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四冊目 時戻りの時計・改
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「で、なんだっけ?」
「あ、そうです、誰かに追いかけられて……」
みったんの顔が曇る、そわそわと店の外を気にしている。
彼女をこんなに怖がらすなんてとんでもない輩がいたものだ。許せん!
「もしかして、オタ先輩の知り合いだったり?」
「は?」
「だから、同じ様に彼女のファンがストーカーしてるのかも? って事っすよ」
ヒグマくんに言われて、少し考える。俺もただの一ファンだし、全てを把握しているわけではないが、確かにその手のファンはいるだろう。そう言えば最近、みったんにプライベートで接触して出禁になった奴がいると言う噂を聞いたな、もしかしてそいつが……。
そこまで考えて俺は自動ドアの方に向かった。
「先輩?」
ヒグマくんの声を無視してそのまま外に出ると辺りを見回す。誰もいない……。いや、店の死角に誰かいる。その人物は俺に気が付くと少し慌てた様子で逃げて行った。追いかけようかとも思ったがやめておいた。
店内に戻るとみったんが心配そうな視線を俺に向けてくる。無料で推しの視線を独占している。不謹慎かもしれないが俺は、今、幸せだ。
「先輩、どうでした?」
「うん、誰かいた。逃げたけど」
「え? マジで?」
ヒグマくん驚いたように言う。
「え? どういう意味?」
「あ、いや。俺はこの人が単に自意識過剰なんじゃないかと思ってたもんで」
「ひ、酷いです。私……本当に怖くて……」
「ヒグマくん!」
「ああ、すんませんって」
俺がヒグマくんを睨むと彼は困った様な顔をした。
「けど、どうしようか。 警察に電話……」
「いや、この程度の事じゃ警察は動いてくれないっすよ。人影を見たって程度じゃあ証拠にもならないし」
「そんな……」
そうだ、警察は何か起こらないと動いてくれない。けどこのままみったんを一人帰らせる訳にはいかない。何か起こってしまってからでは遅いんだ! どうしたものか……。
「先輩がこの子送ってあげたらどっすか?」
「え!?」
いきなり何を言い出すんだヒグマくん!
そ、そりゃあ、彼女の隣を歩けたらどんなにいいかとは思うけど。けど、俺は弱い! 暴漢が襲ってきた時に瞬殺される自信がある。
「いや……俺じゃボディーガードにならないよ……非常に不本意だけどヒグマくんが送ってあげたほうが……」
「やだ!」
俺の提案にノーを突き付けてきたのは、みったんだった。
「その人、怖いし……たかしくんの方が知ってる人だから……送ってくれるなら、たかしくんの方が……」
少し、遠慮がちに言うその姿を拝みたくなる。可愛い! ああ、神様! みったんのご両親様とご先祖様! こんなに可愛い子をこの世に生み出してくれてありがとう!
「せんぱーい、愛しの彼女がこう言ってるんすから」
ヒグマくんがにやにやと笑いながら俺を肘で小突く。そうだよな、ここまで言われたら……。行くしかない。この身が砕けようともみったんは俺が守る!
「ヒグマくん、店番よろしく」
「おけです、任せてくっださい」
こうして俺は自分の命よりも大切な推しを家まで送る事になった。
「あ、そうです、誰かに追いかけられて……」
みったんの顔が曇る、そわそわと店の外を気にしている。
彼女をこんなに怖がらすなんてとんでもない輩がいたものだ。許せん!
「もしかして、オタ先輩の知り合いだったり?」
「は?」
「だから、同じ様に彼女のファンがストーカーしてるのかも? って事っすよ」
ヒグマくんに言われて、少し考える。俺もただの一ファンだし、全てを把握しているわけではないが、確かにその手のファンはいるだろう。そう言えば最近、みったんにプライベートで接触して出禁になった奴がいると言う噂を聞いたな、もしかしてそいつが……。
そこまで考えて俺は自動ドアの方に向かった。
「先輩?」
ヒグマくんの声を無視してそのまま外に出ると辺りを見回す。誰もいない……。いや、店の死角に誰かいる。その人物は俺に気が付くと少し慌てた様子で逃げて行った。追いかけようかとも思ったがやめておいた。
店内に戻るとみったんが心配そうな視線を俺に向けてくる。無料で推しの視線を独占している。不謹慎かもしれないが俺は、今、幸せだ。
「先輩、どうでした?」
「うん、誰かいた。逃げたけど」
「え? マジで?」
ヒグマくん驚いたように言う。
「え? どういう意味?」
「あ、いや。俺はこの人が単に自意識過剰なんじゃないかと思ってたもんで」
「ひ、酷いです。私……本当に怖くて……」
「ヒグマくん!」
「ああ、すんませんって」
俺がヒグマくんを睨むと彼は困った様な顔をした。
「けど、どうしようか。 警察に電話……」
「いや、この程度の事じゃ警察は動いてくれないっすよ。人影を見たって程度じゃあ証拠にもならないし」
「そんな……」
そうだ、警察は何か起こらないと動いてくれない。けどこのままみったんを一人帰らせる訳にはいかない。何か起こってしまってからでは遅いんだ! どうしたものか……。
「先輩がこの子送ってあげたらどっすか?」
「え!?」
いきなり何を言い出すんだヒグマくん!
そ、そりゃあ、彼女の隣を歩けたらどんなにいいかとは思うけど。けど、俺は弱い! 暴漢が襲ってきた時に瞬殺される自信がある。
「いや……俺じゃボディーガードにならないよ……非常に不本意だけどヒグマくんが送ってあげたほうが……」
「やだ!」
俺の提案にノーを突き付けてきたのは、みったんだった。
「その人、怖いし……たかしくんの方が知ってる人だから……送ってくれるなら、たかしくんの方が……」
少し、遠慮がちに言うその姿を拝みたくなる。可愛い! ああ、神様! みったんのご両親様とご先祖様! こんなに可愛い子をこの世に生み出してくれてありがとう!
「せんぱーい、愛しの彼女がこう言ってるんすから」
ヒグマくんがにやにやと笑いながら俺を肘で小突く。そうだよな、ここまで言われたら……。行くしかない。この身が砕けようともみったんは俺が守る!
「ヒグマくん、店番よろしく」
「おけです、任せてくっださい」
こうして俺は自分の命よりも大切な推しを家まで送る事になった。
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