4 / 27
4話 悪意の一手
しおりを挟む
ロザリンデはよく眠るタイプの人間だ。一度眠れば滅多なことでは起きないが、その日はなぜかふと目が覚めた。
「どうして、目が覚めたのかしら……」
こんなことは初めてだった。再び眠ろうとしたが、妙にそわそわして眠れない。
気分を変えようと、カーテンを開ける。まだ夜明けは遠く、丸い月が夜空に煌々と輝いていた。
鍵を開け、ベランダに出る。ロザリンデのために整えられた美しい庭を眺めようと、庭に目を向けた。
「え……」
庭にひとつの影があった。
男が、ロザリンデのいる部屋を見上げている。
「あなた、まさか――」
ロザリンデと目が合ったことに気付いたのか、男は慌てたように踵を返した。
「待ちなさいっ!」
男の影がみるみるうちに小さくなっていく。
ロザリンデはベランダの手すりから身を乗り出し、逃げていく男を食い入るように睨みつける。
間違いない、あの男は――。
「お嬢様!? どうなさったのですか!」
異変を聞きつけた護衛がロザリンデに駆け寄る。夜着のままベランダに出ていたことに眉をひそめ、彼女は着ていた上着をかけようとした。
だが、ロザリンデはその手を払いのけ、外を指さした。
「あの男がいたの。今すぐ追いかけて捕まえなさい!」
「え……あの男とは」
「ライナスよ! あの無礼者、まだこの屋敷にいたの! 解雇したはずなのに……ふざけてるわ! 相応の報いを与えてやらないと、気がすまないの!」
護衛は困惑したまま動こうとはしない。苛立ったロザリンデは彼女を叱責し、ライナスを追いかけさせた。
だが、時間が経ってしまったからか、ライナスを捕まえることはできなかった。
翌日、ロザリンデは兄に抗議した。
何故、解雇したはずの男がまだこの屋敷にいるのかと。自分に嘘をついたのかと。
「ライナスには相応の罰を与えたと言っただろう? その男は他の使用人の誰かだ。寝ているはずのお前がいたから、びっくりして逃げただけだろう」
「嘘よ! この目でしっかり見たもの! あの男は間違いなくライナスだったわ!」
「……お前は寝ぼけていたんだよ」
言い聞かせるように告げる兄に、ロザリンデは悟った。
兄は本当のことを言うつもりがなく、適当にこの場を凌ごうとしている。
たとえロザリンデがライナスをひっ捕らえて兄の前に差し出したとしても、兄は理由をつけてライナスを解雇しないだろう。
ライナスの剣の腕は相当なものだと聞いている。治安の悪化している今、優れた護衛を手放す気がないのだろう。
ロザリンデは腹を立てた。嘘をつかれていたことも、自分の希望が叶えられないことも、苛立たしくて仕方なかった。
どうすれば、あの男をこの屋敷から追い出すことができるのか。
ロザリンデは一晩考え、答えを出した。
「呼び出してほしいって……ライナスさんをですか?」
勤め始めて日が浅い侍女は、ロザリンデの頼みに戸惑いを見せた。
兄にライナスの存在をロザリンデに悟らせるなと厳命されているのだろう。
「そう。……ああ、隠しても無駄よ? まだこの屋敷にいるのはわかってるんだから」
「ですが、お嬢様……」
「別に解雇するつもりはないわ。ただ話がしたいだけ。お兄様には内緒で来るようにと伝えるのも忘れずにね。……呼んできてくれるでしょう?」
圧を強めて言えば、侍女は怯えながら了承した。
そして約束の日時に、侍女はロザリンデの部屋にライナスを連れてきた。
「お嬢様……」
気まずそうな表情を浮かべたライナスに、ロザリンデは笑顔を浮かべた。
「この間は悪かったわ。せっかくあなたが持ってきてくれた花をダメにしてしまって」
「……! い、いいえ! あれは俺が無神経だったせいです! お嬢様に不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げるライナスを、ロザリンデは静かに見下ろす。
「あの花は私を喜ばせるために持ってきたのよね? 私のためを思って」
「……はい」
「なら、あなたにお願いがあるんだけど」
ライナスが顔をあげる。先日の失態を挽回できるチャンスだと思っているのか、期待の籠もった眼差しをロザリンデに向ける。
「私を、ここから連れ出してくれない?」
緑の目が大きく見開かれる。
神の子が外に出ることは滅多にない。希少で神秘的な存在は邪な者に狙われやすく、拐かして生贄や儀式に用いる者が過去に続出したからだ。
神の子は屋敷なり大聖堂なりに大事に囲われる。大聖堂では時折開かれるミサなどで民衆へ講演をすることもあるらしいが、保護されてからは一度も外に出ることなく生涯を終えるのがザラだった。
「お嬢様、それは……」
ロザリンデは神の子であり、貴族でもある。ただの使用人が護衛もなしに連れ出すなど大罪だ。
バレれば、ただではすまないだろう。
「少しの時間でいいのよ。ちょっと街を見てみるだけ。いなくなったのに気づかれる前に戻るわ。……ダメかしら?」
惑うように緑の瞳が揺れる。
それをロザリンデはじっと見つめた。この男は必ず頷くだろうと信じて。
ライナスは目を閉じ、大きく息を吐いた。次にその瞳が開かれた時、そこには覚悟の色があった。
「お嬢様が望まれるのでしたら……お連れいたします」
ロザリンデは満足気に微笑んだ。
これで、この男を屋敷から排除できると。
ライナスと約束してから三日経った雨の日、作戦は実行された。
事前に用意していた町娘の服をまとい、焦げ茶のウィッグをつける。赤い瞳を隠すことはできないが、帽子を被ればバレにくいだろう。
今日は雨だから、雨傘で隠すこともできる。
護衛や侍女には一日部屋に籠もるから放っておくように命じ、ロザリンデはこっそりと部屋を抜け出した。
あえて癇癪を起こしたフリをしたから、彼女たちはロザリンデが呼ぶまで控室で待機している。そうしなければ、叱責されると学習しているから。
おかげで誰に見咎められることもなく、ロザリンデは屋敷を抜け出すことができた。
日頃の行いはこういうところで役に立つのだとロザリンデはしみじみ思った。
「お嬢様」
約束の場所にライナスは既に来ていた。彼は緊張した面持ちでロザリンデに手を差し出す。
「行きましょう。……まだ午前中なので、散策も十分楽しめるでしょう」
使用人用の出入り口に向かう。この屋敷は厳重に警備がされていて、常にふたりの門番が配置されている。
だが、外から中への審査は厳しくとも、中から外へはおざなりであることが多い。外出時にライナスと共にいたと門番が覚えていれば、入る時も容易いだろう。
ライナスにはそう伝えていた。
「お嬢様は甘い物がお好きでしたよね? おすすめのお店があるんです。女性に人気のところでーー」
ロザリンデの手を引きながら、ライナスは語る。やけに饒舌なのは緊張をほぐすためだろうか。
使用人の出入り口が近づくと、ロザリンデの正体を悟らせないために、ライナスは敬語を外した。
ライナスは門番に連れの侍女とともに外出をすることを告げる。
門番はちらりとロザリンデに目を向けたが、ただの侍女だと判断したのか、すぐにライナスに視線を戻し、通行の許可を出した。
「さあ、行こうか」
安堵した様子のライナスは、ロザリンデの手を引いて屋敷の外に一歩足を踏み出す。
その時だった。
「――お待ち下さい、お嬢様!」
あの協力者の侍女の声が響き渡る。
繋いでいたライナスの手が強張ったのが、ロザリンデにもはっきりとわかった。
ロザリンデはライナスの手を振り払う。
「えっ……」
ライナスがロザリンデを振り返った。驚愕に見開かれた瞳が、ロザリンデを見つめている。
「もう、茶番は終わりよ。……ちょっと! 何ぼさっとしてるの! この誘拐犯を捕まえなさい!」
帽子を脱ぎ、白銀の神と赤い瞳をあらわにしたロザリンデは、門番を睨みつける。
門番は顔色を変え、慌ててライナスを捕らえた。
地面に押さえつけられたライナスは泥にまみれながら、ロザリンデを見上げる。拘束された時に打ちつけたのか、その額から血が流れている。
「最初から……このつもりだったんですか?」
ライナスが声を震わせ、ロザリンデに問う。
「全部、嘘だったんですか? ここから連れ出してほしいって、言ってたのに――」
「当たり前よ。こんな快適なところから、誰が出たいと思うの? それに、あなたのような薄汚い男に連れ出してもらいたいなんて思わないわ」
「そう、ですか……」
ライナスの顔はひどく青ざめていた。
彼はうつむき、肩を震わせたかと思うと笑い声を上げた。
笑い声にロザリンデに眉をひそめると、ライナスはロザリンデを睨みつけた。
「――なら、お前には報いを受けさせてやる。傲慢でわがままなお前に相応しい報いを」
吐き捨てるように告げたライナスの声はさほど大きくなかったのに、ロザリンデの耳にはっきりと届いた。
不敬を重ねる男の表情には後悔も恐怖もなく、ただ煮えたぎるような怒りがあった。
慌てて門番がライナスの首を押さえつける。彼の呻きが響く中、ロザリンデは興味を失ったように踵を返した。
ロザリンデ・グレイディがライナスの姿を見たのはそれが最後だった。
「どうして、目が覚めたのかしら……」
こんなことは初めてだった。再び眠ろうとしたが、妙にそわそわして眠れない。
気分を変えようと、カーテンを開ける。まだ夜明けは遠く、丸い月が夜空に煌々と輝いていた。
鍵を開け、ベランダに出る。ロザリンデのために整えられた美しい庭を眺めようと、庭に目を向けた。
「え……」
庭にひとつの影があった。
男が、ロザリンデのいる部屋を見上げている。
「あなた、まさか――」
ロザリンデと目が合ったことに気付いたのか、男は慌てたように踵を返した。
「待ちなさいっ!」
男の影がみるみるうちに小さくなっていく。
ロザリンデはベランダの手すりから身を乗り出し、逃げていく男を食い入るように睨みつける。
間違いない、あの男は――。
「お嬢様!? どうなさったのですか!」
異変を聞きつけた護衛がロザリンデに駆け寄る。夜着のままベランダに出ていたことに眉をひそめ、彼女は着ていた上着をかけようとした。
だが、ロザリンデはその手を払いのけ、外を指さした。
「あの男がいたの。今すぐ追いかけて捕まえなさい!」
「え……あの男とは」
「ライナスよ! あの無礼者、まだこの屋敷にいたの! 解雇したはずなのに……ふざけてるわ! 相応の報いを与えてやらないと、気がすまないの!」
護衛は困惑したまま動こうとはしない。苛立ったロザリンデは彼女を叱責し、ライナスを追いかけさせた。
だが、時間が経ってしまったからか、ライナスを捕まえることはできなかった。
翌日、ロザリンデは兄に抗議した。
何故、解雇したはずの男がまだこの屋敷にいるのかと。自分に嘘をついたのかと。
「ライナスには相応の罰を与えたと言っただろう? その男は他の使用人の誰かだ。寝ているはずのお前がいたから、びっくりして逃げただけだろう」
「嘘よ! この目でしっかり見たもの! あの男は間違いなくライナスだったわ!」
「……お前は寝ぼけていたんだよ」
言い聞かせるように告げる兄に、ロザリンデは悟った。
兄は本当のことを言うつもりがなく、適当にこの場を凌ごうとしている。
たとえロザリンデがライナスをひっ捕らえて兄の前に差し出したとしても、兄は理由をつけてライナスを解雇しないだろう。
ライナスの剣の腕は相当なものだと聞いている。治安の悪化している今、優れた護衛を手放す気がないのだろう。
ロザリンデは腹を立てた。嘘をつかれていたことも、自分の希望が叶えられないことも、苛立たしくて仕方なかった。
どうすれば、あの男をこの屋敷から追い出すことができるのか。
ロザリンデは一晩考え、答えを出した。
「呼び出してほしいって……ライナスさんをですか?」
勤め始めて日が浅い侍女は、ロザリンデの頼みに戸惑いを見せた。
兄にライナスの存在をロザリンデに悟らせるなと厳命されているのだろう。
「そう。……ああ、隠しても無駄よ? まだこの屋敷にいるのはわかってるんだから」
「ですが、お嬢様……」
「別に解雇するつもりはないわ。ただ話がしたいだけ。お兄様には内緒で来るようにと伝えるのも忘れずにね。……呼んできてくれるでしょう?」
圧を強めて言えば、侍女は怯えながら了承した。
そして約束の日時に、侍女はロザリンデの部屋にライナスを連れてきた。
「お嬢様……」
気まずそうな表情を浮かべたライナスに、ロザリンデは笑顔を浮かべた。
「この間は悪かったわ。せっかくあなたが持ってきてくれた花をダメにしてしまって」
「……! い、いいえ! あれは俺が無神経だったせいです! お嬢様に不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げるライナスを、ロザリンデは静かに見下ろす。
「あの花は私を喜ばせるために持ってきたのよね? 私のためを思って」
「……はい」
「なら、あなたにお願いがあるんだけど」
ライナスが顔をあげる。先日の失態を挽回できるチャンスだと思っているのか、期待の籠もった眼差しをロザリンデに向ける。
「私を、ここから連れ出してくれない?」
緑の目が大きく見開かれる。
神の子が外に出ることは滅多にない。希少で神秘的な存在は邪な者に狙われやすく、拐かして生贄や儀式に用いる者が過去に続出したからだ。
神の子は屋敷なり大聖堂なりに大事に囲われる。大聖堂では時折開かれるミサなどで民衆へ講演をすることもあるらしいが、保護されてからは一度も外に出ることなく生涯を終えるのがザラだった。
「お嬢様、それは……」
ロザリンデは神の子であり、貴族でもある。ただの使用人が護衛もなしに連れ出すなど大罪だ。
バレれば、ただではすまないだろう。
「少しの時間でいいのよ。ちょっと街を見てみるだけ。いなくなったのに気づかれる前に戻るわ。……ダメかしら?」
惑うように緑の瞳が揺れる。
それをロザリンデはじっと見つめた。この男は必ず頷くだろうと信じて。
ライナスは目を閉じ、大きく息を吐いた。次にその瞳が開かれた時、そこには覚悟の色があった。
「お嬢様が望まれるのでしたら……お連れいたします」
ロザリンデは満足気に微笑んだ。
これで、この男を屋敷から排除できると。
ライナスと約束してから三日経った雨の日、作戦は実行された。
事前に用意していた町娘の服をまとい、焦げ茶のウィッグをつける。赤い瞳を隠すことはできないが、帽子を被ればバレにくいだろう。
今日は雨だから、雨傘で隠すこともできる。
護衛や侍女には一日部屋に籠もるから放っておくように命じ、ロザリンデはこっそりと部屋を抜け出した。
あえて癇癪を起こしたフリをしたから、彼女たちはロザリンデが呼ぶまで控室で待機している。そうしなければ、叱責されると学習しているから。
おかげで誰に見咎められることもなく、ロザリンデは屋敷を抜け出すことができた。
日頃の行いはこういうところで役に立つのだとロザリンデはしみじみ思った。
「お嬢様」
約束の場所にライナスは既に来ていた。彼は緊張した面持ちでロザリンデに手を差し出す。
「行きましょう。……まだ午前中なので、散策も十分楽しめるでしょう」
使用人用の出入り口に向かう。この屋敷は厳重に警備がされていて、常にふたりの門番が配置されている。
だが、外から中への審査は厳しくとも、中から外へはおざなりであることが多い。外出時にライナスと共にいたと門番が覚えていれば、入る時も容易いだろう。
ライナスにはそう伝えていた。
「お嬢様は甘い物がお好きでしたよね? おすすめのお店があるんです。女性に人気のところでーー」
ロザリンデの手を引きながら、ライナスは語る。やけに饒舌なのは緊張をほぐすためだろうか。
使用人の出入り口が近づくと、ロザリンデの正体を悟らせないために、ライナスは敬語を外した。
ライナスは門番に連れの侍女とともに外出をすることを告げる。
門番はちらりとロザリンデに目を向けたが、ただの侍女だと判断したのか、すぐにライナスに視線を戻し、通行の許可を出した。
「さあ、行こうか」
安堵した様子のライナスは、ロザリンデの手を引いて屋敷の外に一歩足を踏み出す。
その時だった。
「――お待ち下さい、お嬢様!」
あの協力者の侍女の声が響き渡る。
繋いでいたライナスの手が強張ったのが、ロザリンデにもはっきりとわかった。
ロザリンデはライナスの手を振り払う。
「えっ……」
ライナスがロザリンデを振り返った。驚愕に見開かれた瞳が、ロザリンデを見つめている。
「もう、茶番は終わりよ。……ちょっと! 何ぼさっとしてるの! この誘拐犯を捕まえなさい!」
帽子を脱ぎ、白銀の神と赤い瞳をあらわにしたロザリンデは、門番を睨みつける。
門番は顔色を変え、慌ててライナスを捕らえた。
地面に押さえつけられたライナスは泥にまみれながら、ロザリンデを見上げる。拘束された時に打ちつけたのか、その額から血が流れている。
「最初から……このつもりだったんですか?」
ライナスが声を震わせ、ロザリンデに問う。
「全部、嘘だったんですか? ここから連れ出してほしいって、言ってたのに――」
「当たり前よ。こんな快適なところから、誰が出たいと思うの? それに、あなたのような薄汚い男に連れ出してもらいたいなんて思わないわ」
「そう、ですか……」
ライナスの顔はひどく青ざめていた。
彼はうつむき、肩を震わせたかと思うと笑い声を上げた。
笑い声にロザリンデに眉をひそめると、ライナスはロザリンデを睨みつけた。
「――なら、お前には報いを受けさせてやる。傲慢でわがままなお前に相応しい報いを」
吐き捨てるように告げたライナスの声はさほど大きくなかったのに、ロザリンデの耳にはっきりと届いた。
不敬を重ねる男の表情には後悔も恐怖もなく、ただ煮えたぎるような怒りがあった。
慌てて門番がライナスの首を押さえつける。彼の呻きが響く中、ロザリンデは興味を失ったように踵を返した。
ロザリンデ・グレイディがライナスの姿を見たのはそれが最後だった。
1
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる