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5:大森林観測村VSガムラン町

729:吠えろ魔銃オルタネーター、タターザカニスレイヤー

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「ザザザザッ――どっせぇぇぇぇぇぇぇぇいっ――――!!」
 工房長ノヴァド叔父おじにして、屈強くっきょう鍛冶方かじかたワーフ。
 小柄こがら体躯たいくに似つかわしくない、その膂力りょりょく

 ザッ――ガコンッ――振りあげられる、楔形くさびがたのシルエット。
 それはまさに、鉄杭てっくいであり鉄塊てっかいであり――
 ねらさだめた切り株・・・粉砕ふんさいするには過剰かじょうな、攻撃力ATKを秘めていた。

 ザザヒュゥ――ガキガギギィィィンッ――――!
 鉄杭型てっくいがた魔法杖・・・は、無骨ぶこつ手甲ガントレット地面じめんに打ち込まれた!
 ザヒッ――ゴッバカン――割れるおおきな切りかぶ
 比類ひるいなき腕力わんりょく、そして背筋力はいきんりょくが――
 巨大きょだい鉄塊くさびを地にしずめる!

 ザヒュザザッ――ゴッゴゴゴゴゴゴ、グゥゥゥゥゥヮァァァァァァアッァ!
 その衝撃しょうげき地面じめんを、水面すいめんのように波打なみうたせた。
 ひろがっていく巨大きょだい古代魔術こだいまじゅつ方陣結界ほうじんけっかいピクトグラム。

「ザザッ――あわわわわっ! ワーフさぁん!」
 すさまじい振幅ゆれちかくに居た村長ジュークを――地にころがした!

「ザザザッ――キ゜ュキ゜チキ゜ッ、ぷるんぷるんぷるるるっ!」
 地を振幅しんぷくとらえられた巨大蟹へんいしゅが、ふるえる鳴きごえはっし――
 かたいはずのかにの、真っさお甲羅こうら振幅させるゆらした

 ぷるんぷるんとふるえる、かにはさみからスルリと、リカルルが落ちた。
「ザザヒュ――っに゜ゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 かにほどではないものの、ご令嬢れいじょうこえふるえていたが――
 ソレは恐怖きょうふいかりやおどろきなどの精神的せいしんてきものでは無く、物理的ぶつりてき原因げんいんるものだ。
「ヒュザザッ――っつっはぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっ!!!」
 ニゲル青年せいねんが、すかさずキャッチする。

 ザヒュ――ガサガサ、ガサササッ♪
 同時どうじに、やわらか~く・・・・・・ふるえる蟹脚かにあししたから、かにのように這い出すのは――
 傾国けいこく魔物まものにして、吸血鬼きゅうけつき令嬢れいじょうとまでうたわれた淑女しゅくじょ
 ザザザッ――パタパタパタタタッ!
 たおれた村長ジュークから、板きれのような物・・・・・・・・が地を這い、やがて――
「ザザッ――んにゃわ゜――?」
 ロットリンデを、飲み込んだ。

   §

 ドローンからおくられてくる空撮映像くうさつえいぞうなか、おじょうさま二人ふたり身柄みがら拘束こうそく……保護ほごされ――――ォォゥン♪
 ドワーフぞくはなった古代魔法まんだらが、一瞬いっしゅんちぢまり消えた。

「(シガミー、〝超特選ちょうとくせん洞窟蟹どうくつがに|(変異種バリアント)〟の軟体化なんたいかけまし)」
 おう、そうらしい。

「ザヒュヒュザッ――ギギュギュイィィィィィッ――ギュチギチッ、ぶくぶくぶくくっ!」
 地を踏み鳴らし、巨大鋏はさみを振り上げ――
 ガッチン――ガガッチィィン!

「ウケケケッ、ウケケケケケケケッ――――巨大蟹かにさんおこってるぅけんにぃ、つぅいぃてぇぇー
 そのわらかたは止めとけ、妖怪さまいおのはらよ。
 だが巨大蟹バリアントめ、取って置きの獲物たからものうばわれて――
 生意気なまいきにも、おこってやがるっ!!!!

「タター、オルコトリア、いまだぜっ!――ニャァ♪」
「ザッ――ははーい?」
 なにかを確認すたしかめるような、少女しょうじょメイドのこえ
「ザザザッ――目標到達もくひょうとうたつまで、10びょう
 なにかを確認かくにんし、ソレをつたえてくる鬼娘おにむすめ受付嬢うけつけじょうこえ

 ふぉん♪
『>16秒前にローンチを確認。空撮映像から算出した弾道に、誤差は有りません』
 タターがはなった……すではなっていたらしい弾丸たまは、岩山いわやまごと巨大きょだい変異種バリアントほふったのとおなじ。
 1342パケタもする、超高額ちょうこうがく弾丸だんがんタイフーンだ。
 強力きょうりょくたまぁ撃つとき耳栓ヘッドセットつないでると、耳栓それ途切とぎれたりするから――
 適宜てきぎ迅雷ジンライが切ったりしてくれてたらしい。

 ヴュウゥン♪
 ヒュパパパッ――『ピピピッ♪――HCV000002』あった。
 積層せきそうモニタの0番おくから、虎型とらがたモニタの12番てまえ――
 小地図MAP真ん中バリアント目指めざして、飛んで来てる。

「ザザヒュッ――ギュギッチリッ!?」
 かにが目を伸ばした。
 ぶくぶくぶくくくふっ?
 あわを吹き、西の空こっち見上みあげる。

 ザザッ――ぱっこぉぉぉぉぉぅん!
 面白おもしれ風音おとが、聞こえた。
 まばらなくもを突き抜け、ながれ落ちてゆくのは――
 1本ひとすじ風雲くも

 ゴッバァァァァァッ――――フフォフォフォフォフォッォォォッ!
 その先端さき幾重いくえにも、分かたれていく。
 そのかずは、全部ぜんぶで10。

 ヒュザッ――ドガガガドッガガ、ゴキャキャキャキャッ!!!!!!!!
 かにすさまじいうごき。分身しわかたれ弾頭タイフーンを、避けようと・・・・・しているのだろうぜ。
 ヴォヴゥンッ、ヴゥンッ――――!
 あまりのはやさで巨大きょだいな甲羅からだが、透けて見えた。

 ザザザザザッ――ガッキュキュキュキュキュキュゥゥゥゥゥンッ――――!!!!!!!!
 巨大鋏はさみで受け止められる、戦術級せんじゅつきゅう高極超こうごくちょう音速弾おんそくだん高極超音速飛翔体タイフーン
 ザザッ――ぶくくぶくくくくくっ!?

 かにやルリーロが薙ぎたおした倒木とうぼくが――ザザザザッ――パッコォォオォォォォッォォォォォンッ!
 あた一面いちめん怪音かいおんとともに薙ぎはらわれ、真ったいらになった。

 ザザザッ――ヴォヴォパパパッァァァァッ――――――――!!!
 弾丸たまから棚引たなび風雲かざくも残りは・・・ここのつ。

 スゥゥ、ウゥゥ、スススゥスススッスゥ――キュルリュッキュルッ!
 小地図MAP軌跡ラインが、えがかれていく。
 その巨大きょだい縁取りかにまわりを、何度なんど縫うように・・・・・
 こいつぁ、五百乃大角いおのはら算出さんしゅつした、魔弾まだんタイフーンの弾道予測だんどうよそくだ。

「んーん。今度こんどはあたくしさまは、関知してないノータッチわよ
 なんだと?
 こっちの岩山エリアボスくらべたら、随分ずいぶんちいせぇ巨大蟹かにねらうってぇのに――
 おまえさまは、手伝てつだわねぇとか――また、おサボりかぁ!?

◇¹
 いやまて?
 ちゃんとロックオンカーソルが出た。

「ザザヒュゥ――ねらまーす!」
 じつ覇気はきのねぇこえ
 タターが魔銃じぶんで、ねらったようだが。

◇²』『◇³』『◇⁴――』
 一発目・・・標的ひょうてきは、蟹脚かにあし左後ろ・・・
 2、3、4発目ぱつめは、左側ひだりがわ蟹脚かにあしすべてに、狙いが付けられたロックオン

 ふぉん♪
『ゴウライ>タター、この距離で、ちゃんと当てられるのか?』
 てき気配けはいかんじ取り、ロックオンカーソルのかずを増やしていくのは――
 轟雷ゴウライならかんがえるまでもなく、よろい勝手かってにやってくれるが。
「ザヒュッ――やってみないとわかんない……って、ローグちゃんが言ってた」
 あんじょうひとごとのように言いやがるぜ。

◇⁵』『◇⁶』『◇⁷』『◇⁸――』
 5、6、7、8発目ぱつめは、右側みぎがわ蟹脚かにあし全部ぜんぶに。

「ザザッ――むしろ当たるかどうかは、かみ采配さいはい――緑色りょくしょくレーザー発光はっこうモジュール――ハロウィン限定げんていスイーツ――博士後期はくしこうき課程支援かていしえん給付制度きゅうふせいど――ニャッ♪」
 ネコごえきゅうに聞かされると、おどろくだろぉが。
 神の采配・・・・てのは、文字通もじどおりに美の女神めがみ五百乃大角いおのはらことを言っている……とおもう。

 『◇⁹――』
 9発目はつめ巨大蟹鋏きょだいかみばさみに張り付いた。
 はさまれてなお、ぱっこぉぉぉぉぉぅんと風雲かざくもはっする弾頭タイフー)は――超頑張ちょうがんばってる。

「ちょっと、おねこさまっ! 人聞ひとぎきのわるいことを言わないでちょぉだい! オルタネーターの使用者しようしゃえらんだのわ、おねこさまわよ!?
 なんだかわからんが責任せきにん所在しょざいを、押しつけ合うんじゃぁねぇやい。

 ヒュザッ――ドガガガドッガガ、ゴキャキャキャキャッ!!!!!!!!
 かにすさまじいうごき。蟹脚かにあし弾頭タイフーンを避け、跳ねるようにうごめく。
 蟹脚ソレは、もはやひとの目にはうつらないはやさにたっしている。
 ヴォヴゥンッ、ヴゥンッ――――!
 チラつく巨大きょだいな甲羅からだが、ゆっくりと逆回転ぎゃくまわりはじめた。

 『◇⁵』――回転かいてん基点きてんにした、〝淑女ロットリンデを踏みつけていた〟右側後みぎがわうし蟹脚あし
 その1ぽん蟹脚かに蒼色いろが、空中ちゅうのこった。
 それはまるで景色けしきに浮く奇岩きがんのようにも見え、とても奇妙きみょうおもえた。

 スゥウゥ――キュルリュッ!
 8個の動体検知アクティブトラッカーは弧をえがき、弾道予測ひかりのすじそらへともどっていく。
 機動性きどうせいたかめていく、1342パケタ。
 推定的中率EPHによって揺らぐ色彩しきさいが、あおへと変わっていく。
 それはまるで、あお彼岸花ひがんばなだった。

 ふぉん♪
『ゴウライ>>おい迅雷、例の旋回半径はどうなってる?』
 天上てんじょうばな形作かたちづく曲線ライン半径アールは、精々せいぜいが15メートルしかねぇぞ!?
 弾丸タイフーン旋回半径ターニングラディウスは、やく400メートルだったはず。

 ふぉん♪
『>>最小旋回半径は作戦維持のため、運動エネルギーを確保するための指針です』
 はぁ? そいつぁ、どーいう?
 ふぉん♪
『イオノ>>ウケケッ、温存するつもりが無ければ、いくらでも高機動力を発揮するわよ♪ お・か・わ・り?』
 ふーん? うるせぇ。

 おれがわかるのは、錫杖しゃくじょう短刀たんとう間合い・・・だけだ。
 投げた・・・あとのことは到底とうてい関知出来かんちできん。

 ザザッ――シュゴッ――シュシュシュシュシュシュシュン!
 巨大蟹バリアントあたまうえとおり過ぎ、ふたたいろあかく染めていく――
 弾頭タイ1~8フーン)の、弾道予測あだばな

 ザザッザッ――ぱっこぉぉぉぉぉぅん――――ガギャギギャガギャギギギィィィンッ!!!!!!!!
 急加速きゅうかそくし、今度こんどすべての蟹脚あしはじく、弾頭¹タイフーン1から弾頭⁸タイフーン8
 着弾ちゃくだん瞬間しゅんかんまで弾道予測ラインは、赤いまま・・・・だったが――
 見事みごとに、ぶち当てやがった!

 ザザザッ――ドッガガァァァァンッ――――ゴッズウズズズゥゥン!
 巨体きょたいが、ひっくりかえった!
「ザザッヒュ――やったぁ、当たったぁよ、オルコトリアさん♪」
「ザヒューゥ――こら、まだとどめ・・・を刺してないでしょう?」
 はじけるようなこえと、それをたしなめるこえが聞こえ――

「ザザヒュッ――ギュギッチリッ!?」
 かに巨大きょだい鋏脚はさみで、甲羅からだを起こそうとし――
 途中とちゅううごきを止めて、目を伸ばした。
 ぶくぶくぶくくくふっ?
 あわを吹き、そら見上みあげている。

 ザザッ――ぱっこぉぉぉぉぉぅん!
 また面白おもしれ風音おとが、聞こえた。
 上空うえから、ながれ落ちてゆくのは――
 1本ひとすじ風雲くも

 『▼▼ピピッ♪――』
 ソレは、さっきまで巨大蟹挟み・・・・・はさまれていた――
 弾頭⁹タイフーン9に張り付いた、動体検知アクティブトラッカー
 ひとの目には見えない音速おんそく弾丸だんがんが、巨大蟹きょだいがに中枢神経を破壊したまんなかできえた

まよわず成仏じょうぶつしてくれやぁ――ニャァ♪」

 そしていきおいがあまったのか、かに眉間みけん|(?)から飛び出してきた弾丸タイフーンが、
 たまたま目のまえに居た、ニゲル青年せいねんよこぱら命中めいちゅうした。
 一瞬焦いっしゅんあせったが、猪蟹屋ししがにや標準制服ひょうじゅんせいふくである執事服しつじふくを着てる以上いじょういのちかかわることはあるまい。

「ザヒュッ――ちょっと、なんですのっ!? わ、わたくしそんなにおもくは、ございませんわよっ!?」
 かかえていた思い人リカルルを落とし、なじられる負傷者ニゲル
 いつものことではあるが――まよわず成仏じょうぶつしてくれやぁ。

   §

 しかしおそろしきは、遊撃班ゆうげきはんの奴らだ。
 五百乃大角いおのはら無しでも、アレだけのことが出来できる。

 そして東西両方とうざいりょうほう変異種バリアントを、とうとう一人ひとり止めを刺しちまった・・・・・・・・・ってこたぁ――
 またLVレベルアップのかねに、さいなまれることだろう。
 アレはうるせぇから遊撃班あいつら耳栓ヘッドセットは、切っとけ。

「あああああああああっ――こらっ! おにぎりっ、蟹さま・・・御味噌おみぞこぼれるまえにっ、おはやめに、格納ししまってわよっ!」
 おに形相ぎょうそう女神御神体めがみごしんたい必死ひっしか。

 ふぉふぉふぉん♪
『超特選大森林洞窟蟹|(変異種)【蒼い奏者】/
 鋏脚と甲羅を持つ、十足。食用甲殻類としては、史上最大級の大型種。
 脱皮直後の洞窟蟹に大森林における、龍脈由来の蟹質とでも呼ぶべき、
 活力形質を取り込むことにより、無くした鋏脚を再生し巨大化させた、
 甲羅は非常に硬く、物理・魔法共に堅牢。
 身だけでなく内蔵も美味で、濃厚な天然のスープとなる。
 鋏脚と甲羅は、耐物・耐魔法素材として重宝される。
 但し、この蒼く超硬質な甲羅を開くには、同じく蒼く刀身を染めた、
 SSS級武器が必要。』

 ふむ。迅雷ジンライ表示うつしたのは、そんな食材・・情報じょうほう
 〝特選洞窟蟹とくせんどうくつがにだい】〟と、そう変わらんな。

 空撮映像くうさつえいぞうなか、すぽんと姿すがたを消す巨大蟹きょだいがに
 はっははっ、巨大蟹あいつ出汁なかみには、おれも料理番りょうりばんとして興味きょうみがある。

まった本当ほんとうに、せわしねぇ一日いちにちだったぜ!」
 大森林だいしんりんに来てからこっち、良いことも多少たしょうはあったが――
 おおむね、危険きけんつらくて面倒めんどうなことばかりだったからな。
 どうにかして日がな一日いちにち、ずーっと寝て過ごしてぇ。

「はハはは、こちラの変異種バリアント解体かイたいだケでも、数日すうジつはかかルとオも――」
 やい迅雷ジンライわらってんじゃねぇー!
 目のまえにそびえるししの、ひとやまさえなかったら――
 一休ひとやすみくらい、出来できたんだろぉがよぉ。
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