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四冊目 時戻りの時計・改
距離
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周りを警戒しつつ、みったんの後ろを歩く。前を見ると推しの背中が見える。ああ、後ろ姿も可愛い。いや、きっとどこから見ても可愛いに違いない。そんな事を考えているとみったんが立ち止まりこちらを見ていた。
「ど、どうかしましたか?」
「あ、いえ……その、どうして後ろなのかなって……」
「あなたはアイドルです、横に並んで歩くわけにはいきません。どこで誰が見ているかわかりませんからね。それに、後ろにいた方が後をつけてくる奴を警戒できますし」
そうきっぱり答えたが、本当は違う。緊張しすぎて隣なんか歩けないからだ。絶対に心臓が爆発して死ぬ。
「け、けど……」
「何か問題が……?」
「傍から見るとあなたがストーカーみたいに見えないかなって」
そこまで考えていなかった。確かに知らない人が見たら女の子の後をつけている様に見えるかもしれない。
「だから、隣に来ませんか?」
みったんが優しく微笑む。え、無理。その笑顔は反則。あなたは俺を何度殺せば気が済むんですか。
けれど、推しの世界一大切な人の誘いだ。断ったらダメだろう。それに本当は隣を歩きたいし。お話もしたい。
「そ、それじゃあ、失礼します」
そう言って彼女の隣に並ぶ。並んでみるとみったんは思っていた以上に小柄で、良い匂いがした。
俺、人生のすべての運を今使い切ったきがする……。けどそれでもいい、時よ止まれ! この時間よ永遠なれ!
──
結局、大した会話もないまま歩いているとみったんが足を止めた。
「ここが私の家だから」
そう言った建物を見て絶句する。それは見るからに築年数が俺の年齢よりも長そうな古びたアパートだった。
そんな俺の様子を見てみったんが苦笑いした。
「驚いたでしょう。けど、これが私の現実なの。……幻滅した?」
「そ、そんな事ない! ますます頑張ってライブ行かなきゃって気合が入ったよ」
俺の言葉に彼女は柔らかく笑った。それはいつもライブで見る笑顔とは違う、みったんではない、飯島光夜としての笑顔だと、そう思った。
「今日、あそこで、あのコンビニで会えたのが、たかしくんでよかった」
ああ、俺、今こそ勇気を振り絞るんだ!
「あ、あの、俺、ほぼ毎日この時間帯あのコンビニでバイトしてるから、また不安だったら声かけて、いつでも送るから」
2割の正義感と8割のみったんと親しくなりたいという下心からでた俺の言葉にみったんはどんな反応をするんだろう。断られたら立ち直れない。
「ありがとう、そう言ってくれて嬉しい。私もお願いしたかったから」
全開の笑顔に浄化されそうになる。下心の割合高くてすんっませんでした! けど頼られて嬉しい!
「今日はありがとう。またライブに来てね」
その言葉を残して彼女はアパートの一室に消えていった。俺は彼女が部屋に入った後もしばらくアパートを見つめていた。ああ、あそこには彼女の生活がある、寝て、風呂に入って……そう考えただけで……。ごくりと生唾を飲み込んだ瞬間に我に返る。
はっ! 何を考えているんだ! これじゃあ俺がストーカーみたいじゃないか!
頭をぶんぶん降ると、俺は来た道を引き返した。
コンビニに戻るとヒグマくんに質問責めにされたけれど、何も起こらなった事を告げると、
「本当に普通に送るだけとか。あ! だから、その年でドーテーなんすね」
と呆れと哀れみの視線を送られた。大きなお世話だ!
「ど、どうかしましたか?」
「あ、いえ……その、どうして後ろなのかなって……」
「あなたはアイドルです、横に並んで歩くわけにはいきません。どこで誰が見ているかわかりませんからね。それに、後ろにいた方が後をつけてくる奴を警戒できますし」
そうきっぱり答えたが、本当は違う。緊張しすぎて隣なんか歩けないからだ。絶対に心臓が爆発して死ぬ。
「け、けど……」
「何か問題が……?」
「傍から見るとあなたがストーカーみたいに見えないかなって」
そこまで考えていなかった。確かに知らない人が見たら女の子の後をつけている様に見えるかもしれない。
「だから、隣に来ませんか?」
みったんが優しく微笑む。え、無理。その笑顔は反則。あなたは俺を何度殺せば気が済むんですか。
けれど、推しの世界一大切な人の誘いだ。断ったらダメだろう。それに本当は隣を歩きたいし。お話もしたい。
「そ、それじゃあ、失礼します」
そう言って彼女の隣に並ぶ。並んでみるとみったんは思っていた以上に小柄で、良い匂いがした。
俺、人生のすべての運を今使い切ったきがする……。けどそれでもいい、時よ止まれ! この時間よ永遠なれ!
──
結局、大した会話もないまま歩いているとみったんが足を止めた。
「ここが私の家だから」
そう言った建物を見て絶句する。それは見るからに築年数が俺の年齢よりも長そうな古びたアパートだった。
そんな俺の様子を見てみったんが苦笑いした。
「驚いたでしょう。けど、これが私の現実なの。……幻滅した?」
「そ、そんな事ない! ますます頑張ってライブ行かなきゃって気合が入ったよ」
俺の言葉に彼女は柔らかく笑った。それはいつもライブで見る笑顔とは違う、みったんではない、飯島光夜としての笑顔だと、そう思った。
「今日、あそこで、あのコンビニで会えたのが、たかしくんでよかった」
ああ、俺、今こそ勇気を振り絞るんだ!
「あ、あの、俺、ほぼ毎日この時間帯あのコンビニでバイトしてるから、また不安だったら声かけて、いつでも送るから」
2割の正義感と8割のみったんと親しくなりたいという下心からでた俺の言葉にみったんはどんな反応をするんだろう。断られたら立ち直れない。
「ありがとう、そう言ってくれて嬉しい。私もお願いしたかったから」
全開の笑顔に浄化されそうになる。下心の割合高くてすんっませんでした! けど頼られて嬉しい!
「今日はありがとう。またライブに来てね」
その言葉を残して彼女はアパートの一室に消えていった。俺は彼女が部屋に入った後もしばらくアパートを見つめていた。ああ、あそこには彼女の生活がある、寝て、風呂に入って……そう考えただけで……。ごくりと生唾を飲み込んだ瞬間に我に返る。
はっ! 何を考えているんだ! これじゃあ俺がストーカーみたいじゃないか!
頭をぶんぶん降ると、俺は来た道を引き返した。
コンビニに戻るとヒグマくんに質問責めにされたけれど、何も起こらなった事を告げると、
「本当に普通に送るだけとか。あ! だから、その年でドーテーなんすね」
と呆れと哀れみの視線を送られた。大きなお世話だ!
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