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21、女の感?
しおりを挟むいらっしゃい、という柊馬の営業スマイルから2~3言会話した3人。
「・・・裕ちゃん、きてるよ。」
少し低めの柊馬の声に店内を見渡す昊人と目が合う裕。
あれ、なんか急に嫌な気分になった。
もしかして会えるかも、という淡い期待にドキドキしていたのに、女子同伴を見てその気分は急降下。
今日きたのは失敗だったかな、と落ち込み始める裕。
でも、裕を見て迷いも無く近ずく昊人はいたって普通の顔。
その行動に、ほったらかしの品の良い女子と裕は驚く。
「ここに来るなら連絡くれたらよかったのに・・・。友達?」
知り合いを見つけて、なんだ来てたんだ、くらいに軽く声をかけてくる昊人。
やっぱり盛り上がっていたのは自分だけか・・・と表には出さずに心の中で溜め息をつく。
そして、昊人が自分の視界に智子を入れた事を理解する。
「はい。高校からの友達で・・・。2人で飲んでいて、コーヒーでも飲もうかということになって、急にこちらへ・・・。」
答えなど用意していなくて、しどろもどろに説明する。
「そうなんだ。・・・こんばんは、嘉瀬です。」
軽く会釈をする昊人。
「野田智子ですぅ~。」
営業スマイルで智子が立ち上がって昊人の腕に触れようとした瞬間、一足早く、2人の間に人が割り込んだ。
昊人と一緒に来た品の良い女子が、さも自然に昊人の腕を掴まえる。
昊人が掴まえられた腕に視線を落とし、それから女子を少しだけ驚きの表情で見る。
昊人の視線にニッコリと微笑を返す女子。
「お知り合いの方ですか?お仕事関係?私にも紹介してください。」
品の良い女子は、昊人、裕、智子を順番にしっかりと目を合わせながら微笑みを向ける。
ズカズカしているのにそう思わせないように振舞う感じ、もしかして苦手系女子かも、と裕は思う。
「・・・仕事関係ではないよ。・・・親しくしている・・・まだ友人。柊馬も知ってる子だよ。」
いつもより抑揚がない話し方の昊人。
”友人”
それが今の裕と昊人を指す適切な言葉なんだ、と裕はハッキリと心に刻まれた気がした。
その言葉の前の二文字には疑問を持たず。
「裕ちゃん。こちらは、同じ先生についていた・・・今は大学の後輩でもある笹本梨奈(ささもと りな)さん。」
「はじめまして。今日は昊人さんのレコーディングのリハーサルを見学させてもらっていたんです。こんなに近くで聞いているのがすっごい贅沢でステキな時間でした。」
昊人に紹介されて、無邪気にキラキラした笑顔を振りまく梨奈。
自分と同じくらいの年かな、それとも少し上かも、でも大人っぽさより無邪気さが目立つと裕は感じた。
聞いていない事までペラペラと、さも嬉しそうに話すところが裕にはまぶしすぎた。
「・・・柊馬に会いたいって言うから、ここに来たんだ。」
そう言う昊人の顔は無表情ぽい。
いつもより表情が無い昊人が心配になるが、それより今はキラキラした梨奈がとても不快な裕。
昊人の腕にぶら下がっている光景も、自分が行けないとわかっている昊人の仕事場に行ってきたという事も、キラキラしているのも、品の良い印象も、すべて梨奈の事が気に入らない。
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