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一冊目 縁の鎖
理想の人
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え……どういう事だ。あの顔、あの服は間違いなく俺を刺殺した男だ。見間違える訳がない。あいつやはりここに来ていたのか。けれどあの様子……し……死んでいるのか……? ピク、と男が動く、どうやら生きてはいるようだ。
「どうしたの?」
彼女が不思議そうな顔をする。
「あ、いや……あれは……?」
俺がその男を指差すと、彼女はにこりと笑い、
「ああ、ゴミだよ」
と、当たり前のように言った。
「ごめんね、片づける時間が無くて……」
そう言いながら彼女は男に近づくと軽く蹴り上げる。
「うぁっ……」
男が低い声で呻く。
「あれ、まだ生きてたんだ」
楽しそうな声に俺は思わず後ずさりする、なんだ? 何が起きているんだ? 俺が動けずにいると、彼女は楽しそうな笑顔をこちらに向けてくる。
「この人ねえ、私の事が好きだって、ずっと私を付けまわしてたんだよ、ね?」
彼女が、倒れている男の顔を持ち上げる。
「この人がね、あなたを殺したって嬉しそうに報告してくるから、毒を飲ませてあげたの。あなたを殺していいのは私だけなのに、本当にダメな人だね」
ぜんぜん悪びれる様子もなく、ニコニコと無邪気に語っている彼女に恐怖を覚える。顔も声も俺の大好きな彼女のはずなのに全くの別人に見える。
「あれ? 何驚いてるの?」
「き、君は……誰だ?」
「誰って……」
「お、俺の知っている君は、人を傷つけるような子じゃ……」
「た……たすけ……」
その時、男がつぶれたような声で俺たちの会話をさえぎる。彼女はうんざりした顔をすると男の顔面を思い切り床に打ち付ける、血が飛び散り男が情けない声で悲鳴をあげる。
「が……ああ……」
「その顔」
彼女が今まで見た事が無い冷たい目をする。
「どうして、そんな苦しそうな顔をするの? ストーカーするくらい私を愛しているなら喜んでよ。私の殺意を喜んで受け取ってよ」
なんだよそれ、殺意を喜んで受け取れって? だが何だろうか、彼女のその冷たい目をみていると、何かを思い出しそうになる自分がいる。
「けど、もういいの」
そう言って彼女は男の顔面をもう一度床に強く打ち付ける、何かが折れるような鈍い音がした男はピクリとも動かない、どうやら死んでしまったようだ。なんて事だ……。次の瞬間、彼女が左手をクっと引く。
「!?」
首元の鎖がシャランと鳴ると俺は彼女の方へ引き寄せられてしまう。
「殺しても、生き返ってきてまた喜んで殺されてくれる、理想の人にやっと巡り合えたんだもの」
服の袖から見える彼女の細い左手首には、この鎖の主たる証である腕輪があった。
「どうしたの?」
彼女が不思議そうな顔をする。
「あ、いや……あれは……?」
俺がその男を指差すと、彼女はにこりと笑い、
「ああ、ゴミだよ」
と、当たり前のように言った。
「ごめんね、片づける時間が無くて……」
そう言いながら彼女は男に近づくと軽く蹴り上げる。
「うぁっ……」
男が低い声で呻く。
「あれ、まだ生きてたんだ」
楽しそうな声に俺は思わず後ずさりする、なんだ? 何が起きているんだ? 俺が動けずにいると、彼女は楽しそうな笑顔をこちらに向けてくる。
「この人ねえ、私の事が好きだって、ずっと私を付けまわしてたんだよ、ね?」
彼女が、倒れている男の顔を持ち上げる。
「この人がね、あなたを殺したって嬉しそうに報告してくるから、毒を飲ませてあげたの。あなたを殺していいのは私だけなのに、本当にダメな人だね」
ぜんぜん悪びれる様子もなく、ニコニコと無邪気に語っている彼女に恐怖を覚える。顔も声も俺の大好きな彼女のはずなのに全くの別人に見える。
「あれ? 何驚いてるの?」
「き、君は……誰だ?」
「誰って……」
「お、俺の知っている君は、人を傷つけるような子じゃ……」
「た……たすけ……」
その時、男がつぶれたような声で俺たちの会話をさえぎる。彼女はうんざりした顔をすると男の顔面を思い切り床に打ち付ける、血が飛び散り男が情けない声で悲鳴をあげる。
「が……ああ……」
「その顔」
彼女が今まで見た事が無い冷たい目をする。
「どうして、そんな苦しそうな顔をするの? ストーカーするくらい私を愛しているなら喜んでよ。私の殺意を喜んで受け取ってよ」
なんだよそれ、殺意を喜んで受け取れって? だが何だろうか、彼女のその冷たい目をみていると、何かを思い出しそうになる自分がいる。
「けど、もういいの」
そう言って彼女は男の顔面をもう一度床に強く打ち付ける、何かが折れるような鈍い音がした男はピクリとも動かない、どうやら死んでしまったようだ。なんて事だ……。次の瞬間、彼女が左手をクっと引く。
「!?」
首元の鎖がシャランと鳴ると俺は彼女の方へ引き寄せられてしまう。
「殺しても、生き返ってきてまた喜んで殺されてくれる、理想の人にやっと巡り合えたんだもの」
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