朝の連続Twitter小話 ~半壊電車~

ピンク式部

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第2話 クソ女と私 完結編

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⑬端っこ女Aは実にしたたかだった。
「自分はオバQとその仲間たちに利用されただけなんです。やりたくてやったわけじゃないんです」
と涙ながらに身の上の不幸を語り、いとも簡単に駅員たちのハートを鷲掴みにしたそうである。以前「早い者勝ちだろ!」と私に息巻いていたのが嘘のようである。こうなるとオバQ達のほうがむしろ気の毒に思えてくる。

⑭一方、当のオバQたちはというと、猛威をふるったバッグ4つ置き大作戦の頃に比べ、当然ながら着席できる頻度は減った。何よりも、周囲の常連客から前科者のように見なされ、針の筵の上に座っているといった様子だ。おまけに仲間だったはずの端っこ女からはラスボス扱いされ見る影もなかった。

⑮私は腑に落ちなかったが、平等に座れるようにはなったので、まぁ良いかと思っていた。 
しかし、それも束の間だった。
ある日、私がいつものように最寄りのS駅から乗り、運よく空いていた普通席に座った。しばらくすると、普段から何かとちょっかいをかけてくる気分屋の駅員レディがつかつかとやってきた。彼女は数か月前、半壊電鉄が発行する広報誌の表紙にたまたま私が取り上げられたのが気に入らなかったようで、それから目を付けられていた。とにかく自分が何でも一番じゃないと気が済まない性格で、自己評価のやたら高い女だった。彼女は私の前に立ち止まり、こう言った。

⑯駅員レディは言った。
「貴方が座ると他の座りたいお客様が座れなくなるので早くお立ちください」
私は自分の耳を疑った。脳味噌にウジでも湧いてるんじゃないかと思った。バッグ4つ置き事件の最中は無言を貫き見て見ぬふりをし、端っこ女Aとその仲間たちに好き放題やらせていたのは、他でもない現場担当のこいつだ。
こいつは何を言っているのだ。自分の出番を間違えたのか?
私は彼女の言っている意味が理解できずに立ち尽くしていた。遮光カーテンから車内へ漏れる太陽の光が眩しかった。隣に座る主婦が気の毒そうにこちらを見ているのが分かった。

⑰私は急に全てがアホらしくなった。こいつらとまともに議論している時間が無駄だと思った。気に入った連中にはたとえモラルに反していても好き放題やらせ、自分が少しでも気にくわない存在には圧力をかけて居場所を無くす。これが長年乗り続けた半壊電車の「伝統的な」やりかただったのだ。

⑱「とにかく駅員によるえこひいきが激しい」
「駅員が気に入った客へとそうでない客への対応に雲泥の差がある」
「自分たちにとって利用価値がある客への媚びへつらい方が凄まじい」 
この瞬間、愛想を尽かした過去の半壊電車ユーザーが暴露したトンデモ話は全て真実だったのだと私は悟った。
私が次に選択する行動はひとつしかない。黙って電車を降り、他のもっと良心的な電車に乗り換えること。いつまでもヒステリックに捲し立てる駅員レディを後に残し、私は閉まりかけたドアから外に飛び出していった。


朝の連続Twitter小話~半壊電車~ 完


あとがき

変な自作の小話に暖かい目で付き合ってくれた皆様、本当にありがとうございました(ーωー) 

各ブロックの頭にくっついている番号は、Twitterで発表した際の順番です。
改めて発表する際、若干の加筆修正を加えております。

なお、この物語は大変なフィクションです。
端っこ女AもオバQも、駅員レディも半壊電車すら実在しません。
(実は、似た名前の「阪堺電車」が実在することを後になって知りました。
もちろん無関係です。紛らわしい名前でごめんなさい)


平成24年6月某日   さやお


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