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静夏の恋!?

始まりは突然に

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 「昴君ちょっといいか?」

 昼休みを終えて自分の部署に戻ろうとしたらこの会社の社長に呼び止められた。

 「あ、真実さ…水野社長…どうしたんですか?」

 慌てて言い直しながら水野社長を見る。

 

 社長室に通されてお茶を出された。

 「あの…戻らないと静夏…さんにドヤされるから…」

 水野社長はふっと笑う。

 …いつ見てもロマンスグレーなイケメンだなあ。

 水野社長は電話をかけ、電話に出た静夏にしばらく昴君を借りると言ってくれた。

 これでまあ、少なくとも静夏にどやされることはないはずだ。

 「…それで、どうしたんですか?ひょっとして静夏の事ですか?」

 なんとなくそう思って水野社長に聞く。

 「そうなんだ。なんかあいつ最近変なんだけど、何か知ってるか?」

 「変って…静夏はいつも変だけど…」

 そう言いながら今朝の彼女の事を思い出していた。

 

 ★


 「もう、気をつけなさいよ…」

 今朝遅刻して、慌てふためきながら出勤し、静夏に謝りに行った時の静夏の反応が確かにおかしかった。 

 いつもだったら頬をつねるとか、背中の一つでも叩かれそうな状況だったのに、その一言で済んだのだった。

 ホッとしながら自分の席について、そっと静夏を観察する。

 …腹でも痛いんだろうか?

 …静夏は相変わらず美人で、彼女の性格のキツさが余計にそれ際立たせるが、優しいところも、意外と面倒見がいいのも皆んな知っているのでむしろ好かれていた。

 …遅刻した分取り返そう、昼休みを削って仕事をしようとしていたら『ご飯ちゃんと食べないと力が出るはずないんだから、遅刻した分取り返したいのならむしろきっちり休憩してきなさいよ!それに昴が身体壊したらすずしろちゃんどうするのよっ』っと仕事場を追い出されて…。



 「静夏…今日は妙に優しかったですね。何かあったのかな…」

 思わず呟くと真実さんは口元を手で触る。

 「…それがしりたいんだよ。変な男にでも引っ掛かってるんじゃあなければ良いんだが…」

 と心配し始める。

 「引っ掛かるって…静夏…恋でもしてるんですかね?」

 「その可能性はあると思うんだが…静夏は唯に似て美人だし、面倒見が良いし…」

 真実さんが机に飾られた家族写真を眺めながら微笑む。

 …。

 家族四人、仲良く笑うその写真は幸せのカタチそのものだと思った。


 
 「まあ何か分かったら連絡します」

 そう言って真実さんと別れて、静夏の待つオフィスに戻る。

 「昴、パパの用ってなんだったのよ?」

 席に戻るなり静夏が詰め寄ってきたので、素直に教えることにした。

 「水野社長、静夏のこと心配していたよ?最近なんか変だって。どうしたの?身体の調子悪いの?」

 …そう聞くと静夏が少し赤くなった。

 「別に…そんなわけじゃあ…ただね、最近気になる子ができたのよ」

 …!!?

 なんだって!?

 

 
 
 
 
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