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夢
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真夜中になると、決まっておかしな夢を見る。ここ二年、いや三年ほどになるだろうか。とにかく毎晩だ。
俺がうとうとしていると、目の前に大きな格子窓が現れる。その向こうには大きな目があるのだ。
だが俺は驚きはしない。それが『千夜』という同居人のものだと知っているからだ。くっきりした二重に涙袋は大きく、目尻にホクロ。特徴的な色素の薄い瞳をしていた。日本人離れした黄緑がかった瞳は宝石のように美しいが、よく視力が落ちていることをぼやいていた。
「もう眠そうだね。おやすみ」
ふふっと笑みを漏らしながら、彼女は言う。そしてわずかばかり細められた左目に、俺はいつも一瞬で吸い込まれる。
視界もぼやけているであろう弱視の左目がスクリーンのようになり、千夜が俺には見せない姿が映るのだ。
千夜が見知らぬ男と身を寄せ合い、恍惚と視線を絡ませている。男の骨ばった手が彼女の膨らみを確かめるたび胸が大きく上下し、やがて彼の指がくぼみをなぞると、うっすら開いた唇から熱い吐息が漏れた。
俺はそれをただただ突っ立って見ているのだ。その男にしか見せない千夜の顔は恐ろしくなるほど美しく、蠱惑的だ。目が離せない。それなのに狂おしいほどの嫉妬でぞわっと鳥肌が立つ。
「千夜! そいつは誰だ!」
たまらなくなって名を呼ぶと、全てが消え失せ、俺は自分が檻の中にいることに気づく。どんなに地団駄踏んでも暴れても、決して外に出ることができないでいる。己の不自由さを嘆いた途端、夢から醒める。なんとも奇妙なものだ。
俺がうとうとしていると、目の前に大きな格子窓が現れる。その向こうには大きな目があるのだ。
だが俺は驚きはしない。それが『千夜』という同居人のものだと知っているからだ。くっきりした二重に涙袋は大きく、目尻にホクロ。特徴的な色素の薄い瞳をしていた。日本人離れした黄緑がかった瞳は宝石のように美しいが、よく視力が落ちていることをぼやいていた。
「もう眠そうだね。おやすみ」
ふふっと笑みを漏らしながら、彼女は言う。そしてわずかばかり細められた左目に、俺はいつも一瞬で吸い込まれる。
視界もぼやけているであろう弱視の左目がスクリーンのようになり、千夜が俺には見せない姿が映るのだ。
千夜が見知らぬ男と身を寄せ合い、恍惚と視線を絡ませている。男の骨ばった手が彼女の膨らみを確かめるたび胸が大きく上下し、やがて彼の指がくぼみをなぞると、うっすら開いた唇から熱い吐息が漏れた。
俺はそれをただただ突っ立って見ているのだ。その男にしか見せない千夜の顔は恐ろしくなるほど美しく、蠱惑的だ。目が離せない。それなのに狂おしいほどの嫉妬でぞわっと鳥肌が立つ。
「千夜! そいつは誰だ!」
たまらなくなって名を呼ぶと、全てが消え失せ、俺は自分が檻の中にいることに気づく。どんなに地団駄踏んでも暴れても、決して外に出ることができないでいる。己の不自由さを嘆いた途端、夢から醒める。なんとも奇妙なものだ。
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