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三冊目 縁切りの鋏
全部切っちゃえ
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公園から少し歩くとグラウンドがある。いたお兄ちゃんだ。あの友達の他にも数人いる。サッカーをやってるみたい。
あの友達とだけの縁を切っても、きっと別の人に盗られちゃうよね。
なら……。
私はその場にいた全員とお兄ちゃんの縁をすべて鋏で切った。そして次の瞬間、お兄ちゃんは他の人たちと喧嘩を始めた。喧嘩というか一方的にみんなから何か言われているみたいだ。
泣きながらグラウンドから出てきたお兄ちゃんに声をかける。
「お兄ちゃん……いじめられたの?」
「う……違うよ」
強がるお兄ちゃんの手を握る。
「お兄ちゃん、帰ろ」
「……うん」
そう言って、手を繋いで歩き出す。兄はまだ涙目だったけれど、私の心は喜びにあふれていた。
これでお兄ちゃんはずっと私といてくれる、お兄ちゃんは私だけのもの!
ああ、嬉しいなあ。本当に嬉しい。
けれど家に帰りついたお兄ちゃんは私の手を振り払うと出迎えたお母さんに飛びついた。
「お、おかあさあああああん……うわああああああん」
「あらあら、どうしたの?」
そう言ってお兄ちゃんの頭を撫でるお母さんを見て、私は思う。
お母さん、邪魔だな。そうだ、さっきの鋏で縁を切っちゃおう。ポケットから鋏を取り出そうとした時。
「ねえ、何があったの? あなたも一緒に遊んでたんでしょう?」
お母さんは困った顔で私を見てきた。
「し、しらない」
私が目を逸らすと、お母さんはため息をついた。
「そう……ほら、とにかく家に上がりなさい。おやつにケーキがあるから」
私は促されるままに家に入った。お兄ちゃんの手を取ろうとしたのに、お母さんが先に連れて行ってしまう。
お母さん、やっぱり邪魔だなあ……。
けど今はいいや。縁を切るチャンスはいくらでもあるもん。
その後、私はとにかくお兄ちゃんに近づく人たちの縁を切ってきた、友達も、先生も、好意を寄せてくる女も全部全部。
──
そして鋏を貰ってから十年。
お兄ちゃんは最近ずっと部屋に引きこもって出てこない。
うふふ、これでいいの。お兄ちゃんは私のものだもの。私以外の人と会う必要なんかない。ああ、嬉しい。お兄ちゃんがやっと私だけのものになってくれた。
私だけのお兄ちゃん。嬉しいなあ。
あの友達とだけの縁を切っても、きっと別の人に盗られちゃうよね。
なら……。
私はその場にいた全員とお兄ちゃんの縁をすべて鋏で切った。そして次の瞬間、お兄ちゃんは他の人たちと喧嘩を始めた。喧嘩というか一方的にみんなから何か言われているみたいだ。
泣きながらグラウンドから出てきたお兄ちゃんに声をかける。
「お兄ちゃん……いじめられたの?」
「う……違うよ」
強がるお兄ちゃんの手を握る。
「お兄ちゃん、帰ろ」
「……うん」
そう言って、手を繋いで歩き出す。兄はまだ涙目だったけれど、私の心は喜びにあふれていた。
これでお兄ちゃんはずっと私といてくれる、お兄ちゃんは私だけのもの!
ああ、嬉しいなあ。本当に嬉しい。
けれど家に帰りついたお兄ちゃんは私の手を振り払うと出迎えたお母さんに飛びついた。
「お、おかあさあああああん……うわああああああん」
「あらあら、どうしたの?」
そう言ってお兄ちゃんの頭を撫でるお母さんを見て、私は思う。
お母さん、邪魔だな。そうだ、さっきの鋏で縁を切っちゃおう。ポケットから鋏を取り出そうとした時。
「ねえ、何があったの? あなたも一緒に遊んでたんでしょう?」
お母さんは困った顔で私を見てきた。
「し、しらない」
私が目を逸らすと、お母さんはため息をついた。
「そう……ほら、とにかく家に上がりなさい。おやつにケーキがあるから」
私は促されるままに家に入った。お兄ちゃんの手を取ろうとしたのに、お母さんが先に連れて行ってしまう。
お母さん、やっぱり邪魔だなあ……。
けど今はいいや。縁を切るチャンスはいくらでもあるもん。
その後、私はとにかくお兄ちゃんに近づく人たちの縁を切ってきた、友達も、先生も、好意を寄せてくる女も全部全部。
──
そして鋏を貰ってから十年。
お兄ちゃんは最近ずっと部屋に引きこもって出てこない。
うふふ、これでいいの。お兄ちゃんは私のものだもの。私以外の人と会う必要なんかない。ああ、嬉しい。お兄ちゃんがやっと私だけのものになってくれた。
私だけのお兄ちゃん。嬉しいなあ。
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