婚約破棄、ありがとうございます

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「いいえ。貴族ですから政略的な両家の結びつきも必要だと理解しています。ですが、あいにくそこまで差し迫った年齢だとは思っていません。子供の事を考えると早い方が言いのでしょうが…。」

この国の貴族は、女性なら１６歳から２０歳までに結婚をするのが一般的です。

男性はあまり年齢に囚われてはいませんが、３０歳を過ぎれば遅い方だと…。

お兄様と同じお歳だからグレン様は２４歳。

「私は長く連れ添いたいと思うから、心通わせることができる女性がいい。できるなら、自分が好ましいと思える、守りたいと思える方が側にいて欲しいと思っています。そうなれば、気が張り詰める辛い仕事も耐えられるし、その延長線でこの国も守っていきたいと思える。」

そんな風に思われる女性は幸せですね。

羨ましく思います。

「無邪気な可愛らしい妹のように思い描いていたあなたでしたが、王宮で初めてお見かけした時は、すっかり１人の女性に成長していました。その成長に驚き、胸が高鳴るのを感じました。今にして思えば、好意を持つ、なんて生易しい感情ではなかった。…あなたを目で追っていれば、常に感情を面に出さない様に疑問がわきました。間接的にですが、幼いあなたのことを知っているからか、本当のあなたではない気がして。無理をされているのではないかと…。」

自分の行動や失態はすべてティーシル様、ルゥグホン家の恥になると思い、姿勢を正していたあの頃。

確かに毎日息が詰まるような日々でしたが、それが当たり前で、そうすればご褒美としてベルナルダンお兄様に会えるから、頑張っていた…。

「今もそうやって悲しそうな目をされている…。何を思っておられるのですか？」

グレン様の私を見つめる探るような視線を痛く感じます。

思っている事は…。

素直に言ってしまえば、あなたは私をそっとしてくれるのですか？