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5:大森林観測村VSガムラン町

730:さらば殲滅のビッグモクブート、土塊と瓜坊

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「シガミー、やハり一休ひトやすみどコろでは、なくナりました
「やかましぃ! だぁかぁらぁー、ねんのためっとどめを刺しとけって――言ったんだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
 それは解体用かいたいよう刃物はものつくり、解体作業用かいたいさぎょうよう巨大櫓きょだいやぐらを組み上げたあと

 鉄鎧よろい猫の魔物風シシガニャンを脱ぎ、リオレイニアが入れてくれたソッ茶・・・を飲んでいたときに――起きた。

   §

「ブモッボファッ、モゴファヴォファァァァァァァァァァッ――――!」
 それは、すさまじい咆哮ほうこうだった。

「「「「「「ブフ――ッ!?」」」」」」
 おれたちはちゃを噴き出し、必死ひっしみみふさいだ!
 くそう、轟雷ゴウライを脱ぐんじゃなかったぜ!

 なんせやまくらいはあるやつが、いえよりおおきな大口おおぐちを、こじ開け・・・・――
 目とはなさき吠えた・・・のだ。
 ちゃんと、しばっといたんだがぁ――!?

 ヴュパパパッ――――!
 ちかくを警戒けいかいしていた、泥音ドローンからの鳥の目えいぞう
 巨大猪エリアボスかおを、見下みおろしている。
 ヴォッ――『(´∞`)』
 その目にひかり宿やどっておらず、いきも絶え絶えだ。
 実際じっさい女将おかみさんや工房長ノヴァド何度なんども、しんの臓《ぞう》のあたりをさぐって生死せいしたしかめた。

「ブモッボファッ、モゴファヴォファァァァァァァァァァッ――――!?」
 うるっせぇぇぇぇっ!
「「うおあぁっ!?」」
 畜生ちくしょうめっ!
 工房長ノヴァド一緒いっしょに、小躍り・・・しちまっっただろぉがぁぁっ!!

「きゃぁぁあっ!?」「のぃ!?」
 扇杖の炎鬼クロウリンデとなりに居た第四師団長ミラカルカを、咄嗟とっさかばう。

「グッギャル――!」
 そしてミラカルカかかえた魔術師姿クロウリンデ外套ローブを、がぶりとくわえ――ブォン!
「きゃぁぁあーっ!?」「のぃー!?」
 くるくるくる――ストン!
 二人ふたり自分じぶんの背に乗せた、恐竜モドキフージーン一つ目かぶとが――
 ギラリと、眼光ひかりはなつ!

「ウケケケッ――この二人ふたりわぁ、連れてくわよぉん
 まるで石竜子とかげ変異種バリアントのような、風神ふうじんを駆り――
 女神御神体いおのはらは、一目散いちもくさんに逃げ出した。

「ブモッボファッ、モゴファヴォファァァァァァァァァァッ――――!?」
 3連続れんぞくすさまじい咆哮ほうこう
 史上最大しじょうさいだいのモクブートが、変な鳴き方・・・・・をした直後ちょくご
 巨獣きょじゅうよこたわる地面じめんが――――ボッギュヴァ!
 奇っかいおとともに、炸裂さくれつした。

 いしや火を吐くおおかみは、ふしを付けて3度鳴いた・・・・・
 変異種へんいしゅが吐いたのは、いしでも火でもなくて――斑色まだらいろ壁だった・・・・
 変異種エリアボスかおまえに居た、おれたちは当然とうぜん――
 逃げる間もなく、ソレ・・に巻き込まれた!

   §

 ヴァリヴァリヴァリヴァリィィィィィィィィッ――――――――!!
 女将おかみさんが振りまわけんから、雷光らいこうほとばしる。
 薙ぎはらわれはじけ飛ぶのは、うみのようにひろがる斑色の土塊・・・・・
 そして、しまのように浮かぶ巨獣バリアント脇腹わきばら

 ヒュヒュヒュン、シュシュッ、チュィン!
 雷光かみなりで吹っ飛んだししの毛が、おれたちをかすめて飛んでった!
 ズガガガガガガガガッガガガン!!
あぶねぇっ――!?」
 きもが冷えたぞっ! なんせおれぁ、かたまでかべに埋まって、身動みうごきが取れんそ――
 巨大猪エリアボスの毛は、おれの腕よか太い・・・・・からなぁ!

 あたりはなぞ斑色まだらいろ――なぞ土壁つちかべおおわれた。
 上空じょうくうはじかれたおれたちは、魔法杖つえで浮いたり――
 土壁つちかべ着地ちゃくちして、もろ土壁それ埋まったり・・・・・してる。

「(フゴフゴフゴゴゴォォォォッ――――!!!)」
 斑色の海うみに浮かぶ変異種しまの、よこぱらかすかにうごめいていた。
 猪頭あたま土塊つちくれに埋まってるから、みみふさがずに済むが――

「(くそう、まだぁ呪文・・おぉ、となえてやがるぞっ!?)」
 くぐもった鳴き声・・・は、止まらない。
「(おそらく、魔力まりょく枯渇こかつするまで土壁・・を、吐きつづけるとおも)」
 ぼごごごごっ、ぽぎゅりゅ――――♪
 不気味ぶきみ振動ゆれが、いつまでもつづいていて――
 おれは土壁まだらいろに、しずんでいく。

「トゥナちゃん、あぶないわぁよぉぉぅっ――!?」
 なんて言う、元宮廷魔導師しょうかいちょうこえが聞こえた。
 縦穴あてあなと化していく、おれの頭上まうえ見上みあげれば――
 商会長しょうかいちょう背負せおった女将おかみさんが、逃げていくのが見えた。

「ブモォォォォォォォッォォォォォォッ!!」
 ししこえみみよどくが――こりゃ巨大猪エリアボスこえじゃねぇぞぉ!?
 ずどどどどどぉぉぉっ――――!
 ドコから湧いたのか、ちいせぇ大猪おおいのしし……おおきな瓜坊うりぼうたちがはらを見せ、はしり去っていく。

「ぐっ――!?」
 やべぇ――ちいせぇ大猪おおししでも、おれの5ばいは、背がありやがるわけで。
 踏まれたら、まず死んじまう!

「(迅雷ジンライ、おれたちも逃げるぞ!)」
 瓜坊うりぼうどもわぁ器用きようにも、やわらからかでまだら土の上・・・を、はしっていやがるが――
 そのうちうえから落ちてこられたら・・・・・・・・生き埋め・・・・になっちまう。

 ついさっき、つくったばかりの解体用かいたいよう
 刃物はものというにはいささか、奇抜きばつかたち構造こうぞうを持つ――神力鋸しんりょくのこぎり
 〝血縁僧ちえんそう〟とかいう種類しゅるい切断用魔法具あいつを持ってくりゃ良かったとおもったが、いま斑壁まだらかべしたに埋まっちまってる。
 そもそもおれ立端たっぱじゃ、〝10キログラム越えの刃物・・〟を振りまわすのはむずかしい。

 ふぉん♪
『>>はい。戦術級強化鎧鬼殻ゴウライ|(基本構成時)の総重量は5,700キログラム。メイン兵装である〝太刀風の太刀〟の重量が、90キログラムです。
 >>対するシガミーの総重量は約32キログラム、解体用チェンソー重量が12キログラム。
 >>星神由来の自身の怪力に加え、私のパワーアシストを併用すれば、重量的には所持可能です。
 >>ですが轟雷|(メイン兵装)と比べた場合、約23・4倍もの重量比になります。虎型の着用を推奨します。』
 それどころじゃねぇがぁ、たしかに虎型とらがたを着ときゃ良かったぜっ!

「(轟雷ごうらい何処行どこいった!?)」
 
「(直線距離ちょくせんきょりで24メートル下方かほう土塊状つちくれじょう物質ぶっしつに埋まっていま)」
 うむ。轟雷ごうらい太刀風の太刀メインへいそう小雨ひ番ダガーを、のこぎりかたち参考てほんにするのに――
 脱ぎっぱなし・・・・・・にしてたのは、失敗しっぱいしたぜ。

「(あた一面いちめん斑色まだらいろ土壁つちかべごと、格納出来しまえるか?)」
「(可能かのうですが、西側変異種にしがわへんいしゅ討伐隊全員とうばつたいぜんいん状況確認じょうきょうかくにんに、推定すいてい137秒必要びょうひつよう)」
 2分半も埋まってたら、上から瓜坊が落ちてくらぁ!

 おれは手甲てっこう内側うちがわおさまるやっとこで、指先ゆびさきちいさく突いた・・・
 つつぅ――かすかににじむ、血のしたたり。
 持ち上げたまま、降ろすことも出来できずにいた両腕りょううでを――ピタリと合わせる。
 指先ゆびさきをクルンとまわし――空中ちゅう真円えんを、血でえが――――

「もう、シガミーは、まったく!」
 がしりっ! 首根くびねっこをつかまれた。
 無理矢理むりやりくびまわすと――ヴュウン、スゥゥゥッ!
 あかがねがかった白金はっきんの、眼鏡めがねかたちとがり――
 そのいろくろめいた焼鉄色やきてついろへと、変化へんかさせる。

「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッ?」
 ちゃを入れてるあいだは、鳴りをひそめていた――はちが出た。
 そのおおきな目に映り込む・・・・、おれや瓜坊うりぼうたち。
 とおくに巨獣きょじゅうの、よこぱらも見えた。

   §

 ふぉん♪
『リオレイニア>いくらあなたが手練れの修験者の弟子でも、子供に変わりはありません。もっと大人を頼って下さい』
 ヴヴヴヴッツヴヴヴッ――――!?

 くろおおきく鋭利えいり眼鏡ひとみが、おれを見咎みとがめる。
 いまでは両腕りょううでが燃えるようなことは、なくなったが――
 無闇矢鱈むやみやたら使つかうなと言われていた、〝瀑布火炎ばくふかえんじゅつ〟を――
 おれは、いままさにはなとうとしていたのだ。

 ふぉふぉん♪
『シガミー>すまん。マジで助かったぜ』
 魔法杖つえおともなく、浮き上がり――
 おれたちは、ながれるかぜに乗る。

つえよ――ヴヴヴッ!」
 おれをかかえた手は、はなれない。
 踏みつけていた太枝つえを、グルリと旋回せんかいさせ――

「ブモォォォォォォォッォォォォォォッ!!」
 ずどどどどどぉぉぉっ――――ヒュルンッ、ゴガガァン!
 駆け込んできた瓜坊うりぼうを、杖先つえさき小突いた・・・・

「(うへぇ。どうしてこう魔術師てぇのわぁ・・・・・・・・動きに切れがありやがる・・・・・・・・・・んだぜ?)」
 給仕服メイドふく前掛けエプロンが、赤黒あかぐろい血でよごれている。

「(同世代どうせだい魔術師まじゅつしであるフォチャカじょうに、あの鋭敏な体捌き・・・・・・・・見受みうけられませ)」
 背中せなか背負った片牙・・・・・・
 あの血はきばを折られた、瓜坊うりぼう返り血・・・だろうぜ。

 彼女リオレイニア……蜂女ルガレイニアには、ちょっとした習性しゅうせいがある。
 狩りや散策さんさくに出かけたからには、一匹いっぴきでもおお獲物えものを。
 一点いってんでも、よりお買い得な商品・・・・・・・を、手にして猪蟹屋いえもどろうとするのだ。

 行きがけの駄賃だちんというか――
 ころんでもただでは、起きないというか――
 流石さすが魔物境界線まものきょうかいせんガムランちょうまも人類じんるいたて辺境伯家へんきょうはくけコントゥルりょう
 そこの筆頭侍女じじょちょうだっただけのことはあるのだ。

「よぅ、そろそろ下ろしてくれんかぁ?」
 蜂女はち返事へんじもせずに、荷物おれをしっかりと――抱え直した・・・・・
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