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11月の空気
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「大分寒くなったね…。」
学校からの帰り道、泉と夕飯の買い物を済ませて家に向かって歩く。
流石に11月ともなると寒くなってきた。
昨日出したマフラーを使っていた。
ふと泉を見ると首元が寒そうだった。
「泉、寒いでしょっ!」
慌てて着けていたマフラーを外し泉の首に巻きつけてやる。
「えっでも透っ…!」
「いいからっ女の子が身体冷やさない方がいいよ。」
そういうと泉は照れながら笑う。
「…ありがとう。」
季節は進みもう冬はすぐそこだ。
最近すっかり気持ちも落ち着いた。
泉のことも、穏やかな気持ちで向き合うことができる。
「腹減ったなあ…。」
思わず呟くと泉が笑った。
「早く帰ってご飯にしよっか。」
★
泉と並んで夕飯の準備をする。
こんばんはおでんだ。
泉が卵を茹でて殻を取る。
透は大根を切り、皮を剥いていた。
おでんの素と蒟蒻を鍋で煮ながら泉と話す。
「透はおでんの具何が1番好き?」
「ん…そうだな…俺はタマゴだよ。泉は?」
「私はだいこんかな…。味が染みたのが最高に美味しいのっ」
そんな会話をしながら夕飯を作る。
★
真実が帰ってくるまでまだ時間がある。
泉と交互に風呂に入って一緒にTVを見ていた。
TVでバスの旅という番組が始まった。
「良いなあ…神社巡りか…。」
都内の各地にある神社をバスと徒歩でめぐる様子を泉が楽しそうに見ている。
「あ、猫の神社だっ!」
テレビ画面に招き猫で有名な神社が映る。
「猫か…。」
小さい頃の思い出が蘇る。
「透、猫…キライ?」
「ん…好きだよ。」
透が微妙な顔をしていたのだろう。
泉が不安そうに見つめてくる。
「昔さ…。」
泉には話そうと思った。
小さい頃、透は一度猫と仲良くなった事があった。
あまり早く帰って来るなと言われていたので毎日河原で1人で座り込んで時間を過ごしていた時期があった。
その日は運が悪く雨が降っていた。
しかし変わらず早く帰れなかったので橋の下で雨を避けて座っていたらいつの間にかに寝てしまっていたのだ。
なぜかとても暖かくて起きる。
起きるが身体が重くて起き上がる事ができない。
目を開けると腹と胸の上に1匹ずつ大きな猫が透の上で眠っていた。
2匹の猫は透を温める様に寝てくれていたためすごく暖かくてモフモフで幸せだった。
そう話すと泉は複雑そうな顔になる。
「それで、透その後どうなったの?」
「二度寝しちゃってさ、気づいたら真っ暗になってて…慌てて帰ったら帰るの遅すぎるって殴られたけど、猫可愛かったなあ…。その後も何度か橋の下に行ったら猫に会えたりしたんだけど…?」
ふと泉が黙ってしまったのに気づく。
「泉?」
「ううん…何でもないよ。」
何かもっといい話し…。
「その時また外に追い出されちゃったんだけど隣の住んでたお姉さんがこっそり食べさせてくれたのがおでんだったんだ。美味かったな…。初めて食べたおでんのタマゴ。」
って…ますます泉が変な顔をしている。
っと思ったら泉がぼろぼろ涙を流し始める。
「えっ…泉っ!?」
泉の涙は花火大会以来だ…。
正直…どうしたらいいか分からなくなってしまう。
「ごめんっ変なこと言っちゃって…。」
「違うっ、透が悪いんじゃないっ!」
泣いている泉をなんとかしようと思った。
思わず泉を抱きしめると泉は透の胸に顔を押し付けて泣き出してしまう。
「ごめんっ透の話しを聞きたがったのは私なのにっ!」
★
パサっと暖かい毛布を掛けられる。
目を覚ますと真実が帰ってきていた。
「そのまま寝てろよ。」
真実は微笑む。
「?」
ふと身体が重くて何故かとても暖かいことに気づく。
…あの時の猫が乗ってる様な…。
見ると…泉が透の上で眠っている。
…あの時の猫みたいだ。
真実がふっと笑いながら電気を消して部屋から出ていく。
泉の温かさと重さに安心しながら再び眠りにつく。
こんな穏やかな気分になったのは久しぶりだった。
学校からの帰り道、泉と夕飯の買い物を済ませて家に向かって歩く。
流石に11月ともなると寒くなってきた。
昨日出したマフラーを使っていた。
ふと泉を見ると首元が寒そうだった。
「泉、寒いでしょっ!」
慌てて着けていたマフラーを外し泉の首に巻きつけてやる。
「えっでも透っ…!」
「いいからっ女の子が身体冷やさない方がいいよ。」
そういうと泉は照れながら笑う。
「…ありがとう。」
季節は進みもう冬はすぐそこだ。
最近すっかり気持ちも落ち着いた。
泉のことも、穏やかな気持ちで向き合うことができる。
「腹減ったなあ…。」
思わず呟くと泉が笑った。
「早く帰ってご飯にしよっか。」
★
泉と並んで夕飯の準備をする。
こんばんはおでんだ。
泉が卵を茹でて殻を取る。
透は大根を切り、皮を剥いていた。
おでんの素と蒟蒻を鍋で煮ながら泉と話す。
「透はおでんの具何が1番好き?」
「ん…そうだな…俺はタマゴだよ。泉は?」
「私はだいこんかな…。味が染みたのが最高に美味しいのっ」
そんな会話をしながら夕飯を作る。
★
真実が帰ってくるまでまだ時間がある。
泉と交互に風呂に入って一緒にTVを見ていた。
TVでバスの旅という番組が始まった。
「良いなあ…神社巡りか…。」
都内の各地にある神社をバスと徒歩でめぐる様子を泉が楽しそうに見ている。
「あ、猫の神社だっ!」
テレビ画面に招き猫で有名な神社が映る。
「猫か…。」
小さい頃の思い出が蘇る。
「透、猫…キライ?」
「ん…好きだよ。」
透が微妙な顔をしていたのだろう。
泉が不安そうに見つめてくる。
「昔さ…。」
泉には話そうと思った。
小さい頃、透は一度猫と仲良くなった事があった。
あまり早く帰って来るなと言われていたので毎日河原で1人で座り込んで時間を過ごしていた時期があった。
その日は運が悪く雨が降っていた。
しかし変わらず早く帰れなかったので橋の下で雨を避けて座っていたらいつの間にかに寝てしまっていたのだ。
なぜかとても暖かくて起きる。
起きるが身体が重くて起き上がる事ができない。
目を開けると腹と胸の上に1匹ずつ大きな猫が透の上で眠っていた。
2匹の猫は透を温める様に寝てくれていたためすごく暖かくてモフモフで幸せだった。
そう話すと泉は複雑そうな顔になる。
「それで、透その後どうなったの?」
「二度寝しちゃってさ、気づいたら真っ暗になってて…慌てて帰ったら帰るの遅すぎるって殴られたけど、猫可愛かったなあ…。その後も何度か橋の下に行ったら猫に会えたりしたんだけど…?」
ふと泉が黙ってしまったのに気づく。
「泉?」
「ううん…何でもないよ。」
何かもっといい話し…。
「その時また外に追い出されちゃったんだけど隣の住んでたお姉さんがこっそり食べさせてくれたのがおでんだったんだ。美味かったな…。初めて食べたおでんのタマゴ。」
って…ますます泉が変な顔をしている。
っと思ったら泉がぼろぼろ涙を流し始める。
「えっ…泉っ!?」
泉の涙は花火大会以来だ…。
正直…どうしたらいいか分からなくなってしまう。
「ごめんっ変なこと言っちゃって…。」
「違うっ、透が悪いんじゃないっ!」
泣いている泉をなんとかしようと思った。
思わず泉を抱きしめると泉は透の胸に顔を押し付けて泣き出してしまう。
「ごめんっ透の話しを聞きたがったのは私なのにっ!」
★
パサっと暖かい毛布を掛けられる。
目を覚ますと真実が帰ってきていた。
「そのまま寝てろよ。」
真実は微笑む。
「?」
ふと身体が重くて何故かとても暖かいことに気づく。
…あの時の猫が乗ってる様な…。
見ると…泉が透の上で眠っている。
…あの時の猫みたいだ。
真実がふっと笑いながら電気を消して部屋から出ていく。
泉の温かさと重さに安心しながら再び眠りにつく。
こんな穏やかな気分になったのは久しぶりだった。
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