愛を知らない私と僕

こむぎ

文字の大きさ
上 下
20 / 25

19

しおりを挟む
「鳴瀬さん、、、?」
「鷹村君?みんなはどうしたの?はぐれた?」

鷹村君は驚いた顔で樹さんと私を交互に見てる。
うん、、、?何かあった?

「その、、、隣の人は、、、?」
「?、、、あぁ、私の婚約者よ」
「、、、初めまして、藍染財閥次期総帥の藍染樹です」
「婚約者、、、?」目を見開いて、確認してくる悠斗
「そう、昔から決まってる人なの」
そんなに意外だった?と聞いてみても反応がない。
「?おーい、鷹村くーん?」
「、、、優希ちゃんが言ってたのはこれか(ボソッ」

何だかブツブツと言ってる、、、鷹村君、カムバック(泣)

「、、、鳴瀬さん、俺、諦めませんから!!」
でもすぐに、吹っ切れた?のか、鷹村君は元気に笑って(嘘笑いだったけど)走って会場に戻って行った。

、、、えぇー?(汗)うぅーん?鷹村君どうしたんだろう?
不思議そうに首を捻っていると樹が
「、、、盛大に勘違いして行ったみたいだね、彼。」

と、一言。

「、、、え?何を勘違いするの?」
何も間違いは言ってないよね?ううん?

そして、どこまでも自分に向けられる純粋な好意には鈍い鳴瀬に返答をせず、誤魔化すかのように頭を撫でて、樹は帰って行った。



そのあとは特に何も起こらず、順調に進みイベントも終わりを迎えていた。

「よしっ!片付けも終了!みんなお疲れ様ー!!」
片付けも終わりトラックに荷物も積み込んで会場の返却も終わり!
うんうん、今日は大成功だった!

「あ、中村さん今日は送りのタクシーは大丈夫」
「はい?、、、あぁ、御友人方ですか。」
「うん、皆で電車で帰ることになったの」
「そうですか。、、、お気を付けてお帰りください。本日はお疲れ様でした。」
「ふふ、はーい。お疲れ様でした。ちゃんと帰って休んでねー」
「、、、それをあなたにだけは言われたくないですね」
「、、、はい、ごめんなさい」

中村さんは私が“次期”の時から付いてくれてる秘書さんですっ!
とっても美人で見た目はクールな人で、実際は感情豊かな人。
ハチ公の話とか聞いて大泣きするくらいには感情豊かな人なの。
それでも仕事になると完璧でとっても助かってるっ!
、、、たまに私が仕事をしすぎて泣き付かれるけれど。あと今みたいに怒られるの(泣)

なんて考えながら、部下に「お疲れ様」と片っ端から声をかけながらクッキーを握らせて、夢たちが待つ駅まで歩いていった。

、、、その道の途中で鷹村君が待ち構えていたのはほんとに心臓に悪かった(泣)

「鷹村君?どうしてここに居るの?」
「、、、鳴瀬さん、お疲れ様です」
と、笑顔を向けてこちらに歩いてきた。
「1番にお疲れ様って言いたかったので」
と、嬉しそうに言っていたけれど、、、
、、、お疲れ様はもう中村さんに言われちゃったなぁ。
部下にもクッキー渡した時に言われたし、、、。
、、、うん、言わないでおこう。

そんなことを考えてたら鷹村君の顔が近づいているのに気がつかなくて。
ふと鷹村君の方を見ればものすごく近くに彼のドアップの顔があった。

「っ!?」「あー、残念」
思わず後ろに仰け反る。すると鷹村君は残念と笑う。
もうっ!!危ないって!!
もう1回事故が起こるところだったんだよーっ!(泣)
残念って何ー!!

なんて思って彼を見やれば顔を隠して明後日の方向を向いていた。
、、、ううん?お化けでもいたのかな?

「って、鷹村君、早く行かないと!みんなを待たせてるんだから!」
と、思い出して彼の手を引いて歩き出す。

「、、、鳴瀬さん」
「うん?なぁに?」
しばらく歩いてから鷹村君が口を開いた。

「、、、俺にも鳴瀬さんの事、教えて欲しいな?」
「、、、私の、こと。」
「うん、あなたの過去とか」
、、、過去、かぁ、、、
私のはだれかにはなしてもいい過去じゃないし、、、
誰かに私の過去を教えることなんて、あるとは思えないもの。
一生自分の中にしまうと決めたのだから。
「、、、どうしても?」
「、、、君の、鳴瀬さんの力になりたいから。」
「、、、ごめん、伝えられないかな。、、、今は」

、、、え?私何言ってるの?“今は”っていつか言うつもり?
、、、彼を悲しませたくなかった、、、?
嘘を言ったとしても、、、?
、、、疲れちゃってるのかもな。うん。寝よう。

「そっかぁ、、、過去なんて全てがいいなんて思ってないから、伝えづらいよね。、、、今はそれでいいよ。ごめんね、こんなこと聞いて。」
「ううん、、、ありがとう」
「いーえ、かな?、、、じゃあさ!好きなこととかは?」
「好きな事か、、、そうだねー」

鷹村君は少し寂しそうな顔をしたけれど直ぐに何事も無かったように話題を変えた。
そしてルナとトワについて語っていたらあっという間に駅に着いたのだった。

「あー!2人とも遅ーい!」と透君が言ったかと思ったら真子かゲンコツを食らわせていた。
、、、真子、殴るのはどっちも痛そうだから、程々にねー
「、、、ごめんねー待たせちゃって」と言って鷹村君は男子陣に混ざっていった。

「なっちゃん、お疲れ様ー」
と、なんだか企み顔な夢が労いの言葉をかけて来た。
「ありがとう、夢」と笑顔で返したら
「どうだったー?」と笑顔で聞かれた。
「うん、大成功だったよー!部下もやりがいを感じれたみたいだし、クライアントもお客さんも楽しんでもらえたし!」
と、ほくほく笑顔で夢に伝えた。
「、、、なっちゃんは相変わらずだねー」
「うん?それって褒められてるー?」
「ふふ、どうでしょうー?」
「夢乃、あんまり鳴瀬をからかい過ぎると優希が怖いわ」
「えー、なっちゃんこんなに可愛いのにー!」
「褒められてる気がしないよ?夢?」

と、軽口を叩きながら電車に乗りこみ各自帰路についた。
あ、優希は夢の家にお泊まりなんだって
、、、一緒に帰れると思ったのにー(泣)

と、不貞腐れても時間は過ぎてくもの。
あっという間に家に着きました。はい。
うちの子(犬)はやっぱり天使です(泣)

そして差し入れで貰ったお弁当を夕飯として食べてお風呂も入ってさぁ寝るぞ、、、!となった時に電話がかかってきた。

、、、樹からだった。
「、、、もしもし?」
『あ、もしもし?今平気?』
「大丈夫ですよ。一息ついていたところだったので。」
『、、、そっか、明日の待ち合わせとかの話をしたかったんだよね』
「そう言えば、ちゃんと話してませんでしたね」
『うん、で、待ち合わせ場所なんだけど、、、』

と、細かい話を決めて行って電話も終わりかなって思ったら。
『ねぇ、今日あった金髪の男の子とはどういう関係?』
「それは、どういう意味でしょう?」
『うん?君が僕と婚約破棄して会社で同盟組もうとしてるのは分かってるけど、君がそれにはっきり踏み込もうとしたのはつい最近でしょ?』
「、、、それと彼は関係ないですよ」
『はははっ、そっか。関係ないのか~』
「、、、なんですか、何が言いたいんですか?」
『いや、鳴瀬さんが迷っているのなら背中を押してあげたくてね』
「、、、迷っているように見えましたか?」
『うん、僕にはね、、、もしかしてだけど君が遠慮する理由は“あれ”?』
「、、、。」
『ふふ、だんまりは肯定とするね』
「、、、わかって言ってますよね?」
『はははっ、、、鳴瀬さん』
「なんでしょう?」
『君には過去に縛られない、自由な世界で生きて欲しい。、、、もちろん“あれ”を忘れて欲しいわけじゃない。それで苦しんでるなら話は別だけどね』
「、、、樹さん?」
『、、、君が幸せになっちゃいけないなんて誰もきめてないし言っていないよ、、、幸せになれ、鳴瀬。』
「、、、なぜ私の周りの“次期”達はこんなにも頼りがいのある人ばかりなんでしょうか?」
『君の人望がなせる技だね』
「、、、そんなこと」
『なければ今僕は君と電話なんてしていないよ』
「、、、ありがとうございます」
『うん、素直でよろしい、、、それじゃあ、また明日』
「はい、おやすみなさい。、、、いい夢を」
『うん、お互いね。おやすみ』

と言って電話を切った。
、、、涙でそう。
これは早急に彼の新たな出会いを探してあげたい、、、うん。切実に。

、、、皆の頭に夢乃が出てきたのは気の所為よ(洗脳)


それに、、、しばらくしなくても鷹村君にはあえるような気がするから、その時に思いを伝えられたらいいな。
、、、それでもケジメとして“あの過去”を言わなきゃいけないよね。
「自由に生きろ、、、か。難しい話ね」
、、、それでも、もし自由が許されるのならば。
、、、彼の隣に私はいてもいいだろうか。

、、、なんだ、私は思っているより随分と彼に絆されたみたい。
、、、彼に嫌われたくない、離れて欲しくないって思うなんて。
、、、私が恋愛、か。


『総帥になるというのに!1人でこんなことも出来ないなんて!!』
『いい!?こんなことでつまづくようでは揚げ足を取られてしまうわ!!!なんてだらしがない!!!』
『誰かに助けを求めるなど言語道断!1人でなさい!!!』
『、、、ごめんない。ごめんなさいお母様。許してください、、、』
『謝って済むのならば争いなんて起きないのよ!!!』
、、、怒鳴られながら幾度となく蹴られ、殴られた身体にノンストップで叩き込まれた仕事のノウハウをキャパオーバーになるまで覚えた為にズキズキと痛む頭。心身ともにボロボロだった。
それでも耐えたのは、優希や夢がいたから。
それに、いつか養母が私に“ありがとう”と言ってくれるのを待っているから。

、、、未だに、有り得そうにないけれど。
、、、そんな人が、果たして鷹村君を許してくれるだろうか?

、、、あの人養母は私に自由を与えてくれるのだろうか。

「、、、まぁ、諦めるつもりは無いけれど、、、」

と、苦しそうな表情になった後、ため息をついて鳴瀬は眠りにつくのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

結婚式の日取りに変更はありません。

ひづき
恋愛
私の婚約者、ダニエル様。 私の専属侍女、リース。 2人が深い口付けをかわす姿を目撃した。 色々思うことはあるが、結婚式の日取りに変更はない。 2023/03/13 番外編追加

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...