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クローバー
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スペンサーの遺言により、ウィンザー公国の抵抗は終わった。
正しくは、もう抵抗できる勢力は無くなったのだ。
「ウィンザー公国の騎士を拝命しておりました、アイザック・ウェイドと申します」
騎獣の背から降りた男は膝を着いて頭を垂れた。
スペンサーの右腕だった男の背は屈辱で震えていた。
それほどまで憎い相手にでも恭順の意を示すのは、ひとえにスペンサーという男の徳あっての事だろう。
ウェイドと名乗った騎士は、私に主の亡骸の返還を求めた。
「スペンサー男爵閣下のご遺体を御返しいただけるのであれば、この命惜しくはございません」
「返還はならぬ」という私の言葉にウェイドと名乗った騎士は顔を歪めた。
「もはやウィンザー公国は滅んだ。
彼はヴェルフェル侯爵パウルの名で故ウィンザー公国の忠臣として葬送する」と告げた。
「ウェイド、卿には我が陣でスペンサー殿を見送って欲しい。
ウィンザー公国は滅んだが、そこに住まう民は変わらず存在し続ける。
彼らのために、卿には生きてもらわねばならん」
「私に…不忠者として名を残せと、そう仰るのか?」
「ウィンザーには失われるべきでない技術や文化が、少なからず存在している。
ウィンザー式の石切や製鉄、騎獣兵は私も興味のあるところだ」
「私はウィンザー公に忠誠を誓った者として、スペンサー閣下の部下として名誉ある死を求めたというのに…
生きて敵に降るなど…あんまりではありませんか…」
彼は力なく肩を落とした。
騎士として、裏切り者の汚名を着るのは確実だろう。
それでも彼を説得して、ウィンザーを見守るものとしての役割を彼に担ってもらう決意だった。
「本来であれば、スペンサー殿を我が陣に加えるつもりだった。
しかしそれは叶わぬ。スペンサー殿の名代として、右腕である卿に、その役割を果たして貰いたい」と根気強く説得した。
スペンサーとウィンザーの民のために、彼は折れるしか無かった。
死に場所を失った忠臣は、亡骸となった主に別れを告げた。
ウィンザーの兵士は、親を失った子供のように咽び泣き、その死を悼んだ。
魔導師に防腐処置を施された遺体は、ユニコーン城に運ばれ、《亡国の忠臣》として貴人の墓に埋葬される。
今後は、ウィンザーの土地も建物もフィーア式の名に変えられる。
地図も新しくなる。
ウィンザー公国は名実共に、この世界から消えるのだ…
フィーア南部の土地も、その装いと性質を一変させようとしていた。
なりたての侯爵が背負うには、その荷は重すぎるような気がした…
✩.*˚
朝、エルマーのテントで目が覚めた。
ワルターが用事があるからと、僕をテントから追い出して、エルマーのテントに放り込んだ。
エルマーは喜んで僕をテントに招いてくれた。
追い出されて文句を言う僕に、エルマーは笑いながら、『あいつだって一人になりたい時くらいあるさ』と言った。
『君にもあるの?』
『まぁ、たまにはあるわな』と言いながら、彼は上着を脱いで寝床にしている毛布の上に座った。
エルマーはワルターより細身だけど、硬い筋肉質な男の人の身体をしている。丸めた背中も大きく広い。僕を抱くとすっぽり覆える位の立派な体躯をしている。
『誰にだって、あるさ。お前だってあるだろ?』
『…まあ、そうだけど…』
『何だよ?言いたいことあるなら言ってみ』と彼は僕を促した。
少し迷って、エルマーの隣に腰を下ろし、膝を抱えて口を開いた。
『ワルターが…此処に残るってなったら、君はどうする?』
『何だよ?そんなの決まってるだろ?』
エルマーは膝を抱えた僕を抱き寄せた。
『お前らと居るよ』と彼は迷わず答えた。
『俺は傭兵なんて別に興味無いからさ。
成り行きで傭兵になったけど、ワルターが居ない《雷神の拳》に用はねえよ』
『そうなの?』
『あぁ、そうだよ』とタレ目が優しく笑った。
『お前のことも好きだしな、そばにいるよ』
長い指が髪を撫でた。優しくゆっくりと髪を梳いて手が離れた。
『お前も、俺たちに遠慮すんなよ。
お前の人生だ。まだお前は俺みたいに歪んでないんだから、自由に生きたらいいさ。
俺がお前を見ててやるからさ。
お前が俺から離れていくまで…』
『そんな事ない!』と彼の言葉をさえぎった。
驚いた顔をした彼に腕を伸ばした。
『僕も君の事大好きだ!』
『…スー?』
『君が嫌だって言っても僕と一緒に居てもらうから!
もう君は僕の家族だから!』
弟みたいだと僕を甘やかしてくれたエルマーは、僕の特別な存在になっていた。
僕はエルマーに、ワルターへの憧れとは別の感情を持っていた。
エルマーは戸惑うような表情を見せた。彼は少しの間言葉を失っていたが、『家族…か』と呟いて僕の頭を撫でた。
『ありがとな』と言う声は震えていた。
彼は僕を痛いほど抱き締めて泣いていた。
暖かい雨のような雫が落ちて、髪と服を濡らした。
彼の震える背に手を回した。
曲線を描く背中を撫でながら、彼の嗚咽を聞いていた。
『孝行者だったんだぜ』
ふざけたようにそう言っていた彼の言葉を思い出す。
そうだったんだろうね…
君は家族を失って、心が壊れるくらい家族を愛してたんだから…
『ありがとう』と咽ぶ彼に、『家族だからね』と応えた。
そのまま二人で抱き合って眠った。
「おはよ」先に起きていたエルマーは煙草を片手に、起きたばかりの僕の頭を撫でた。
何も無かったように振る舞う彼が、何だか妙に面白かった。
「もう泣かないの?」と意地悪く訊ねると、彼は仕返しするように僕の頭を抑えて髪をグシャグシャにした。
「ひっどいなぁ」
「兄貴をバカにするからだ」
彼はそう言って、拗ねたように鼻を鳴らした。
「僕の方が年上だよ」と抗議すると、エルマーは「お前の方がガキだから弟で良いんだよ」と言って兄を譲らなかった。
「そんなもんなのかなぁ?」
髪を整えながらボヤく僕を見て、エルマーは嬉しそうに笑っていた。
✩.*˚
「お待たせしました、イエィツ殿」
デニスが俺を隠した洞窟を覗き込んで声をかけた。
身を隠していた狭い洞穴から出ると、彼は新しい服を俺に渡した。
「助かる」
「その姿では目立ってしまいますから」とデニスは俺の姿を見て苦笑した。
全身に出た刺青の模様を服の下に隠して、手袋を履いた。《祝福》さえ使わなければ、普通の人に見えるだろう。
「世話をかける」
荷物も金も全部置いてきてしまっていた。今の俺は完全にデニスのお荷物だ。
それでも彼は何故か嬉しそうだった。
デニスは荷物から林檎を取り出して俺に渡した。
「さて、どこに行きましょうか?」
「生活出来れば贅沢は言わんさ」と林檎を齧った。
「少し離れてますが、ちょうどいい大きさの街があります。鍛冶屋の街です。雇い口もあるでしょうし、あそこならオークランド人でも目立ちませんよ」
「ならそこに行こう」とデニスに全部任せた。
「良いんですか?全部私に任せて?」
「いいさ、どうせ俺は帰るところもない余所者だ」
そう答えて芯になった林檎を捨てると、デニスのネズミが残り物に飛びついて、人間の居た痕跡を消した。
「お前と兄弟ということにしてくれ。名前も変えないとな」
「いいですね、私も名前を変えましょうかね」
「お前、楽しんでないか?」
「楽しんでますよ」とフードの下でデニスは笑った。
「せっかく死んだつもりでやり直すんです。楽しくやりましょう」と彼は明るい口調で言った。
「もっと暗いやつだと思っていた…」
「貴方も、もっと怖い人だと思ってましたよ」
「…舐められたもんだ」
「褒めたんですよ。素直に喜んでください、兄さん」
「なるほど、そう来たか…」ため息を吐いてその設定を受け入れた。
「出来の悪い兄貴とよくできた弟か…」
まるで子供のごっこ遊びだ。
それも良いだろう…
ギルとレオンと名前を変えて鍛冶屋の街に向かった。
✩.*˚
「わりぃ、ヨナタン、封筒あるか?」
「何だ、こんな朝早くに…」
朝早くにワルターに叩き起された。なんの用事かと思ったら、そんなくだらないことだった。
「手紙だよ。出すから封筒くれ」
「急ぎか?昨日も遅かったんだ、後にしてくれ…」
「何だよ、勝手に漁ってくぞ?」
「やめろ!」
俺はキレイ好きなんだ!持ち物を荒らされるのは御免だ!
「朝から何だってんだ…全く…」
慌てて飛び起きて、恨み言を言いながら紙を折って手紙用の封筒をこしらえた。
「ありがとよ」と礼を言って俺の手から封筒を取り上げると、ワルターはさっさと出ていこうとした。
「待てよ、預かる。誰宛だ?」
どうせまとめて伝書役に渡すのだ。何度も来られるのも面倒くさい。
俺の問いかけに、ワルターは少しだけ動揺した。
「シュ、シュミットに預けるから…」
「あ?」何だよ、その反応は…
「恋文じゃあるまいし、見られて困るもんか?」
「…いや…まぁ…うん…それは、ちょっと…」
ガキか!
「朝からコソコソ俺のところに来たのはそういう事か?」
この朴念仁がどういう風の吹き回しだ?
「添削してやろうか?」とお節介を焼いた。
「要らん!」
「綴り間違えてても知らんからな」
「ぐぅ…」綴りに自信が無いのかワルターは苦い顔をした。
「なんなら今夜にでも相手して貰えるように代筆してやろうか?」代筆屋の仕事もしてた。恋文を書くくらい朝飯前だ。
「そんなんじゃねぇよ!」
「じゃぁどんなんだよ?」
「あー!もう!」と髪を掻き回したワルターは花の香りのする封筒を懐から取り出した。
「誰にも言うなよ!」と言って俺に封筒を差し出す。
封筒も便箋も貴人の使う高価な品だ。相手は貴族か?
中身を確認して「あぁ」と納得した。
先日見た、あの小さなお姫様の御手紙だ。
文字を扱う仕事をしてるから分かる。
細やかな文字は繊細で、躊躇うような筆跡もあった。相手にどう見られているのか気にする、自分に自信の無いタイプだ。
綴りは間違ってないし、文面からは知性を感じる。
それでいてどことなく拙い感じがするのはまだ幼いからだろう。
「色気はないがいい手紙だ」と褒めた。
「ガキに何求めてんだ!」
「で、お前の返事は?」
「絶対見せねぇ!」とワルターは自分の手紙を見せるのを拒否した。いい歳したおっさんが顔真っ赤じゃねぇか…
「恥かくぞ」
「ほっとけ!」
「まぁ、困ったら相談しろ。恋文の書き方くらいタダで教えてやる」
「ガキを口説くほど困ってねぇよ!」
「お前が思ってるほどそのお姫様は子供じゃないと思うがな。いい女だ」
「このスケベが!」
「何言ってる?男はみんなスケベなんだよ」と笑って言い返した。
お前が鈍いだけだ、この朴念仁…
憤然としてテントを後にしたワルターの靴音が消えてから煙草を咥えた。
「おはよう、オーラフ」と錫でできたミミズクに挨拶した。
朝から面白い見世物だったろ?
ミミズクの首が頷くようにカタカタと動いた気がした。
✩.*˚
お返事はあまり期待していなかった。
こんなに早く返ってくるなんて…
「良かったですね、お嬢様!」
「えぇ…そう…ね」
侍女の声をどこか遠くに聞きながら、手の中に握った手紙を眺めた。
煙草の匂いのする、実務的な質素な封筒。
私のお手紙はいかにも貴族らしくて、嫌味だったのでは無いかしら?
世間知らずのお嬢様だと呆れられてるかもしれない…
自分から出したくせに、怖くて返事を見ることが出来ない。
「アンネお願い、開けて!」
いつも一緒に居てくれる侍女に手紙を押し付けた。
彼女は目を丸くして「私がですか?!」と声を上げた。
「だって手が震えるんだもの」
「お嬢様のお手紙ですよ!」
「お願い」
「…仕方ないですね。
でもちゃんと御自身で読んでくださいよ」
アンネは渋々手紙を開いた。
便箋というより、メモのような安っぽい紙に男の人の文字が並んでいる。
文字の綴られた手紙とは別に、もう一つ折られた紙が入っていて、何か挟まっていた。
開くと萎れた歪な四葉のクローバーがあった。
「贈り物ですかね?」とアンネが手元の紙を覗きこんだ。
わざわざ探して用意したのだろうか?
私の為に?
「公女様への贈り物にしては安っぽいですね」とアンネは不満を漏らしたが、私はこの贈り物が気に入った。
伯父様が以前同じものを下さったことがある。
絵本で見て、私が欲しがったからだ。
『これを探すのは恥ずかしかったよ』と伯父様が苦笑いしていたのを思い出す。
時間をかけて探してくれた。
『いい歳した男がする事じゃないな』
膝に付いた緑色の植物の汁は、伯父様の苦労を物語っていた。
『クルーガー殿は良い御仁ですよ』
シュミット様の言葉が不意に記憶の中で囁いた。
悪い人ではないのかもしれない。そう思った。
便箋を手に取った。
硬い文字の並ぶ手紙には、私を気遣う言葉から始まっていた。
『面倒事に巻き込んでしまって、詫びる言葉もありません。』そうあった。
『もし自分が嫌なら破談にして下さい。
手紙も無理して書く必要も無いし、自分に遠慮したり気を使わないで結構です。
未来あるテレーゼ殿の人生を、自分が台無しにするのは申し訳ない…』
硬い無骨な文字は優しかった。
気取らない、飾らない言葉が潔く、男らしい。
安っぽい紙すらクルーガー様の一部のようで、愛おしく思えた。
『良い贈り物を頂戴したのに、テレーゼ殿にお返しできるような物が手元にございません。
有り合わせで申し訳ありませんが、お納めください』
クローバーの事だろう。
子供みたいな贈り物だが、子供の私には丁度いい贈り物だと思う。
宝石やドレスや花束よりも、この萎びた四葉が嬉しかった。
「栞にして残しておいて」とアンネに預けた。
手紙を大事に文箱にしまって、本棚から日記を手に取った。
「伯父様…」
日記には、伯父様が苦労して手に入れた四葉の栞が挟まっている。
栞を手に取って抱きしめた。
貴方と同じ事をしてくれた方がいたんですよ…
心の中でそう報告した。
また伯父様に会えたような気がした。
✩.*˚
あー…馬鹿だな、ガラにも無いことして…
そんな事を思いながら草の上に転がって、空を流れる雲を眺めた。
何か入れれるものは無いかと思ったが、俺が女の子の喜ぶものを持っているわけが無い。
ヨナタンに訊くのも癪だったし、ヘンリックに相談するのも何か嫌だ…
フリッツやエルマーに訊いたところで分かんねぇだろうし、ソーリューは興味無さそうだ。
スーは…論外だ…
ウロウロして、たまたまクローバーが目に入った。
目は良いので、子供の頃から四葉を見つけるのは得意だった。
四葉を見つけてプレゼントするとエマは喜んでいた。
『花言葉、知ってる?』と彼女が俺に訊ねたので『《幸運》だろ』と答えた。
『他にも意味あるのよ』と言っていたが、エマははにかんで笑うだけで教えてくれなかった。
俺もどうでも良かったからその話はそこで終わっていた。
何だったんだろうな…今更気になった。
「こんな所でサボってる」と声が降ってきた。
少し顔を動かすと、数頭の馬を引いたスーとソーリューの姿があった。
「気持ちいいぞ」と緑に包まれたまま笑って見せた。
「いいなぁ」と羨ましがるスーに、ソーリューが早くしろと急かした。
「草に転げるのより、馬を洗うのが先だ」
近くの川で馬に水浴びをさせるようだ。
「俺もするよ」と緑のベッドに別れを告げ、二人と一緒に川辺に向かった。
馬扱いに慣れたスーは一人でも上手に馬の世話をしていた。
「先生が良いんだな」と俺が言うと、ソーリューは「まぁな」と仮面の下で小さく笑った。
「スーには帰るって話したのか?」とタイミングを見てソーリューに訊ねた。
「まだだ」と彼は素っ気なく答えた。
「思っていたより、早く片付いてしまったからな…
半年くらいかかると思っていたから肩透かしを食らった気分だ」
「まぁ、そうだな…」
確かに…まだ二ヶ月も経っていない。
戦争は生き物だ。予定調和とはならない。些細なことで状況が変わる予測不可能なもんだ。
ソーリューは馬とじゃれるスーを眺めながら、意外な台詞を口にした。
「…残るか?」
「は?お前は帰らなきゃならんのだろう?」
「そのつもりだったが…惜しい奴を亡くした…」
そう言って、ソーリューはオーラフの死を悼んだ。
確かにオーラフの死は痛かった。
能力もそうだったが、あのどことなく憎めないふざけた男を気に入っていた。
これからを嘱望されていたのに、惜しい人材をなくした。
ここでソーリューまで居なくなったら大変なのは目に見えていた。
それでも、彼のことだっていつまでも引き止めておくわけにはいかない。時間は常に有限だ。
彼を引き留めるのは気が引けた。
「オーラフのことだけじゃない。スーはまだ戦士としては未完成だ。
今抜けるのは無責任というものだ」
「義理堅い奴…」
「お前も義理で生きる人間だろう?」とソーリューは目元の表情を弛めた。
「どちらにせよ、俺もドライファッハに戻らねばならん。荷物を纏めなければならんのでな…」
「そうだな」と頷いた。
まだ先の別れに焦燥感を覚えた。
「お前の好きにすればいいさ…お前の人生だ」そう言って煙草入れを出して一本手に取った。
「俺にもくれ」と珍しくソーリューが煙草を求めた。
彼は仮面を外して、火の点いた煙草を咥えた。
黒曜石のような瞳は、馬と川に入って遊ぶ弟子を寂しげに眺めていた。
ソーリューのため息は紫煙に混じり、薫風に乗って流れて消えた。
クローバーの草原を心地よい夏の風が撫でて行った。
正しくは、もう抵抗できる勢力は無くなったのだ。
「ウィンザー公国の騎士を拝命しておりました、アイザック・ウェイドと申します」
騎獣の背から降りた男は膝を着いて頭を垂れた。
スペンサーの右腕だった男の背は屈辱で震えていた。
それほどまで憎い相手にでも恭順の意を示すのは、ひとえにスペンサーという男の徳あっての事だろう。
ウェイドと名乗った騎士は、私に主の亡骸の返還を求めた。
「スペンサー男爵閣下のご遺体を御返しいただけるのであれば、この命惜しくはございません」
「返還はならぬ」という私の言葉にウェイドと名乗った騎士は顔を歪めた。
「もはやウィンザー公国は滅んだ。
彼はヴェルフェル侯爵パウルの名で故ウィンザー公国の忠臣として葬送する」と告げた。
「ウェイド、卿には我が陣でスペンサー殿を見送って欲しい。
ウィンザー公国は滅んだが、そこに住まう民は変わらず存在し続ける。
彼らのために、卿には生きてもらわねばならん」
「私に…不忠者として名を残せと、そう仰るのか?」
「ウィンザーには失われるべきでない技術や文化が、少なからず存在している。
ウィンザー式の石切や製鉄、騎獣兵は私も興味のあるところだ」
「私はウィンザー公に忠誠を誓った者として、スペンサー閣下の部下として名誉ある死を求めたというのに…
生きて敵に降るなど…あんまりではありませんか…」
彼は力なく肩を落とした。
騎士として、裏切り者の汚名を着るのは確実だろう。
それでも彼を説得して、ウィンザーを見守るものとしての役割を彼に担ってもらう決意だった。
「本来であれば、スペンサー殿を我が陣に加えるつもりだった。
しかしそれは叶わぬ。スペンサー殿の名代として、右腕である卿に、その役割を果たして貰いたい」と根気強く説得した。
スペンサーとウィンザーの民のために、彼は折れるしか無かった。
死に場所を失った忠臣は、亡骸となった主に別れを告げた。
ウィンザーの兵士は、親を失った子供のように咽び泣き、その死を悼んだ。
魔導師に防腐処置を施された遺体は、ユニコーン城に運ばれ、《亡国の忠臣》として貴人の墓に埋葬される。
今後は、ウィンザーの土地も建物もフィーア式の名に変えられる。
地図も新しくなる。
ウィンザー公国は名実共に、この世界から消えるのだ…
フィーア南部の土地も、その装いと性質を一変させようとしていた。
なりたての侯爵が背負うには、その荷は重すぎるような気がした…
✩.*˚
朝、エルマーのテントで目が覚めた。
ワルターが用事があるからと、僕をテントから追い出して、エルマーのテントに放り込んだ。
エルマーは喜んで僕をテントに招いてくれた。
追い出されて文句を言う僕に、エルマーは笑いながら、『あいつだって一人になりたい時くらいあるさ』と言った。
『君にもあるの?』
『まぁ、たまにはあるわな』と言いながら、彼は上着を脱いで寝床にしている毛布の上に座った。
エルマーはワルターより細身だけど、硬い筋肉質な男の人の身体をしている。丸めた背中も大きく広い。僕を抱くとすっぽり覆える位の立派な体躯をしている。
『誰にだって、あるさ。お前だってあるだろ?』
『…まあ、そうだけど…』
『何だよ?言いたいことあるなら言ってみ』と彼は僕を促した。
少し迷って、エルマーの隣に腰を下ろし、膝を抱えて口を開いた。
『ワルターが…此処に残るってなったら、君はどうする?』
『何だよ?そんなの決まってるだろ?』
エルマーは膝を抱えた僕を抱き寄せた。
『お前らと居るよ』と彼は迷わず答えた。
『俺は傭兵なんて別に興味無いからさ。
成り行きで傭兵になったけど、ワルターが居ない《雷神の拳》に用はねえよ』
『そうなの?』
『あぁ、そうだよ』とタレ目が優しく笑った。
『お前のことも好きだしな、そばにいるよ』
長い指が髪を撫でた。優しくゆっくりと髪を梳いて手が離れた。
『お前も、俺たちに遠慮すんなよ。
お前の人生だ。まだお前は俺みたいに歪んでないんだから、自由に生きたらいいさ。
俺がお前を見ててやるからさ。
お前が俺から離れていくまで…』
『そんな事ない!』と彼の言葉をさえぎった。
驚いた顔をした彼に腕を伸ばした。
『僕も君の事大好きだ!』
『…スー?』
『君が嫌だって言っても僕と一緒に居てもらうから!
もう君は僕の家族だから!』
弟みたいだと僕を甘やかしてくれたエルマーは、僕の特別な存在になっていた。
僕はエルマーに、ワルターへの憧れとは別の感情を持っていた。
エルマーは戸惑うような表情を見せた。彼は少しの間言葉を失っていたが、『家族…か』と呟いて僕の頭を撫でた。
『ありがとな』と言う声は震えていた。
彼は僕を痛いほど抱き締めて泣いていた。
暖かい雨のような雫が落ちて、髪と服を濡らした。
彼の震える背に手を回した。
曲線を描く背中を撫でながら、彼の嗚咽を聞いていた。
『孝行者だったんだぜ』
ふざけたようにそう言っていた彼の言葉を思い出す。
そうだったんだろうね…
君は家族を失って、心が壊れるくらい家族を愛してたんだから…
『ありがとう』と咽ぶ彼に、『家族だからね』と応えた。
そのまま二人で抱き合って眠った。
「おはよ」先に起きていたエルマーは煙草を片手に、起きたばかりの僕の頭を撫でた。
何も無かったように振る舞う彼が、何だか妙に面白かった。
「もう泣かないの?」と意地悪く訊ねると、彼は仕返しするように僕の頭を抑えて髪をグシャグシャにした。
「ひっどいなぁ」
「兄貴をバカにするからだ」
彼はそう言って、拗ねたように鼻を鳴らした。
「僕の方が年上だよ」と抗議すると、エルマーは「お前の方がガキだから弟で良いんだよ」と言って兄を譲らなかった。
「そんなもんなのかなぁ?」
髪を整えながらボヤく僕を見て、エルマーは嬉しそうに笑っていた。
✩.*˚
「お待たせしました、イエィツ殿」
デニスが俺を隠した洞窟を覗き込んで声をかけた。
身を隠していた狭い洞穴から出ると、彼は新しい服を俺に渡した。
「助かる」
「その姿では目立ってしまいますから」とデニスは俺の姿を見て苦笑した。
全身に出た刺青の模様を服の下に隠して、手袋を履いた。《祝福》さえ使わなければ、普通の人に見えるだろう。
「世話をかける」
荷物も金も全部置いてきてしまっていた。今の俺は完全にデニスのお荷物だ。
それでも彼は何故か嬉しそうだった。
デニスは荷物から林檎を取り出して俺に渡した。
「さて、どこに行きましょうか?」
「生活出来れば贅沢は言わんさ」と林檎を齧った。
「少し離れてますが、ちょうどいい大きさの街があります。鍛冶屋の街です。雇い口もあるでしょうし、あそこならオークランド人でも目立ちませんよ」
「ならそこに行こう」とデニスに全部任せた。
「良いんですか?全部私に任せて?」
「いいさ、どうせ俺は帰るところもない余所者だ」
そう答えて芯になった林檎を捨てると、デニスのネズミが残り物に飛びついて、人間の居た痕跡を消した。
「お前と兄弟ということにしてくれ。名前も変えないとな」
「いいですね、私も名前を変えましょうかね」
「お前、楽しんでないか?」
「楽しんでますよ」とフードの下でデニスは笑った。
「せっかく死んだつもりでやり直すんです。楽しくやりましょう」と彼は明るい口調で言った。
「もっと暗いやつだと思っていた…」
「貴方も、もっと怖い人だと思ってましたよ」
「…舐められたもんだ」
「褒めたんですよ。素直に喜んでください、兄さん」
「なるほど、そう来たか…」ため息を吐いてその設定を受け入れた。
「出来の悪い兄貴とよくできた弟か…」
まるで子供のごっこ遊びだ。
それも良いだろう…
ギルとレオンと名前を変えて鍛冶屋の街に向かった。
✩.*˚
「わりぃ、ヨナタン、封筒あるか?」
「何だ、こんな朝早くに…」
朝早くにワルターに叩き起された。なんの用事かと思ったら、そんなくだらないことだった。
「手紙だよ。出すから封筒くれ」
「急ぎか?昨日も遅かったんだ、後にしてくれ…」
「何だよ、勝手に漁ってくぞ?」
「やめろ!」
俺はキレイ好きなんだ!持ち物を荒らされるのは御免だ!
「朝から何だってんだ…全く…」
慌てて飛び起きて、恨み言を言いながら紙を折って手紙用の封筒をこしらえた。
「ありがとよ」と礼を言って俺の手から封筒を取り上げると、ワルターはさっさと出ていこうとした。
「待てよ、預かる。誰宛だ?」
どうせまとめて伝書役に渡すのだ。何度も来られるのも面倒くさい。
俺の問いかけに、ワルターは少しだけ動揺した。
「シュ、シュミットに預けるから…」
「あ?」何だよ、その反応は…
「恋文じゃあるまいし、見られて困るもんか?」
「…いや…まぁ…うん…それは、ちょっと…」
ガキか!
「朝からコソコソ俺のところに来たのはそういう事か?」
この朴念仁がどういう風の吹き回しだ?
「添削してやろうか?」とお節介を焼いた。
「要らん!」
「綴り間違えてても知らんからな」
「ぐぅ…」綴りに自信が無いのかワルターは苦い顔をした。
「なんなら今夜にでも相手して貰えるように代筆してやろうか?」代筆屋の仕事もしてた。恋文を書くくらい朝飯前だ。
「そんなんじゃねぇよ!」
「じゃぁどんなんだよ?」
「あー!もう!」と髪を掻き回したワルターは花の香りのする封筒を懐から取り出した。
「誰にも言うなよ!」と言って俺に封筒を差し出す。
封筒も便箋も貴人の使う高価な品だ。相手は貴族か?
中身を確認して「あぁ」と納得した。
先日見た、あの小さなお姫様の御手紙だ。
文字を扱う仕事をしてるから分かる。
細やかな文字は繊細で、躊躇うような筆跡もあった。相手にどう見られているのか気にする、自分に自信の無いタイプだ。
綴りは間違ってないし、文面からは知性を感じる。
それでいてどことなく拙い感じがするのはまだ幼いからだろう。
「色気はないがいい手紙だ」と褒めた。
「ガキに何求めてんだ!」
「で、お前の返事は?」
「絶対見せねぇ!」とワルターは自分の手紙を見せるのを拒否した。いい歳したおっさんが顔真っ赤じゃねぇか…
「恥かくぞ」
「ほっとけ!」
「まぁ、困ったら相談しろ。恋文の書き方くらいタダで教えてやる」
「ガキを口説くほど困ってねぇよ!」
「お前が思ってるほどそのお姫様は子供じゃないと思うがな。いい女だ」
「このスケベが!」
「何言ってる?男はみんなスケベなんだよ」と笑って言い返した。
お前が鈍いだけだ、この朴念仁…
憤然としてテントを後にしたワルターの靴音が消えてから煙草を咥えた。
「おはよう、オーラフ」と錫でできたミミズクに挨拶した。
朝から面白い見世物だったろ?
ミミズクの首が頷くようにカタカタと動いた気がした。
✩.*˚
お返事はあまり期待していなかった。
こんなに早く返ってくるなんて…
「良かったですね、お嬢様!」
「えぇ…そう…ね」
侍女の声をどこか遠くに聞きながら、手の中に握った手紙を眺めた。
煙草の匂いのする、実務的な質素な封筒。
私のお手紙はいかにも貴族らしくて、嫌味だったのでは無いかしら?
世間知らずのお嬢様だと呆れられてるかもしれない…
自分から出したくせに、怖くて返事を見ることが出来ない。
「アンネお願い、開けて!」
いつも一緒に居てくれる侍女に手紙を押し付けた。
彼女は目を丸くして「私がですか?!」と声を上げた。
「だって手が震えるんだもの」
「お嬢様のお手紙ですよ!」
「お願い」
「…仕方ないですね。
でもちゃんと御自身で読んでくださいよ」
アンネは渋々手紙を開いた。
便箋というより、メモのような安っぽい紙に男の人の文字が並んでいる。
文字の綴られた手紙とは別に、もう一つ折られた紙が入っていて、何か挟まっていた。
開くと萎れた歪な四葉のクローバーがあった。
「贈り物ですかね?」とアンネが手元の紙を覗きこんだ。
わざわざ探して用意したのだろうか?
私の為に?
「公女様への贈り物にしては安っぽいですね」とアンネは不満を漏らしたが、私はこの贈り物が気に入った。
伯父様が以前同じものを下さったことがある。
絵本で見て、私が欲しがったからだ。
『これを探すのは恥ずかしかったよ』と伯父様が苦笑いしていたのを思い出す。
時間をかけて探してくれた。
『いい歳した男がする事じゃないな』
膝に付いた緑色の植物の汁は、伯父様の苦労を物語っていた。
『クルーガー殿は良い御仁ですよ』
シュミット様の言葉が不意に記憶の中で囁いた。
悪い人ではないのかもしれない。そう思った。
便箋を手に取った。
硬い文字の並ぶ手紙には、私を気遣う言葉から始まっていた。
『面倒事に巻き込んでしまって、詫びる言葉もありません。』そうあった。
『もし自分が嫌なら破談にして下さい。
手紙も無理して書く必要も無いし、自分に遠慮したり気を使わないで結構です。
未来あるテレーゼ殿の人生を、自分が台無しにするのは申し訳ない…』
硬い無骨な文字は優しかった。
気取らない、飾らない言葉が潔く、男らしい。
安っぽい紙すらクルーガー様の一部のようで、愛おしく思えた。
『良い贈り物を頂戴したのに、テレーゼ殿にお返しできるような物が手元にございません。
有り合わせで申し訳ありませんが、お納めください』
クローバーの事だろう。
子供みたいな贈り物だが、子供の私には丁度いい贈り物だと思う。
宝石やドレスや花束よりも、この萎びた四葉が嬉しかった。
「栞にして残しておいて」とアンネに預けた。
手紙を大事に文箱にしまって、本棚から日記を手に取った。
「伯父様…」
日記には、伯父様が苦労して手に入れた四葉の栞が挟まっている。
栞を手に取って抱きしめた。
貴方と同じ事をしてくれた方がいたんですよ…
心の中でそう報告した。
また伯父様に会えたような気がした。
✩.*˚
あー…馬鹿だな、ガラにも無いことして…
そんな事を思いながら草の上に転がって、空を流れる雲を眺めた。
何か入れれるものは無いかと思ったが、俺が女の子の喜ぶものを持っているわけが無い。
ヨナタンに訊くのも癪だったし、ヘンリックに相談するのも何か嫌だ…
フリッツやエルマーに訊いたところで分かんねぇだろうし、ソーリューは興味無さそうだ。
スーは…論外だ…
ウロウロして、たまたまクローバーが目に入った。
目は良いので、子供の頃から四葉を見つけるのは得意だった。
四葉を見つけてプレゼントするとエマは喜んでいた。
『花言葉、知ってる?』と彼女が俺に訊ねたので『《幸運》だろ』と答えた。
『他にも意味あるのよ』と言っていたが、エマははにかんで笑うだけで教えてくれなかった。
俺もどうでも良かったからその話はそこで終わっていた。
何だったんだろうな…今更気になった。
「こんな所でサボってる」と声が降ってきた。
少し顔を動かすと、数頭の馬を引いたスーとソーリューの姿があった。
「気持ちいいぞ」と緑に包まれたまま笑って見せた。
「いいなぁ」と羨ましがるスーに、ソーリューが早くしろと急かした。
「草に転げるのより、馬を洗うのが先だ」
近くの川で馬に水浴びをさせるようだ。
「俺もするよ」と緑のベッドに別れを告げ、二人と一緒に川辺に向かった。
馬扱いに慣れたスーは一人でも上手に馬の世話をしていた。
「先生が良いんだな」と俺が言うと、ソーリューは「まぁな」と仮面の下で小さく笑った。
「スーには帰るって話したのか?」とタイミングを見てソーリューに訊ねた。
「まだだ」と彼は素っ気なく答えた。
「思っていたより、早く片付いてしまったからな…
半年くらいかかると思っていたから肩透かしを食らった気分だ」
「まぁ、そうだな…」
確かに…まだ二ヶ月も経っていない。
戦争は生き物だ。予定調和とはならない。些細なことで状況が変わる予測不可能なもんだ。
ソーリューは馬とじゃれるスーを眺めながら、意外な台詞を口にした。
「…残るか?」
「は?お前は帰らなきゃならんのだろう?」
「そのつもりだったが…惜しい奴を亡くした…」
そう言って、ソーリューはオーラフの死を悼んだ。
確かにオーラフの死は痛かった。
能力もそうだったが、あのどことなく憎めないふざけた男を気に入っていた。
これからを嘱望されていたのに、惜しい人材をなくした。
ここでソーリューまで居なくなったら大変なのは目に見えていた。
それでも、彼のことだっていつまでも引き止めておくわけにはいかない。時間は常に有限だ。
彼を引き留めるのは気が引けた。
「オーラフのことだけじゃない。スーはまだ戦士としては未完成だ。
今抜けるのは無責任というものだ」
「義理堅い奴…」
「お前も義理で生きる人間だろう?」とソーリューは目元の表情を弛めた。
「どちらにせよ、俺もドライファッハに戻らねばならん。荷物を纏めなければならんのでな…」
「そうだな」と頷いた。
まだ先の別れに焦燥感を覚えた。
「お前の好きにすればいいさ…お前の人生だ」そう言って煙草入れを出して一本手に取った。
「俺にもくれ」と珍しくソーリューが煙草を求めた。
彼は仮面を外して、火の点いた煙草を咥えた。
黒曜石のような瞳は、馬と川に入って遊ぶ弟子を寂しげに眺めていた。
ソーリューのため息は紫煙に混じり、薫風に乗って流れて消えた。
クローバーの草原を心地よい夏の風が撫でて行った。
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