5 / 17
水野家の一大事
ネコまたお悩み相談
しおりを挟む
「…で?どうしたの?一体?」
思いっきり泣いて、泣き疲れてぐったりとしていたらすずしろがピッタリと寄り添ってくれていた。
背中をペシペシとしっぽであやすようにたたいてくれている。
「…俺の父さん…もうそんなに長くないみたい。末期の癌なんだってさ…」
すずしろに癌なんて言って理解できるのか分からなかったがそう伝える。
不思議そうな顔でこちらを見つめてくるすずしろ。
「えっと、癌っていうのは…」
「分かってるよ。スバルの思考のイメージが伝わって来たから。…でもおかしいなあ…」
すずしろはそう言って何かを考え始める。
「…おかしいって何が?」
そう聞くがすずしろは答えてくれなかった。
…なるべく早いうちに父に会いたい、そうすずしろは言った。
★
実家には昴が生まれる前から猫がいた。
すずしろという名の身体の大きな白猫で、昴達と兄妹同様に育って来た。
…兄妹…昴にとってのすずしろは兄の様だった。
泣いていれば側に来て慰められて、一緒に遊んだり、ご飯を食べたりしていつも一緒だった。
すずしろは昴が20歳になるまで生きて、そして亡くなった。
22歳という…猫にとっては非常に長生きの部類に入ると思う。
だから父も母も猫は大好きだ。
最近すらりとした体つきの三毛猫を飼い始めたと報告を受けたばかりだった。
なのですずしろを連れて帰っても問題はないはずだ。
すずしろがどうしても父に会いたいとしつこいので母に連絡を取り、その週の土日に泊まりで帰ると伝えた。
「何よ昴ったら、透が言っても帰ってこないくせに。どうしたの突然?透…お父さんに借金でもしようって思ってないでしょうねっ」
電話の向こうで母が楽しそうに笑う。
…まだ知らないんだな…。
思わず泣きそうになってしまうのを堪えて少し話をした後電話を切る。
母は気をつけて帰って来なさいと嬉しそうに言ってくれた。
…母は父の事を知ったら…どうなってしまうんだろう…。
…考えたくなかった。
…泣くだろうか…
…。
思いっきり泣いて、泣き疲れてぐったりとしていたらすずしろがピッタリと寄り添ってくれていた。
背中をペシペシとしっぽであやすようにたたいてくれている。
「…俺の父さん…もうそんなに長くないみたい。末期の癌なんだってさ…」
すずしろに癌なんて言って理解できるのか分からなかったがそう伝える。
不思議そうな顔でこちらを見つめてくるすずしろ。
「えっと、癌っていうのは…」
「分かってるよ。スバルの思考のイメージが伝わって来たから。…でもおかしいなあ…」
すずしろはそう言って何かを考え始める。
「…おかしいって何が?」
そう聞くがすずしろは答えてくれなかった。
…なるべく早いうちに父に会いたい、そうすずしろは言った。
★
実家には昴が生まれる前から猫がいた。
すずしろという名の身体の大きな白猫で、昴達と兄妹同様に育って来た。
…兄妹…昴にとってのすずしろは兄の様だった。
泣いていれば側に来て慰められて、一緒に遊んだり、ご飯を食べたりしていつも一緒だった。
すずしろは昴が20歳になるまで生きて、そして亡くなった。
22歳という…猫にとっては非常に長生きの部類に入ると思う。
だから父も母も猫は大好きだ。
最近すらりとした体つきの三毛猫を飼い始めたと報告を受けたばかりだった。
なのですずしろを連れて帰っても問題はないはずだ。
すずしろがどうしても父に会いたいとしつこいので母に連絡を取り、その週の土日に泊まりで帰ると伝えた。
「何よ昴ったら、透が言っても帰ってこないくせに。どうしたの突然?透…お父さんに借金でもしようって思ってないでしょうねっ」
電話の向こうで母が楽しそうに笑う。
…まだ知らないんだな…。
思わず泣きそうになってしまうのを堪えて少し話をした後電話を切る。
母は気をつけて帰って来なさいと嬉しそうに言ってくれた。
…母は父の事を知ったら…どうなってしまうんだろう…。
…考えたくなかった。
…泣くだろうか…
…。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
番外編は思いついたら追加していく予定です。
<レジーナ公式サイト番外編>
「番外編 相変わらずな日常」
レジーナ公式サイトにてアンケートに答えていただくと、書き下ろしweb番外編をお読みいただけます。
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる