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年末に…
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31日の朝…真実の携帯が鳴った。
電話に出た真実は静かな声で話をしている…。
…大丈夫か?
そっちに行こうか?
相手を気づかっているところを見ると、浅川さんだろうか…。
嫌な予感がする…。
しばらく話をしていた真実が携帯を切る。
昨晩泊まっていた泉も気になったのか真実を見つめた。
「浅川の母さん…亡くなったそうだ…。」
真実はそう呟いてその場に座る…。
…。
「浅川さんに付いていてあげないで良いの?」
泉が真実に言う。
「…一人で良いって…。」
真実はそう言ったが…。
「…浅川さんについててあげなよ?俺だって…真実と泉がいてくれたから…乗り越えられたんだよ?」
真実にそう言うと真実は立ち上がって家を出て行った。
…。
人は…生き物はどうして死んでしまうんだろう…。
生きるために死ぬのか、死ぬために生きるのか…。
人は死んだらどこに行くのか…。
死んだら今こうして感じていることや考えていることは突然無になるのだろうか…。
死んだ義両親の顔が思い浮かぶ。
あの人たちは…なぜ…。
「透っ!透ってばっ!!」
泉の声にハッとする。
胸が苦しい…。
意識が遠くなって、泉の声も遠くなった。
★
気づいたらリビングに寝かされていた。
「…?」
傍で泉が眠っている。
「透クン…起きれる?」
泉のお母さんの声がするので振り向く。
「透クン…倒れちゃったのよ。頭痛くない?…浅川さんのお母さんの事…自分の事と重ねちゃってショックだったのね…。」
頭は…身体は平気そうだった。
泉のお母さんが額に触れる。
ひんやりとした手は冷たくて、気持ち良かった。
「透クン…やっぱり一人でいちゃダメよ。家にくるか、泉と一緒に居なさい。もしまた倒れたら…一人じゃ危ないわよ。」
「…でも…卒業するまでは…。」
「もうあと何ヶ月かなんだから構わないわよ。そんなことより透クンの方が大事よ?泉だってそう望んでるし…。」
お母さんはそう言って微笑む。
「それとも泉と居続ける自信ない?」
「…!!」
…そんな事あるはずが無かった。
「…透…大丈夫?」
泉が目を覚ます。
「…うん。もう大丈夫だから…心配させてごめん。」
★
泉のお母さんは泉を置いて帰って行った。
「お母さんも良いって言ってくれたしこれで透と年越しが一緒にできるねっ!」
泉は寂しそうに笑う。
一緒に夕飯の支度をしていると真実が帰ってきた。
「…浅川さん、大丈夫なの?」
「ああ…俺邪魔みたいだったから帰ってきた…。とりあえず浅川の顔は見れたし…。」
真実はそう言いながらため息をついた。
少し顔色が悪い真実をコタツに座らせる…。
真実はあまり話したがらなかったが無理矢理聞く。
…どうやら浅川さんの側に少し年上の男の人が付いていたらしい。
それでその人にやんわり帰されてしまったらしく…。
「…そうなんだ…。親戚とかかなあ?」
「…どうだろうな。」
気の抜けてしまったような真実に年越し蕎麦を出す。
「はいっ泉もどうぞっ★」
「美味しそうだねっ。」
お蕎麦と、泉のお母さんが置いて行ってくれたお惣菜をみんなで食べる。
「これでみんな…長生きできるかな…。」
…思わず呟くと真実が噴き出した。
「大丈夫だって、そう簡単に俺と泉が死ぬはずないだろ?なあ。」
「…でも。」
…人は案外呆気なく死ぬものだ…。
その言葉を飲み込む。
「…透の方こそ…長生きしてねっ!」
泉が抱きついてくる。
「…そうだね。泉と真実とずっと一緒に居たいし…長生きしなきゃねえ…。」
「いただきます。早く食わないと伸びるぞっ。」
真実がお蕎麦を食べ始めたのでそれに続いた。
「今日はここでみんなで寝ようか。」
リビングに布団を2つ並べて敷く。
真実は疲れたのでもう寝ると言って端っこで寝始めてしまった。
「真実…お疲れ様。」
真実が寒くないように毛布を掛ける。
寝るのにはまだ早い時間だったので布団に入りながら泉とテレビを見る。
布団の真ん中に入ると真実と肩が触れる。
「泉もおいでっ…。」
泉にもしっかり毛布を掛ける。
泉が抱きついてきたのでその背中を撫でる。
背後にいた真実が寝返る。
真実の額が背中に当たっている…。
真実はそのまま透の背中に額を押し付けてくる。
…眠れないんだろう…。
…浅川さんのこと心配してるんだろうな…。
胸には泉の体温、背中に真実にの体温を感じているとなんだか眠くなってしまう。
…二人が居てくれるから…幸せだな…。
電話に出た真実は静かな声で話をしている…。
…大丈夫か?
そっちに行こうか?
相手を気づかっているところを見ると、浅川さんだろうか…。
嫌な予感がする…。
しばらく話をしていた真実が携帯を切る。
昨晩泊まっていた泉も気になったのか真実を見つめた。
「浅川の母さん…亡くなったそうだ…。」
真実はそう呟いてその場に座る…。
…。
「浅川さんに付いていてあげないで良いの?」
泉が真実に言う。
「…一人で良いって…。」
真実はそう言ったが…。
「…浅川さんについててあげなよ?俺だって…真実と泉がいてくれたから…乗り越えられたんだよ?」
真実にそう言うと真実は立ち上がって家を出て行った。
…。
人は…生き物はどうして死んでしまうんだろう…。
生きるために死ぬのか、死ぬために生きるのか…。
人は死んだらどこに行くのか…。
死んだら今こうして感じていることや考えていることは突然無になるのだろうか…。
死んだ義両親の顔が思い浮かぶ。
あの人たちは…なぜ…。
「透っ!透ってばっ!!」
泉の声にハッとする。
胸が苦しい…。
意識が遠くなって、泉の声も遠くなった。
★
気づいたらリビングに寝かされていた。
「…?」
傍で泉が眠っている。
「透クン…起きれる?」
泉のお母さんの声がするので振り向く。
「透クン…倒れちゃったのよ。頭痛くない?…浅川さんのお母さんの事…自分の事と重ねちゃってショックだったのね…。」
頭は…身体は平気そうだった。
泉のお母さんが額に触れる。
ひんやりとした手は冷たくて、気持ち良かった。
「透クン…やっぱり一人でいちゃダメよ。家にくるか、泉と一緒に居なさい。もしまた倒れたら…一人じゃ危ないわよ。」
「…でも…卒業するまでは…。」
「もうあと何ヶ月かなんだから構わないわよ。そんなことより透クンの方が大事よ?泉だってそう望んでるし…。」
お母さんはそう言って微笑む。
「それとも泉と居続ける自信ない?」
「…!!」
…そんな事あるはずが無かった。
「…透…大丈夫?」
泉が目を覚ます。
「…うん。もう大丈夫だから…心配させてごめん。」
★
泉のお母さんは泉を置いて帰って行った。
「お母さんも良いって言ってくれたしこれで透と年越しが一緒にできるねっ!」
泉は寂しそうに笑う。
一緒に夕飯の支度をしていると真実が帰ってきた。
「…浅川さん、大丈夫なの?」
「ああ…俺邪魔みたいだったから帰ってきた…。とりあえず浅川の顔は見れたし…。」
真実はそう言いながらため息をついた。
少し顔色が悪い真実をコタツに座らせる…。
真実はあまり話したがらなかったが無理矢理聞く。
…どうやら浅川さんの側に少し年上の男の人が付いていたらしい。
それでその人にやんわり帰されてしまったらしく…。
「…そうなんだ…。親戚とかかなあ?」
「…どうだろうな。」
気の抜けてしまったような真実に年越し蕎麦を出す。
「はいっ泉もどうぞっ★」
「美味しそうだねっ。」
お蕎麦と、泉のお母さんが置いて行ってくれたお惣菜をみんなで食べる。
「これでみんな…長生きできるかな…。」
…思わず呟くと真実が噴き出した。
「大丈夫だって、そう簡単に俺と泉が死ぬはずないだろ?なあ。」
「…でも。」
…人は案外呆気なく死ぬものだ…。
その言葉を飲み込む。
「…透の方こそ…長生きしてねっ!」
泉が抱きついてくる。
「…そうだね。泉と真実とずっと一緒に居たいし…長生きしなきゃねえ…。」
「いただきます。早く食わないと伸びるぞっ。」
真実がお蕎麦を食べ始めたのでそれに続いた。
「今日はここでみんなで寝ようか。」
リビングに布団を2つ並べて敷く。
真実は疲れたのでもう寝ると言って端っこで寝始めてしまった。
「真実…お疲れ様。」
真実が寒くないように毛布を掛ける。
寝るのにはまだ早い時間だったので布団に入りながら泉とテレビを見る。
布団の真ん中に入ると真実と肩が触れる。
「泉もおいでっ…。」
泉にもしっかり毛布を掛ける。
泉が抱きついてきたのでその背中を撫でる。
背後にいた真実が寝返る。
真実の額が背中に当たっている…。
真実はそのまま透の背中に額を押し付けてくる。
…眠れないんだろう…。
…浅川さんのこと心配してるんだろうな…。
胸には泉の体温、背中に真実にの体温を感じているとなんだか眠くなってしまう。
…二人が居てくれるから…幸せだな…。
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