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【第二章】始まりの一歩
夜明け前の公園
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夜明け前の公園には、しんとした冷たい空気が張り詰めていた。
辺りはとても静かで鳥の鳴き声すら聞こえない。
カイルは展望台から夜明け前の町並みを眺めていた。
明かりがついている家もまだまばらで町並みの先に広がる海も闇に包まれていた。
カイルはぼんやりと町の中心地へと目を向けた。
今頃、ライリたちは家を出た頃だろうか。
肉眼で見えるわけがないのは分かっていたが何となく意識がそちらの方へ向いていた。
カイルはここからの景色が好きだった。
眼下に広がる町並みを見ていると嫌なことや辛いことを忘れられる気がしたからだ。
カイルがこの場所を好きになったきっかけは朝のトレーニングがてらこの場所まで良くジョギングをしていたからだった。
初めてここから昇る朝日を見たときの美しさは今でも忘れられない。
誰にも邪魔されず独り占めできる朝の景色がカイルのお気に入りであった。
しかし、これからはこの景色を独り占め出来なくなる。
ライリとレインにこの場所のことを教えたからである。
独り占めという響きも良いものであったが二人や三人でこの景色を堪能するのもきっと良いものであろうと期待していた。
幸いなことに今日も天気は良さそうである。
素敵な朝日を二人にも見せてあげることが出来るであろう。
カイルはそれを想像し、ほほえんだ。
朝の冷たい風がカイルの頬を撫でていった。
ライリは足早に丘の上へと向かう坂道を駆けていた。
木々に囲まれた薄暗い坂道を息を切らしながら進んでいく。
「ライリ様、そんなに急がなくても朝日には間に合いますよ」
「そうじゃなくて…はやく…カイルさんに会いたいの」
「ふふ……足下には十分注意してくださいね」
「うん!」
ライリのペースについて行っているレインの息は全く乱れていなかった。
走るのを辞めさせた方が安全上は良いのかもしれないがライリのわくわくした表情には敵わなかった。
そして、少しずつ道が開けてきて二人は坂道の頂上、公園の入り口へたどり着いた。
ライリは辺りをきょろきょろ見回し、カイルの姿を探す。
「カイル様は展望台の方にいるかもしれませんね」
公園の入り口から展望台まではさらに階段を上る必要があった。
レインのつぶやきを聞き、ライリは一目散に展望台の方へ駆けていった。
レインはライリの素早い動きを止めることが出来ず一瞬立ち尽くしてしまったがすぐにはっと気づき、後をついていった。
辺りはとても静かで鳥の鳴き声すら聞こえない。
カイルは展望台から夜明け前の町並みを眺めていた。
明かりがついている家もまだまばらで町並みの先に広がる海も闇に包まれていた。
カイルはぼんやりと町の中心地へと目を向けた。
今頃、ライリたちは家を出た頃だろうか。
肉眼で見えるわけがないのは分かっていたが何となく意識がそちらの方へ向いていた。
カイルはここからの景色が好きだった。
眼下に広がる町並みを見ていると嫌なことや辛いことを忘れられる気がしたからだ。
カイルがこの場所を好きになったきっかけは朝のトレーニングがてらこの場所まで良くジョギングをしていたからだった。
初めてここから昇る朝日を見たときの美しさは今でも忘れられない。
誰にも邪魔されず独り占めできる朝の景色がカイルのお気に入りであった。
しかし、これからはこの景色を独り占め出来なくなる。
ライリとレインにこの場所のことを教えたからである。
独り占めという響きも良いものであったが二人や三人でこの景色を堪能するのもきっと良いものであろうと期待していた。
幸いなことに今日も天気は良さそうである。
素敵な朝日を二人にも見せてあげることが出来るであろう。
カイルはそれを想像し、ほほえんだ。
朝の冷たい風がカイルの頬を撫でていった。
ライリは足早に丘の上へと向かう坂道を駆けていた。
木々に囲まれた薄暗い坂道を息を切らしながら進んでいく。
「ライリ様、そんなに急がなくても朝日には間に合いますよ」
「そうじゃなくて…はやく…カイルさんに会いたいの」
「ふふ……足下には十分注意してくださいね」
「うん!」
ライリのペースについて行っているレインの息は全く乱れていなかった。
走るのを辞めさせた方が安全上は良いのかもしれないがライリのわくわくした表情には敵わなかった。
そして、少しずつ道が開けてきて二人は坂道の頂上、公園の入り口へたどり着いた。
ライリは辺りをきょろきょろ見回し、カイルの姿を探す。
「カイル様は展望台の方にいるかもしれませんね」
公園の入り口から展望台まではさらに階段を上る必要があった。
レインのつぶやきを聞き、ライリは一目散に展望台の方へ駆けていった。
レインはライリの素早い動きを止めることが出来ず一瞬立ち尽くしてしまったがすぐにはっと気づき、後をついていった。
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