慈子観音
俺がその風変わりな観音像を初めて見たのは京都にある某寺だった。推定築三百年はするだろう古刹のなかで獅子を左右に従えたそれは悠然と鎮座していた。
「子を慈しむ、と書いて、慈子観音です」
格好の暇潰しの対象を見つけたと言わんばかりに住職は慈子観音の物語を語り始めた。
初出 「幻影66号線」 2011年11月3日 発行
「子を慈しむ、と書いて、慈子観音です」
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