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一冊目 縁の鎖
俺が君を殺すから
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ダメだ、このまま意識を手放したら俺は……! 渾身の力を振り絞り真っ暗になった世界から意識を取り戻した俺は彼女を突き飛ばした。
「近寄るな!」
「どうして……? 思い出して! 思い出してよ!」
逃げなければ! と思うが足が動かない。見ると彼女が鎖を自分の方へと引き寄せている。何かしなければと慌ててボディバッグに忍ばせていた金槌を取り出し鎖を思い切り叩くがびくともしなかった。
「繋がっているんだもの、私からは逃げられないよ」
抵抗空しく彼女の目の前待て引き寄せられてしまうと、素早く白い手が首にかかる。
「死んだショックで忘れてしまったなら、もう一回殺してあげたら、思い出すよね?」
「やめ……」
「ねえ、思い出してよ……お願いだから……」
悲しそうな楽しそうな顔をしながら首を絞めてくる。抵抗するが、彼女は慣れた様子で簡単に俺の抵抗を抑え込む。この細い体のどこにそんな力があるんだ……? 息が……苦し……また死ぬのか……そう思った瞬間に彼女の手が緩む。
「ガハッ……ゲボッ……」
「そんな……どうして……」
彼女は涙を流しながら俺を見る。何時もなら慰めたくなるその表情も、この状況では恐怖しか感じなかった。
「どうして? どうしてそんな顔をするの? あなたは他の人と違ったのに! どうして!?」
彼女は叫ぶとまた俺の首を絞めようとする。
「やめてくれ!」
俺は持っていた金槌で思い切り彼女を殴りつけていた。彼女の頭から赤い血がにじむ。
「痛い……私を殴るなんて悪い子ね…………」
何かぶつぶつと呟いていたが、思いついた様に顔を輝かせながら立ち上がり、
「どうせ殺しても生き返るんだから思い出すまで殺し続ければ……。ああ、それよりも私好みに調教してしまえば……」
そんなおぞましい事を言い出した。
「近寄るな!」
そう言いながら金槌を振り回すがあっさりと彼女に手首を掴まれてしまう。
「ふふふ、絞殺より撲殺の方が好きなの?」
そう言ってにたーと笑う。その表情に背筋が凍る。このままでは、俺は一生こいつに殺され続ける事になる。嫌だ! 殺され続けるために生き返るなんて、冗談じゃない! 何とかしなければ……そうだ確かあの店主が言っていた。
『どちらか一方がその同調を強く拒否した時に、その鎖は効果を失います』
それを思い出した俺は力の限り叫んだ。
「俺は! 殺されて喜ぶ様な変態じゃない! お前みたいな殺人鬼から命を貰って生きるなんてゴメンだ!」
叫んだ瞬間、俺の首から鎖がごとりと音をたて外れた。
「そ、そんな……」
彼女がその場にへたり込む。
「どうして……? あなたなら……本当の私を愛してくれると思ったのに……」
「俺は……」
そう言いかけたが体の力が抜け、その場に倒れ込む。何だ? 力が入らない。ああ、そうか、命の供給が無くなったから、俺は死体に戻るのか。
記憶をなくす前の俺はどう思っていたのかなんて知らない、今の俺にとってはこれが最善なんだ。もう二度とこの全てが無に帰り冷たくなる瞬間を味わう事はないだろう。ふと目をやると彼女が悲しそうな顔で俺を見ていた、そしてその口元が呟く。
「また、次を探さなきゃ、私の殺意を受け入れてくれる人を。この鎖さえあれば、私に喜んで殺されてくれる……殺しても生き返る恋人をまた作れるもの」
そして、とてつもなく冷ややかな微笑み浮かべた。
もう俺には興味は無いみたいだ、また誰か犠牲者を出すつもりなんだろう。そう言えば、あの店主はこんな事も言っていた。
『同調が無くなった時、主になった方も鎖に命を吸われ絶命します』
そう伝える様に頼まれていたんだった。彼女はこの事を知らない、だからこそ「次」を探そうとしているんだろう。
だが、もうすぐ彼女も死ぬ。
大勢の人を殺してきた彼女、そんな彼女を結果的に殺した俺。愛した人がまた罪を重ねるのを防ぐ事が出来た。少しだけ誇らしい気持ちになりながら、俺はそっと目を閉じた。
「近寄るな!」
「どうして……? 思い出して! 思い出してよ!」
逃げなければ! と思うが足が動かない。見ると彼女が鎖を自分の方へと引き寄せている。何かしなければと慌ててボディバッグに忍ばせていた金槌を取り出し鎖を思い切り叩くがびくともしなかった。
「繋がっているんだもの、私からは逃げられないよ」
抵抗空しく彼女の目の前待て引き寄せられてしまうと、素早く白い手が首にかかる。
「死んだショックで忘れてしまったなら、もう一回殺してあげたら、思い出すよね?」
「やめ……」
「ねえ、思い出してよ……お願いだから……」
悲しそうな楽しそうな顔をしながら首を絞めてくる。抵抗するが、彼女は慣れた様子で簡単に俺の抵抗を抑え込む。この細い体のどこにそんな力があるんだ……? 息が……苦し……また死ぬのか……そう思った瞬間に彼女の手が緩む。
「ガハッ……ゲボッ……」
「そんな……どうして……」
彼女は涙を流しながら俺を見る。何時もなら慰めたくなるその表情も、この状況では恐怖しか感じなかった。
「どうして? どうしてそんな顔をするの? あなたは他の人と違ったのに! どうして!?」
彼女は叫ぶとまた俺の首を絞めようとする。
「やめてくれ!」
俺は持っていた金槌で思い切り彼女を殴りつけていた。彼女の頭から赤い血がにじむ。
「痛い……私を殴るなんて悪い子ね…………」
何かぶつぶつと呟いていたが、思いついた様に顔を輝かせながら立ち上がり、
「どうせ殺しても生き返るんだから思い出すまで殺し続ければ……。ああ、それよりも私好みに調教してしまえば……」
そんなおぞましい事を言い出した。
「近寄るな!」
そう言いながら金槌を振り回すがあっさりと彼女に手首を掴まれてしまう。
「ふふふ、絞殺より撲殺の方が好きなの?」
そう言ってにたーと笑う。その表情に背筋が凍る。このままでは、俺は一生こいつに殺され続ける事になる。嫌だ! 殺され続けるために生き返るなんて、冗談じゃない! 何とかしなければ……そうだ確かあの店主が言っていた。
『どちらか一方がその同調を強く拒否した時に、その鎖は効果を失います』
それを思い出した俺は力の限り叫んだ。
「俺は! 殺されて喜ぶ様な変態じゃない! お前みたいな殺人鬼から命を貰って生きるなんてゴメンだ!」
叫んだ瞬間、俺の首から鎖がごとりと音をたて外れた。
「そ、そんな……」
彼女がその場にへたり込む。
「どうして……? あなたなら……本当の私を愛してくれると思ったのに……」
「俺は……」
そう言いかけたが体の力が抜け、その場に倒れ込む。何だ? 力が入らない。ああ、そうか、命の供給が無くなったから、俺は死体に戻るのか。
記憶をなくす前の俺はどう思っていたのかなんて知らない、今の俺にとってはこれが最善なんだ。もう二度とこの全てが無に帰り冷たくなる瞬間を味わう事はないだろう。ふと目をやると彼女が悲しそうな顔で俺を見ていた、そしてその口元が呟く。
「また、次を探さなきゃ、私の殺意を受け入れてくれる人を。この鎖さえあれば、私に喜んで殺されてくれる……殺しても生き返る恋人をまた作れるもの」
そして、とてつもなく冷ややかな微笑み浮かべた。
もう俺には興味は無いみたいだ、また誰か犠牲者を出すつもりなんだろう。そう言えば、あの店主はこんな事も言っていた。
『同調が無くなった時、主になった方も鎖に命を吸われ絶命します』
そう伝える様に頼まれていたんだった。彼女はこの事を知らない、だからこそ「次」を探そうとしているんだろう。
だが、もうすぐ彼女も死ぬ。
大勢の人を殺してきた彼女、そんな彼女を結果的に殺した俺。愛した人がまた罪を重ねるのを防ぐ事が出来た。少しだけ誇らしい気持ちになりながら、俺はそっと目を閉じた。
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