◆妻が好きすぎてガマンできないっ★

昇る朝日

　明け方、カラカラっと窓を開ける音で目を覚ます。

　…リビングだろう。
　浅川さんがそんなに早く目を覚ますとも思えないし、多分真実だ。

　起きあがろうとし、泉に抱きつかれているのに気づく。

　「泉ごめんね、トイレ行ってくる…」

　「んっ…」

　離れた泉が風邪をひかないようにしっかり毛布を掛けてリビングに移動する。

　…まだ6時…真実はいつも早起きだな…

　そっとリビングのドアを開けると薄明かりの中、まだ眠っている浅川さんときちんと畳まれた布団が一組…。

　ベランダに出るカーテンが少し空いている。

　そっと覗くと真実がベランダでタバコを吸っていた。

　ぼんやりと、ゆっくりとした動作でタバコを吸い続けている真実はなんだか疲れているように見えた。

　…なんだか放っておけずにベランダの窓を開ける。
　
　一月の早朝は自分の全身を切り付けるような寒さだ。

　「うわっ…寒っ！」

　思わず声を上げると真実が振り返った。

　「透…お前そんな格好で…風邪ひくぞ？」

　「そんなこと言ったら真実だって同じでしょ？寒く無いの！？」

　…透のパジャマを着た真実も当然薄着で、寒いはずだ。

　「ああ…寒いな…」

　そう言いながらも真実はタバコを吸う。

　…真実…どうしたんだろう？

　いつもと違って、少し落ち込んでるのか元気がないのか…。

　しかし真実をそのままにしてもおけなかったので両腕をさすりながら真実の隣にいく。

　「シンジってばせめてコート着たら？持ってこようか？」

　そう言うが何かを考えているのか真実はぼんやりと明るくなりかけている空を眺めている。

　…もういいや、コート持ってきちゃおうっ！

　お客さんに風邪をひかせるわけには行かないし、何より自分が寒すぎて死にそうだ。

　「真実、ちょっと待ってね？」

　空を眺める真実に声を掛けて部屋に戻ろうとすると唐突に真実が話しかけてきた。

　「透…今幸せか？」

　「へっ？！」

　何を言ってるんだろう？

　振り返ると真実が透を見つめている。

　「…？…うん。泉と結婚できて、幸せだよ」

　素直にそう答える。

　突然どうしてそんなこと聞くんだろう…そう思い真実を見つめ返す。

　目が合うと真実は困ったように笑った。

　「俺さ、お前のこと大事に思ってた。中学の頃からずっと…」

　そう言いながらふうっとため息をつく。

「…うん。オレだって真実のことお父さんみたいだなって思ってたよ、いつも優しかったし、オレの事守ってくれて…」

　「…お父さん…か」

　視線を逸らす真実…。

　真実は再びタバコを吸った。

　ゆっくりと煙を吐き出した真実はスっと姿勢を正す。

　そうして、真っ直ぐにオレを見つめた真実…。

　「今度は浅川を大事にしたいんだ。俺、今までみたいにお前だけを大事にはできなくなるけどいいか？」

　「…いいよ、そりゃあ当たり前でしょ？オレだって真実には幸せになって貰いたいってずっと思ってて、泉と結婚できたのだって真実のおかげだしさ！」

　やっぱり真実は浅川さんの事を…。

　嬉しくなる。

　浅川さんは気さくだし、面倒見も良くて、何より高校の時からずっと真実の事を好きでいてくれた子だ。

　そんな浅川さんなら真実の事を幸せにしてくれるはず。

　「あ、でもお願いだからこれからも色々相談には乗ってよ？オレも何かあったらいくらでも聞くからさっ★」

　そんな事を話していると窓が開いて泉が顔を出す。

　「おはよう二人とも寒くないのっ！？」

　続いて浅川さんも起きたようだ。

　「二人揃って何やってるのよ。こんなに寒いのに…風邪ひくわよ？」

　そう言いながら二人とも毛布に包まってベランダに出てくる。

　泉が抱きついてきて、毛布を掛けてくれる。

　「透冷たくなってる…」

　肩に掛けてくれた毛布で泉を包んで二人で抱き合う。

　…泉はあったかいな…

　
　
　「シンジ、おいでっ」

　浅川さんは真実を抱きしめて、毛布で包みこんだ。

　真実も幸せそうな顔で浅川さんに抱かれている。

　
　「もう陽が出てきたね」

　泉の声で空を見上げるとちょうど雲の隙間から太陽が昇るところだった。

　「私…こんな時間に起きてるのって久しぶりだわ…」

　浅川さんが微笑む。

　「今日もよく晴れそうだな」

　泉の身体をしっかり抱きしめる。
　泉の身体は柔らかく、温かい。
　こっそり毛布の中で泉のおっぱいを触る。

　「もう透ってばっ！ダメっ」

　小さな声で泉が身を捩りながら赤くなる。

　4人揃って陽が昇って行くのを眺めていた。

　
　…今年もいい年になりますように、そっと心の中で願った。