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眠り

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 「青海くん……おはよう」

 部屋のカーテンを開けて眠り続ける青海くんの横顔を見つめる。

 朝日は青海くんの顔を照らすが、やはり起きる様子はない。

 「泉……もう朝か……」

 青海くんの眠るベッドの脇にある椅子で眠っていた真実が目を覚ます。
 
 昼間は私が、夜は真実が交代で青海くんの側に付き添っていた。

 真実は疲れきった様子で青海くんの手を離すと立ち上がる。

 「……また夕方来るから」

 そう言うと私の肩に触れ、病室を出て行った。

 

 あれから数日経つが青海くんの様子に変化はない。

 さっきまで真実が座っていた椅子に腰掛け、包帯で巻かれた青海くんの手に触れる。

 青海くんの指先はひんやりとしていた。

 なんとなくその指先をそっと両手で包みこむ。

 少しでも温められないだろうか?

 


 ★


 
 
 「泉……代わる」

 夕方真実が病室に来る。
 私は温め続けていた青海くんの手をそっと離した。

 「明日、透の親の葬式だって」

 ぼそっとそう呟いた真実。
 
 「……」

 私は何も言えずに立ち尽くしていると祖父が病室に入ってきた。

 祖父は私と真実に言う。

 「明日の葬儀……透くんの代わりに見送ってあげなさい。それが今お前たちにできることだよ」

 そう言うと祖父は青海くんの手を握る。

 「透くん、明日君の御両親を送るよ。本当は君が目を覚ますのを待ちたかったんだけど……君の代わりに二人がきちんと見送るから、だから安心しなさい」

 




 交代で真実を病室に残して祖父に連れられ家に帰る。

 祖父はあれこれ私を気遣ってくれたが何もする気になれず……一人になりたかったのでもう寝るからと言って自室に入った。

 眠れる気はしなかったがベッドに寝転がる。

 枕元にはクリスマスに青海くんがくれたサンタさんのオーナメントが置いてあった。

 そのオーナメントを眺めていると、自然と青海くんの笑った顔を思い出してしまう。

 ……

 気づいたら視界は歪んで……泣き出してしまっていた。

 一度泣き始めてしまったら自分を抑えることも出来ずに、声を上げて泣いてしまっていたようだ。

 「……いずみ」

 私の泣き声に気づいた祖父が部屋に入ってきて、私の背中をなでる。

 その手の暖かさは私の中で抑えていたものを溶かしていったようで……

 子供の時のように思い切り泣いていた。



 
 
 
 
 
 
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