がタケルの為に服を送ってきたのだ。これは断ることはできない
因みに王太子は29歳なので第1王子は15歳の時の子供という事になる。
あの男なら全然不思議では無い

そして送られた服というのがこれまた、父親譲りか少々フェチズムを感じる。
薄いシルクのような布は身体の線を浮き出させ、背中は腰の際どい場所からがばりと開き、細い紐がブーツの網紐のように交差している。下から交差していったそれは、最後項でリボンのように結んで完成だ。
「…そこ解いたら、脱げちゃうね」
「……っ、」
なんちゅー服だ。と笑い話としてふったのだが、ヤガルは黙ったままだ。あれからヤガルとの距離を縮めようと頑張ってはいるが、まだまだ先は長い





















ヤガルの妄想









「ヤガル、もうそんなに舐めないでっ」
「タケル様、こんなにも溢れさせて」
じゅるりと啜れば、タケル様が愛らしい声を上げた。慎ましいアナルはじゅくじゅくに熟れ、馨しい限り
「ふわっあっあんっ、やがるぅ…もうやっぁっ!舌、奥まで…きて…!ひぅんっ!」
あの清いタケル様を仰向けにして両膝を抱えさせる。はしたない姿に興奮が止まらず、アナルに食らいつくようにして愛撫する
こうしてからどれだけ時間が経ったか分からない。これでは誕生パーティーに遅れてしまうでは無いか。
だが、「脱げちゃうね」と恥じらいながら告げれた言葉に全ての理性が焼けきった。
タケル様を背後から壁に押し付け、美しい項から背中を舌で舐める。「ぁ、だめ!ヤガル!ぁっ、おしり、もんじゃ」
なんて柔らかいのかと強く感動した。この方は何処までも美しく完璧だ
先程結んだばかりのリボンを口で咥え、するりと引けばタケル様の言う通り、薄い布がはらりと簡単にずり落ちてマロい尻で止まった
「は、は…タケル…様…」
背中に吸い付いきながら、ゆっくり跪くと、丁度タケル様の白く丸い尻に顔がくる位置に

私は我慢出来なかった
ぐじゅり!じゅ、じゅっ
「だめぇっ!そんなとこ…!」
立ったままのタケル様のアナルを長く味わって、ガクガクと震える足に気付いた私は今更だが不敬にも床にタケル様をひっくり返したのだ。

それからはずっと、長い長い時間タケル様のアナルに吸い付き舌をめり込ませ、溢れる汁を啜った。
「あっずっと、いって…!あっあっ!ふわぁっ舌、回さない…でぇ…!腰ビクビク、止まんないよォ!」
痙攣する腰を押さえ付け、タケル様がイこうが喚こうが泣こうが、私はそのアナルを味わい続けた。














返事の無いヤガルがこんな妄想をしているなんて知る由もないタケルであった




















「おお、なんと」
「美しい肌だ」
「不躾に見過ぎだ、失礼だぞ」

これは神子効果だろうか、お色気お姉さんが着るような服、ただの猿ガキが着たところで
美しいわけもない。美醜が狂ってるわけでは無さそうなこの国で、耳を塞ぎたくなるような言葉が聞こえてくるのはいたたまれなくて消えたくなる。
「タケル様」
「…殿下、お誕生日おめでとうございます。お祝いの席にお呼びいただけるだけでなく、私には勿体のない服も」
この言葉遣いは、教えられた訳では無い。
が、元の世界はネットワークが常に傍にある世界。間違っているかもしれないが、最低限の言葉遣いをと気張っている
「実にお美しいです…僕が送ったものを、身に付けて下さるなんて」
ぐい、と手を取られて距離を詰められ、驚くが顔に出さないようにする。
この第1王子と会うのは数度目だが、1番初めにあった時がよろしくない状況だった
父親、王太子にセクハラされまくって涙目になっていた時に鉢合わせてそのまま紹介され、それ以降タケルを見つめる目がやけに熱い
「殿下も、もう立派な殿方ですね。周囲の女性達の視線が熱いのにお気づきですか?」
神子効果と、父親譲りの真っ直ぐな目にタケルは気後れしている。本当に何度も言うがただの高校生なのだ
偏見は無いが恋愛対象は女でアピールしてくる王太子がお姫様ならどれだけいいだろうかと考える
「名で、呼んでくれないのですか」
第1王子は強請るような声を出す。
タケルとの年の差は2歳程度
よくよく考えれば王太子は自分の息子の歳とほぼ変わらないタケルにセクハラしてくるのだ。とんだ変態だとタケルは鳥肌をたたせた
「ジーン様」
王太子のことを考えていたせいで返事が名前を呼ぶだけになってしまった。あしらったみたいになっていないか、何様だお前!と鉄の球体に閉じ込められた自分を想像し焦ったタケルは、誤魔化すように微笑んだ
途端苦しげに顔を歪めたジーンにタケルはさらに焦る。不快に顔を歪めたように見えたのだ
「ぁ、ジーン様…おれ…私は」
「タケル様は、僕の気持ちに気付いているのですね。」
それはどういう意味で?とタケルの心臓は激しく暴れ始めた
「主役が1箇所に留まるものでは無いぞ」
タケルの後ろから現れた王太子に、今は救われた。タケルは一歩下がって礼をし、父親である王太子にも祝いの言葉と共に頭を下げた。ここで捕まるわけにはいかない
どうせ公の場に出たのなら、やりたい事があるのだ。
ここには多くの貴族がいる
残酷な拷問の時、青ざめていた人間の顔もちらほらと。タケルは元々体育会系の部活に所属していた為、顔を覚えるのは得意だ。というより鍛えられた

「殿下、王太子様。改めて、お祝い申し上げますっ、わっ」
「そう急くな、タケル殿。そのように雅な姿でうろつけばみなの目が潰れてしまうぞ。私の傍に」
最高に失礼な事を言われたタケルは顔を引き攣らせた。アンタの息子が送った服だろうがと胸ぐらを掴んで揺さぶって往復ビンタをしてやりたい所だ。
神子として皆の様子を知りたいと拒絶すれば、思いのほか簡単に開放された。
背中に2人の視線を浴びながら歩いていく内に、潰れるとは、物理的なものではないよな…?と冷や汗をかいた



















一体、何故こんなことになっているのか
中流階級の貴族を父に持つラダは、グラスを握る力が抜けない。
「ラダ様は、趣味などはありますか?」
目の前にいる神々しい瞳を持つ青年は、正に神の使い。雅で艶かしい姿に、目のやり場が無い
周囲の貴族たちは羨ましそうに、恨めしそうにこちらを見ている。神子にお声がけ頂いた喜びと、反感を買うかもしれない恐怖
「趣味、ですか…く、くだらぬものです」
「そんな事はありません、お聞かせ頂けませんか?」
ラダの家は軍事力少々で経済力はさほど無い。貴族の上下関係では弱い立ち位置と言える
そんな家のなんの能力もない息子に何故こんな質問をされるのか、 訳が分からなかった
「その…絵を」
「わ、絵を描かれるんですかっ?」
「、は…はい…」
ぐいっと、笑顔で寄られ、ラダはグラスを腕力で割りそうだった。
「はは、私は絵が下手くそで犬を描いても牛と勘違いされるんですよ」
「あ、あははは…」
笑っていいのかすら分からない、顔の筋肉が死滅しそうだとラダは周囲に父親の姿を探した。大柄な父は遠くながらもすぐにみつかり、目で救いを求めるが、ジェスチャーで「いけ!いけ!」とやっているように見える。
「ラダ様、是非私に絵を教えてください」
「あ、はは…なんと光栄なことでしょう。私で良ければ是非」
「ありがとうございます!では明日の午後はどうでしょうっ」
「え」
社交辞令だと思っていたラダは驚きのあまり本当にグラスを割ってしまった。
「も、申し訳ありません!」
ガラスの割れた音。ただでさえ注目を浴びていた為、ラダは焦る
もし神子に傷でもつけていれば、自分は一体どんな残酷な死に方をするのだろう
周囲にいた護衛兵が一斉にこちらに向かって来ている。父親は青ざめた顔で目を逸らし、ラダは吐きそうになった
恐怖と痛みで死ぬ直前までもがき苦しむ罪人達の目が、今も鮮明に目蓋にやきついている


「あっはは、凄い!ラダ様!」


緊張が走った広間で、不釣り合いな神子の明るい声。
「筋肉凄いですね!手の力だけでグラスを割るなんて…!はは、かっこいいですけど危ないですよ、手は切っていませんか?」
ラダのワインに塗れた手を、汚れるのも構わずくるくるとひっくり返して触ってくる
「あ……申し訳…」
「手を洗いに行きましょうか、こっち」
神子の細い手に引かれ、ラダは抵抗できなかった。



神子が大きな声を出す印象が無いのは、見たことも聞いたことも無いからだ。
きっと神子はわざと大きな声で笑ってみせて、楽しげにした。ラダを救う為に
























最悪だ。
タケルは自分がしてしまったことをどうやって収束させるか頭をフル回転させているが、所詮は社会経験も大したことの無い高校生の脳だ。
王太子の息子、第1王子の誕生日会を挨拶もせず途中で抜け出した事をどうやって言い訳すればいいのか。
いや言い訳も何も汚れたから手を洗ってきました以外何も無いのだ。悪いことはしていない、が、きっとこの国では通用しない。
このラダという青年。
朝に開かれる残酷な殺しの場面で青ざめ、苦しげな表情をしていた人間の1人だった。
年も比較的近く感じたので、初めの1人としてはハードルが低いと感じ声をかけたのだが、タケルは自分の神子と言う立場を見誤っていた。
ラダは明らかに動揺し緊張しており、申し訳なく思いながら多少強引に距離を縮めようとしたせいでラダの身も危なくなってしまった。

どうしよう
「あの、神子様…本当に申し訳ありません…命を持ってつぐな」







「タケル殿。このような場所で何をしておられる」
最悪の人間が来てしまった。
タケルよりずっと体格のいいラダよりも、分厚く逞しい肉体の威圧感は、年の功だろう。「王太子様…っ」
王太子は問答無用で背後に着いていた騎士たちに手を上げて合図を送り、ラダを捕まえさせようとした。
猫をかわいがるように人間を殺す国だ。
タケルの頭はフル回転に動く


「王太子様!聞いてくださいっ」
ぶりっ子。中学生の頃ぶりっ子をする女子に対して他の女子が悪態を付いていたのを思い出す。純粋なボーイだったタケルはその気持ちが分からず、可愛い以外の感情を持っていなかった為何故かショックを受けたのを覚えているが。今ならわかる。
ぶりっ子とは、して許される人間と許されない人間がいるのだ。もちろんタケルは通常なら許されない人間側だ
だが、この王太子の前では話は変わる
「ラダ様は絵が得意だそうです…!私、絵を教わろうと思いまして!」
王太子の太い腕に抱き着き、大袈裟に見上げて笑う
「何?」
「それであの…ラダ様に教わって、練習して上手くなったら、王太子様のお顔を描いてみたいのです……」
「私を…?」
「はい…ラダ様が提案してくれたんです…何を描けばいいのか迷っていたら王太子様はどうかって、…だめですか…?」
腰に太い腕が回り、緊張が走る
上手くいくかどうかは、賭けだった
「…ふ、私を描くのか…タケル殿。何故私を描きたいと?」
途端蕩け出した甘やかすような声に、心の中でガッツポーズをしながら、念には念を。
タケルは控えめに王太子の胸に額を当てて顔を隠した。意図的では無かったが、その様はまさに花のように恥じらっているようにも見える
「あ…」
ふるふると首をふるタケル。恥ずかしくて言えないっ!と言った風に見えるだろうが、実際は何も考えてなかったので考える為の時間稼ぎだ。「ん?」と耳元で甘く促され、タケルは口を開く
「かっこいい殿方は、王太子様しか…知らないから…」


この時の自分を、タケルはこう振り返る

死ぬ間際になっても思い出す黒歴史だと




























「タケル様、とてもお上手ではありませんか」
「……ほんとに言ってる…?」

黒歴史に刻まれたぶりっ子で危機的状況を打破したタケルは、約束通りにラダに絵を教わっている。
「色使いも独特で、センスが光りますね」
「ラダ様…逆に悲しくなります。」
キャンバスに出来上がったものは、本来なら初心者らしくリンゴのはずなのだが
手本だと描いてくれたラダのみずみずしく美味しそうな林檎とは打って変わって、おどろおどろしい、何故こんな腐ったような色をしているのだろう。
「何がダメだったんでしょう?」
「…あえて、言うのであれば」

控えめだが、やっとちゃんと教えてくれる気になったラダにタケルはふんふんと話を聞きながら、どうやってラダの心情を聞き出そうか悩んでいた。
あの残酷な拷問について、ラダと、ラダの家はどう思っているのか。
きっと貴族の中であれは暗黙の了解で楽しいものだと思わなければならない物だろう。
心底楽しんでいるものがいるのも事実だろうが、ラダのように苦しむ貴族達ももっと沢山いるはず。
「あっ、ほんとだ!見てくださいラダ様!」
言われた通りハイライトというものを入れると、一気にみずみずしくなったように見えて興奮気味にラダに伝える。
「やはり神子様は才能があるんです。…神子様、頬に絵の具が」
「え、こっち…?」
「いえ、あの…あぁ…!広がりました」
「あはは、ラダ様 とって」
今は両手が絵の具だらけだ。
距離を縮めるいい機会だと、タケルは同級生に言うようにフランクに言ってみた。
「えっ、いや…私が神子様に触れる事など…」
「おねがい」
「で…では失礼します」
















*ラダの妄想



「んちゅ、んんっ…らださま…ぁっ」
小さな唇に噛み付くようにしてから、どれだけたっただろう。
初めは頬の絵の具を取るだけだったのに
柔らかな頬を撫でれば、美しい黒い目がこちらを物欲しそうに見ているように見えたのだ。そして言う『おねがい』
「ぁ、んんっ…もう飲めな、」
「なら、今度は私に」
椅子に座っていた神子を覆うように口付けていたラダは、自分より小さな神子を軽々と抱き上げて椅子に座った
必然的に神子の頭が上に来るので、唾液がラダに流れ込んでくる
「は、ぁ…神子様…お優しい神子様……」

ラダの命を救った神子。
誰にも受け入れて貰えなかった絵描きの力を凄いと認めてくれた神子。
権力も金もない若いラダに、まるで友人のように接してくれる神子
優しい、優しい神子

その神子が今、ラダとの口付けに酔って甘い声を出している。
もしこんな所が見つかればそれはそれは酷い死に方をするだろう
だが、それでもいいと思えるほど神子の唾液はラダをおかしくした
「ん、んっ~!ふぁっ、腰が、むずむずします…ラダさま…おねがい」
ぢゅぽり、と離れた唇と舌が糸を引く
ラダは神子の切ない言葉を無視して、もう一度神子の唇に噛み付こうと


























「ラダ様は絵の道には進まないのですか?」
「え」



「あ…あぁ、はは…これでも貴族の出です。家から画家など出れば一族は笑いものになることでしょう」
「笑いもの?」
「画家の多くは路上で自分の絵を売るのです。それを恥だと思うのですよ」

何処かぼうっとしたラダに問えば悲しい答えが返ってきた。元の世界でも路上で何かを売っている人はいたが、そもそも許可を取ってなければやってはいけない事の為、見ただけで判断のつかない多くの人は遠巻きにしているかもしれない。
ラダはそれに加えて貴族だ。気軽にやっちゃいましょうよなんて言えない
「そうですか、残念です。でも趣味を持つことは宝だと、おばあ、えっと…私の親族も言ってました」
「神子様のご親族とは…」神では
とラダはツッコミそうになるが飲み込む

「ラダ様はどう思いますか、この国の人々が楽しむあれを」
結局単刀直入になってしまいタケルは頭を抱えそうになった。
ラダは思い当たるものがある。という顔だ
苦い顔をして心無しか顔を青ざめさせながら口を開く
「…とても、恐ろしいものです」
まるで重罪を告白するかのような姿に、タケルの胸は締め付けられた。
「はい、私もそう思います」
タケルは初めて同じ感情を共有し感動していた。何だかんだ、泣きそうになるくらいには毎日不安なのだ。
「ラダ様のように苦しんでいる方は他にもきっといると思います。私の役目はきっと、」
「…神子様…!」
寝る前に練った文を気合いを入れて言おうとしたら遮られてしまった。タケルは唯一きちんと準備したものがパァになりおぉい!と心の中で叫んだ
手をぎゅっと握られ、目線を合わせられる
「私の役目…!今この瞬間に分かりました!どうか神子様、お優しい神子様の力になりたいのです…今はまだなにも持たない私ですが、必ず…!」
この時のタケルの感情は、何かようわからんけど上手くいった。だろう
タケルは手を握り返して微笑む
「ありがとうございます、ラダ様。では、ラダ様の目が届く範囲の方々で苦しむ人間を、救ってやってください。…ですが、何も持たないなんて事はないんですよ、ラダ様。私よりずっとずっと素晴らしいお力をお持ちです。どうか好きな事を最優先に」

そうなのだ。ラダが協力的なのは嬉しいが、話が上手く行きすぎている
動きすぎたラダが捕まって拷問の後処刑など最悪だ。暴走しないように慌ててフォローしておく
固い握手を交わして、その日のレッスンは終わりを告げた

































「絵のレッスンはどうだったかな、神子殿」
「と、とっても有意義でした」
湯浴みで絵の具を落とし、衣服もすっきりとした状態で裏庭のベンチで涼んでいると現れたのはこの国の美しき宰相様だ
王太子の父である王と学生時代同級生だったらしく、歳は40代と宰相にしては若い
つまり王も10代で子供を作ったということだ。この国に転移してから王には1度しか会っていないが

「神子殿は大変好奇心旺盛であられるな。わざわざ力無き貴族に絵を教わるとは。」
「あ、はははは…」
タケルはこの宰相が心底苦手だ。
常に会話を探られているような、タケルが神子かどうかすらも信じていないような
タケル自身も自分を神子だとは思えないが、もし事実そうならタケルの運命は決まってしまう。
「そのように薄着で外に出られては風邪を召されますぞ」
「え、いやあの、部屋はすぐそこですので」
これみよがしに肩に丈の長い上着をかけられて焦る。ベンチに座ったタケルを覆うようにして近付かれ、大人の色気をともなう冷たい美貌に視線が逃げ惑った
「あの」

「王太子様を上手く扱っているな。次はジーン殿下、そして貴族のなり損ない。その身体でどうたらしこんだかは知らぬが、私と王はそうはいかん。お前の化けの皮をいずれ剥いでやろう、お前を神の使いと崇める民の前で」

この時、タケルは涙目である
やはりこの宰相はタケルを疑っていたが、まさか王もとは。このままでは本当に拷問されて死ぬだろう
例え王であろうと神の使いを殺すのは神殺しと大バッシングをうけるはず
タケルが神子という証明は無いが、神子でない証拠もないのだ
民の支持が厚い内は大丈夫だろうと脳をこねくり回して自分を落ち着かせた
このように焦った状態で頭を回すことも、以前なら出来なかった。やはり神の使いが本当だから加護があるのではと思ってしまうのも、仕方が無いのだ
「…上着をありがとうございます。ぁっ…!い、た…」
服を返そうとした手首をスラリとしているが男らしく筋張った手で掴まれ、握り締められる。
骨がミシミシと鳴る音がして、タケルは痛みの余りポロリと涙を流した
「その瞳でこれから何人の男が堕落していくのか、見ものだな。…私も愚かであれば、お前の身体を貪っていただろうに」

















ボス、ボス、ボス
「この世界の基準どうなってんの?」
タケルは赤くなった手首をそのままに、自室で枕を殴っていた。額には青筋すら浮かびそうだ
「俺もしかしてめっちゃ美人だったりする?アイツらには女に見えてるとか?本当なんなん?」
何度も言うが、タケルは普通の猿餓鬼男子高校生だ。別に美しくも色っぽくも無い

この美しさすら淀んできたこの世界で、その普通こそが何よりも清らかに澄んでいるのだ

もはやこの世界では、美の基準は平穏を持つ者という意味になりうるのかもしれないが、タケルがその事に気付く事はないだろう
「あの、くそド変態宰相…!ぺド野郎!」
漫画で知りうる浅い知識全てで悪態をつき、自分の将来の不安と共に枕を殴る
「もお…やだ…」
ぼすん、と顔を埋めれば執事のヤガルがよく眠れるようにと置いてくれたハーブが香る
この匂いも、初めこそ好きではなかったが今では慣れた。次第に人が死ぬのも慣れていくのだろうか、下手に動いたら自分も殺されるかもしれない。


だが、ラダを思い出す。
苦しんでいる人間がいる
正義のヒーローになるつもりも、なれるつもりもないが、嫌だと感じる気持ちを共有出来るというのは、大きな心の拠り所になる。
何故か、今やろうとしていることをやめる気にはなれなかった























王太子の息子、ジーンに祝いの席を途中で抜けた事を手紙で謝罪すると、変わりに次の朝食には父ではなく自分の傍に来て欲しいと書かれた手紙が返ってきた
この時知ったが、神子が禊の後誰のそばに座るかは神子自身が決める事なのだそうだ
問答無用で王太子に手を引かれていたタケルが知る由もない。
毎朝王太子のセクハラ被害に遭わなくて済むのなら、それは素晴らしい事だが今はタイミングがあまりにも悪い。
ラダの事や、宰相の事もあり今王太子を無碍にする訳にはいかないのだ。
「もっと早く言ってくれれば…」
次の朝食とは、明日の事だ。
そして今は夜。同じ城と言えど、城内を馬で移動するほど広いのだ。これから王太子に事情を説明しに行くのは無理がある

ジーンはわざとギリギリに手紙を届けさせたが、タケルが気付くことはなさそうだ





悩んでもあっという間に朝は来る。
いつも通り薄衣に着替え、冷たい水に浸かり形だけの祈りを捧げる。祈れと言われたからしているが、どこに向かって何を祈ればいいのかは分からない。
「まぁ、大丈夫だろ」
タケルはそれを口に出してから気付いたように手で塞いだ。

それは盛大なフラグというものであるからだ











ひたりひたりと、塵一つない冷たい床を歩いていくと、目の前の天井まである巨大な両開きの扉がゆっくりと開かれた。
いつも通り、既に集まっている貴族達は床に座ったまま、タケルに頭を下げる
祈りを捧げ、神と対話した後の神子は何よりも神聖なのだ。
ここまではいつもと変わらない

さて、とタケルはジーンの場所を把握する為にゆっくりと視線を滑らせた。
(最悪…)と心の中で頭を抱えた
ジーンの場所へ行くには、王太子を横切らなければならない
いや、逆にここでささっと説明すれば嫌な感じにならなくていいのではと、タケルは歩きながら言葉を考えた。

「タケル殿」
そして、当たり前のように王太子が手を伸ばしてきたので、タケルは部活を遅刻した時の顔を思い出しながら極力申し訳なさそうな顔をした
「王太子様…実は」
「タケル様」
この国は自分達が神子というタケルの言葉を遮る人間が多すぎて本当に敬ってるのか?と疑問に思うタケルだ。
王太子の息子、ジーンがタケルの手を取って引き寄せる。
「…ジーンよ、何のつもりだ」
「父上、本日からタケル様は私の傍で朝食を取られます故」
本日からとはなんだ、聞いていない話にジーンの顔をみたタケルだが何食わぬ顔をしている。この親子は似た者同士、自己中の具現化したみたいな人間だ
タケルは浴びる注目にどんどんイライラしていた。何故ならば

(くっっそ寒い)

冷水を浴びて濡れたままの身体でいるのだ。
いつもは座れば分厚い毛布や暖かい飲み物もある。
「王太子様、申し訳ありません。本日はジーン様のお傍にと約束したのです。…その、後で少しお時間頂けませんか?絵を描くのに王太子様のお顔を沢山拝見したいのです」
「タケル殿。それはもちろん構わぬが、ジーンはまだ若い。お前を満足させられるとは思えんな」
「…ふふ、王太子様。朝食をとるだけではありませんか」

タケルは気付かなかった。王太子へのフォローに必死になり過ぎてジーンを疎かにしすぎていた事を
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