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四冊目 時戻りの時計・改
恋人
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俺とみったんが古びたアパートの前で会話しているのを隠れてみる。ここに飛び出して行って二人に事情を説明して、何処かにかくまう事も考えたが、やはりタイムパラドックスの事を考えると俺と俺が出会うのはあまり良くないと判断し、彼女が一人になった時に声を変える事にした。
しばらくするとみったんはアパートの一室に帰って行き、残された俺はにやけた顔でアパートを見つめている。我ながら不審者にしか見えない。っと、俺が帰っていくな。その後ろ姿が見えなくなった事を確認すると、俺はため息をついた。
さて、これからどうしたものか。彼女に警告しに行くとしても「あなたは今夜、殺されます」なんて事を素直に信じるとは思えない。
それに気になるのは……彼女が嘘をついてコンビニに助けを求めてきた事だ。なぜ彼女はそんな事を……。
実は先ほどから一つの考えが頭の中にある、それは……俺とファン以上の関係になりたかったからと言うもの。
いや! わかってるよ、オタクの都合のいい妄想だって事は! けどさ、わざわざ「俺が」バイトしてるコンビニに来て演技をしたって事は……それに彼女は「俺に送ってほしい」と言っていた、認知もされていた。つまりはまあ……。
いや、けどな、さすがに俺に都合がよすぎる話だよな。マンガじゃあるまいしそんなに都合よくは行かない。とは思っても期待は収まらない。
その時、アパートの二階に人影が見える。慌てて隠れ様子をうかがうと、階段を降りて現れたのはみったんだった、周りをきょろきょろ伺うとさっきとは反対方向へと歩いていく。
家に帰ってきたのにまたどこかに出かけるのか? それに、格好が先ほどのままだな……。っと考えるのは後だ、今は彼女を守る為にも後をつけなければ。
──
後をつけると周りを木に囲まれ人気が無い公園のベンチに彼女は腰掛けた。誰かと待ち合わせだろうか? そう思って気が付く、ここは刑事が言っていたみったんの死体が発見された所……つまり殺害現場だ!
つまり、これからここに来る誰かが犯人の可能性が高い。ならば、もっと近くに行っていざという時にすぐに助けに行けるようにしなければ。
あのベンチの後ろは木が茂っていてに身を隠すのにはちょうど良さそうだ。俺は彼女に気が付かれない様に素早く移動しベンチの真後ろ辺りに隠れた。人間せっぱ詰まるといつもよりも素早く動けたりする、火事場のバカ力とはよく言ったものだ。
みったんをみるとスマホで誰かと会話をしていた。
「ねえ、まだ来れないのー? 待ちくたびれた!」
会話の内容まではっきり聞こえてくる。電話の相手が待ち合わせ相手らしい。それにしてもみったんはこんな喋り方もするんだな、甘ったるいまるで恋人に話しているような声。まさか電話の相手は恋人? 俺の頭が真っ白になった、嫌だ、彼女に恋人なんて……いない、いるはずがない。
念仏の様にそう言い聞かせていると、遠くから歩いてくる人影が……。
「ツッキー! 待ってたよ!」
とみったんが来た相手に抱きついた。その相手は
「おい、あんま大きな声だすな、誰か来たらどうすんだよ」
良く見知った顔と声。
(嘘だろ……?)
俺は大声を出しそうになるのを必死にこらえた。そこに現れたのは、バイト仲間のヒグマくんだったのだから。
しばらくするとみったんはアパートの一室に帰って行き、残された俺はにやけた顔でアパートを見つめている。我ながら不審者にしか見えない。っと、俺が帰っていくな。その後ろ姿が見えなくなった事を確認すると、俺はため息をついた。
さて、これからどうしたものか。彼女に警告しに行くとしても「あなたは今夜、殺されます」なんて事を素直に信じるとは思えない。
それに気になるのは……彼女が嘘をついてコンビニに助けを求めてきた事だ。なぜ彼女はそんな事を……。
実は先ほどから一つの考えが頭の中にある、それは……俺とファン以上の関係になりたかったからと言うもの。
いや! わかってるよ、オタクの都合のいい妄想だって事は! けどさ、わざわざ「俺が」バイトしてるコンビニに来て演技をしたって事は……それに彼女は「俺に送ってほしい」と言っていた、認知もされていた。つまりはまあ……。
いや、けどな、さすがに俺に都合がよすぎる話だよな。マンガじゃあるまいしそんなに都合よくは行かない。とは思っても期待は収まらない。
その時、アパートの二階に人影が見える。慌てて隠れ様子をうかがうと、階段を降りて現れたのはみったんだった、周りをきょろきょろ伺うとさっきとは反対方向へと歩いていく。
家に帰ってきたのにまたどこかに出かけるのか? それに、格好が先ほどのままだな……。っと考えるのは後だ、今は彼女を守る為にも後をつけなければ。
──
後をつけると周りを木に囲まれ人気が無い公園のベンチに彼女は腰掛けた。誰かと待ち合わせだろうか? そう思って気が付く、ここは刑事が言っていたみったんの死体が発見された所……つまり殺害現場だ!
つまり、これからここに来る誰かが犯人の可能性が高い。ならば、もっと近くに行っていざという時にすぐに助けに行けるようにしなければ。
あのベンチの後ろは木が茂っていてに身を隠すのにはちょうど良さそうだ。俺は彼女に気が付かれない様に素早く移動しベンチの真後ろ辺りに隠れた。人間せっぱ詰まるといつもよりも素早く動けたりする、火事場のバカ力とはよく言ったものだ。
みったんをみるとスマホで誰かと会話をしていた。
「ねえ、まだ来れないのー? 待ちくたびれた!」
会話の内容まではっきり聞こえてくる。電話の相手が待ち合わせ相手らしい。それにしてもみったんはこんな喋り方もするんだな、甘ったるいまるで恋人に話しているような声。まさか電話の相手は恋人? 俺の頭が真っ白になった、嫌だ、彼女に恋人なんて……いない、いるはずがない。
念仏の様にそう言い聞かせていると、遠くから歩いてくる人影が……。
「ツッキー! 待ってたよ!」
とみったんが来た相手に抱きついた。その相手は
「おい、あんま大きな声だすな、誰か来たらどうすんだよ」
良く見知った顔と声。
(嘘だろ……?)
俺は大声を出しそうになるのを必死にこらえた。そこに現れたのは、バイト仲間のヒグマくんだったのだから。
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