四次元堂奇譚

一綿しろ

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一冊目 縁の鎖

誰が俺を殺したのか

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 家につくとシャワーを浴びる。
 首元に目をやると鎖が生えている、人と命を共有する道具……。あの空間と店主の不思議な雰囲気で感覚が鈍っていたが、この状況は普通じゃない。先程刺されたはずの腹をさする、傷すら残っていない。
 何なんだ? 俺は一体何に巻き込まれているんだ? 死んだ人間が生き返り、誰かと命を共有しているだって? 何なんだこれは。
 それに……なぜ俺は殺されたんだろうか? 殺される心当たりは全く無い。そもそも先程の男は誰なんだ? 相手は俺を知っている様だったからやはり失った記憶の期間に会った人だろうか。この無くした記憶の期間に俺は何をしていたんだろう。だが殺されるほど恨まれるような事を俺がしたとは思えないし思いたくない。
 そう言えばあの男、何か言っていたな……

『彼女に相応しいのは俺だ!』
「あ……」

 脳にぶわっと記憶が押し寄せてくる。俺はシャワーを止めてあわてて脱衣所に向かった。


 ──


 部屋に戻ると、スマホ内の写真を確認する。俺と最近出来た彼女が一緒に写っている写真が何枚もあった。何故彼女の事を忘れてしまっていたんだろうか。
 彼女は変な人に付きまとわれているらしい、いわゆるストーカーって奴だ。先程の男がそのストーカーで彼氏である俺に嫉妬し殺したのならあのセリフも納得がいく。あの男の正体は掴めた。
 俺が死ぬのはあれが二度目のはずだ。最初に死んだ俺は誰かとあの店に行き、縁の鎖を付けられた。その誰かが先程の男の可能性も考えたが、それはあり得ないだろう。邪魔な奴をせっかく亡き者にしたのにそれを助ける等という事をする訳がない。そして生き返るとわかっている人間を再び殺す訳がない。
 つまり俺は先ほどの男以外の誰かにも命を狙われていたのだ。

「なんでこんな事に……」

 俺は深くため息をついた。
 それと同時に彼女の事が心配になってくる。俺が死んでいる間に、今この瞬間にもストーカーに襲われたりしていないだろうか? 先ほどの男があの後、彼女の所に向かっていたら?
 彼女に連絡を取ろうと、慌ててスマホを手に取った瞬間、着信音がけたたましく響いた。誰だ? もしかして俺を殺した奴が……? 恐る恐る相手の名前を見ると彼女だった。慌てて出ると

「あ……ああ……」

 と言う彼女の声と同時に泣き声が聞こえてくる。

「も、もしもし? どうしたの?」

 俺が声をかけるが彼女は泣き止まない。まさかあの男が彼女の家に? ぞわっと腹の辺りが寒くなる。

「これから君の家に行くから、絶対に変な奴を家に入れないように、いいね?」

 それだけ言って電話を切る。相手はナイフを持っている、万が一を想定し家にある武器になりそうなものを漁ってみたが金槌くらいしかなかった。まあ無いよりはましだろう。俺は金槌を手頃なボディバックに入れると彼女の家に向かった。
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