燕の軌跡

猫絵師

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開校式

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気の進まないまま、ゲルトの伝言をシュミット夫妻に伝えた。

「まぁ、本人たちの気持ちもあるだろうからよ…

ケヴィンもそうだけど、ライナの希望もちゃんと聞いてやってくれよ」

「もちろんです」と頷いて、シュミットは息子の縁談を受け入れていた。

ユリアの時はえらく取り乱していたくせに、ケヴィンの縁談はすんなり受け入れるんだな…

なんとも複雑な心境を抱えたまま、シュミットらと別れてテレーゼの書斎に向かった。

学校の用意も大詰めで、彼女も忙しくしていた。今日だって朝に顔を合わせたっきりだ。

「あら、ワルター様?」

書斎に顔を出すと、俺に気付いて、テレーゼは紙の上を走らせていたペンに休憩を与えた。

「悪いな、忙しいのに。少しいいか?」

「もちろんです。何かご用事でしたか?」

テレーゼは仕事を残して机を離れると、俺に椅子を勧めた。二人で並んでソファに腰かけるのも久しぶりかもしれない。並んで座る彼女の小さい手を握ると、テレーゼは嬉しそうにはにかんで俺を見上げた。

可愛いんだよな…娘たちも可愛いが、それとはまた違う可愛いさだ。

「まぁ…用事っちゃ用事なんだけどよ…」

「うふふ。お顔が見たくなったのですか?」と茶化して、彼女は俺を子ども扱いして茶化した。

「からかうなよ。そんなガキじゃねぇよ」

「あら?私はワルター様が訪ねて来てくれたのが嬉しいんですよ。

なかなか二人の時間が取れなくて、拗ねてるのかと思ってました」

「そんなんじゃねぇよ。ちょっとお前の意見が聞きたかっただけだ…」

「まぁ?一体どんな難問を持ってきたのですか?」

難問…か…

まぁ、俺にとっては難問だ。答えは全く出そうにない。

「ゲルトから、ライナを嫁に出したいって相談されたんだ。相手にって、ケヴィンを指名された。」

「あら?素敵なお話じゃないですか?私はお似合いだと思いますけど?」と、テレーゼはケヴィンとライナの縁談を祝福した。

「それで?ワルター様は何が不満なんですか?」

「不満じゃねぇよ。俺だって良い話だと思うし、ライナにも本当に家族ができるんだからいい事だろ?」

「そうですか?それならそのままお話を進めたらよいではありませんか?」

「まぁ、そうなんだけどよ…でも本人の気持ちも大事だろ?」

「そうですけど…ワルター様は何が引っ掛かっているんですか?」

俺の歯切れの悪い言葉に、含むものを感じ取って、彼女は俺の腹の中に抱えた感情を探った。

理由が言えないなら、まるで駄々をこねる子供だ。

「…ライナは…他に好きな奴がいるみたいなんだよ…」

俺の言葉に、テレーゼの顔から笑顔が消えた。

きょとんとした顔は、俺の話を飲み込めていないようだった。

「ライナがそう言ってたんですか?」

「いや、そうじゃないけど…実は…」と、テレーゼには隠さずに話した。

上手く伝えらえたかは分からないが、テレーゼは俺の話を聞いて、「あらぁ…」と困ったように眉を寄せた。

「他には言うなよ?

ゲルトだって、ライナが可愛いんだ。ケヴィンやシュミットたちになら任せられると思ってるんだ。ラウラの話じゃ、ケヴィンだってライナの事は好きみたいだし、悪い話じゃねぇよ…

でも俺は何かこのまま話を進めるのには少し抵抗があるんだ」

俺の勝手な感情だ。

俺たちだって、もともと好きで一緒になったのとは少し違う。それでもなんとなく上手くいってるし、ライナだってケヴィンが嫌いとかではないはずだ。

このまま話が進めば、ライナの希望通りとはいかないが、それなりに良い未来が待っているはずだ。

悪い話じゃない…そんなのは良く分かってる…

俺の話を聞いていたテレーゼが、俺の手を優しく握り返した。

「ワルター様は変わりませんね」

彼女は懐かしそうにそう呟いた。

「何が?」

「うふふ。覚えてないんですか?」と、テレーゼは少し楽しそうに笑っていた。

「ワルター様とアインホーン城の庭で顔合わせをした時にも、ワルター様は私が無理してないかをずっと心配してくださっていました。

怖がってないかとか、本当は嫌なんじゃないかとか、無理してるんじゃないかとか…

そんな懐かしいことを思い出してしまいました」

「そりゃ気にするだろ?

お前は美少女で、俺は冴えないおっさんだったんだから」

「あら?その冴えないおっさんに、この美少女は恋をしたんですけど?」

「茶化すなよ。俺たちはそれでも良かったけど、ケヴィンとライナがそれじゃ可哀想だろ?」

「そうですね。確かに、円満とはいかないですよね…何とか納得出来る形に収まれば良いのですが…」

テレーゼも悩ましげに眉を寄せて小首を傾げていた。

あの子たちだって、俺たちの子供みたいなもんだ。

ずっと近くで成長を見守って来たし、幸せになって欲しいと思っている。

「まぁ、二人ともまだ若いですし、私たちは見守ることしかできませんわ。案外、ユリアたちみたいに上手く収まるかもしれませんよ。

それよりも、私はアンネが心配です…」

「アンネか…あいつもそろそろいい歳だもんな」

「誰か良い人が居れば良いのですが…」

テレーゼはアンネの身を案じていた。

テレーゼに献身的に仕えてくれているのは、俺も感謝している。

しかし、あまりにも献身が過ぎるのだ。

休みだって求めないし、常にテレーゼの世話を焼いている。それじゃ、誰かを好きになる余裕なんてこれっぽっちもないだろう。

それでいて、見合いや男からのアプローチにも、首を縦に振ることはない。

絶壁だって、もう少し取り付く島があるってもんだ…

「まぁ、アンネの奴にとって、お前の世話が生き甲斐なんだから、その気持ちは大事にしてやりてぇよ」

「でも、私はアンネにも幸せになって欲しいんです」

「分かるよ。でも無理強いすることじゃないだろ?

あいつか自覚しなきゃ、無理やり結婚なんてさせても辛いだけだ。

いっそ、誰か手近なところで見つかれば良いんだがな…」

「そうですね…」

「アダムもだいぶ拗らせてるしな…

全く心配ばかりさせる使用人たちだ」

俺としてはアダムの方が心配だ。元オークランド人として、多少肩身の狭い思いもしてるだろうが、女の話は一切聞かない。

アダムは人当たりも良く、爽やかな印象の男前だが、それだけに女の話がないのは心配だ。

聖騎士団長として神殿仕えだったから、もしかしたら未だ童貞という可能性すらある。

「それならいっそ、アダムとアンネが結婚してくれたら助かりますわね」

俺の心配を他所に、テレーゼはそんな希望を口にした。

「お前…それ本気で言ってるのか?」

アンネ相手じゃ、アダムにはハードル高すぎないか?

「あら?私はお似合いだと思いますけど?」

彼女は微笑んで、甘えるように俺の肩にもたれた。心地よい重さと彼女の温もりが沁みる。

悪いもんじゃねぇよな…

俺だって他人よりだいぶ遠回りしたけどよ、それなりに幸せになれたんだ。

どうせなら、あいつらが満足できる形に収まるようにと、お節介で勝手な願いを腹の中に留めて、テレーゼの肩を抱いた。

✩.*˚

寝床に転がって、ルカからもらった銀貨を未練がましく眺めていた。

何の変哲もないどこにでもある硬貨だ。

それでも、他と一緒にしないように、別にしてしまっていた。

『また、結んで』と強請る彼女の目は、昔と変わってなかった。

真っ直ぐに、キラキラした目で、俺みたいな人間を求めてくれた。

俺のお節介を、『すっごい!魔法じゃん!』と喜んでくれたあの子は、会わない間に成長して女らしくなったが、中身はあの頃のままだ。

そして俺も、中身は相変わらずあの頃のまま、あいつの髪に触れて、笑顔を引き出したいと思っていた。

あの祭りで、何も無かったら…

今でも気兼ねなく、彼女の髪を整えて、くだらない話もできていたのだろうか?

そいつは無理か…

沈んだ気持ちのまま、銀貨を握ってため息を天井に向けて放した。

ベッドでダラダラと過ごしていると、不意にノックの音がした。

慌てて枕の下にルカの名残を隠して、返事を返した。

返事をしてすぐに、建付けの悪い薄っぺらなドアの向こうから、親友が顔を覗かせた。

「何だよ?帰ってたのか?」

ベッドの上で腐ってる俺を見て、アルノーは無遠慮にベッドの傍に来て床に座った。

「ルカの奴どうだった?元気そうだったか?」

「まぁ、あいつ割と図太いし…ほっといても大丈夫だよ」

「なんだよそれ?

俺だってルカのことは心配してんだぜ?こっそり卵もらった仲だろ?」

アルノーはそう言って、断りもなく煙草を出して咥えた。俺が手を出すと、アルノーは「仕方ねぇな」と笑って煙草を一本出して手のひらに乗せた。

アルノーは良い奴だ。

俺たちは生い立ちも似てたから、なんか他人のような気がしなかった。

まるで、生き別れた兄弟か、昔っから知ってる存在のようで、何でも話せる相手だった。

アルノーもルカの事は気になっていたらしい。

「背ぇ伸びてたか?」と、アルノーはルカの話を聞きたがった。

「伸びてたよ。いつの間にかお嬢さんみたいになってたよ」

「へぇ、あの口の悪くて生意気だったルカがねぇ…」と、アルノーも彼女を懐かしがっていた。

「まぁ、元は悪くなかったもんな」と言うアルノーの言葉に、自分の腹の中を見られたような気がしてドキッとした。

「笑うとさ、年頃の女の子って感じだったよな。髪結んでもらって喜んでさ…

あぁ、口悪くて、男の子みたいにしてるけど、やっぱ女の子だなって思ったよ」

「そんなの当たり前だろ?」

「…そうだよな。当たり前だよな…」

しみじみとそんな言葉を口にして、アルノーは煙草を咥えて黙り込んだ。

微妙な沈黙の間、アルノーは何を考えていたのだろうか?

彼は口に含んだ紫煙を逃がして、役目を終えた煙草を俺の吸殻入れに混ぜた。

「まあ、悪党どもは処分したし、ロンメルの旦那もおっかなかったからよ。馬鹿なヤツは当分出ないだろうよ?

そんな湿気た話より、家に飯食いに来いよ」とアルノーは新居に俺を誘った。

「俺なんか飯に誘っていいのかよ?」

新婚のくせに…

邪魔をして俺が嫁さんから叱られるのは御免だ。

アルノーはヘラヘラ笑って「平気だよ」と答えた。

「あいつは良い女だよ。俺が外で飯食おうが、連れと遊び歩こうが腐ったりしねぇよ。

だいたい、飯作ってるの俺だぜ?あいつも文句言わねえよ」と、アルノーは偉そうにそう言った。

確かにアルノーは料理が上手い。雑用当番も、こいつが飯番の時は割と期待できた。

『貰ったもんにはケチをつけないが、食うなら美味い方がいい』というのが彼の信条だ。

「…仕方ねぇな」

他ならぬ親友の誘いだ。頷いて、怠そうにベッドを離れた。

一人で腐ってるより良いよな…

悪い考えを酒で流して、親友と馬鹿な話でもしようと、一人の部屋を後にした。

✩.*˚

あの騒動は嘘だったかのように、ブルームバルトは今日も平和だった。

もうすぐテレーゼの学校が本格的に始まるのだ。

「開校式にはどなたがいらしゃるのですか?」

リューデル伯爵の名代で来ていたゲリンが訊ねた。

ゲリンはもうすっかり別人のようになっていた。見た目はすっかり貴公子で、リューデル公子の名前に見劣りしない。元が良いだけに違和感が全くない。

「出資者の代表として、ヴェルフェル侯爵家の代理人と、お前らリューデル伯爵家だな。

あと、王室の代理人も来るし、熱心に支援してくれた出資者の貴族も来賓として参加予定だ」

「それはまた豪勢な来賓ですね?」

「何言ってんだ。お前たちだって並みじゃねぇだろ?次期リューデル伯爵閣下だ」

「私は婿養子です。アダリーが本当の次期リューデル伯爵です」とゲリンは嫁さんを立てた。

二人はエアフルト卿の喪が明けてから正式に夫婦になった。結婚式は豪勢で、リューデル伯爵の力の入れようはすごかった。

リューデル伯爵家はこの国でも屈指の金持ちで、貴族としてはもちろん、商会の会長としての顔もある。参加者も俺とテレーゼの比ではない。

それでもゲリンはリューデル公子としての責任に文句を言う事もなく、与えられた役目を粛々と果たしていた。

元来真面目で勤勉な性格だ。

こいつなら心配いらねぇよな、と、勝手に親としての役目を終えた気になっていた。

男同士で立ち話をしていると、学校を下見しに行ったアダリーシア様らがテレーゼの案内で戻って来た。

「こじんまりしてますけど、管理しやすそうですわね」とアダリーシア嬢が学校の感想を述べた。大富豪の娘の感想に、彼女の連れも苦笑いを隠しきれていなかった。

「アディ、貴女のお屋敷と一緒にしちゃだめよ。三年でこれだけ用意できたんだから、私は十分だと思うわ」

親友をたしなめて、ヴェルヴァルト伯爵令嬢はテレーゼに微笑みかけた。

「とってもかわいらしい学校でしたわ。小さな机と椅子が並んでて、まるでお人形さんのお家みたいでしたわ」

「子供たちに合わせて用意したんです。足がプラプラしてたらお行儀悪いですし、お勉強に集中できませんから」

「さすがテレーゼ様。子供たちを良く見ていらっしゃるのですね」とヴェルヴァルト伯爵令嬢がテレーゼを褒めた。

「私だけではこの学校はありませんわ。街の皆さんもたくさんお手伝いいただきましたし、ご賛同いただいた皆さんからの御助力があってのものです」

「でもテレーゼ様無しでは始まらなかったことです。ねぇ、アダリー?」

「そうですわ!こんなに素晴らしい事業はございません。

貴族として、最も称賛される国への貢献となります。誰も始めなかったことです。今後もリューデル伯爵家はこの事業を支持いたしますわ」

「うふふ。アダリーシア様からのお言葉はとても心強いですわ」

学校を褒められて、テレーゼは嬉しそうに友人たちに応えた。

ずっと頑張ってきたもんな…

近くで彼女の頑張りをずっと見てきた。

靴をたくさん履きつぶし、先の潰れたペンをいくつ捨てただろう?

子供たちの為と、未来を見据えた彼女の努力は、今実を結ぼうとしている。

お前は本当にスゲェよ…

努力すれば夢が叶うって、お前は子供たちにも証明したんだ。

こんなスゲェ先生が他にいるか?

「本当に、男爵にテレーゼ様は勿体ないですわ」という意地悪な台詞を、素直に認めざるを得なかった。

✩.*˚

待ちに待った開校式当日は、ブルームバルトはお祭り騒ぎだった。

人の出入りも多く、通りは人であふれていた。

「私が見た中で一番活気があるじゃないか?」と、平時と違うブルームバルトの姿に、パウル様も感心していた。

ヴェルフェル侯爵家は代理人のはずが、がっつり本人が出張って来た…

まぁ、それはなんとなくそんな気がしていたが、それより問題なのが…

「良い街ですね。庶民の学校への期待度が分かります。素晴らしいことです」

爽やかにブルームバルトを称賛しているのは、この国の次期国王だ。

王室の代理人と訊いていたのに、王太子が来るなんて誰が予測できるよ?

随意分物々しい一行だと思ったら、ヴェルフェル侯爵とフィーア王太子というとんでもない大物が来たもんだ。

王太子の訪問を知ったシュミットが青ざめて、慌てて部屋を用意しなおしていた。

俺たちの見立てが甘かったばかりに、他の来賓にも迷惑をかけてしまったが、来賓の一人だったヘルゲン子爵が大人の対応をしてくれたこともあり、なんとか丸く収まった。

リューデル伯爵家も、ゲリンの実家に宿を移してくれたので、何とか王太子一行の場所を作ることができた。

テレーゼと二人で、屋敷に泊まる他の来賓に頭を下げて回り、何とか事なきを得たが、まだ開校式が残っている。

テレーゼは学校の準備があるので、アーサーを伴って先に学校に向かった。

俺とシュミットは学校の用意が済み次第、来賓を学校まで案内する役になっている。シュミットがいるからまだましだが、俺だけだったら問題が起きる気しかしない…

とにかく早く何事もなく終わって欲しい…

半ば上の空でお偉いさんの話に頷いていると、シュミットがやって来て、学校の用意ができたと告げた。

「すぐに馬車をエントランスに回しますので、皆様ご用意ください」

「分かった」と頷いて席を立った。

「学校の用意が整ったようです。馬車を用意いたしますのでエントランスまでご足労願います」

「うむ。殿下、参りましょうか?」

パウル様が王太子を誘って席を立った。

「たのしみです」と応じて、王太子も席を立つと佇まいを整えて馬車に向かった。

エントランスには、先にシュミットが案内を済ませた来賓が並んでいた。

パウル様と王太子の姿を見て、来賓の面々は緊張した面持ちで二人に頭を下げた。

王太子は落ち着いた様子で彼らの敬礼を受け入れて、来賓にねぎらいの言葉をかけていた。まだ若いのにできた人だ。

色々と問題があったはずなのに、真面目に次期国王として現実に向き合おうとする姿勢は好感が持てる。あの国王とは少し毛色が違うが、臣下や国民と向き合おうとする姿勢を見るに、彼は良い王様になるだろう。

馬車に乗り込もうとした王太子は、馬車に付いていた護衛の姿を見て足を止めた。

「…久しいな、ルドルフ」

「ご無沙汰しております、王太子殿下」

少し戸惑って言葉を搾り出した王太子に、弟は嬉しそうに挨拶を返した。

「見違えた。随分立派になったな」

「王太子殿下よりお褒めの言葉を賜り恐縮です」と応えて、ルドルフは誇らしげに胸を張った。

元王子様は傭兵たちに揉まれて、背も伸びて筋力も付いた。昔のヒョロヒョロの我儘小僧の姿はそこには無かった。

「まだヴォルガシュタットには戻らぬつもりか?」

「えぇ。私はまだ無名の傭兵です。今日はロンメル男爵より特別な配慮を賜り、王太子殿下の護衛に着く栄誉を頂戴出来ました」

「そうか。しかし、こう変わってしまっては少し寂しいものがあるな…」

「出来の悪い弟は卒業しました。私の恥を懐かしむのは止めて下さい」

「そうだな。すまない」と笑って、兄弟の話を打ち切ると、王太子は馬車に乗り込んだ。

馬車に乗り込んだ王太子は「ロンメル男爵」と俺に呼びかけた。

「貴殿らに預けて良かった。心から礼を言う」

誰をとは言わないが、そんなの言われなくても分かる。

「俺は何もしてないですよ」という野暮な言葉を飲み込んで、黙って頭を下げ、王太子のお褒めの言葉を頂戴した。

✩.*˚

こんなに緊張するのは結婚式以来ね…

アンネに化粧を直して貰いながらそんな事を考えていた。

あの頃は寂しい何も出来ない子供だったけれど、今は違う。

「奥様、大丈夫ですか?」

「えぇ。私が始めたことですもの」と、アンネに強がって見せた。

ようやくここまで来れたのだ。

スタート地点に立って不安になっていては、この先走りきることなどできないだろう。

私には、一緒に走ってくれる人たちがいるのだから、こんな所で弱気になっている暇は無い。

「来賓の皆さんがお着きになる頃ね。行きましょう」とアンネに声をかけた。

部屋を出ると、外で待っていたアーサーが私に気付いて頭を下げた。

「旦那様と来賓の皆様はまだのようです。もうしばらくお部屋でお待ちになっては?」

「『到着しました』で出迎えては遅すぎます。

皇太子殿下も来賓としていらっしゃってるのに、男爵夫人の私が遅れて出迎えては、王室への無礼に当たります」

「仰る通りです。しかし、無理はされませんように」

アーサーは私の体調が心配なのだろう。

私も今日という日を大切にしたい。

「無理はしません。今日は特別な日ですから」

私が無理をしないと約束したことで、アーサーも折れてくれた。彼は壁に寄って私に道を譲った。

真新しい綺麗な廊下を歩いて階段に向かった。

階段の手すりに手をかけると、アーサーが気を利かせて手を貸してくれた。

「ありがとうございます」と、彼の親切を受け入れて手を借りて階段を下りた。足元の不安がなくなったので、階段からの景色を眺める余裕ができた。

吹き抜けの階段から、階下から届く子供たちの声に視線を向けた。

一階の教室から元気な声が溢れていた。先生から挨拶の仕方を教わっているようだ。

生徒たちの中には、来賓に花束を渡す役や、スピーチをする子供もいる。

子供たちは子供なりに、学校への援助をしてくださった方たちへの感謝を伝えようと一生懸命取り組んでいた。

自分たちの学校だものね。学びを喜んでくれて私も嬉しい。

廊下からこっそりと覗いたつもりが、目敏い子供たちにすぐに見つかってしまった。

「校長先生!」と元気の良い声が私を呼んでくれた。

笑顔で手を振ると、わぁっと子供たちの歓声が上がる。この純粋な子供たちが本当にかわいい。

「もうすぐ来賓の皆様がいらっしゃいますよ。ちゃんとご挨拶できますか?」

「できるよ!」「ちゃんと良い子にご挨拶するよ!」と、子供たちは元気に答えた。

「みんな偉いわね。ちゃんとできたらきっと喜んでいただけるわ。みんなで開校式を成功させましょうね」

「はーい!」

「じゃあまた広間でね」と子供たちと約束して、教室を後にした。

子供たちから元気をもらって、足取りが軽くなる。

夢が叶わないなんて、誰が言ったのだろう?

今私は本当に幸せだ。

『人の行動には、必ず報いがあるものです。

テレーゼ様も、ゆめゆめお忘れになりませんように』と教えてくれたヘルゲン子爵様。

テレーゼは貴方の自慢の生徒になれましたでしょうか?

『強く願えば叶うさ。お前は強いロンメルの娘だ』という伯父様の声も記憶の奥から、私の背を押してくれた。

そして誰よりも私を支えてくれた人…

『お前は凄い奴だ。決めたらやり切る強い女だ。そうだろ?』

彼の言葉と背に添えられる温かい手のひらに、私がどれほど勇気づけられたか彼は知らないだろう。

そうよ。私は強いロンメル男爵夫人よ。

自信を持って、胸を張って、来賓の馬車が並ぶはずのエントランスに立った。

✩.*˚

「ご来賓の皆様。ようこそお越しくださいました。皆様のお越しを心より歓迎致します」

ロンメル男爵夫人が我々の乗った馬車を出迎えて、完璧な貴婦人のお辞儀を披露した。

夫人はまだ二十歳を少し過ぎた程度のはずだ。

それなのに、落ち着きと所作は完璧な貴婦人のそれだ。

なるほど。ヴェルフェル侯爵家が妾腹の娘を寵愛するのも頷ける。

彼女は一人一人に挨拶をして、いざ、私の番になった。

「ヘルゲン子爵閣下。私の活動へのご賛同を賜り、誠にありがとうございます。本日はじっくりと校内をご見学下さいませ」

「立派な学院です。私の父がこの光景を見ることが叶いましたら、きっと我が事のように喜んだ事でしょう」

「ありがとうございます。ヘルゲン子爵閣下」

ロンメル男爵夫人は、朝露に煌めく花のような笑顔で私の言葉に謝意を示した。

世辞などでは無い。心からの言葉だ。

あの厳しく真面目だった父上が、心を砕いて我が子のように愛した少女は、誰にもなし得なかった偉業を成したのだ。

あの父ですら、学校を作るまでには至らなかった。

寄付を頼られた時に、その手紙に心を動かされたのは、父ならそうしたと思ったからだ。一重に、親孝行のつもりで行った寄付だ。

寄付を受け取ったあとも、彼女はまめに学校の進捗情報を手紙に認めて支援者に送ってくれた。

そこから彼女の熱意を感じ取り、少しずつだが、私も彼女の信者のようになっていた。

必要と聞けば、追加の寄付も惜しまなかった。

彼女なら、投資する価値があると踏んだからだ。

そして彼女は見事に成し遂げた。

父の話していた《教育》の大切さを改めて思い起こさせた。

父は見事に金の林檎を実らせる大樹を育てたのだ。これ程誇らしいことが他にあるだろうか?

ロンメル男爵夫人の案内で、校内を見学した。

子供たちの身なりは皆貧相だが、教師の話に一生懸命耳を傾け、自分たちの机に座って勉強と向き合っていた。

その姿に、子供たちは本当に学びたいのだ、と教えられた気がした。

「子供たちはいつもこのように大人しく学んでいるのですか?」

「はい。でも、最初はなかなか座ってくれませんでした。

それでも、みんなで座って絵本の朗読を聞いたり、紙芝居を鑑賞させたりするうちに、自然と人の話を聞くようになりました。

それに、一人では難しいこともみんな平等にであれば、子供たちも納得しやすいのです」

なるほど…それは良いアイデアだ。

子供を座らせておくのが難しいのは、私も知っている。

貴族の子供でも、できない子はできないものだ。

鞭で教える教師もいるが、ここではそれも必要無さそうだ。

子供は教師を慕っているように見えたし、教師も子供を尊重しているように見えた。非常に良い関係だ。これが夫人の叶えたかった光景なのだろう。

一緒に教室を見学していたトイフェル子爵が、出資者の立場から夫人に意見を述べた。

「ロンメル男爵夫人。

ここには庶民の子供しか通っていないのですか?これだけの行き届いた教育を、庶民だけに与えるのはもったいない気がします。

是非、貴族の子弟の教育もお引き受け頂けませんか?」

「ありがとうございます、トイフェル子爵閣下。

私の学校をお褒め頂き大変嬉しく思います。

私がこの学校を作った目的は、教育の機会の無い子供たちに読み書きを教え、簡単な算術を身につけて欲しいと思ったからです。

貴族の子弟が学べるような高等教育はこの学校の指針にそぐわないのです」

「左様ですか?

しかし、貴族の子弟が通うようになれば、この学校の知名度も活動への理解も高まるかと思いますが?」

トイフェル子爵の言いたいことは分かる。

貴族の影響力を利用する事で、国内の注目も寄付は集まるだろう。

貴族の教育は個々の家によって異なるため、この教育方法であれば最低限のレベルも統一できるだろう。

互いにとって利益になると思える提案だが、ロンメル男爵夫人は首を縦に振ることは無かった。

「トイフェル子爵閣下のご意見はとても良いものだと思います。

しかし、今、貴族の子弟をこの学校にお招きすれば、庶民の子供たちは授業に集中できなくなるでしょう。

子供でも身分の差は理解しています。貴族の子弟が通うことになれば、きっと庶民の立場では委縮してしまいます。それに、庶民と同じ教育を受けることを、貴族の立場で受け入れるのは難しいでしょう」

「ロンメル男爵夫人は子供たちを良くご存じなのですね」

会話に割って入った人物に、トイフェル子爵も口を噤んだ。

「誰よりも子供たちに寄り添った夫人にしか分からない事なのでしょうね」と夫人の考えに理解を示したのは王太子殿下だ。殿下はそのまま言葉を続けた。

「夫人の教育方針が成功するようであれば、それはフィーアにとって有益です。今後、似たような学校が増え、フィーアの国益につながるでしょう。

もし、貴族の学校が必要となれば、王室としてもその求めに応じるのはやぶさかではありません。現在ある王室の魔導院に加え、貴族の子弟を預かる学院を用意することを、私から国王陛下に進言しましょう」

殿下の言葉に、ほかの来賓たちも感嘆の声を上げた。

この素晴らしい学校を目の当たりにして、他の来賓たちも同じようなことを考えていたのだろう。

「それは是非実現していただきたい事案です」と、殿下の提案を歓迎する声が次々と上がった。

私は今、この国の重要な変化の場に居合わせているのではないだろうか?

この可憐な夫人が始めた小さな活動が、見事に実を実らせ、その種がまたさらに実を結ぼうとしている。

これはフィーア王国の教育を根本から改革する大きなチャンスだ。

彼女はここまで計算していたわけではないだろう。それでも、ロンメル男爵夫人でなければ、このような結果にはならなかったはずだ。

父上…残念でしたね…

この時、この場に立ち会えなかったことを、父はニクセの船の上で悔しがっているに違いない。

本当に、運命とは不思議なものです。すべてはこのために神が導いた縁なのかもしれません。

私がユーディットと結ばれなかったのはきっとこのためだったのですね…

✩.*˚

開校式を執り行う広間に来賓を案内して、テレーゼは子供たちを迎えに行った。

俺も一緒に一通り見て回ったが、来賓の学校への感想は概ね好印象だ。

一部学校に対する意見もあったが、テレーゼも来賓の意見を真摯に受け止めていた。

まぁ、お偉いさん方とはいえ、基本的に教育に関心のある人ばかりだ。

テレーゼの学校に本気で期待してくれているのだろう。

「ロンメル男爵。少し良いかね?」

突っ立っているとパウル様に呼ばれた。

何かと思ってそばに寄ると、俺に用事があったのはパウル様ではなかったらしい。

「殿下から卿に話があるそうだ」と言って、パウル様は来賓の一番高位に座っている青年に発言を譲った。

「ロンメル男爵。忙しいところすまない、少し良いだろうか?」と話を切り出して、王太子は用事を伝えた。

「開校式の前に、関係の無い話になってしまうが、後でルドルフと話す時間を貰えないだろうか?」

「殿下のお望みでしたら自分は異存ありません。妻も同じ返答をすると思います」

「感謝する、ロンメル男爵。

我儘で分別を知らない子供だったルドルフが、随分立派に成長したものだ。

今思えば、私も弟を甘やかしていたのだろうな…」

元来責任感の強い人なのだろう。弟に向けられている感情は、兄と言うよりは父親のそれに近い気もする。

「ルドルフ様の指導は殿下がなさっていたのですか?」と、訊ねると、殿下は少し寂しそうに笑って答えた。

「私が一方的に世話を焼いていただけだ。それでも、幼い頃は仲が良かった。

私が勝手にそう思っていただけかもしれないが…結局、私は口うるさい兄として弟に嫌われてしまった」

「そうですか?殿下の考えすぎでは?」という、俺の雑な言葉にパウル様が眉根を寄せて睨んだ。

じゃあ、なんて言えばいいんだよ?お偉いさんの接待とか苦手なんだよ…

「ヴェルフェル侯爵。私はロンメル男爵と話すのを楽しんでいます」

微妙な空気を察して、殿下は俺の無礼を苦く笑って許した。

そうこうしている間に、子供たちを連れたテレーゼが戻って来た。

また後で、と殿下との話を打ち切って、賓席を離れた。

子供たちを連れたテレーゼは、打ち合わせ通りに生徒たちを並べさせた。

「ほう…」と感心したような声が来賓から漏れた。

子供たちは緊張していたが、練習したとおりにテレーゼの後ろを着いて来賓席の前に整列した。

本来であれば、なんの教育も与えられないはずの田舎の庶民の子供たちだ。

子供たちはが私語もせず、静かに整列するのを、来賓は物珍しそうな視線を送っていた。

一番手前の列に花束を持った女の子たちが並んで、子供たちの用意は整った。

「お待たせいたしました。これよりブルームバルト養育学校の開校式を執り行います」と宣言があり、開校式が始まった。

テレーゼが来賓の前に進み出て、深く頭を下げてから挨拶を始めた。

「ブルームバルト養育学校の校長を預かります、ロンメル男爵夫人テレーゼです。

この度は、皆様の温かいご支援を賜り、ブルームバルト養育学校を開校することができました。

皆様のご賛同とご支援に、心より感謝申し上げます」

テレーゼが謝意を示して深く頭を下げると、教員や子供たちもそれに習って頭を下げた。

完璧に揃ってるとは言えないが、それでも学校側の謝意を表明するのには十分だ。

テレーゼはさらに来賓への演説を続けた。

彼女は学校の意義と今後の目標を雄弁に語り、さらなる支援を求めつつ、今後の学校の社会貢献を約束した。

テレーゼの演説に続いて、生徒の代表のスピーチと、来賓への感謝として手紙と花束が手渡された。

式は粛々と進み、来賓からの激励の言葉や、学校への寄付の目録などが読み上げられた。

長丁場だったが、子供たちの顔は喜びで輝いていた。

激励され、期待され、そして何より、自分たちが学ぶ機会を与えられたことを喜んでいたのだろう。

感極まって涙ぐむ子供までいた。

学校通うだけで何時間もかかる子供だっている。

家の手伝いをしながら通ってる子や、子供の手伝いが宛に出来なくなる家だってある。

それでも、子供たちは頑張って学校に通い、親も理解を示して子供を送り出すのは、今より良くなりたいと願っているからだ。

それってすごい事だ。

夢を諦めなかったから皆ここまで来れた。

誰が欠けても、この学校はなかっだろう…

安っぽい考えだが、運命のようなものを感じていた。

これまでの事すべてがここにつながっている気がした。

俺がテレーゼと一緒になったのも、この街に来たのも、今まで出会ったすべての人間も…

十年前には先の事なんて考えちゃいなかったが、今は随分考えも変わった。自分の事しか考えていなかったひねくれたおっさんを変えてくれたのは彼女だ。

式は滞りなく進み、来賓も学校の出来栄えに満足して宿に戻って行った。

「お疲れ。終わったな」と、テレーゼを労うつもりで声をかけると、彼女は笑顔で「まだですよ」と答えた。

「これが始まりです。これからの方が長いんですよ」と語る彼女は興奮したように頬をそれ薔薇色に染めて、目を輝かせていた。

「そうだな」と頷いて、「頑張れよ」と言い直した。こんなめでたい日に、《終わる》という言葉は不適切だろう。

彼女と話していると、テレーゼの生徒たちが花束をひとつ持ってきた。

「なんだ?余ったのか?」と子供たちに訊ねると、子供たちは顔を見合せてクスクスと笑った。

「余ってないですよ。予定していた数通りです」

テレーゼはそう答えて、子供たちから来賓用に用意された花束を受け取ると、俺に向かい合うように立った。

「ロンメル男爵。私の夢に御付き合い下さり誠にありがとうございます。

男爵は私の最も近くで、いつも励ましてくださいました。私はその優しさに甘え、時には我儘も申し上げました。

この学校を始められたのは、私の我儘を男爵がお許し下さったからです。本当にありがとうございます」

テレーゼのお辞儀に合わせて、子供たちの「ありがとうございます!」という唱和が重なった。

なんだよ、これ…面と向かってこんなの恥ずかしいだろ…

「私たちからの感謝の気持ちです。お受け取りください」と、テレーゼは花束を差し出した。

俺の伸ばした腕は花束を無視して彼女を抱いた。

そんなんじゃねぇんだよ。俺がしたかったから、お前の夢を応援したいと思ったからそうしたんだ。礼なんか言われる筋なんかねぇよ。

「花なんか要らねぇよ。俺はこっちの方が良いんだ。お前が笑顔で隣に居るならなんだってしてやるさ」

俺の粗削りな言葉に、腕の中に抱き寄せた女は嬉しそうに笑ってくれた。
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