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しおりを挟む「え?なにが?」
何の事を言われているのか、わからないという風に小首を傾げるジェラール。
「自分の事しか考えていないじゃない。・・・ライラの事だって・・・彼女があなたを好きな気持ち、・・・私はわからなかったけど、あなたは気がついていたんでしょ?」
「ライラ?・・・ああ、もちろん知っていたよ。秘密を知られた事もあるけど、僕は彼女の欲を満たしてあげただけ。彼女も十分承知していたし、納得して自分から僕に身を任せたと思っているよ。親友の君には悪いと思っていたみたいだけど、そんな背徳感も喜びの1つだったのかもしれないけどね。」
変な笑みを口の端に浮かべるジェラールは、私の知らない人の顔。
こんな黒い心を持っていた人だなんて、思ってもみなかった。
「なんて酷い・・・。ライラはあなたに対して何をしたというの?彼女を巻き込まない方法もあったはずでしょ?」
彼女の好きな気持ちに答えることができないというなら、彼女を傷つける事がわかっていたなら、傷をできるだけ小さくして欲しかった。
それを、今までの生活も取り上げるような事にまで巻き込んでしまうなんて。
「う~ん、そうだね。方法はあったかもね。・・・でも、僕は何を犠牲にしても、君との幸せな未来が欲しかったからね。君だって、金が無い伯爵家なんて結婚相手として選ばないだろう?金が無いのは惨めだ・・・。今の僕は、綺麗なドレスだって、豪華な宝石だって、なんだって君にプレゼントしてあげられる。心配ないよ。君を誰よりも贅沢させてあげられるんだ。」
「贅沢なんてしたいと思ってない!・・・みんなを苦しめる物で手に入れた財なんていらない。」
強めに言う私に不機嫌を露わにするジェラール。
そして、静かに言い始めた。
「君は惨めなんて知らないから、そんな事が言えるんだよ。・・・駄々なんてこねないで。君のために僕がしたことなのに・・・それを責められるなんて、いくらエルでも悲しいよ。・・・おいおい君も理解してくれると思うけど、今はそんな時間は無いから、行こう。」
急に手を引かれた。
掴まれた手の所から、気持ち悪さが上がってくる。
「イヤ!・・・イヤだったら!・・・私は行かない!!」
引きずられながら叫ぶ。
諦めたように手を離し、立ち止まる。
「そんな我侭は聞かないよ。・・・仕方が無いね、そんなに暴れるなら。」
パチ、とジェラールが指を鳴らすと、どこからとも無く3人の黒い仮面を被り、黒い衣服の者が現れた。
エルヴィナを攫ったあの時の者たちだ。
ジェラールが先ほど言っていた『わざわざ頼んで、君を攫ってもらったんだよ』という言葉は本当だったんだとエルヴィナは改めて驚いた。
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