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6、店主はワイルド・イケメン
しおりを挟む急に集まった視線になんだか緊張して肩に力が入る裕。
「あっ!そうだ。こちらは裕ちゃん、・・・。」
昊人は裕の方に掌を向けて紹介しようと言葉を始めたが、名前以外の情報が無い事に気付く。
「・・・なんと言うか、さっき会ったんだけど・・・ここに俺も来るつもりだったから誘ったというか、そんな感じ。」
ね!と裕に向かって昊人が同意を求めるように小首を傾げるから、連られて裕も傾げた。
「えーと、初めまして、加藤 裕です。」
慌てて店主と思われるカウンターの中の男性に挨拶をする。
「いつもの席は、空いてるかな?・・・あ!空いてるね。裕ちゃん、行こう。」
昊人が視線で空席を確認した当たりを裕も見た。
そこは大きな窓に沿ってカウンター付けられ、一人用のソファが並んだ席だった。
裕を連れて昊人が一歩踏み出す。
「コート!ちょっと!」
カウンターの横を通り昊人の方へ近寄る店主が昊人の腕を掴んだ。
店主の視線で何かを理解したらしく昊人がゆっくりと裕を見る。
「・・・先に席についててくれる?」
先程の砕けた会話から知り合いだという事はわかった。
2人で話したい事もあるんだろうと思い裕は頷いてから、一度店主を見て席へと足を進めた。
一度見た店主の目に鋭いものを感じた。
それは裕を完璧に怪しんでいる気がした。
そりゃそうだ、さっき会ったばかりって言ったらナンパにヒョイヒョイついてくる軽い女て感じがする。
でも、あの2人はよく見れば顔が整っているなあ、と裕は思い返した。
お髭もあったし眼鏡のせいか目もどこと無く鋭い感じから、あの店主はワイルド・イケメンてな感じだ。
それとは反対に昊人さんは綺麗系イケメン、プラス少しウェーブがかかった髪や仕草が可愛さ有りだね。
そう言えば二人とも私よりは年上っぽい気がするけどいくつだろう。
そんなことを考えながらバッグと先程購入した品物が入っているペーパーバッグを自分が選んだ席の右の壁側の席に置いた。
店内は、店主がいたカウンターに5席、ソファセットの席が3テーブル、そして裕が座る窓側のカウンターに6席と思ったより広めのフロアーだった。
今はソファセットの2テーブルに2人組と3人組の先客がいる。
静かにインストロメンタルが流れる店内、点在している観葉植物も今まで入ったどのカフェよりも多い。
森の中とまではいかないが、緑に包まれている感じがして落ち着く。
正面の大きな窓から見えるぼんやりとした街頭の明かりが、夜の暗さを和らげるのに一役かっている。
いつもの席、と昊人が言っていた事を思い出す。
他の客からも視線を感じない、1人でリラックスできるこの席。
ここなら嫌な事があってもリフレッシュできる!
嫌な事・・・。
そう言えば、今日あった嫌の事をすっかり忘れていた。
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