燕の軌跡

猫絵師

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残酷

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『失敗したようです』とレプシウス師は申し訳なさそうに告げて、俺にもう一度材料の採取を依頼した。

彼にとっては難しい事ではなかったはずだ。

レプシウス師が失敗するなんて珍しい。

少し不安になる俺に、彼は『すみません』と詫びた。

また瓶を受け取って部屋に戻ると、少し出ていた間にルドはもう寝ていた。

昼間走り回っていたから、疲れてすぐに寝入ってしまったみたいだ。

ベッドの傍らで、ミアは口元に人差し指を当てて、《静かに》と合図した。

音を立てないように、ゆっくりドアを閉めた。

彼女に歩み寄って、指を退けた口に唇を重ねた。

ミアは照れたように笑ってくれた。

「レプシウス様はなんて?」

「いや…ちょっと失敗しちゃったから、もう一度材料が欲しいって言われた」

「え?レプシウス様が失敗?」

「うん。俺も驚いたけど…

まぁ、そういう時もあるだろうし、もう一度やり直すからまた材料集めるの手伝ってくれる?」

「まぁ…いいけど…」と答えて彼女はベッドに視線を向けた。ルドはよく寝ている。

「起きないよね?」と彼女は子供の様子を確認した。

「ぐっすりだから大丈夫だよ」

そう言って彼女の手を握った。

自分でするより、彼女にしてもらった方がいい。

ベッドはつかえないから、ソファに移動した。

「この間みたいに手と口でいい?」少し恥ずかしそうに彼女が確認した。

「うん。ありがとう」

彼女にお礼を言って抱き寄せた。

唇を重ねて、彼女の身体に触れる。

胸に触れると、彼女は小さく声を上げた。

「ルドが起きちゃうよ」と笑うと、彼女は俺の首に腕を絡めて、耳元で「意地悪」と呟いた。

その声に男の本能が刺激される。下腹部が熱を帯びた。

「やばっ、ミア可愛すぎ」

「もう」

「ねぇ、もっと顔見せて、可愛い顔」と彼女に甘えた。恥ずかしがってるミアの顔が可愛い。

「やぁよ。恥ずかしい」

手で顔を隠そうとするから手をどかして、キスをした。舌を絡めるキスは彼女が教えてくれた。

キスしながら胸を触られると良いらしい。

愛らしい彼女の反応に興奮した。

彼女との子供が欲しいと思うのは、彼女を愛しているからだ。

好きで好きでたまらない。

エルマーと彼女の関係は、俺にとっても大切なものだけど、子供が出来たら、さらに特別なものになるはずだ。

彼女には子供が出来て、ルドには兄弟が出来る。俺も本当の父親になれる…

「愛してる、ミア」

この言葉を何度口にしたかも分からない。

でもこの先も何回だって言うよ…

「ねぇ…俺も…」

甘い声を出すようになった彼女に、お願いすると、潤んだ目の彼女も頷いた。

彼女の手が下腹部に伸びて、布越しに触れた。

「もう…すごいね」

「だって、君が可愛いから」と素直に答えると、彼女は恥ずかしそうに笑った。

「ありがとう」

彼女の手が、手探りでベルトに伸びて、留め具を外した。

ズボンを緩めると、彼女はソファの下に膝を着いて、上目遣いで「いい?」と確認した。

やっぱり彼女は可愛いや…

「お願い」と返事をすると、彼女は艶っぽい女の顔で頷いた。

✩.*˚

二回目の《治験体》は場所を変えて、外の影響を受けにくい地下室で作ることにした。

スーの分身と一緒にアショフの分身も、全く同じ手順で作った。

《治験体》を作り終えると、地下室に鍵をかけて、誰にも触れられないように立ち入りを禁じる札を用意した。

これで明日には用意出来るはずだ。

地下室を後にすると、階段の上ではリリィとベスが待っていた。

「どうでしたか?」落ち着きなくソワソワしていたベスが訊ねた。隣ではリリィが難しい顔をしていた。

「大丈夫でしょう。明日の夜には結果が出ます」

そう答えながら、内心では大丈夫か疑う気持ちがあった。

比較するために、アショフに材料を提供して貰ったが、また両方とも失敗したとなれば私の腕が落ちたということも考えられる。

「これで失敗するようなら、私も引退ですかねぇ…」

日々衰えは感じていた。

もう齢は80を過ぎた。人にしては長く生きたと思う。いつ死んでも驚くことは無いだろう。

それでも、まだ死ぬにはやらなければならないことが多すぎる。

後継者も決めてない。

この二人もアーケイイックの同族の元に帰してやりたいが、未だにそれもできずにいる。

アーケイイックの手近なエルフの村には働きかけたものの、アーケイイックは国と呼ぶには未完成だ。

部族によっては仲違いもしているし、情報も共有されていない。

彼女たちの家族を探すのは、藁の中に落とした針を探すより難しい…

それでも、このままこの子たちを人の国に留めておくのはリスクが高い。

私が死んだ後にも、然るべき立場の人間が彼女らを守ってくれれば良いのだが、そうでなければ、彼女らはまた難しい立場に置かれることになるだろう。

そうならないために、手は尽くす気でいるが、何しろもう歳が歳だ…

両の手を塞ぐ少女らの未来を憂えていた。

「レプシウス様?」

「何ですか?」とリリィに問い返した。

私を見上げる彼女の大きな瞳には、不安の色があった。

「何か心配事ですか?」と彼女は私を心配してくれた。

「リリィではお役に立てませんか?」

「ベスも!ベスもお役に立てます!」

健気な少女たちは必死に主張した。

「二人ともありがとうございます」

愛らしい少女たちの頭を撫でて、そっと抱き寄せた。

人に傷つけられたのに、この子たちは私を信じてくれている。私は彼女らの信頼に応えると同時に、安心出来る存在でなければならない。

この程度の失敗で心を弱らせている場合ではなかった。

治癒魔導師に必要なのは《揺らがない心》だ…

「リリィ、ベス。貴女たちがいてくれるだけで、私は心強いのですよ」

✩.*˚

煙草が切れた。

「ディルク、煙草…」

「ねぇよ」

素っ気ない返事と煙草の空箱が飛んできた。

スーの護衛として着いてきたが、特にすることもないから、二人でボーッとしながら煙草をふかして時間を潰していた。

そりゃ煙草だって無くなるわ…

ふらっと部屋を出て、スーたちの部屋に向かった。

「スー、ちょっといいか?」とドアを叩くと、出てきたのは寝癖のチビ助だ。

「おー、ルド」

「おはよう!イザーク!」と懐っこくルドは挨拶した。こいつは俺たちを怖がらないから可愛いんだよな…

頭を撫でながら、「父ちゃんは?」と訊ねると、ルドは「いるよ」と答えた。

「パパァ!イザーク!」

「聞こえてるよ、ルド」と部屋から声が聞こえて、スーが姿を見せた。

「何?」

「煙草買いに行っていい?」と用事を告げると、スーは「あぁ」と答えて、部屋の中に視線を戻した。

「ミア、何か要る物ある?」

「ないよ。ありがとう」と部屋の奥から姐さんの声がした。

「じゃぁ、俺のも買ってきて」

スーが金を出して自分の分の煙草を頼んだ。

「イザークお使いなの?」とルドが子供らしいワクワクした表情で俺を見上げた。垂れた目は楽しいことを求めるようにキラキラしてた。

「ついでだよ」

「ねえ、イザーク。戻ってきたらサイコロしよう」

「いいぜ。お前が俺に勝てるかな?」

「ルド良い目出すよ!」と、ルドは子供らしく俺に張り合った。

時々サイコロで遊んでやると、喜んで何度も投げるようにせがんだ。

ついでに飴でも買ってくるか…

俺が他人のために金使うようになるとは思ってなかったよ…

「後でな、ルド」とルドの頭をくしゃくしゃと撫でて、スーにルドを返した。

泊まってる部屋に戻って上着を手にした俺に、ディルクが声をかけた。

「問題起こすなよ?」

「ガキじゃねぇよ」

「自覚ねぇのか?」とディルクは眉を寄せて俺を睨んだ。怒ってるより呆れてる顔だ。

なんだかんだ腐れ縁で長いもんな。それくらい分かる。

「行ってきまぁす」とふざけた感じで手を振って部屋を出た。

今の生活は割と気に入っている。

俺が大人になる前に家族と呼べる存在はいなくなったし、一度は連れ合いも見つけたけど、都合があって別れた…

『あんたの子供だよ』と彼女は言っていた。

最初はそれを信じてたが、自分の子供じゃないと、お節介な女が俺に教えた。

子供の父親は、俺のよく知ってる奴だった…

彼女と腹の中の子供を見捨てて家を出た。

きっと、俺にはそういうものに縁がなかったんだ…

そう思って拗ねながら生きてきたが、ここに来てやっと居場所が見つかった。

ディルクの奴だってそうだろう。

俺もあいつも根無し草で、一所に留まるようなやつじゃなかったのにさ…

俺たち随分変わったな…

このぬるい生活は居心地が良かった…

雑貨屋で煙草と飴を買って、来た道を戻った。

知らないところだし、面倒なのは御免だ。

ラーチシュタットは閉鎖的な壁に囲まれた街だが、朝の時間だからか、店の並ぶ通りは人が多かった。

賑やかに囀る鳥の店の前を通る時に、余所見をした。

ドンッ、と後ろから腰の辺りにぶつかる衝撃があってよろけた。

やられた!と思って慌てて手を伸ばした。背の低い影が横をすり抜けて、俺の手にしていた紙袋を攫った。

「っ!このっ!」

ポケットから石を出して、逃げる背中に投げた。石は真っ直ぐに飛んで、顔を隠すように被ったフードの後頭部に吸い込まれた。

「きゃっ!」と猿のような悲鳴をあげて、石をくらった盗人は奪った荷物を抱えたまま派手に転倒した。

「どうだ!相手が悪かったな!」

ざわつく周りの視線を無視して、荷物を拾った。

中身は無事だ。何とかスーにどやされずに済みそうだ…

「ったく!油断も隙もねぇな」

油断してた俺も悪いが、手癖の悪いガキもいたもんだ…

ここじゃ邪魔になる。動かなくなったガキの首根っこを捕まえて、往来の脇に引きずって行った。

「あんたの、大丈夫かい?」と屋台から出てきた店主が、ガキを捕まえている俺に声をかけた。

「あんたよく《ルカ》を捕まえたな?

なかなか捕まらなくて手を焼いてたのさ」

「なんだよ?有名人か?」と訊ねると、店主は俺の捕まえてる子供を睨んだ。

「手癖の悪いガキさ。孤児だから可哀想っちゃ可哀想だが、被害も酷くてな…

商品は盗むし、そいつに財布をスられて泣いた奴は少なくないだろうさ。

今度こそラーチから放り出してやらんとな」そう言って屋台の店主は《ルカ》を憲兵に渡すように勧めた。

「ふーん…」

俺も似たようなことはやってたから、憲兵に渡すのは気が引けた。

余裕がなかったから、割と本気で石をぶつけちまった。死んでないが、気を失ってるみたいだ…

これじゃ小言も言えそうにない。

「俺はよそもんだからよ。今、世話になってる爺さんに聞いてみるよ。

こいつ逃がさなきゃいいんだろ?」

「そうして貰えると助かるね」と言って、店主は俺を見送った。

ぐったりと動かない《ルカ》を担いで歩き出すと、周りにいた奴らは、波が引くように慌てて道を譲った。俺ってそんなに凶悪に見えるかねぇ?

軽いな…

肩に担いだ子供の身体は細くて痩せていた。

孤児なんて、生きるにはそのくらいしかできない。

与えてくれる人がなければ、盗んで、奪って、貪欲に生にしがみつくしかない…

俺があの家に置いてきた、彼女と子供はどうだったのだろうか…

ふとそんなことが頭を過った。

柄にもなく、少しだけ後悔している自分がいた…

「あーぁ…」と盛大なため息を吐いた。

無性に煙草吸いたい…

何で拾っちまうかねぇ…俺ちゃんのバカ…

褒められることなんてないと分かっていても、この荷物を放り出す気にはならなかった。

気を失った子供を担いで戻ると、ディルクは露骨に嫌な顔をした。

「…おまっ…変態かよ?」

「だって仕方ないじゃん」とボヤいて経緯を話すと、ディルクはため息を吐いて「好きにしろ」と言った。

とりあえず、逃げないように手足を縛ってベッドに転がしておいた。

スーのところに顔を出して、頼まれていた煙草を届けるのと一緒に、拾った子供のことを話した。

「相手がお前とかついてない奴だな」と、スーは悪党の方に同情した。

「レプシウス師かアショフに伝えるよ。

そいつ今どうしてんだ?」

「縛ってベッドに転がしてあるよ。相当悪ガキみたいでさ、多分憲兵に渡したら、無事じゃいられないだろよ…」

庇う気は無いが、あの屋台の店主の言葉の通りなら、泥棒の常連だ。

鞭打たれて放逐されるか、利き手を切り落とされるくらいの、重めの罰を受けるかもしれない。

「お前が他人の心配するなんてな」とスーは俺を茶化した。

でもそれは俺の方が驚いてるくらいだ。

「じゃぁ、後よろしく」と言い残して部屋を出ていこうとすると、ルドに呼び止められた。

「イザーク、あそぼー!」

そういや約束してた。ルドのために買った飴は袋の中に入れっぱなしだ。

「いいぜ、ちょっと待ってな」と言って、サイコロと飴を取りに戻った。

わざと負けて、チビの口の中に飴を放り込んでやるつもりだ。

大人って大変だよな…

✩.*˚

頭のズキズキする痛みで目を覚ました。

痛ってぇ…

ここいらで見ない顔で、俺のことも知らなさそうな奴だったからカモだと思った。

油断したところで荷物を奪ったのに…

痛む頭を抑えようとしたが、両手を縛られていて出来なかった。足も縛られて自由が利かない。

「なんだ?起きたのか?」と男の声がした。

声のした方を見ると、煙草を咥えた黒髪の男が椅子に座ってこちらを睨んでいた。

「お前、イザークから荷物をとしたんだってな…馬鹿な奴だ…」

男は憲兵では無さそうだ。

直接仕置しようと思って連れてきたのだろうか?

相手が悪かったみたいだ…

「ごめんなさい」と謝った。

まだ俺の見た目は子供だ。必死に謝ったら見逃してもらえることもあった。

目の前の男の形は普通だが、部屋自体は小綺麗で広い。多分それなりの金持ちの家だ。

無一文の汚い孤児なんてシメたって、目の前の男には何の得も無いだろう。

「お前が謝る相手は俺じゃねぇよ。俺よりもっと面倒くせぇ野郎だ」

目の前の男はそう言って、興味なさげに俺から視線を外した。

「ね、ねぇ…これ…」

「あ?諦めろ」

男は怖い声で縄を解くのを拒否した。取り付く島もない…

どうしよう…何とか逃げないと…

部屋を見渡したが、ちょっとした荷物くらいしかない。俺が荷物を盗もうとした相手は留守のようだった。

俺を連れ帰った目的は分からないが、あいつが帰ってきたら、何をされるかしれたもんじゃない…

手首を結んだ縄は隙間なく結んであって緩まなかった。足のもしっかりと結われて、子供の力じゃ外れそうにない。

涙目になりながら縄を緩めようと努力したが、徒労に終わった。

こんな子供相手に酷くない?!

焦る俺の耳がドアをノックする音を拾った。

ドアを開けて入ってきた奴の顔を見て、血の気が引いた。

「あ!起きた?」と人の良さそうな顔で、男はベッドに歩み寄った。

「あ、あんた…」

茶色い髪のふざけた印象の男は、俺が荷物を奪おうとした相手だ。

顔はヘラヘラと笑ってるが、何を考えてるのか分からない相手に恐怖を覚えた。

俺のやろうとしたことに腹を立てているなら、殴るくらいするだろうし、それ以上だってするかもしれない。

「…ご、ごめ…」

「あ?何?今更ビビってんの?」

耳をほじりながら男は聞こえてない振りをした。

男は近くにあった椅子をベッドの脇に持ってくると、ダガーを抜いてチラつかせた。

「俺ちゃんさぁ、舐められんのは嫌いなのよね。

でもあんたも可哀想だしさぁ、どうしよっか?」

間の抜けた声でヘラヘラ笑いながら、刃物をチラつかせる男に狂気を感じた。

こいつ、多分ヤバい奴だ…

「ごっ…ごめんなさい!」呂律が回らない舌で何とか男に謝った。

怖くて涙目になりながら言い訳した。

「だって…俺、親も何も無いし…ああしないと食べるものもなくて…」

「分かるよ。でもさぁ、それと俺は関係ないじゃん?」

「本当に…本当にごめんなさい、見逃して…」

「イザーク。ビビらせすぎだ」

見かねたのか、もう一人の男が目の前の狂人に苦言を呈した。

「あんた、甘いよな、ディルク…」

「お前気づいてないのか?」

「何が?こういうガキはなまた同じことするんだぜ。そろそろやめさせないと、今度は仕置じゃすまなくなるぜ」

イザークと呼ばれた男はそう言って、俺に向き直ると「で?」と笑った。

「あんた、後がないそうだぜ。

屋台の親父が『憲兵に渡せ』ってよ。なぁ、意味わかるか?」

「憲兵に…」その言葉に背筋が凍る。

前にも捕まって憲兵に渡された事がある。

その時は拳で殴られて鞭で打たれた。鞭で打たれた傷はまだ消えずに残っている…

「やだ…やだよ!やだやだ!」

『次は悪い手を切り落とすからな』と脅されたのを思い出して悲鳴をあげた。あいつらは本当にやる。

手のない浮浪者はだいたいそうだ…

でもこうするしか…他に方法なんてないのに…

涙ながらに「ごめんなさい」と繰り返した。

「もうしないから!だから許してよ!

言うこと聞くから!憲兵は許してよ!」

「本当か?どうせまたやるんだろ?」

「しないよ!やだよ!ごめんなさい!ごめんなさい!」

泣きじゃくりながら必死に懇願した。手がなくなったら俺みたいな子供は生きていけない…

「お前、歳は幾つだ?」

「12…」

「なら、分かるよな?なんでそんなことしてた?」

「だって…誰も助けてくれないから…俺みたいな子供には仕事もないし…」

「じゃぁ、真面目に働く気はあんのか?」と訊ねられて、複雑な気持ちになった。

そんな選択肢は俺にはなかった…

「ご飯が食べれるなら…」と答えた。

本当に、それしか無かった…

「じゃぁ、飯が食えて、寝るとこがあって、人並みになれたら満足か?」

「…うん」と頷いた。心做しか、目の前の男の目が優しくなった気がした。

「分かった、もうするなよ?」と男はダガーで手首と足に結んだ縄を切った。

「ディルク、こいつは俺が連れて帰るわ」

「マジで言ってんのか?頭イカれてんのか?そんなガキどうすんだ?!」

「なんかあるだろ?」

「でもそいつは…」

「ここじゃ憲兵の世話になるしかねぇんだろ?顔だって割れてるだろうし、ここじゃ誰も雇ってくれないだろ?」

そう言って、男は俺の頭を撫でた…

頭撫でて貰ったのは…どれぐらいぶりだろう…

緊張してた心の糸が切れて、目元にじわっと熱が宿った。

ディルクと呼ばれてた男は、ため息を吐き捨てて「勝手にしろ」と言ってまた煙草を咥えた。

イザークと呼ばれてた男は、俺の姿を上から下まで眺めて苦笑いした。

「とりあえず、汚ねえから洗わねぇとな…

ちょっと待ってな」と言って、彼は部屋を出ていくと、湯と布を貰って戻ってきた。

「どうせその服だって盗んだやつだろ?とりあえず俺の着とけや」と言って、彼は自分の服を寄越した。

大きいシャツはダボダボで、上だけで膝の辺りまで隠れる大きさだ。

「俺、イザーク。お前 《ルカ》だろ?」と彼は俺の名前を確認した。

本当は違う名前だけど、その名前で認知されてたから頷いた。

「腹減ってるだろ?さっさと綺麗にして飯でも食おうぜ」

さっきまでの狂気じみた印象を打ち消すように、陽気に笑って、彼は俺の服に手をかけた。

「ちょっ!」

抗議の声を上げる間もなく上を剥ぎ取られた。

え?何?頭が真っ白になる…

「お前痩せすぎだぜ」と言いながら、イザークは下も剥ぎ取った。

固まってしまって抵抗もできずに、目の前の男に身ぐるみ剥がされてしまった…

裸…はだか…

思考が追い付くと、羞恥心が押し寄せた。

「きゃぁぁぁ!」

「おまっ!何してやがる!」俺の悲鳴にディルクの怒鳴り声が重なった。

目の前のイザークは驚いた顔で俺を見ていた。

「へ?無い?」

「当たり前だろ!バカ!そいつは女の子だろ?!」

「え?えぇ?!」とイザークは驚いていた。

俺が女の子だって、この男は全然気づいてなかったらしい。

なんて日だよ?!一瞬でもこいつに気を許した自分がバカだった!

✩.*˚

「災難だったね」とディルクが連れてきた女の人が俺を慰めた。

ミアと名乗った女は、俺を落ち着かせて、髪や身体を綺麗に洗ってくれた。

「あたしのじゃ大きいね。でもないよりマシかな?」

彼女はそう言って着替えを貸してくれた。

スカートなんて履いたことなかったから、なんか変な感じだ…

「後でちゃんとしたの用意してあげるね。ほら、髪も整えよう」

「…うん」と頷くと、彼女は俺の髪にブラシをかけた。

頭を撫でられているみたいで気持ちいい…眠くなってしまいそうだ…

「気持ちいい?」と訊ねられて、「うん」と頷いた。

「俺、こんなことしたことないから…」

「そうなんだ。苦労したね」とミアは俺に同情してくれた。

「あんたはあの男たちの何なのさ?」

「ディルクとイザークは旦那の部下だよ。護衛役で着いてきてるの」

「あんたの旦那、偉い人なの?」と聞いてみると、彼女は自慢げに笑った。

「まぁ、一応、傭兵団の団長だからね。偉いっちゃ偉いかな」

傭兵団の団長の奥さんだったら偉い人じゃん?

それでも彼女は普通のお姉さんみたいに見えた。

彼女は優しくて、俺みたいな子供に親切にしてくれた。

「あーあー、毛先ボロボロだね。少し切った方が良さそうだよ。

こんなに痩せて可哀想に…

なんかこんなことしてると、あたしも娘欲しくなってきちゃった」

優しい言葉と温かい手が傷だらけの心に染みた。

「ほら、泣かないよ。あんたきっと可愛いんだから、泣いてちゃもったいないよ?」

「…だって…だって」言葉が溢れた涙に邪魔されてつっかえた。

罵声や怒号より、優しい言葉が刺さった。

ミアの胸に顔を埋めて泣いた。ミアは嫌がらずに、子供をあやす様に俺を受け入れてくれた。

「よく頑張って生きてたね。偉いじゃん。

あたしも少し前まで碌でもない人生だったけどさ、あんたも大変だったでしょ?」

「…あんたも苦労したの?」

「まあね…

今はこんなんだけどさ、数年前までは輜重隊で傭兵相手に商売してたよ…」

彼女はそう言って、俺を慰めるように、自分の事を話してくれた。

貧しい家に生まれたから、実の親に春を売るように強要された。

初めては借金のカタとして差し出した。

何もかも信じられなくなって、家を飛び出したが、結局、女の身一つで生きていくためには、身体を売るしか無かった、と彼女は言っていた。

その後、色々世話を焼いてくれた娼婦仲間と一緒に輜重隊に着いて行って、前の旦那に出会ったらしい。

「前の旦那は?」

「死んじゃった。でも今でも好きだよ…」と彼女は陽気を装って笑顔で答えた。

「今の旦那はさ、その人の弟なんだ。

血は繋がってないけど、あの人が《弟》って言ってたから、それだけ大切な存在なんだよ」

「あんた…それでいいの?」

「うん。だって幸せだもん。あたしを助けてくれた人たちがいたから、あたしは今幸せだよ」と彼女は笑った。彼女は少し強がってるようにも見えた。

「ほら!湿気た顔してないで、ちゃんと笑いな!

子供のくせに、ここの皺消えなくなるよ」

彼女はそう言って俺の眉間を爪弾いた。彼女は思いついたように、手を叩くと俺に提案した。

「そうだ!あたしの《妹》にしてあげる!」

「え?」

「あたしが守ってあげるよ。でも《妹》だからちゃんと《姉》の言うこと聞くんだよ!

《甥っ子》の世話もちゃんとしてよ!」

「いきなりそんな…」突然 《姉》と名乗りを上げた女は、俺の顔を両手で包むと真っ直ぐに向き合った。

「幸せになりなよ、ルカ!

それまでちゃんと面倒見てあげるからさ!」

彼女は俺に暖かい笑顔を向けて幸せを願ってくれた。

なんなんだよ、こいつら…?

こんなの初めてで、返す返事を持ち合わせていなかった。

✩.*˚

イザークの拾ってきた子供は女の子だったらしい。拾った本人が一番驚いていた。

ミアは《ルカ》を気に入って、何かと世話を焼いてやっていた。

ルドも彼女を『お姉ちゃん』と呼んで受け入れていた。遊び相手ができて、ルドは嬉しそうだ。

信用はできないが、放逐しても、外で悪さをするだけの話だ。

レプシウス師も前から気になっていたようで、ルカを預かることを許してくれた。

「あれ、連れ帰ってどうすんだよ?」とイザークに訊ねると、イザークは他人事のように答えた。

「《燕の団》で雑用させりゃいいだろ?飯の用意とか洗濯とか…」

「おい!あいつの作った飯食うのか?」

黙って話を聞いていたディルクが抗議の声を上げた。

「何だよディルク?教えてやりゃ良いじゃねぇか?」

「お前な…勝手に決めたらゲルトが怒るぞ」

「爺さんに子供好きだろ?大丈夫じゃね?」とイザークは楽観的に答えた。

「姐さんやルドが良いってんなら、スーだって良いだろ?」

「俺まで巻き込むなよ。ゲルトの雷が落ちるのはお前だけで十分だろ?」

周りを巻き込もうとするイザークを意地悪く突き放して、「だろ?」とディルクに笑いかけた。

「当然だ」とディルクとイザークを突き放したが、彼はルカを捨てろとは言わなかった。

それは多分ゲルトも同じだろう。

彼は、行き場のない子供を追い出したりはしない人だ…

「何話してるの?」とミアが来て訊ねた。肩を竦めて笑うと、彼女は子供たちに視線を向けた。

「ねぇ、あの子たち姉弟みたいでしょ?」

ミアは嬉しそうにそう言って、遊んでいるルドとルカを見ながら呟いた。

「いいよねぇ、女の子…

スーの子供なら、きっと可愛いよ」と彼女はまだいない子供に俺の姿を重ねた。

「スーに似た方が絶対美人だよね。

もしかしたらフィリーネ様くらいの可愛い子かもよ」

「そうかな?君だって美人だよ」

「そんな顔に言われたら逆に自信なくすよ」とミアは俺の言葉に苦笑いした。

本心なんだけどな…

確かに、テレーゼのようなお嬢様みたいな美人ではないけれど、ミアの笑顔は素敵だと思う。

エルマーの好きだったそばかすは、いつの間にか薄くなって消えていた。

御屋敷で働くようになってから、ラウラにお肌の手入れの仕方や、化粧の仕方を教わって、彼女は垢抜けて綺麗になっていた。

本人は気づいてないかもしれないけど、ミアは美人だし、スタイルだって良い。

「ミアは女の子がいいの?」と訊ねると、彼女は「まぁね」と笑った。

「だって男の子なんて、年頃になったら母親なんていらなくなっちゃうもん。

女の子なら話も合うでしょ?

だから一人くらい女の子欲しいよ」

「そんなもん?」

「そうだよ。それに…」ミアは言いかけた言葉を飲み込んだ。

ルドに向けられた視線に憂いが混ざる。

「…男の子は…戦に出るかもしれないから…」

彼女はそれ以上は口にしなかったけど、その先は言わなくても分かる。

「そっか」と頷いた。

彼女は大切な人を失ってるから、これ以上失いたくないはずだ。ルドは彼が残してくれた大切な子供だ。

戦にだって、送り出したくないだろうけど、彼女の立場でそれは口にできない。

彼女を《燕の団》の《姐さん》にしたのは俺で、ルドは《燕の団》の《団長の息子》だ。

「ごめんね、こんな事言わない方がいいよね。つまんない事言ってごめん」

「そんなことないだろ?大事な事だ」

まだ先だろうけど、ルドを俺の息子として育てるなら、彼はそのうち《燕の団》の顔になる。

エルマーほどでないにしても、生き残れるくらいには強くなって欲しいと思う。

「もしルドが戦に出る日が来ても、ルドだけは必ず君に返すよ。俺の命に代えてもルドだけは守るから、心配しないで」

彼女を安心させたくてそう約束したけれど、ミアの返事は「バカね」という優しい罵倒だった。

「ルドだけ帰って来て、その後どうするのさ?

《燕》は帰って来るもんだろ?二人で仲良く帰っておいでよ?

あたしはあんたの子供と待ってるからさ」

「うん…ありがとう」と頷いた。

団の名前を《燕》にしたのは、テレーゼが好きだからだけじゃない。

俺たちが、必ず生きて帰るためだ。何度出ていっても、必ず帰るという決意を旗に込めた。

やっぱり彼女が好きだ。大好きだ。

「みんなで帰るよ」と彼女と約束した。

✩.*˚

夕食の後、レプシウス師から俺だけ呼び出された。

また失敗したのかな?と嫌な想像が頭を過った。

部屋に迎えに来たリリィとベスに案内された先は、地下室の入口だった。

入口の前には、ランプを手にしたレプシウス師の姿があった。

「レプシウス様、スーを連れてきました」

「ありがとうございます、二人とも」

レプシウス師は二人の頭を撫でて、「大切な話をしますので、少し外してください」と二人にお願いした。

彼は地下室の入口の鍵を開けると、その先に俺を案内した。

「こちらです」と部屋に通されて、中を見渡した。

「ここは特別な調合などに使う部屋です。

外部から完全に遮断されていますので、失敗の許されないような大切な調合や実験はここで行います」

部屋の灯りを用意しながら、レプシウス師は部屋の説明をした。

沢山の引き出しの棚や、大きな机には、薬を調合する道具などが並んでいる。

レプシウス師は椅子を用意すると、俺と向かい合って座った。

「スー。さっきも二人に言いましたが、貴方に大切なお話をします。

ここの話は他の人に聞かれる心配はありません。私と貴方の二人きりでお話しています」

レプシウス師の声のトーンに嫌なものを感じた。

「そんな大袈裟な…」と強がって言ったものの、胸の中は不安でざわめいた。

俺の虚勢なんて、彼にはお見通しだろう。

レプシウス師はあくまで静かな口調で、話を切り出した。

「先日、《治験体》の作成に《失敗》したとお話しましたが、実はそうではなかったようです」

「…でも、《失敗》って…」

「落ち着いて聞いて欲しいのですが…

まずはこれを…」

レプシウス師はそう言って、机に並んだ二つのフラスコを俺に向かって押し出した。

片方は濁っていて、もう片方は透明な水の中に、小さな動くものがあった。

「《治験体ホムンクルス》を培養したフラスコです。

この二つは同じ手順で、ほぼ同じ材料で作られています」

「ほぼ?」

「濁っているのはスーの材料で、命が宿った方はアショフの材料で同じ条件で作りました」

「…え?」

同じ条件で作ったのに、何故か俺のは二度も失敗していた。

「それって…」血の気が引いた。

これを作る前に、受けた説明が頭の中で繰り返されて、心臓が慌ただしくなる。

レプシウス師の静かな声が、閉鎖された地下室の壁に響いた。

「嘘偽りなく、はっきりと申し上げます。

君の子種には、子供を作る能力はありません」

残酷な告知に瞬きも言葉も忘れた。

レプシウス師は憐れむように俺を見詰めて、「残念です」と呟いた。

何かの間違いであって欲しかった。

この際、《失敗》でも構わない。

だって…これじゃあ…俺は…

「納得できないのであれば、もう一度、同じようにお作りします。

それでも、結果は変わらないかと思います」

「…それじゃあ…俺は…」

「残念ですが、自分の子供は諦めてください」

レプシウス師は俺の期待したような言葉はくれなかった。代わりに彼が与えたのは、受け入れ難い残酷な現実だった…

受け入れ難い言葉が木霊のように頭の中を反響した。

「なんで…」

絞り出した声は自分のものじゃないみたいで、感情と情報が整理できなかった。

子供を…諦める?

『いいよねぇ、女の子…』

ミアのあの言葉が脳裏を過ぎった。

レプシウス師はゆっくりと諭すように俺に語りかけた。

「ハーフエルフは稀有な存在です。

貴方から話を聞いて調べてみましたが、ハーフエルフの公式的な記録は乏しく、私の調べた限り、ハーフエルフの子供の記録はありませんでした。

私の予想が正しいのであれば、貴方に限った話ではないかと思います」

「本当に…無理、なの?」

まだ、信じたくなくて、レプシウス師に同じ質問をした。彼は疑う俺を不快に思わず、優しく諭した。

「信じたくない気持ちは分かります。

君がどんなに彼女との子供を楽しみにしてたか…私は知っています。

しかし、私は事実をねじ曲げて、君にこの重要な真実を伏せる訳にはいかないのです。

知らないままでは、ミアとの関係も悪くなるでしょう」

「何で?だって俺…どこも悪くなんて…」

「君は《ラバ》という動物を知っていますか?」

「…なに、それ?」

「馬と驢馬を掛け合わせた生き物です。

馬と驢馬は違う種ですが、交配によりさらに別の種である《ラバ》が産まれます。

しかし、ラバは固定した種にはなりえません。稀に例外はありますが、続く命を生み出すことはできないのです。

ラバは家畜としては優れていますが、人が無理やり生み出したものである以上、その生き物に課された命の枠から外れます。

その結果、子孫を残せない個体として存在しているのかと思います」

「そんな…そんなの俺たちの望んだ事じゃない!」

そんなの不条理だ!だってそれは俺の望んだことじゃない!

「そうですね。確かに、こんなに辛い話はありませんね…」

レプシウス師は俺に同情したが、持論を変えることは無かった。

「スー。辛いでしょうが、《ホムンクルス》が作れなかったことは事実です。

これは貴方の胤に命が無いことを示しています。ミアの問題ではありません。

それでも、私には、君がこの世に生まれてきたことに意味があるのでは?と思っています」

「何で?」

「スーの命は、《巡る命》ではなく、目的のために《生み出された命》ではないかと考えます」

「何それ?」

「この世には二つの命が存在します。

ひとつは二クセによって《巡る命》。自然の一部として、この世界を巡り続ける者たちです。

そしてもうひとつは、《生み出された命》。何らかの目的のために、神々が降ろす命です。

《英雄》や《勇者》などがこれに該当するかと思われます。

前に話してくれましたね。君のお父上は特別なエルフだったと。

その彼に与えられたのは人間の女性でした。それで君が生まれた…

そして君はこの国に来ました。

私にはそれが、何か特別な意味があるものであるような気がしてならないのです」

レプシウス師はそう言って手を伸ばすと俺の髪に触れた。

「この《黒髪》はお母上譲りだと言っていましたね。

エルフに《黒髪》は存在しません。何故かは説明出来ませんが、そういうものなのです。

君は産まれてくるべくして、この世に生を受けました。そして何らかの使命があるものと推測されます」

「でも、誰もそんな事言わなかった…」

「そうですね。誰も気づかなかったからでしょうね…

君はお父上と一緒に居れば、他人と過ごすことも、ミアを愛することも、子供を欲しがることも無かったでしょうから…

残念なことに、私は君の使命が何かを言い当てることはできません。それは神が采配する領域の話です。

一つだけ言えるのは、君がハーフエルフである必要があったということだけです」

「何で…ハーフエルフなんて…」

「人として生き、エルフの長寿が必要なのか…

はたまたその魔力の高さに意味があるのかは分かりません。

もしくは君のお父上であれば、その使命を知っているのかもしれません。

なんにせよ、全ては憶測です。真実には辿り着けません」

レプシウス師はそう言って、白くなった髭を撫でた。

万能そうに見える老魔導師にも、分からないことがあるらしい。

彼はため息を一つ吐いて、ちらりと濁ったフラスコに視線を向けた。

どんなに変えたくてもこの結果は変わらない。

赤茶色の濁った混沌の水は命を宿すことは無かった。俺にその能力が無かったからだ…

「私もこのような結果を告げるのは残念ですが、真実を告げぬのもまた残酷でしょう。

隠していても、どちらにとっても良いことは無いでしょう。

これからの事は、よく考えてからミアとお話なさい。もし難しいようなら、私もお手伝い致します。

私は常に君の味方ですよ」

心強いはずの言葉も、慰めるように抱きしめてくれる腕も、何も心には届かなかった…

受け入れ難い現実に心が砕かれて、あの日以来の絶望に心が沈んだ…
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