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何が起きたか理解するために、頭をフル回転。目が冴えると、そこには先ほどこちらを見ていた坊主頭の男が!彼は、どこにでも売っていそうな鉛筆を右手で握りしめている。一体何をするつもりだ!?
囚人があまりにも強くて、起き上がることができない。聞こえてくるのは荒々しい息遣いだけ。
男は鉛筆の鋭い部分を使い、心臓あたりにばつ印をつけてきた。傷から赤くて新鮮な血が流れる。痛すぎる……あまりにも痛すぎて、言葉が出てこない。しかもそのバツ印の真ん中に、鉛筆の鋭い先端のところで刺してきたのだ。痛みが絶頂に達し、嗚咽が漏れる。
初めて感じた激痛が全身に駆け巡ったことで、こいつが悪だと認識した。こいつは潰さなきゃ、だめなんだ!
悪意を見て意識を失いかけそうになるが、ここで意識を失ってはいけない。歯を噛み締め、なんとか腕の震えを収まるよう必死に粘る。
男がニヤリと微笑みを浮かべた瞬間、彼に高圧電流が流れた。
「グァァァァァ!!」
奇声を上げながら、その場で倒れる。ギリギリで助かった。とはいえ、頭に激痛が走り、混乱状態。必死に深呼吸して、気持ちを徐々に沈めていく。
「死んでないか?」
「死んでません……」
顔色を変えてやってきたジョナサンが、囚人に小さな電撃棒で攻撃したようだ。それから囚人はびくともしない。ただ下敷きになった僕は彼の体重が重すぎて、身動きが取れない。その後、スピーカーからアナウンスが入った。
「看守のみなさん、緊急事態です! A級の囚人たちが脱走しました、今すぐ出口から逃げてください!」
早口のアナウンスが流れて、そのままぶつ切りされる。声からも焦っていることがよく伝わった。しかし、そんなものがいきなりされても理解できるわけがない。頭の中は真っ白だ。
「お前も逃げろ! どこでもいい! すぐここから去るんだ!!」
「先輩助けてください! 重いんですけど……」
「自分で脱出してくれ! 時間がない!」
青ざめた血相のまま低めの叫び声をあげると、ジョナサンは僕の表情を見ることなく更衣室から出て行ってしまった。
上に覆いかぶさっている囚人をなんとか自力でどかして、僕はズボンを履いた状態のまま看守専用カードを前ポケットに入れる。急いで外に出た。見るとたくさんの看守が囚人に潰されている。廊下は血まみれで、看守たちの死骸が積まれていた。これはまずい!
急いで更衣室に戻ろうとしたら、一人の細長い体の男が襲い掛かってきた。手には木の棒のようなものを握っている。
「きぇぇぇぇ!!」
意味不明な叫び声と共に潰されそうなところ、近くにいた黒髪の年老いた看守がそいつの右膝に撃退用の棍棒で攻撃した。そいつは横に少しよろめき、態勢を崩す。
「おい! 怪我はないか!?」
「はい!」
少しばかり灯りが見えたものの、看守が切羽詰まった表情をしているので油断は禁物。これ以上攻撃されないようにしなければ、自分の身と柔な精神は持たない。ましてや更衣室へ向かっていた看守は全員殺されていたのだから、また暴走してしまいそうだ。戦わないで逃げよう。
両方の拳を握りしめて、自我を抑えるために歯軋りした。ここから脱出しなければ、僕の命はない。
囚人があまりにも強くて、起き上がることができない。聞こえてくるのは荒々しい息遣いだけ。
男は鉛筆の鋭い部分を使い、心臓あたりにばつ印をつけてきた。傷から赤くて新鮮な血が流れる。痛すぎる……あまりにも痛すぎて、言葉が出てこない。しかもそのバツ印の真ん中に、鉛筆の鋭い先端のところで刺してきたのだ。痛みが絶頂に達し、嗚咽が漏れる。
初めて感じた激痛が全身に駆け巡ったことで、こいつが悪だと認識した。こいつは潰さなきゃ、だめなんだ!
悪意を見て意識を失いかけそうになるが、ここで意識を失ってはいけない。歯を噛み締め、なんとか腕の震えを収まるよう必死に粘る。
男がニヤリと微笑みを浮かべた瞬間、彼に高圧電流が流れた。
「グァァァァァ!!」
奇声を上げながら、その場で倒れる。ギリギリで助かった。とはいえ、頭に激痛が走り、混乱状態。必死に深呼吸して、気持ちを徐々に沈めていく。
「死んでないか?」
「死んでません……」
顔色を変えてやってきたジョナサンが、囚人に小さな電撃棒で攻撃したようだ。それから囚人はびくともしない。ただ下敷きになった僕は彼の体重が重すぎて、身動きが取れない。その後、スピーカーからアナウンスが入った。
「看守のみなさん、緊急事態です! A級の囚人たちが脱走しました、今すぐ出口から逃げてください!」
早口のアナウンスが流れて、そのままぶつ切りされる。声からも焦っていることがよく伝わった。しかし、そんなものがいきなりされても理解できるわけがない。頭の中は真っ白だ。
「お前も逃げろ! どこでもいい! すぐここから去るんだ!!」
「先輩助けてください! 重いんですけど……」
「自分で脱出してくれ! 時間がない!」
青ざめた血相のまま低めの叫び声をあげると、ジョナサンは僕の表情を見ることなく更衣室から出て行ってしまった。
上に覆いかぶさっている囚人をなんとか自力でどかして、僕はズボンを履いた状態のまま看守専用カードを前ポケットに入れる。急いで外に出た。見るとたくさんの看守が囚人に潰されている。廊下は血まみれで、看守たちの死骸が積まれていた。これはまずい!
急いで更衣室に戻ろうとしたら、一人の細長い体の男が襲い掛かってきた。手には木の棒のようなものを握っている。
「きぇぇぇぇ!!」
意味不明な叫び声と共に潰されそうなところ、近くにいた黒髪の年老いた看守がそいつの右膝に撃退用の棍棒で攻撃した。そいつは横に少しよろめき、態勢を崩す。
「おい! 怪我はないか!?」
「はい!」
少しばかり灯りが見えたものの、看守が切羽詰まった表情をしているので油断は禁物。これ以上攻撃されないようにしなければ、自分の身と柔な精神は持たない。ましてや更衣室へ向かっていた看守は全員殺されていたのだから、また暴走してしまいそうだ。戦わないで逃げよう。
両方の拳を握りしめて、自我を抑えるために歯軋りした。ここから脱出しなければ、僕の命はない。
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