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梅の思念4
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私の身体が治って数日後。お父様とお姉様がやってきた。お父様はニコニコしながら告げてきた。
「梅子、病が治ったそうじゃないか。いやあ苦労して探し出したかいがあったよ」
そう言って抱きしめてくる。病の時は見捨てたくせに、何を今更と思うが顔と態度には出さない。なぜならお姉様がお父様を大切に思っているから。お姉様の大切な人を傷つけてはいけない。
それに今日は私とお姉様の未来のためにお父様と交渉しなければならない事がある。
「ありがとうございます、お父様」
「梅子も元気になった事だし、もうここを出て本宅に帰ってくるといい。今日一緒に帰ろう」
私は真剣な目でお父様を見る。
「お父様、お願いがありますか」
「なんだい?」
「この別宅を私にください、ここで暮らしたいのです」
「何を言っているんだ? もうこんな所にいる必要は無いんだよ梅子」
「ここの温室をお花でいっぱいにして、大勢の方に見て欲しいと思って」
「ダメだ、ダメだ! 梅子は家に帰って来るんだ」
やはり説得は一筋縄ではいかないかしらと思ったその時、私とお父様をあの香りが包む、なぜ今と思ったがお父様の目がとろんと焦点を失う。
「お父様、どうかお願いです。この別宅を私に」
もう一度言ってみると
「おお……それは素晴らしい……ぜひともそうしなさい……」
今度はあっさりと認めてくれた。
「あ、ありがとうございます、お父様」
あまりの変わりっぷりに私の方が動揺してしまう。
これは香りの力なのかしら? 人の思考力を奪うだけじゃなく、私の言う事をきかせる力もあるの? なんて便利なんでしょう。
ああ、それにしても、オイシソウ……。そう思った時。
「お父様! それは本気で言っているのですか!? 先ほどまでと言っている事が違うではありませんか!」
お姉様の凛とした声が響いた。その声に我に返る、お父様は食べてはいけないわ。お姉様が悲しんでしまうだろうから。
「ああ、本気だ……いいじゃないか、梅子がやる気なのだから。桜子、お前が梅子の手助けをしてあげなさい」
その言葉にお姉様が絶望したような顔をする。なぜ、そんな顔を?
「お姉様、嫌ですか?」
私の不安そうな声に
「桜子、梅子の面倒を見るんだ」
お父様が強くそう言い放つ。お姉様は私を見ながら微笑むと
「わかりました」
そう言った。
よかった、お姉様はやっぱり私の味方なんだわ。
──
お花をたくさん飾れる場所は手に入れた。後は……。
「う……ああ……」
飢え。
その言葉がぴったりな程に空腹だった。あの男が言っていた日の光と水で生きられる。そんなの嘘じゃない……普通の食事では満たされない、屋敷の使用人たちは皆暇を出されいなくなってしまったし。
ああ……タベタイ……タベタイ……あのメイドを食った時の満足感を味わいたい。
どうすれば……。外へ行けば餌がいるかもしれない、私はフラフラと夜の街へ歩き出した。
「お、お嬢ちゃん、こんな所でどうしたんだい」
フラフラと歩いていた私に下品な笑みを浮かべた男が声をかけてくる。
「こっちで少し休むといい」
そう言う男に言われるがままに道の奥に連れ込まれ、襲われた。
服を破られ体を弄り強引に性行為に及ぶ、下劣な男に強姦されているにもかかわらず、恐怖はなかった。逆に喜びに満ちていた。
ああ、こいつを食えばこの飢え満たせる。
けれどここでは駄目、食べ残しを温室まで運ぶのに距離がありすぎる。
あの香りが周りを包む。私は男に優しく声をかける。
「ねえ……私の家に来て、もう一度シない?」
男は誘われるがままに家に連れ込まれ。私の餌になる。
ああ、美味しい。そうだわ、こうやって餌を得ればいいんだ。そうすれば私は飢えずに済む。
また指先にあの実がなっている。
食った後の残骸はあの温室でお花にしてしまえばいい。お花が増える飢えも満たせる素晴らしいわ。
そうやって何回も餌を食って、指先になる実を食わせてを繰り返して分かった事。
養分を少しだけ残すとお花が咲く。効率よくここをお花畑にする為に少しだけ我慢しなきゃね。
うふふ、早くここをお花でいっぱいにして見せたらお姉様は喜んでくれるかしら。
「梅子、病が治ったそうじゃないか。いやあ苦労して探し出したかいがあったよ」
そう言って抱きしめてくる。病の時は見捨てたくせに、何を今更と思うが顔と態度には出さない。なぜならお姉様がお父様を大切に思っているから。お姉様の大切な人を傷つけてはいけない。
それに今日は私とお姉様の未来のためにお父様と交渉しなければならない事がある。
「ありがとうございます、お父様」
「梅子も元気になった事だし、もうここを出て本宅に帰ってくるといい。今日一緒に帰ろう」
私は真剣な目でお父様を見る。
「お父様、お願いがありますか」
「なんだい?」
「この別宅を私にください、ここで暮らしたいのです」
「何を言っているんだ? もうこんな所にいる必要は無いんだよ梅子」
「ここの温室をお花でいっぱいにして、大勢の方に見て欲しいと思って」
「ダメだ、ダメだ! 梅子は家に帰って来るんだ」
やはり説得は一筋縄ではいかないかしらと思ったその時、私とお父様をあの香りが包む、なぜ今と思ったがお父様の目がとろんと焦点を失う。
「お父様、どうかお願いです。この別宅を私に」
もう一度言ってみると
「おお……それは素晴らしい……ぜひともそうしなさい……」
今度はあっさりと認めてくれた。
「あ、ありがとうございます、お父様」
あまりの変わりっぷりに私の方が動揺してしまう。
これは香りの力なのかしら? 人の思考力を奪うだけじゃなく、私の言う事をきかせる力もあるの? なんて便利なんでしょう。
ああ、それにしても、オイシソウ……。そう思った時。
「お父様! それは本気で言っているのですか!? 先ほどまでと言っている事が違うではありませんか!」
お姉様の凛とした声が響いた。その声に我に返る、お父様は食べてはいけないわ。お姉様が悲しんでしまうだろうから。
「ああ、本気だ……いいじゃないか、梅子がやる気なのだから。桜子、お前が梅子の手助けをしてあげなさい」
その言葉にお姉様が絶望したような顔をする。なぜ、そんな顔を?
「お姉様、嫌ですか?」
私の不安そうな声に
「桜子、梅子の面倒を見るんだ」
お父様が強くそう言い放つ。お姉様は私を見ながら微笑むと
「わかりました」
そう言った。
よかった、お姉様はやっぱり私の味方なんだわ。
──
お花をたくさん飾れる場所は手に入れた。後は……。
「う……ああ……」
飢え。
その言葉がぴったりな程に空腹だった。あの男が言っていた日の光と水で生きられる。そんなの嘘じゃない……普通の食事では満たされない、屋敷の使用人たちは皆暇を出されいなくなってしまったし。
ああ……タベタイ……タベタイ……あのメイドを食った時の満足感を味わいたい。
どうすれば……。外へ行けば餌がいるかもしれない、私はフラフラと夜の街へ歩き出した。
「お、お嬢ちゃん、こんな所でどうしたんだい」
フラフラと歩いていた私に下品な笑みを浮かべた男が声をかけてくる。
「こっちで少し休むといい」
そう言う男に言われるがままに道の奥に連れ込まれ、襲われた。
服を破られ体を弄り強引に性行為に及ぶ、下劣な男に強姦されているにもかかわらず、恐怖はなかった。逆に喜びに満ちていた。
ああ、こいつを食えばこの飢え満たせる。
けれどここでは駄目、食べ残しを温室まで運ぶのに距離がありすぎる。
あの香りが周りを包む。私は男に優しく声をかける。
「ねえ……私の家に来て、もう一度シない?」
男は誘われるがままに家に連れ込まれ。私の餌になる。
ああ、美味しい。そうだわ、こうやって餌を得ればいいんだ。そうすれば私は飢えずに済む。
また指先にあの実がなっている。
食った後の残骸はあの温室でお花にしてしまえばいい。お花が増える飢えも満たせる素晴らしいわ。
そうやって何回も餌を食って、指先になる実を食わせてを繰り返して分かった事。
養分を少しだけ残すとお花が咲く。効率よくここをお花畑にする為に少しだけ我慢しなきゃね。
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