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水野家の一大事

ネコまたお悩み相談

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 「…で?どうしたの?一体?」

 思いっきり泣いて、泣き疲れてぐったりとしていたらすずしろがピッタリと寄り添ってくれていた。
 
 背中をペシペシとしっぽであやすようにたたいてくれている。

 「…俺の父さん…もうそんなに長くないみたい。末期の癌なんだってさ…」

 すずしろに癌なんて言って理解できるのか分からなかったがそう伝える。

 不思議そうな顔でこちらを見つめてくるすずしろ。

 「えっと、癌っていうのは…」

 「分かってるよ。スバルの思考のイメージが伝わって来たから。…でもおかしいなあ…」

 すずしろはそう言って何かを考え始める。

 「…おかしいって何が?」

 そう聞くがすずしろは答えてくれなかった。

 …なるべく早いうちに父に会いたい、そうすずしろは言った。



 
 ★


 
 実家には昴が生まれる前から猫がいた。

 すずしろという名の身体の大きな白猫で、昴達と兄妹同様に育って来た。

 …兄妹…昴にとってのすずしろは兄の様だった。

 泣いていれば側に来て慰められて、一緒に遊んだり、ご飯を食べたりしていつも一緒だった。

 すずしろは昴が20歳になるまで生きて、そして亡くなった。

 22歳という…猫にとっては非常に長生きの部類に入ると思う。


 だから父も母も猫は大好きだ。

 最近すらりとした体つきの三毛猫を飼い始めたと報告を受けたばかりだった。

 なのですずしろを連れて帰っても問題はないはずだ。

 すずしろがどうしても父に会いたいとしつこいので母に連絡を取り、その週の土日に泊まりで帰ると伝えた。

 「何よ昴ったら、透が言っても帰ってこないくせに。どうしたの突然?透…お父さんに借金でもしようって思ってないでしょうねっ」

 電話の向こうで母が楽しそうに笑う。

 …まだ知らないんだな…。

 思わず泣きそうになってしまうのを堪えて少し話をした後電話を切る。

 母は気をつけて帰って来なさいと嬉しそうに言ってくれた。
 
 …母は父の事を知ったら…どうなってしまうんだろう…。

 …考えたくなかった。

 …泣くだろうか…

 …。


 
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