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憎悪
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急にアンバーが部屋に訪ねて来なくなった。
二日程、姿を見せてない。
ベティに訊ねても言葉を濁して教えてくれなかった。
毎日頑張っていた訓練もやっと軌道に乗ってきたのに、ルイから暫く相手が出来ないからと言われ、部屋から絶対に出るなと釘を刺されていた。
それでいて城内は何が慌ただしい。
何が起きているのか不安になるが、それを知る術がない。
「…何なんだよもう…」
圏外のスマホの画面を開いたり閉じたりして暇を持て余していた。
登山道具の中に小型のソーラーバッテリーがあったので充電はできる。
ただ、電話としては役に立たないのでカメラと音楽を聴くだけの道具になっていた。
「…なんだかんだ1ヶ月くらいか…」
もうここに来てあっという間に時間が過ぎていた。
自分が急に消えて家族はどうしてるのかな…
そんなことが脳裏に浮かぶ。
自衛官の父親と警察官の母は豪気な性格で、細かいことを気にしないタチだ。
電話は週一でするかしないかくらいだし、北海道に単身赴任中の父親とはしばらく会ってすらいない。
大学のために引っ越してからというもの、まだ母とは直接会っていない。忙しいそうだ。
「マジで息子が孤独死しても気づかなさそうだな…」
笑えない事を思いながら僕はスマホの写真を見てた。
猫の写真がいっぱいに溜まっている。
愛猫のルーだ。
どこにでもいる、白とグレーの毛並みにまだら模様の猫。
顔はキレイなハチワレで、耳の先だけ白い。
懐っこい性格で、いつもオレンジの鼻先を僕に擦り付けていた。
僕が大学に行く直前に死んでしまったけど、一番仲のいい親友で兄弟だった。
懐かしい写真を見ながらベットでゴロゴロしていると、部屋の壁の向こうが急に騒がしくなった。
壁を殴る音と誰かが怒鳴っているような声が壁越しに聞こえた。
何事だろうと思っていると入口の魔法陣が光り、重なるように二人が縺れながら部屋に現れた。
「なるほど、お前が居ないと出入りできなくなったわけだな…陛下も面倒なことを…」
部屋に入ってきたのはベティと彼女の首を腕で締めあげた青年だった。
ベティは青年の腕から逃れようともがくが、彼はさらに彼女に回した腕に力を込めた。
「あ、あぁ…ぐ…」彼女の口から絞り出すように悲鳴が漏れる。
何が起きているのか分からず、僕は目を見開いて動けずにいた。
そんな僕を青年が睨みつける。
彼は見たことがある。
最初の日にアンバーと一緒にいた褐色の肌のエルフの王子、イールだ。
「何でそんな事を…」
「…何でだと…」怒りを込めた声が低く彼の口から漏れた。
彼の顔を見てたゾッとした。
鬼のような形相で僕を睨みつけている。
こんなに強烈な怒りをぶつけられるのは初めてだ…
体が竦んで動けない僕にイールが吠えた。
「お前たちが!お前らのした事の報いだ!
人間め!人間なんて…人間なんて殺してやる!」
何があったか分からないがご立腹の様子だ。
何度も呪詛のように「殺す」と繰り返す様子は明らかに異質だった。
首を締めあげられていたベティが、イールの腕を振り払おうと強く噛み付いた。
「ぐぅっ!クソッ!」
噛み付かれた痛みに耐えかねて、イールはベティを床に叩きつける。
苦しそうに咳き込みながら起き上がろうとするベティにイールの蹴りが入った。
顔を蹴りあげられたベティが悲鳴を上げて床に転がるのを、僕は何も出来ずにただ見ていた...
「貴様!まだ人間の味方をする気ならお前も殺してやる!」
イールは素早く短剣を抜き、ベティに向かって思いっ切り振り下ろした。
赤い血が床に飛び散った。
「ギャッ」獣のような悲鳴が部屋に響き、僕の全身が粟立った。
ベティが目の前で刺された。
僕は力なくその場にへたり込んだ。
足に力が入らない…何も出来ない…
「グゥゥ…ギャオォ」
獣のような呻き声を上げながら抵抗するベティ...
自分の体に刺さった短剣を抜き取られないようにしっかり掴んで放さない。
「返せ!クソ!獣が!」
苛立たしげにイールが怒鳴る。
蹴られようが踏まれようが、彼女は頑なに短剣を放さなかった。
不意に彼女と目が合った。
痛みを感じているはずなのに、彼女は僕に向かって微笑んだように見えた。
僕の中に恐怖以外の何かが生まれた。
「うわぁぁぁ!!」
叫ぶのと同時に体が動いた。
急に動いた僕に対応出来ずに、イールは僕の体当たりをもろに受けてよろけた。
「ベティ!ベティ!」声をかけると彼女は少しだけ視線を動かして僕を見た。
出血が床に広がり続けている。
早く止血しないと…でもどうやって…
「そいつはすぐ死ぬ」
ゾッとする冷たい声。
「お前を殺しに来たのに、つまらない邪魔が入った。
所詮半分人間だ、私たちとは違う半端者だ」
「こんな事して…こんな酷い事して何とも思わないのかよ!?」
「人間が、私や、私の友ステファノにした事はこんなものじゃないぞ!」
怒り狂うイールは聞く耳を持たない。
ステファノって誰だよ?と思ったが今はそれどころじゃない。
どうやら友達の身に何が起こったらしい。
その原因が人間だったということだ…
イールが手を頭上に掲げたのを見て嫌な予感がする。
僕は慌てて、床に転がって動かないベティを抱き抱えた。
イールとは言葉が通じそうになかった。
戦うなんて出来ない。
そうなると選択肢は逃げるしかない。
そう思って出入口のタペストリーに向かって僕はダッシュした。
何とかしてアンバーに助けてもらわないと…
「逃がさん!二人とも死ね!」
イールが「アヴァロム」と叫んで何かを呼んだ。
後ろで嫌な気配が蠢き、獣の気配がした。
ヤバい、ヤバい!
なんか分からんが危険だ!
無我夢中に逃げる僕の背中に衝撃が走った。
無様な悲鳴をあげて壁に叩きつけられる。
痛い…
顔を上げると、さっきの衝撃で一緒に飛ばされたベティが床に倒れていた。
「ごめん、ベティしっかり…」
左の腕が上がらない。脱臼したみたいにジンジン痛む。
それでも動く方の腕を彼女に伸ばした時、大きな獣の足が彼女を容赦なく踏みつけた。
生暖かい獣の息が僕の顔に当たる。
「うっわぁぁぁ!!」悲鳴をあげて慌てて後ずさった。
牛くらいの大きさの漆黒の狼が目の前で牙を剥いていた。
黄色い凶暴そうな目玉にロックオンされて、声も出せず、息も出来ない。
恐怖で指一つ動かせなかった...
「アヴァロム、そいつらは私の敵だ」
狼がイールに命令されて飛びかろうと身構える。
咄嗟に両手で頭を庇った。
噛まれる!そう思ったが、何故か狼は僕に向かって唸るのを止めた。
恐る恐る顔を上げると、その場で困ったように足踏みしながらキャンキャン吠えている。
「どういうつもりだ、アヴァロム!
その人間を殺せと言ってるんだ!」
イールがアヴァロムに怒鳴りつけるが、狼は巨体を伏せて困ったように僕とイールを見比べた。
もしかして、と思い、恐る恐る腕を差し出す。
狼は僕の腕を避けるように尾を丸めて後ずさった。
狼が怯えた原因を悟り、イールが叫んだ。
「何でその腕輪をお前が持っている!」
僕を守ってくれたのはアンバーから貰った腕輪だったらしい。
「クソッ!人間のくせに!何なんだよお前は!!」
アヴァロムが尻尾を巻いて逃げ出したので、彼のプライドが傷ついたらしい。
もしくは、僕に特別な腕輪が渡されていた事が気に入らなかったのだろう。
「お前は絶対生かしておかない!
私たちの国にお前みたいな人間は必要ないんだ!!」
怒り狂ったイールは僕の髪の毛を鷲掴みにして床に叩きつけた。
抵抗という抵抗も出来ずに頭の衝撃に体の自由が奪われる。
華奢な腕をしているくせに、思った以上に力がある。
「人間がステファノにしたように、手足を切り落とし、目玉を抉って内蔵をぶちまけてやる!」
彼はまくし立てるようにそう言って、僕の腰にあった剣に手をかけた。
「…何だ?何で抜けないんだ!畜生!」
イールが剣を乱暴に引き抜こうとするが、剣は鞘に収まったままビクともしない。
焦燥感が怒りを増幅させている。
「もういい!」と叫ぶと剣を抜くのを諦めて、イールはやり方を変えた。
僕に馬乗りになって首に手をかけた。
体重をかけて力一杯締め上げる。
「死ね!お前なんて!この国に必要ない!死ね、死んでしまえ!」
自分を正当化するためなのか、彼はずっとそんな事を言っていた。
頭がぼんやりして何も考えられなくなる…
僕は…死ぬんだ…
ベティに悪いことをしてしまった。
守ってくれようとしてくれたのに、無駄にしちゃってごめん…ごめんねベティ…
✩.*˚
アンバーに先日の襲撃事件の報告を済ませたルイの思考に、ふっと奇妙な勇者のことが過ぎった。
部屋から出るなと釘を刺していたので暇を持て余しているかもしれない。
「先に戻っていろ、用事を片付けて戻る」
部下にそう告げて、城の一角にある勇者に宛てがわれた部屋に向かった。
「…何だ?」
何やら部屋の方から嫌な臭いが漂ってきた。
鼻の利く彼にはそれが何の匂いかすぐに分かった。
鉄の錆びた匂いと混ざって怒鳴り声や争う声が聞こえてきた。
次いで獣の悲鳴を聞いた。
「ベティ?!」
ルイの脳裏にメイド姿の少女が過ぎる。
驚いて駆け出す彼の耳に届いたのは「殺してやる!」と言う怒号だった。
聞こえてくるのはミツルの部屋からだったが、その声は彼ではなかった。
「イール様が何故…」
第一王子は人間が大嫌いなはずだ。
自分からわざわざ出向くとは考えられないが、さっき彼が自分の口から目的を発していた。
「殺してやる」と…
今、ミツルの部屋で恐ろしいことが起きている。
先日、アンバーが出入口の魔法陣を書き換えたので、入室制限がかかっていた。
中に入るにはアンバーか、ベティの許可が必要だ。
焦る気持ちを抑えて、できるだけ冷静に対応しなければ…
彼は首から下げている魔法の警笛を取り出し吹いた。
警笛が城内に鳴り響いた。
何事かと、一番に駆けつけたのはアンバーだった。
次いで先程別れた部下が駆けつけた。
「陛下、申し訳ございませんがイール様がご乱心です!
私をこの中に入れてください!勇者とベティが危険です!」
まくし立てるようにルイの言葉に、アンバーは驚きながら「行け」と短く答えて、中に入るのを許可した。
ルイが飛び込むと同時に彼の部下も後を追った。
魔法陣の綴織をくぐるとすぐ目の前にイールが居た。
勇者に馬乗りになり、両手で彼の首を締め上げている。
急に現れた侵入者に驚いてイールの動作が一瞬遅れる。
ルイは躊躇せずにイールに襲いかかった。
イールの倍近い体躯から繰り出される体当たりで、イールの体が宙を舞った。
イールの身体はそのまま床に叩きつけられるかと思われたが、彼は受身をとって素早く立ち上がった。
「ルイ!貴様、兄に向かって何をしたのか分かってるのか!!」
「私は陛下の命令に従ったまでのこと」
落ち着いたルイの言葉に、さっきまで威勢の良かったイールの顔がみるみる青ざめた。
「イール…」ルイの後ろから声がした。
イールが言葉を失う。
眼窩にに光る赤い光が一際強い光を放っていた。
部屋の空気が一瞬にして凍えるほと寒くなる。
アンバーは動かないミツルの傍らに跪いた。
「イール、本当にお前がやったのか…」
左腕は変な方向に曲がり、首にはくっきりと手の跡の残る痣が広がっていた。
近くに倒れているベティに至っては、出血が酷く苦しそうに浅い息をしている。
アンバーは懐から皮の巾着を取り出し、中からポーションのアンプルを取り出した。
「ミツルとベティに飲ませなさい、口に流し込むだけでいい」
ルイの部下にポーションを預けてアンバーはゆっくりイールに歩み寄った。
「ここで何があったのか、お前の口から聞きたい。
イール…お前がしたことを正直に話しなさい」
言葉は穏やかだが、アンバーの怒りが伝わってくる。
イールが膝から崩れ落ちた。
血まみれのローブが何があったのかを物語っている。
「わ、私は…私は、ステファノの仇を…」
言葉が震える。
喉がつかえてなかなか喋ることが出来ない。
「ステファノがそう望んだのか?
それともウィオラがそう望んだか?
違うだろう?お前の勝手な、個人的な感情だろう?」
淡々とした口調だが、恐怖を与えるのには十分だ。
アンバーの言葉に、イールは無意識に後ずさった。
「ベティはするべきことをした。
ミツルは剣すら抜いていない。
それに比べてお前はなんだ?」
アンバーの問いかけにイールは答えなかった。
アンバーがさらに言葉を続ける。
「答えがないのならよい。お前には失望した…
イール、お前の処分は追って下す」
何も言えないイールに背を向け、アンバーは次々に指示を出した。
「そのポーションは応急処置だ。
医者の手配を頼む。
イールからは第一王子の地位を剥奪する。
西の塔に幽閉せよ」
その言葉を聞いてルイが慌ててアンバーに進言した。
「あそこは随分使われておりません…仮にとはいえイール様を幽閉するには…」
「命令だ」険しい声音でルイに言い渡し、ルイの部下に声をかける。
「二人の容態は?」
「医師の判断がなければ何とも…
ただ、出血は止まりました」
「分かった、代わろう。お前はルイを手伝え」
短く「御意」と答えてルイの部下は隊長の元に行った。
アンバーがベティを抱き上げると、彼女はまだ短剣を握っていた。
凄い力で握っているので振り解けない。
「ベティ、聞こえるか?」
ベティの瞼が少し揺れた。
アンバーはまた新しいポーションを取り出してベティの口に注ぎ込んだ。
閉じていた瞼がゆっくりと開いた。
痛々しく腫れた右目は赤く充血している。
目を覚ますなり、彼女はすぐに何かを探すように辺りを見回した。
「ミツルなら大丈夫だ」とアンバーが告げると、ベティは安堵したのかボロボロと涙を流した。
短剣を握っていた手の力が抜ける。
「申し訳ありません…申し訳ありません…」
「謝るのは私の方だ。
イール相手にベティはよくやってくれた。ありがとう」
アンバーはそう言って、彼女の手から短剣を受け取って床に捨てた。
乾いた音を立てて凶器は床に転がった。
アンバーは彼女を抱き上げて、勇者が使っている寝台に寝かせた。
「少し休みなさい」
「ミツル様のベッドが汚れてしまいます。
私は床で…」
「気にするな、また新しいものを用意する。
今は無理せず休みなさい」
できるだけ優しい声でベティを労い、次いでミツルの元に急ぐ。
「ミツル、ミツル…」
アンバーが声をかけるとミツルが視線だけで反応する。
ベティほど酷い怪我では無いものの、喉を潰されているから苦しそうな呻き声を上げるので精一杯のようだ。
「一度ならず二度までも、君を危険に晒した…
本当にすまない…不甲斐ない私を許して欲しい」
「…ご、れ…」
ミツルが掠れた声で何か伝えようとする。右手を重そうに上げてアンバーに腕輪を見せた。
「ごれが…だずげで、ぐれだ…」
王子の腕輪。
部屋の隅で黒く固まっているイールの使い魔の事だろう。
「そうか、役に立ってよかった。
苦しいだろうから無理して喋らなくていい」
「…アンバー」
「何だ?」
ミツルはアンバーが思いもしなかったことを口にした。
「ステファノのこと…教えて…」
その言葉にアンバーが固まった。
何故彼のことを知っているのか、と思ったが、イールに吹き込まれたのだろう。
まだ黙っていたかったが、彼も無関係ではなくなってしまった。仕方ない。
「分かった。体調が戻ったらきちんと話す。
だから今は休んでくれ」
アンバーの答えを聞いてミツルは少し微笑んで頷いた。
とりあえず、きちんと処置ができる医者が来るまで二人とも安静だ。
アンバーはこの身体になってから、治癒に関する魔法が使えなくなっていた。
治療はアイテムに頼るか、他人に任せるしかない。
アンバーはベティの寝ているベッドにミツルを運んで隣に寝かせた。
ミツルの姿を見てベティが目を見開いて起き上がろうとする。
「やあ、ベティ」
何とも気の抜ける口調でミツルが話しかけた。
「ベティのおかげで助かったよ…ありがとう」
「そんな事…私…」オロオロと返事に窮するベティを見てミツルが力なく笑った。
「僕は何も出来なかった…
いつも世話ばっかりかけてごめんよ…
大怪我だったでしょ?大丈夫?」
「自分の心配してください!
何で、もう…あなたって人は…」
ベティがまた泣き出してしまった。
顔を手のひらで覆って泣き出してしまったベティに、ミツルは何度も「ごめんよ」と謝っていた。
「僕、ルイに殺されるかも…」ミツルがボソッと呟いて笑う。
「ルイさ、ベティの事好きらしいよ。知ってた?」
突然のミツルのお馬鹿発言にその場が凍りつく。
頭が働いてないのだろうか?
やけによく喋る。
「僕のせいで怪我させちゃったし、泣かせてしまったから…ルイにぶっ飛ばされるかも…
ベティ、守ってくれる?」
「はい」ベティが真面目に返事を返した。
「ミツル様に手を出すようなら、引っ掻いて噛み付いて、蹴りを入れて追い払います」
「…いや、僕の話聞いてた?」
好きな人にそんなことされたら心折れるだろう?
可哀想にと思いながらミツルは苦笑いしていた。
「ミツル、もう喋らない方がいい。
本当に喉が潰れるぞ。
あと、ルイに怒られても知らないからな」
「えー…黙っててよ…」
「いや、本人そこに居るから…」そう言ってアンバーが部屋の入口付近を指さした。
不機嫌そうに尻尾を振る姿を見つけて驚いた。
「え?うっそ!何で?!」
「彼が私を呼んだんだ。助けて貰ってそれは無いだろう?」
やれやれと頭を振るアンバー。
「ミツル…お前後で覚えていろよ…このお喋りが」
ルイの不機嫌な唸り声に、動けないミツルは力なく笑うしか出来なかった。
二日程、姿を見せてない。
ベティに訊ねても言葉を濁して教えてくれなかった。
毎日頑張っていた訓練もやっと軌道に乗ってきたのに、ルイから暫く相手が出来ないからと言われ、部屋から絶対に出るなと釘を刺されていた。
それでいて城内は何が慌ただしい。
何が起きているのか不安になるが、それを知る術がない。
「…何なんだよもう…」
圏外のスマホの画面を開いたり閉じたりして暇を持て余していた。
登山道具の中に小型のソーラーバッテリーがあったので充電はできる。
ただ、電話としては役に立たないのでカメラと音楽を聴くだけの道具になっていた。
「…なんだかんだ1ヶ月くらいか…」
もうここに来てあっという間に時間が過ぎていた。
自分が急に消えて家族はどうしてるのかな…
そんなことが脳裏に浮かぶ。
自衛官の父親と警察官の母は豪気な性格で、細かいことを気にしないタチだ。
電話は週一でするかしないかくらいだし、北海道に単身赴任中の父親とはしばらく会ってすらいない。
大学のために引っ越してからというもの、まだ母とは直接会っていない。忙しいそうだ。
「マジで息子が孤独死しても気づかなさそうだな…」
笑えない事を思いながら僕はスマホの写真を見てた。
猫の写真がいっぱいに溜まっている。
愛猫のルーだ。
どこにでもいる、白とグレーの毛並みにまだら模様の猫。
顔はキレイなハチワレで、耳の先だけ白い。
懐っこい性格で、いつもオレンジの鼻先を僕に擦り付けていた。
僕が大学に行く直前に死んでしまったけど、一番仲のいい親友で兄弟だった。
懐かしい写真を見ながらベットでゴロゴロしていると、部屋の壁の向こうが急に騒がしくなった。
壁を殴る音と誰かが怒鳴っているような声が壁越しに聞こえた。
何事だろうと思っていると入口の魔法陣が光り、重なるように二人が縺れながら部屋に現れた。
「なるほど、お前が居ないと出入りできなくなったわけだな…陛下も面倒なことを…」
部屋に入ってきたのはベティと彼女の首を腕で締めあげた青年だった。
ベティは青年の腕から逃れようともがくが、彼はさらに彼女に回した腕に力を込めた。
「あ、あぁ…ぐ…」彼女の口から絞り出すように悲鳴が漏れる。
何が起きているのか分からず、僕は目を見開いて動けずにいた。
そんな僕を青年が睨みつける。
彼は見たことがある。
最初の日にアンバーと一緒にいた褐色の肌のエルフの王子、イールだ。
「何でそんな事を…」
「…何でだと…」怒りを込めた声が低く彼の口から漏れた。
彼の顔を見てたゾッとした。
鬼のような形相で僕を睨みつけている。
こんなに強烈な怒りをぶつけられるのは初めてだ…
体が竦んで動けない僕にイールが吠えた。
「お前たちが!お前らのした事の報いだ!
人間め!人間なんて…人間なんて殺してやる!」
何があったか分からないがご立腹の様子だ。
何度も呪詛のように「殺す」と繰り返す様子は明らかに異質だった。
首を締めあげられていたベティが、イールの腕を振り払おうと強く噛み付いた。
「ぐぅっ!クソッ!」
噛み付かれた痛みに耐えかねて、イールはベティを床に叩きつける。
苦しそうに咳き込みながら起き上がろうとするベティにイールの蹴りが入った。
顔を蹴りあげられたベティが悲鳴を上げて床に転がるのを、僕は何も出来ずにただ見ていた...
「貴様!まだ人間の味方をする気ならお前も殺してやる!」
イールは素早く短剣を抜き、ベティに向かって思いっ切り振り下ろした。
赤い血が床に飛び散った。
「ギャッ」獣のような悲鳴が部屋に響き、僕の全身が粟立った。
ベティが目の前で刺された。
僕は力なくその場にへたり込んだ。
足に力が入らない…何も出来ない…
「グゥゥ…ギャオォ」
獣のような呻き声を上げながら抵抗するベティ...
自分の体に刺さった短剣を抜き取られないようにしっかり掴んで放さない。
「返せ!クソ!獣が!」
苛立たしげにイールが怒鳴る。
蹴られようが踏まれようが、彼女は頑なに短剣を放さなかった。
不意に彼女と目が合った。
痛みを感じているはずなのに、彼女は僕に向かって微笑んだように見えた。
僕の中に恐怖以外の何かが生まれた。
「うわぁぁぁ!!」
叫ぶのと同時に体が動いた。
急に動いた僕に対応出来ずに、イールは僕の体当たりをもろに受けてよろけた。
「ベティ!ベティ!」声をかけると彼女は少しだけ視線を動かして僕を見た。
出血が床に広がり続けている。
早く止血しないと…でもどうやって…
「そいつはすぐ死ぬ」
ゾッとする冷たい声。
「お前を殺しに来たのに、つまらない邪魔が入った。
所詮半分人間だ、私たちとは違う半端者だ」
「こんな事して…こんな酷い事して何とも思わないのかよ!?」
「人間が、私や、私の友ステファノにした事はこんなものじゃないぞ!」
怒り狂うイールは聞く耳を持たない。
ステファノって誰だよ?と思ったが今はそれどころじゃない。
どうやら友達の身に何が起こったらしい。
その原因が人間だったということだ…
イールが手を頭上に掲げたのを見て嫌な予感がする。
僕は慌てて、床に転がって動かないベティを抱き抱えた。
イールとは言葉が通じそうになかった。
戦うなんて出来ない。
そうなると選択肢は逃げるしかない。
そう思って出入口のタペストリーに向かって僕はダッシュした。
何とかしてアンバーに助けてもらわないと…
「逃がさん!二人とも死ね!」
イールが「アヴァロム」と叫んで何かを呼んだ。
後ろで嫌な気配が蠢き、獣の気配がした。
ヤバい、ヤバい!
なんか分からんが危険だ!
無我夢中に逃げる僕の背中に衝撃が走った。
無様な悲鳴をあげて壁に叩きつけられる。
痛い…
顔を上げると、さっきの衝撃で一緒に飛ばされたベティが床に倒れていた。
「ごめん、ベティしっかり…」
左の腕が上がらない。脱臼したみたいにジンジン痛む。
それでも動く方の腕を彼女に伸ばした時、大きな獣の足が彼女を容赦なく踏みつけた。
生暖かい獣の息が僕の顔に当たる。
「うっわぁぁぁ!!」悲鳴をあげて慌てて後ずさった。
牛くらいの大きさの漆黒の狼が目の前で牙を剥いていた。
黄色い凶暴そうな目玉にロックオンされて、声も出せず、息も出来ない。
恐怖で指一つ動かせなかった...
「アヴァロム、そいつらは私の敵だ」
狼がイールに命令されて飛びかろうと身構える。
咄嗟に両手で頭を庇った。
噛まれる!そう思ったが、何故か狼は僕に向かって唸るのを止めた。
恐る恐る顔を上げると、その場で困ったように足踏みしながらキャンキャン吠えている。
「どういうつもりだ、アヴァロム!
その人間を殺せと言ってるんだ!」
イールがアヴァロムに怒鳴りつけるが、狼は巨体を伏せて困ったように僕とイールを見比べた。
もしかして、と思い、恐る恐る腕を差し出す。
狼は僕の腕を避けるように尾を丸めて後ずさった。
狼が怯えた原因を悟り、イールが叫んだ。
「何でその腕輪をお前が持っている!」
僕を守ってくれたのはアンバーから貰った腕輪だったらしい。
「クソッ!人間のくせに!何なんだよお前は!!」
アヴァロムが尻尾を巻いて逃げ出したので、彼のプライドが傷ついたらしい。
もしくは、僕に特別な腕輪が渡されていた事が気に入らなかったのだろう。
「お前は絶対生かしておかない!
私たちの国にお前みたいな人間は必要ないんだ!!」
怒り狂ったイールは僕の髪の毛を鷲掴みにして床に叩きつけた。
抵抗という抵抗も出来ずに頭の衝撃に体の自由が奪われる。
華奢な腕をしているくせに、思った以上に力がある。
「人間がステファノにしたように、手足を切り落とし、目玉を抉って内蔵をぶちまけてやる!」
彼はまくし立てるようにそう言って、僕の腰にあった剣に手をかけた。
「…何だ?何で抜けないんだ!畜生!」
イールが剣を乱暴に引き抜こうとするが、剣は鞘に収まったままビクともしない。
焦燥感が怒りを増幅させている。
「もういい!」と叫ぶと剣を抜くのを諦めて、イールはやり方を変えた。
僕に馬乗りになって首に手をかけた。
体重をかけて力一杯締め上げる。
「死ね!お前なんて!この国に必要ない!死ね、死んでしまえ!」
自分を正当化するためなのか、彼はずっとそんな事を言っていた。
頭がぼんやりして何も考えられなくなる…
僕は…死ぬんだ…
ベティに悪いことをしてしまった。
守ってくれようとしてくれたのに、無駄にしちゃってごめん…ごめんねベティ…
✩.*˚
アンバーに先日の襲撃事件の報告を済ませたルイの思考に、ふっと奇妙な勇者のことが過ぎった。
部屋から出るなと釘を刺していたので暇を持て余しているかもしれない。
「先に戻っていろ、用事を片付けて戻る」
部下にそう告げて、城の一角にある勇者に宛てがわれた部屋に向かった。
「…何だ?」
何やら部屋の方から嫌な臭いが漂ってきた。
鼻の利く彼にはそれが何の匂いかすぐに分かった。
鉄の錆びた匂いと混ざって怒鳴り声や争う声が聞こえてきた。
次いで獣の悲鳴を聞いた。
「ベティ?!」
ルイの脳裏にメイド姿の少女が過ぎる。
驚いて駆け出す彼の耳に届いたのは「殺してやる!」と言う怒号だった。
聞こえてくるのはミツルの部屋からだったが、その声は彼ではなかった。
「イール様が何故…」
第一王子は人間が大嫌いなはずだ。
自分からわざわざ出向くとは考えられないが、さっき彼が自分の口から目的を発していた。
「殺してやる」と…
今、ミツルの部屋で恐ろしいことが起きている。
先日、アンバーが出入口の魔法陣を書き換えたので、入室制限がかかっていた。
中に入るにはアンバーか、ベティの許可が必要だ。
焦る気持ちを抑えて、できるだけ冷静に対応しなければ…
彼は首から下げている魔法の警笛を取り出し吹いた。
警笛が城内に鳴り響いた。
何事かと、一番に駆けつけたのはアンバーだった。
次いで先程別れた部下が駆けつけた。
「陛下、申し訳ございませんがイール様がご乱心です!
私をこの中に入れてください!勇者とベティが危険です!」
まくし立てるようにルイの言葉に、アンバーは驚きながら「行け」と短く答えて、中に入るのを許可した。
ルイが飛び込むと同時に彼の部下も後を追った。
魔法陣の綴織をくぐるとすぐ目の前にイールが居た。
勇者に馬乗りになり、両手で彼の首を締め上げている。
急に現れた侵入者に驚いてイールの動作が一瞬遅れる。
ルイは躊躇せずにイールに襲いかかった。
イールの倍近い体躯から繰り出される体当たりで、イールの体が宙を舞った。
イールの身体はそのまま床に叩きつけられるかと思われたが、彼は受身をとって素早く立ち上がった。
「ルイ!貴様、兄に向かって何をしたのか分かってるのか!!」
「私は陛下の命令に従ったまでのこと」
落ち着いたルイの言葉に、さっきまで威勢の良かったイールの顔がみるみる青ざめた。
「イール…」ルイの後ろから声がした。
イールが言葉を失う。
眼窩にに光る赤い光が一際強い光を放っていた。
部屋の空気が一瞬にして凍えるほと寒くなる。
アンバーは動かないミツルの傍らに跪いた。
「イール、本当にお前がやったのか…」
左腕は変な方向に曲がり、首にはくっきりと手の跡の残る痣が広がっていた。
近くに倒れているベティに至っては、出血が酷く苦しそうに浅い息をしている。
アンバーは懐から皮の巾着を取り出し、中からポーションのアンプルを取り出した。
「ミツルとベティに飲ませなさい、口に流し込むだけでいい」
ルイの部下にポーションを預けてアンバーはゆっくりイールに歩み寄った。
「ここで何があったのか、お前の口から聞きたい。
イール…お前がしたことを正直に話しなさい」
言葉は穏やかだが、アンバーの怒りが伝わってくる。
イールが膝から崩れ落ちた。
血まみれのローブが何があったのかを物語っている。
「わ、私は…私は、ステファノの仇を…」
言葉が震える。
喉がつかえてなかなか喋ることが出来ない。
「ステファノがそう望んだのか?
それともウィオラがそう望んだか?
違うだろう?お前の勝手な、個人的な感情だろう?」
淡々とした口調だが、恐怖を与えるのには十分だ。
アンバーの言葉に、イールは無意識に後ずさった。
「ベティはするべきことをした。
ミツルは剣すら抜いていない。
それに比べてお前はなんだ?」
アンバーの問いかけにイールは答えなかった。
アンバーがさらに言葉を続ける。
「答えがないのならよい。お前には失望した…
イール、お前の処分は追って下す」
何も言えないイールに背を向け、アンバーは次々に指示を出した。
「そのポーションは応急処置だ。
医者の手配を頼む。
イールからは第一王子の地位を剥奪する。
西の塔に幽閉せよ」
その言葉を聞いてルイが慌ててアンバーに進言した。
「あそこは随分使われておりません…仮にとはいえイール様を幽閉するには…」
「命令だ」険しい声音でルイに言い渡し、ルイの部下に声をかける。
「二人の容態は?」
「医師の判断がなければ何とも…
ただ、出血は止まりました」
「分かった、代わろう。お前はルイを手伝え」
短く「御意」と答えてルイの部下は隊長の元に行った。
アンバーがベティを抱き上げると、彼女はまだ短剣を握っていた。
凄い力で握っているので振り解けない。
「ベティ、聞こえるか?」
ベティの瞼が少し揺れた。
アンバーはまた新しいポーションを取り出してベティの口に注ぎ込んだ。
閉じていた瞼がゆっくりと開いた。
痛々しく腫れた右目は赤く充血している。
目を覚ますなり、彼女はすぐに何かを探すように辺りを見回した。
「ミツルなら大丈夫だ」とアンバーが告げると、ベティは安堵したのかボロボロと涙を流した。
短剣を握っていた手の力が抜ける。
「申し訳ありません…申し訳ありません…」
「謝るのは私の方だ。
イール相手にベティはよくやってくれた。ありがとう」
アンバーはそう言って、彼女の手から短剣を受け取って床に捨てた。
乾いた音を立てて凶器は床に転がった。
アンバーは彼女を抱き上げて、勇者が使っている寝台に寝かせた。
「少し休みなさい」
「ミツル様のベッドが汚れてしまいます。
私は床で…」
「気にするな、また新しいものを用意する。
今は無理せず休みなさい」
できるだけ優しい声でベティを労い、次いでミツルの元に急ぐ。
「ミツル、ミツル…」
アンバーが声をかけるとミツルが視線だけで反応する。
ベティほど酷い怪我では無いものの、喉を潰されているから苦しそうな呻き声を上げるので精一杯のようだ。
「一度ならず二度までも、君を危険に晒した…
本当にすまない…不甲斐ない私を許して欲しい」
「…ご、れ…」
ミツルが掠れた声で何か伝えようとする。右手を重そうに上げてアンバーに腕輪を見せた。
「ごれが…だずげで、ぐれだ…」
王子の腕輪。
部屋の隅で黒く固まっているイールの使い魔の事だろう。
「そうか、役に立ってよかった。
苦しいだろうから無理して喋らなくていい」
「…アンバー」
「何だ?」
ミツルはアンバーが思いもしなかったことを口にした。
「ステファノのこと…教えて…」
その言葉にアンバーが固まった。
何故彼のことを知っているのか、と思ったが、イールに吹き込まれたのだろう。
まだ黙っていたかったが、彼も無関係ではなくなってしまった。仕方ない。
「分かった。体調が戻ったらきちんと話す。
だから今は休んでくれ」
アンバーの答えを聞いてミツルは少し微笑んで頷いた。
とりあえず、きちんと処置ができる医者が来るまで二人とも安静だ。
アンバーはこの身体になってから、治癒に関する魔法が使えなくなっていた。
治療はアイテムに頼るか、他人に任せるしかない。
アンバーはベティの寝ているベッドにミツルを運んで隣に寝かせた。
ミツルの姿を見てベティが目を見開いて起き上がろうとする。
「やあ、ベティ」
何とも気の抜ける口調でミツルが話しかけた。
「ベティのおかげで助かったよ…ありがとう」
「そんな事…私…」オロオロと返事に窮するベティを見てミツルが力なく笑った。
「僕は何も出来なかった…
いつも世話ばっかりかけてごめんよ…
大怪我だったでしょ?大丈夫?」
「自分の心配してください!
何で、もう…あなたって人は…」
ベティがまた泣き出してしまった。
顔を手のひらで覆って泣き出してしまったベティに、ミツルは何度も「ごめんよ」と謝っていた。
「僕、ルイに殺されるかも…」ミツルがボソッと呟いて笑う。
「ルイさ、ベティの事好きらしいよ。知ってた?」
突然のミツルのお馬鹿発言にその場が凍りつく。
頭が働いてないのだろうか?
やけによく喋る。
「僕のせいで怪我させちゃったし、泣かせてしまったから…ルイにぶっ飛ばされるかも…
ベティ、守ってくれる?」
「はい」ベティが真面目に返事を返した。
「ミツル様に手を出すようなら、引っ掻いて噛み付いて、蹴りを入れて追い払います」
「…いや、僕の話聞いてた?」
好きな人にそんなことされたら心折れるだろう?
可哀想にと思いながらミツルは苦笑いしていた。
「ミツル、もう喋らない方がいい。
本当に喉が潰れるぞ。
あと、ルイに怒られても知らないからな」
「えー…黙っててよ…」
「いや、本人そこに居るから…」そう言ってアンバーが部屋の入口付近を指さした。
不機嫌そうに尻尾を振る姿を見つけて驚いた。
「え?うっそ!何で?!」
「彼が私を呼んだんだ。助けて貰ってそれは無いだろう?」
やれやれと頭を振るアンバー。
「ミツル…お前後で覚えていろよ…このお喋りが」
ルイの不機嫌な唸り声に、動けないミツルは力なく笑うしか出来なかった。
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