愛を知らない私と僕

こむぎ

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「あなたには、この財閥の総帥を継いでいただきます。」
「そのためにあなたを引き取ったのですから。」
「総帥に相応しくなければまた、孤児院に返します。」
「、、、覚悟なさい。」

、、、里親である母との初めての会話はこれだった。
いや、会話とも呼べないが。
かく言う私はまた捨てられるのが嫌なわけで。
ただただ「はい」としか言えなかった。

それからは過酷だった。
引き取られたのは4歳ぐらい。
なのにもう中学校卒業レベルの勉強。
つまりは高校入学レベル。
周りはただただ驚いていたけど。
母はそうではなかった。

「これくらい、総帥になるのならできて当たり前でしょう」

これが口癖。
これにもやっぱり「はい」一択。
なんだか人形みたいだなぁって自覚するには十分な塩対応。
、、、母なのに。
そう何回思ったかな。
何回甘えたいって思ったかな。
お母さんって、ママって、呼んで見たいって何回思ったかな。

、、、実際はそうもいかなくて。
実は双子の妹も一緒に引き取られてて。
容姿は一見そっくり。
でも、よく見ると全然ちがくて。
私たちをよく知る人は「似てないよー」って言ってくる。
うん、私なんかより全然可愛いよ。
妹は、、、優希は、性格も明るくて健気な子。
大人しくて地味は私とは大違い。

母は私を「総帥」として引き取り、優希を「娘」として引き取った。
だから、私は高校の勉強をしてるけど、優希は年相応の勉強。
母からの愛を一心に受けて育った優希。
それを遠くから眺めるしかできなかった私。
、、、孤児院にいた頃はずっと一緒だった。
仲が良くて「ここを出ても一緒がいいね」って何度も言い合ってた。
だから、二人一緒に引き取られるって言われた時はすっごく嬉しかった。
、、、キャラじゃないけど、飛び跳ねて喜んでた。
なのに今はすれ違ってもお互い何も言わないし、言えない。
会釈も、目を合わせることでさえなかった。
、、、きっと優希は分かってた。
姉である私は愛されてなくて、自分だけが愛されてるって。
、、、悔しさはなかった。
もう心が壊れてたのかもしれない。
今となっては分からないけど。

、、、昔話もここまでにしようかな。
今の私に戻ろう。
、、、部下のミスの現実逃避から戻ろうかな。
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