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二冊目 時戻りの時計
片思い
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虚空を見つめて思う。
俺の選んだ選択は間違いだったんだろうか?
そうではない、そうではないと思いたい。けれど……。
そうこれは、あの人を救わなかった、罰。
──
俺は、家の近所に住む十歳年上のお姉さんに恋していた。俺の名前は西田駆。相手の名前は今川祥子さん。
もちろん、子供の頃は近所のよく遊んでくれる優しいお姉さん。くらいにしか思っていなかった。
この気持ちを自覚したのは小学生を卒業し、春休みも半ばになった頃、彼女が結婚前提の付き合いをしている彼氏を連れて実家に帰ってきたと母親から聞いた。
その話を聞いた俺は、心の中がもやもやしてとても気持ちが悪かった。お姉ちゃんが二度と帰ってこなくなるんじゃないか。もう俺の事なんて忘れてしまうんじゃないか。ずっとそんな感情を抱いたまま過ごしていた。
けれど、半年後にその彼とは破局したらしい、とまた母親から聞いた。俺は不謹慎にも少し嬉しかったんだ。ああ、お姉ちゃんが俺の所に帰ってきたって。
その話を聞いた翌日、道でお姉ちゃんとすれ違った。
「久しぶりだね」
少しやつれた顔で笑うお姉ちゃんを見て、心が締め付けられるように痛くなる。
「俺ならこんな顔させない」
思っていた事が自然と口から出ていた。
「お姉ちゃんが笑っていてくれるなら、俺がんばるから。俺、おねえ…祥子さんが好きだから!」
俺は恋心を自覚した勢いのまま、告白した。お姉ちゃん……祥子さんはきょとんとした顔をしていたけれど。
「私を慰めてくれてるのか。君はやっぱり優しい子だな」
そう言って、頭を撫でてくれた。その子供扱いが嬉しい様な悔しいような、複雑な気持ちだった。
「俺、本気だよ!」
少しむくれながら言う俺に彼女は苦笑いしながら。
「そうだな……。よし、君が私よりも年上になったら、考えてあげよう」
と言った。うん、それ、不可能じゃん。だが、物凄く諦めが悪い俺は一回断られたくらいでは気持ちが折れなかった。
その後、俺は祥子さんがひとり暮らししている所にある難関高校を受験すると決めた。学業を死ぬほど頑張り、双方の親を上手く説得し、祥子さんの所に同居する事に成功したのである。
祥子さん、嫌がるかなと思ったが、意外とあっさり同居話を受け入れてくれた。
同居して一年、祥子さんは相変わらず俺を子供扱いする。俺は何時まで経っても「近所に住んでいる弟みたいな子」から抜け出せないでいた。
俺の選んだ選択は間違いだったんだろうか?
そうではない、そうではないと思いたい。けれど……。
そうこれは、あの人を救わなかった、罰。
──
俺は、家の近所に住む十歳年上のお姉さんに恋していた。俺の名前は西田駆。相手の名前は今川祥子さん。
もちろん、子供の頃は近所のよく遊んでくれる優しいお姉さん。くらいにしか思っていなかった。
この気持ちを自覚したのは小学生を卒業し、春休みも半ばになった頃、彼女が結婚前提の付き合いをしている彼氏を連れて実家に帰ってきたと母親から聞いた。
その話を聞いた俺は、心の中がもやもやしてとても気持ちが悪かった。お姉ちゃんが二度と帰ってこなくなるんじゃないか。もう俺の事なんて忘れてしまうんじゃないか。ずっとそんな感情を抱いたまま過ごしていた。
けれど、半年後にその彼とは破局したらしい、とまた母親から聞いた。俺は不謹慎にも少し嬉しかったんだ。ああ、お姉ちゃんが俺の所に帰ってきたって。
その話を聞いた翌日、道でお姉ちゃんとすれ違った。
「久しぶりだね」
少しやつれた顔で笑うお姉ちゃんを見て、心が締め付けられるように痛くなる。
「俺ならこんな顔させない」
思っていた事が自然と口から出ていた。
「お姉ちゃんが笑っていてくれるなら、俺がんばるから。俺、おねえ…祥子さんが好きだから!」
俺は恋心を自覚した勢いのまま、告白した。お姉ちゃん……祥子さんはきょとんとした顔をしていたけれど。
「私を慰めてくれてるのか。君はやっぱり優しい子だな」
そう言って、頭を撫でてくれた。その子供扱いが嬉しい様な悔しいような、複雑な気持ちだった。
「俺、本気だよ!」
少しむくれながら言う俺に彼女は苦笑いしながら。
「そうだな……。よし、君が私よりも年上になったら、考えてあげよう」
と言った。うん、それ、不可能じゃん。だが、物凄く諦めが悪い俺は一回断られたくらいでは気持ちが折れなかった。
その後、俺は祥子さんがひとり暮らししている所にある難関高校を受験すると決めた。学業を死ぬほど頑張り、双方の親を上手く説得し、祥子さんの所に同居する事に成功したのである。
祥子さん、嫌がるかなと思ったが、意外とあっさり同居話を受け入れてくれた。
同居して一年、祥子さんは相変わらず俺を子供扱いする。俺は何時まで経っても「近所に住んでいる弟みたいな子」から抜け出せないでいた。
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