悪役令嬢は中二病

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~前回までのあらすじ~

将来は爆発する

ーー


「このままいくと、貴方は将来この砦で爆発するからよ」

「私爆発するの!?」

「貴方は将来この砦で爆発四散するからよ」

「なんで言い直したの!?」


様子を見るに、リミアは本気で言っているようだ。どうやら私はこの砦と運命を共にするらしい。確かにこの砦は国の要所だけど、今は別に戦時中な訳ではないし…あれ、待てよ。そういえば国は滅びるとか言ってたけど、じゃあなんで私ここで爆発するんだ?考えれば考えるほど、頭が混乱していく。


「いい?アイカナは二部構成なの」 

「(何事もなく話し始めたよこの人‎…)」

「第一部は学園が舞台の話。第二部は国を再興する話よ。悪役令嬢であるネアは第一部では主人公をいじめる役として、第二部では敵幹部のひとりとして出てくるの。最後は主人公たちに負けてこの砦諸共爆発するのよ。一応生死不明ってことにはなってるから、実は生きてるっていう考察する人もいるけど、」

「ごめん一旦ストップ」


怒涛の情報量に頭が追いつかない。第一部の話は分かる。第二部が謎すぎる。なんとなく、アイカナを私に勧めてきた友人が第二部は好きじゃないって言っていた理由が分かった気がしてきた。頭を抱えている私を見て、リミアは不思議そうな顔をしていた。


「分からないところあった?」

「分からないところしかなかった」

「?」


ネアが何を言っているのか心底訳が分からない、といった表情をしているリミアを見て、私はため息をついた。何故いまの説明で伝わると思ったのか、私の頭の中は疑問でいっぱいだ。


「あのさ、アイカナって乙女ゲーなんだよね?なんで国を再興しようとしてるの?しかもネアは魔物側につくの?というか一昨日言ってた帝国滅亡は?」

「そうね。愛ゆえに、ね」

「面倒くさいからって適当なこと言ってお茶を濁さないでよ!」


ドヤ顔で頷いているリミアを見ていると頭が痛くなってきた。たぶんリミアじゃなかったら一発殴ってるレベル。やらないけど。やらないけどね、たぶん!そうだ、まずは冷静になろう。私は一度、大きく深呼吸してからリミアを見た。


「最初から。ゆっくり話して」

「分かったわ。まず、第一部ね。第一部は学園を舞台にした恋愛物語よ。選択肢によって攻略対象たちとの好感度が上下する、いわゆるノベルゲームね。ネアは主人公を邪魔する悪役令嬢として登場する。ここまではいいわね?」

「うん。卒業までの一年を過ごすんだよね?」


第一部は問題ない。攻略対象たちと三年生の一年間を過ごすという乙女ゲーム、友人からよく話を聞かされていた。ネアは皇子の婚約者として、どのルートでも主人公リミアを邪魔する悪役令嬢だ。


「そうよ。次に第二部。第二部はリミアたちの卒業式が終わった次の日、魔物が帝国に侵攻してくることから始まるの。軍として統率された魔物たちは次々と帝国を蹂躙し、帝国は崩壊、滅亡する。リミアは逃げた先で亡国の皇子となったアルバートを筆頭とした攻略対象たちと出会い、帝国を再興しようとするという話よ」


卒業した次の日、ということはこの間リミアが言っていたとおり、今から約半年後に帝国は滅亡することになる。
魔物はこの世界では何処にでもいる存在だ。イメージとしては地球での野生動物と一緒。居住区に近寄ってくることはあまりなく、野山や洞窟を住処としている。同種の生物たちと少数のメンバーで群れをなすことはあるが、大規模に統率して動くことはない。正しく言えば、魔物にそこまでの知能は無いので、人は魔物を統率して動かし、軍のして運用することはできない。


「統率された魔物ってどこからくるの?」

「魔物たちは帝国の西端、山岳地帯を根城にしてるわ。元々あそこは人が住むには適さない場所で、魔物が多く生息しているところだからね」


私は頭の中で、帝国とその周辺の地図を思い浮かべてみた。
帝国は北及び東西が海に面しており、南側のみ2カ国と接している。多くの資源と広大な領土を有する、周辺諸国と比べてもかなり巨大な国だ。その首都である帝都は国の中心からやや東寄りにある。いま私たちが通っている学園は帝都の西側、ちなみにペトロネアの領地は帝都の南側に位置している。大雑把に説明すると、領土の南東には、帝都や学園などの発展している地域があり、北側は冬期は豪雪地帯となる地域、南西は山岳地帯がある。
魔物が来たとかいう帝国の西側は山岳地帯で、莫大な資源がある反面、過酷な環境で魔物が多く生息している場所だ。あまり人は住んでおらず、複数の集落が点在しているのみ…ということを以前グレンの報告書で読んだ気がする。


「リミアが逃げた先は南側の2カ国のどちらか、もしくは帝国の北側ってこと?」

「東側にある国の方に身を寄せることになるわ。ちなみに西側の国は今はもう既に魔物を統率している者たちの傀儡となっているのよ」

「それ『ちなみに』で済ませていい情報じゃなくない?」

「まあまあ」


リミアはあはは、と笑っていた。何度目かのため息をついた。こうして話してると、ずっとリミアのペースにのせられていっている気がする。マリナだけではなくて、ネアの知識があるから何とか話が進んでいるのが幸いだ。


「話を続けるわよ。リミアたちは東側の国を拠点に帝国を取り戻す戦いをはじめる。ネアは第一部のどのルートでも、最終的には婚約者であるアルバートに強く拒絶され、婚約破棄されることになるの。第二部ではリミアを恨んでいたところを敵に勧誘されたことによって、魔物側の幹部として登場するわ。ネアとはペトロネア領地での戦い、帝都奪還戦、学園奪還戦を経て最後にこの砦で対峙することになるの。ネアはこの砦で最後の戦いを行い、アルバートたちに敗北。最後にこの砦を爆発させるのよ」

「待って。そんなに戦いあるの?ノベルゲームなんだから、文章量とんでもないことにならない?」


確かに帝国奪還となると、かなり長い戦いが始まることになる筈だが、そもそもアイカナはノベルゲームのはずだ。やたらと設定が出てくる上に長い。一体原稿用紙何枚分の話を繰り広げるつもりなのか。大部分の話を削ったのだろうか?話を聞いている限り、もはや別ゲーである。


「第二部のシステムは第一部からかなり変わるのよ。奪還した領地を経営するシュミレーションパートと、リミアたちの軍と魔物の軍が戦うSRPGパートがあって、領地経営の結果がキャラのステータスに反映されるという斬新なゲームシステムになってるわ」


本当に別ゲーだった。何なら聞いたことない面倒くさそうなシステムになってる。制作側のやってみたかったことを全部詰め込んでみました!感がひどい。というか、乙女ゲーム何処行ったんだ。


「もう別ゲーじゃん…しかも面倒くさそうなやつ」

「だから好き嫌いが分かれるのよ。第一部はキャラごとにBAD、HAPPYの2種類のエンディングがあるけど、第二部はキャラごとのエンドが一つしかないからね。あと全員集合trueエンド」

「乙女ゲームなのに?」

「乙女ゲームなのに。でも第一部を見てしまった以上、その続きが気になるのが人の性ってもんでしょう?やるにはやる、でも嫌いって感じね。あ、私は好きよ。第二部も無駄に作り込みされてるから意外と評価高いのよ。アイカナだけで何時間も費やせるって評判よ」

「ははは…ああ、そうなの…」


もう言葉もない。どうやら私はとんでもないゲームに転生してしまっていたらしい。
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