四次元堂奇譚

一綿しろ

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一冊目 縁の鎖

誰かに殺された俺

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「縁の鎖……って何?」
「ああ、商品説明が必要ですね。少々お待ちください」

 そう言って、店主は部屋を出て行った。
 残され手持無沙汰になった、もう一度体を確認する。全く傷はない、一つ変だとすればこの鎖か。何なんだろうか……嫌な感じはしないが。鎖を思い切り引っ張ってみる、痛みはないが抜ける気配もない、完全に俺の一部になっている様だ。

「お待たせいたしました」

 戻って来た店主は手に、俺に生えている鎖とよく似た鎖を持っていた。片方に腕輪の様な物が付いていて、もう片方は杭の様になっている。

「これが縁の鎖です」

 そう言うと鎖を俺に持たせる、鎖は見た目に反し軽い……いやまったく重さがないと言ってよかった。

「これは……」
「あなたは運命の赤い糸をご存じですか?」
「は?」

 何を言ってるんだこの人は。

「まあ、知ってはいますけど……確か、小指に結ばれてる赤い糸が運命の人と繋がってるってやつですよね?」

 俺が答えると店主はニッコリと笑い、俺の手から鎖を受け取る。

「これはその運命の赤い糸の様なものなんですよ」
「運命の赤い糸の様なもの?」
「そう、ただ違うのは運命ではなく、自分の意志で結ぶ相手を選ぶ事ができる事と……」
「事と……?」
「主になった人物は選んだ相手……従になった方と命を共有する事になる事ですね。従に選ばれた人間は主が生きている限りは共に生きる事になります、たとえ死んでも生き返る」

 夢物語の様な説明をされて俺は面食らった。この店はそんな変な道具ばかり売っているのだろうか。しかし……たとえ死んでも生き返る? それが俺から生えている……と言うことは。

「俺は死んで、そして生き返った。生き返った理由は誰かに命を与えられたから?」
「正解です」

 店主がわざとらしく拍手をする。死んだというあの感覚は本当だったのか。まさか生き返るとは……だがそうなると一つ疑問が起こる。

「俺を生き返らせた人は誰なんですか?」
「あなたはお連れ様とお二人でご来店なさいました。まあ、あなたは既にお亡くなりになっていましたが。確か、お連れの方が殺してしまったと言っていましたよ。死人相手にこれを使うのは初めてでしたが……いや、本当に、無事に生き返ってよかったです」

 今、何て言った? 殺した奴が俺をここに連れてきて、そしてそいつが俺を生き返らせた……?

「俺は……殺されたのか……?」
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