四次元堂奇譚

一綿しろ

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一冊目 縁の鎖

見知らぬ男

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 見知らぬ男が驚いた顔をする。すぐに恨みのこもった眼で俺を睨みつけてきた。背の高さは俺とそんなに変わらない、青白い顔をしていてヒョロっとした印象を受ける、だがその眼光の鋭さは尋常ではなかった。

「あんた誰だ、俺に何か用か?」

 なるべく低い声で相手を威嚇する、俺はそんなに喧嘩が強い方ではない、頼むから大人しく帰ってほしい。男は何も言わない。そこで俺はここ数日の記憶が無い事を思い出した。もしかして失った記憶部分で知り合っていた相手か?

「あの、もしかし……」
「な……」

 俺が言葉を言い終わる前に男の口から低く呻く様な音が漏れた。

「は?」
「何で、お前なんだよ!」

 男が叫ぶ。

「何を言って……」
「彼女に相応しいのは俺だ!」

 そう言うと男が俺に向かって走って来る。手に何かを持っている……ナイフか!? 避けなければと思うが男の動きが思っていた以上に早い! そう思った瞬間に腹に痛みが走る、刺されたのか!?

「痛……何するんだ!」

 思い切り男を突き飛ばす、見ると男の手に血まみれのナイフが握られている。

「ははは……! やったぞ! お前がいなくなれば……!」

 男はそう叫ぶと逃げていった。
 待て! と言おうとするが声が出ない。結構深く刺されたのか……身体が動かない、クソ俺は……俺は死ぬのか。痛みで脚から力が抜けその場に倒れ込む。痛い、痛い……ヤバイ、目の前が暗くなって……。





 ……ん? 痛みが消えた?
 慌てて起き上がる、刺された所も何とも無い、あれだけの傷がすっかり消えている。だが、破けた服と付いた血が先程の出来事が夢で無かったと告げている。俺は……本当に死なない身体になったのか……?
 背筋がゾクッとする。自分が得体のしれない何かになっている事に不気味さを覚える。俺は……今の俺は本当に人間なのか? これじゃあゾンビみたいなものじゃないか。 慌てて立ち上がると逃げる様に走り出した。
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