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【第六章】王都の外へ

小さな村の大きな屋敷

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 三人が森林地帯手前の村にたどり着く頃には日はだいぶ高くなっていた。
 三人が訪れた村は自然豊かでのんびりとした時間が流れている雰囲気だった。
 背後に森と山脈が控えており、ここが山越えをする場合の最後の村となる。
 村自体はこぢんまりとしていたが山越えをする人たちの需要があるためか飲食店、宿泊施設などはそれなりに整っていた。

 三人は食堂で軽く食事を済ませた後、村の探索を始めた。

「この村は空気が美味しい気がします」
「確かに良い場所ですね」
「そうだな。俺もここは初めて来たがのどかでいいな」

 三人は時折、深呼吸をしながら村の中心地を外れて森の方へ向かった。
 すると、村の外れの方に自然溢れる周りの環境に似つかわしくない大きな建物が見えてきた。
 最初に気づいたライリは興味津々で駆けだした。
 カイルとレインも慌ててライリについて行った。

「わあ、すごい大きな建物」

 三人の前に現れたのは5階建ての大きな朱色の建物であった。
 まるで、貴族の屋敷のような造りであった。
 しかし、屋敷の前にある大きな門は歪み壊れていた。
 建物もよく目をこらしてみると所々壁が剥がれていたり痛みが見受けられた。
 すでに人が住まなくなっている建物のように見えた。

「なんだこの建物は」
「ずいぶんと異質に見えますね」

 カイルとレインが驚いている中、ライリはそんなことは気にせず、壊れている門を無理矢理くぐり抜けようとする。
 さすがにレインがライリを止めようとする。

「ライリ様、駄目です。勝手に入ってはいけません」
「ええ、どうして? すごく面白そうなのに」

 ライリは頬を膨らませながら門から離れた。
 レインはため息を吐く。

「どうしても、こうしてもありません。お怪我をされたらどうするのですか」
「ええ、大丈夫だよ。ちょっと、近くで見るだけだよ?」
「誰の所有物かも分からない敷地に勝手に入るわけにはいきませんよ」

 ライリとレインがもめている様子をカイルは微笑ましく眺めていた。
 実際、レインは呆れた様子で引き留めているがライリはわざとだだをこねることで、このやりとりを楽しんでいるように見えた。

「俺、ちょっとぐるっと辺り見ているからな」
「あ、カイルさん、私も一緒に」

 カイルはそう言うと建物の周りを歩いてみることとした。
 それを聞くとライリはレインの隙を突いてカイルについて行った。
 レインは隙を突かれたことに軽く驚きながらため息を吐いた。

「もう、ライリ様は……」

 レインはあきれ顔で二人についていくこととした。

 三人は建物の周囲をゆっくり見て回ることにした。
 建物は三人の背丈の倍以上ある大きな壁で囲まれており、いかにもお屋敷という雰囲気を醸し出していた。
 その壁もところどころ剥がれ落ちていて痛んでいた。

 門があったところから真裏にまわってみるとまた別の門が存在した。
 裏門であろうか。
 その門を始点として森の中へ向けて道が続いているようであった。

「ほお、こんな所に道があるんだな。綺麗に木が刈られて作られているし、獣道って感じじゃないな」
「明らかに人為的に作られた道でしょうね。この屋敷から森の中のどこかと移動が行われていたと考えるべきでしょう」

 カイルとレインは色々な想像をしながら不思議そうに道を眺めていた。

 二人が森へ続く道へ気をとられている中、ライリはこっそりと裏門から敷地内に侵入しようと考えた。
 裏門は壊れておらず、鍵もかかっていないようだった。
 物音を立てないようにそっと門を動かして中に入ることに成功した。
 ちらっと後ろを振り返って、未だにライリとレインが気づいていないのを確認すると忍び足で建物に近づいた。

 こちら側が本当に裏門なのかどうか分からないほど大きな扉を前にしてライリは圧倒されていた。
 建物の扉を見てみるとちょうど目線の高さの所に扉の大きさに対してとても小さな紋章が描かれているのに気づいた。
 ライリはその紋章に見覚えがあった。

「これ、王家の紋章?」

 王家の紋章は昔存在していたとされる生き物をモチーフにしているとレインに聞いたことがあった。
 実際にその紋章は今も使われており、ライリも良く目にする機会があった。
 この扉に描かれている紋章は普段からよく見ており、王家の紋章で間違いないようであった。
 ということは、この建物は王族が保有する建物だろうか。
 こんな風に放置されている理由は何故だろうか。ライリは首をかしげた。
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