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朝が来た。
いつもより早めに目が覚めた。
自分が眠ったのかどうか、よくわからない。
夢と現実の間を行ったり来たりしていた気がする。
瞼が熱を持っていて、少し熱い。
重くてハッキリとは開かないから視界が狭い。
分厚いカーテンを少しだけ開けると眩しい光が部屋の中に入ってくる。
頭も痛いし、身体も重い。
でも、寝ている訳にはいかない。
ちゃんと自分でお父様たちに説明しなければ。
昨夜、考えて決めた事がある。
2人は私にとって、忙しい両親よりも長く、かけがえの無い時間を一緒に過ごした、大切な友達。
婚約の話が出たのは5年前、来年結婚式を執り行う予定だった。
どの時点で2人はお互いの気持ちを確認したのかわからないが、話がだんだん進み、私や大人たちに言い出すタイミングを無くしてしまったのではないか、という考えに至った。
もしそうなら、こうなった以上、隠すことはないのだから、早く婚約を解消してあげなければ、あの2人に幸せは訪れない。
覚悟を決めて、侍女も呼ばず着替えに取り掛かる。
腫れているであろう目を冷やすことも忘れない。
おおよそ終わったところに廊下から声がかった。
「お嬢様、起きていらっしゃいますか?」
「ええ。支度も終わったところよ。」
それを聞いて、失礼します、と言ってから侍女のアンナが入ってきた。
「呼んでくだされば、すぐに参りましたのに。・・・それより、ナービル様がお呼びですよ。朝食前にお話がしたいと仰せでして、二階のテラスで待ってるとのことです。」
「お兄様が・・・。」
城からお兄様がお帰りになっている・・・。
私を呼んでいるということは、お兄様が昨夜の一件の対処をする、ということね。
お父様のお帰りを待たずに、一刻も早く処理をするということ?
そんなに急ぐことないのに・・・。
私に甘いお父様より、正しい事には手を抜かないお兄様が相手ではうまく言えるか、と覚悟が揺らぐ。
いいえ、だらだらとしていると人の噂がいろいろ付加されて良くないことも確かだし、私としても今後の2人事を思えば早い方がいい。
テラスと言ってもその部屋は室内で、我が家の二階に有り、お母様のお気に入りの庭を一望できる部屋。
家族みんなが好きで、よくここでお茶の時間を過ごす。
しばらく2人きりにしてくれるよう、アンナに頼み、テラスのドアをノックする。
お兄様の返事が聞こえた。
昨夜もこのように返事を待ってから入室すれば・・・と後悔の気持ちが沸く。
ドアを開け、朝の挨拶をすれば朝日でいっぱいの部屋の中にゆったりと座るお兄様がいた。
ソファに座るように促され、1つ頷いて静かに座る。
「急がせて悪かったね。」
「・・・いいえ。」
「エル。僕が聞きたい事はわかるよね?」
家族は私をエルと愛称で呼ぶ。
いつもやさしいお兄様がまっすぐに射抜くような瞳で私を見る。
居心地がとても悪い。
私が答えあぐねていると
「昨夜、城の僕の仕事部屋にアンドレア・ユーゴ公爵がみえてね・・・ユーゴ公爵とは仕事で、あまり接点がないから、僕に会いに来るなんて、しかもかなり遅い時間だったので驚いたよ。・・・ユーゴ公爵からはいろいろ聞いたよ。だから、今度は当事者であるエルから話をきかなければね。」
とても頭がよく正しいお兄様は、家族だからと言って公平を欠く事はない。
男性の兄妹に、いろいろ大人の事柄を平気で話すことは普段の私には無理なこと。
それでも、視線を外しゆっくりと昨夜の事をありのままにお兄様に話した。
「・・・ユーゴ公爵から聞いたことと、ほぼ同じだね。それで、エルはこの後、どうしたいと思っているの?」
お兄様の目を見て静かに答えた。
「・・・私は、婚約を白紙に戻して・・・思い合っている2人を早く一緒にさせてあげたいと、思ってます。・・・私が2人の邪魔をしていたなんて考えてもみませんでした・・・。」
いつもより早めに目が覚めた。
自分が眠ったのかどうか、よくわからない。
夢と現実の間を行ったり来たりしていた気がする。
瞼が熱を持っていて、少し熱い。
重くてハッキリとは開かないから視界が狭い。
分厚いカーテンを少しだけ開けると眩しい光が部屋の中に入ってくる。
頭も痛いし、身体も重い。
でも、寝ている訳にはいかない。
ちゃんと自分でお父様たちに説明しなければ。
昨夜、考えて決めた事がある。
2人は私にとって、忙しい両親よりも長く、かけがえの無い時間を一緒に過ごした、大切な友達。
婚約の話が出たのは5年前、来年結婚式を執り行う予定だった。
どの時点で2人はお互いの気持ちを確認したのかわからないが、話がだんだん進み、私や大人たちに言い出すタイミングを無くしてしまったのではないか、という考えに至った。
もしそうなら、こうなった以上、隠すことはないのだから、早く婚約を解消してあげなければ、あの2人に幸せは訪れない。
覚悟を決めて、侍女も呼ばず着替えに取り掛かる。
腫れているであろう目を冷やすことも忘れない。
おおよそ終わったところに廊下から声がかった。
「お嬢様、起きていらっしゃいますか?」
「ええ。支度も終わったところよ。」
それを聞いて、失礼します、と言ってから侍女のアンナが入ってきた。
「呼んでくだされば、すぐに参りましたのに。・・・それより、ナービル様がお呼びですよ。朝食前にお話がしたいと仰せでして、二階のテラスで待ってるとのことです。」
「お兄様が・・・。」
城からお兄様がお帰りになっている・・・。
私を呼んでいるということは、お兄様が昨夜の一件の対処をする、ということね。
お父様のお帰りを待たずに、一刻も早く処理をするということ?
そんなに急ぐことないのに・・・。
私に甘いお父様より、正しい事には手を抜かないお兄様が相手ではうまく言えるか、と覚悟が揺らぐ。
いいえ、だらだらとしていると人の噂がいろいろ付加されて良くないことも確かだし、私としても今後の2人事を思えば早い方がいい。
テラスと言ってもその部屋は室内で、我が家の二階に有り、お母様のお気に入りの庭を一望できる部屋。
家族みんなが好きで、よくここでお茶の時間を過ごす。
しばらく2人きりにしてくれるよう、アンナに頼み、テラスのドアをノックする。
お兄様の返事が聞こえた。
昨夜もこのように返事を待ってから入室すれば・・・と後悔の気持ちが沸く。
ドアを開け、朝の挨拶をすれば朝日でいっぱいの部屋の中にゆったりと座るお兄様がいた。
ソファに座るように促され、1つ頷いて静かに座る。
「急がせて悪かったね。」
「・・・いいえ。」
「エル。僕が聞きたい事はわかるよね?」
家族は私をエルと愛称で呼ぶ。
いつもやさしいお兄様がまっすぐに射抜くような瞳で私を見る。
居心地がとても悪い。
私が答えあぐねていると
「昨夜、城の僕の仕事部屋にアンドレア・ユーゴ公爵がみえてね・・・ユーゴ公爵とは仕事で、あまり接点がないから、僕に会いに来るなんて、しかもかなり遅い時間だったので驚いたよ。・・・ユーゴ公爵からはいろいろ聞いたよ。だから、今度は当事者であるエルから話をきかなければね。」
とても頭がよく正しいお兄様は、家族だからと言って公平を欠く事はない。
男性の兄妹に、いろいろ大人の事柄を平気で話すことは普段の私には無理なこと。
それでも、視線を外しゆっくりと昨夜の事をありのままにお兄様に話した。
「・・・ユーゴ公爵から聞いたことと、ほぼ同じだね。それで、エルはこの後、どうしたいと思っているの?」
お兄様の目を見て静かに答えた。
「・・・私は、婚約を白紙に戻して・・・思い合っている2人を早く一緒にさせてあげたいと、思ってます。・・・私が2人の邪魔をしていたなんて考えてもみませんでした・・・。」
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