37 / 48
37、謝罪の誤解
しおりを挟む「裕ちゃんが、俺のしらない男と食事をにこやかにしているのを見て、頭に血が上った。」
「にこやかになんてしてない!・・・それに、名前・・・。」
「名前?」
すぐに反論する裕だったが、昊人の気になるところはそこではなかった。
「あの時は呼び捨てだったでしょ?・・・またちゃん付けに戻ってる。」
さっきまでの密接な交わりが呼び捨ての延長だったように思える。
裕ちゃん、といつも呼ばれていたのに、今聞くと、友人とかただの知り合いに戻ったように聞える。
「ああ~。親しそうに演出するには呼び捨てがいいかな、てね。・・・呼び捨てがいい?」
選択権を与えられると、さてどうかな?と考えてみる。
「呼ばれるまで、考えたことなかったけど・・・今は、ちゃんが付いていると少し距離を感じますよ。」
「・・・わかった。・・・裕。」
改めて呼ばれて照れて頬を染める裕を昊人はそっと抱きしめた。
昊人の胸に頭をくっ付けていると、心臓の音が静かに聞えてきた。
安心する・・・。
頭の上から昊人の声が聞こえる。
「・・・裕を好きだと思う前に、独占欲とか嫉妬とかそんなことばかりが前に出て来てイヤになる。・・・靴も脱がないうちにキスをして・・・気がついたら夢中で裕に酔っていた。」
ちょっと恐かったけど、自分もそうだった事に思い当たる。
「なのに、裕が謝るから・・・また誤解した。」
「誤解?」
首を無理やり上げて昊人の顔を見る。
「・・・浮気してましたって、肯定されているみたいに思えた。」
「違う!違います!」
昊人の胸に両手を付いて身体を離す。
「あれは、昊人さんっていう彼氏がいるのに他の男の人と2人きりで食事していたなんて、きっと不快に思ったと・・・。だから、そんな思いをさせてごめんなさい、て。」
「わかってるよ。・・・冷静になったから今はちゃんとわかってる。ごめんな。」
再び昊人の胸に抱き寄せられる。
今度は自分のドキドキが身体から響いて耳の中に大きく聞える。
しばらくそうしているとドキドキが収まり気分も落ち着いてくる。
昊人の音を奏でる大きな手が背中を抱きしめている事に気付く。
自分はピアノは弾けないけど・・・。
昊人の背中に裕は手を回す。
自分の想いが少しでも伝わればいいなあ、と掌から熱を送りながら。
0
お気に入りに追加
140
あなたにおすすめの小説
おじさんは予防線にはなりません
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「俺はただの……ただのおじさんだ」
それは、私を完全に拒絶する言葉でした――。
4月から私が派遣された職場はとてもキラキラしたところだったけれど。
女性ばかりでギスギスしていて、上司は影が薄くて頼りにならない。
「おじさんでよかったら、いつでも相談に乗るから」
そう声をかけてくれたおじさんは唯一、頼れそうでした。
でもまさか、この人を好きになるなんて思ってもなかった。
さらにおじさんは、私の気持ちを知って遠ざける。
だから私は、私に好意を持ってくれている宗正さんと偽装恋愛することにした。
……おじさんに、前と同じように笑いかけてほしくて。
羽坂詩乃
24歳、派遣社員
地味で堅実
真面目
一生懸命で応援してあげたくなる感じ
×
池松和佳
38歳、アパレル総合商社レディースファッション部係長
気配り上手でLF部の良心
怒ると怖い
黒ラブ系眼鏡男子
ただし、既婚
×
宗正大河
28歳、アパレル総合商社LF部主任
可愛いのは実は計算?
でももしかして根は真面目?
ミニチュアダックス系男子
選ぶのはもちろん大河?
それとも禁断の恋に手を出すの……?
******
表紙
巴世里様
Twitter@parsley0129
******
毎日20:10更新
甘々に
緋燭
恋愛
初めてなので優しく、時に意地悪されながらゆっくり愛されます。
ハードでアブノーマルだと思います、。
子宮貫通等、リアルでは有り得ない部分も含まれているので、閲覧される場合は自己責任でお願いします。
苦手な方はブラウザバックを。
初投稿です。
小説自体初めて書きましたので、見づらい部分があるかと思いますが、温かい目で見てくださると嬉しいです。
また書きたい話があれば書こうと思いますが、とりあえずはこの作品を一旦完結にしようと思います。
ご覧頂きありがとうございます。
Promise Ring
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
浅井夕海、OL。
下請け会社の社長、多賀谷さんを社長室に案内する際、ふたりっきりのエレベーターで突然、うなじにキスされました。
若くして独立し、業績も上々。
しかも独身でイケメン、そんな多賀谷社長が地味で無表情な私なんか相手にするはずなくて。
なのに次きたとき、やっぱりふたりっきりのエレベーターで……。
ズボラ上司の甘い罠
松丹子
恋愛
小松春菜の上司、小野田は、無精髭に瓶底眼鏡、乱れた髪にゆるいネクタイ。
仕事はできる人なのに、あまりにももったいない!
かと思えば、イメチェンして来た課長はタイプど真ん中。
やばい。見惚れる。一体これで仕事になるのか?
上司の魅力から逃れようとしながら逃れきれず溺愛される、自分に自信のないフツーの女子の話。になる予定。
Catch hold of your Love
天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。
決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。
当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。
なぜだ!?
あの美しいオジョーサマは、どーするの!?
※2016年01月08日 完結済。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる