上 下
697 / 739
5:大森林観測村VSガムラン町

697:料理番の本懐、洞窟蟹は超強敵

しおりを挟む
「ブクブクブクブブブッ――――!?」
 ギャギギッギ、ずざざぁぁと、片腹かたはらを引きずる大蟹おおがに

後は苦しませぬようにぎゃぎゃにゃ一撃で屠るだけみゃぎにゃご――ニャァ?」
 ぽきゅぽきゅむんと、大蟹おおがにに取り付いたところで――ジャギン!?
 おれは、かたなを止めた。

 五百乃大角いおのはら注文ちゅうもんは、「こぼすな」だ。
 けど甲羅からふたつに出来できないとなると……どうやって仕留しとめりゃ良いんだ?

 ふぉん♪
『解析指南>甲殻類の内臓をこぼさず調理するためには、外骨格の損傷を避けて下さい』
 むずかしいことを言うなぁ。
 ふぉん♪
『ヒント>甲殻類の絞め方/目の内側から切り込み、内部の神経節2箇所を破壊して下さい』
 ヴォォゥゥン♪
 表示ひょうじされたのは、かにの絵。

 ピ・ピ・ピ・プピッ♪
 目のそばから伸びた点線せんが、甲羅こうらまですすんで止まった。
 なるほど正面しょうめんから目のよこを、真っ直ぐに突き込みゃ・・・・・・・・・・良いんだな?

 ガチガチィィン――はさみを鳴らすかに
 片側かたがわあしを斬られ、うごけなくなった相手あいてだがぁ!
 気を抜いたらはさまれて、此方こっち身動みうごき取れなくなりかねん!

 全身全霊ぜんしんぜんれいで、居合いあいをはなつ――シュッカァァンみゃにゃぎゃぁ――ニャァ
 ごと、ごどん――はさみを落とした。

 すぽん――ヴヴッ♪
 太刀たち仕舞しまって、いつも使つかってる長包丁ながほうちょうを出した。

「ウカカカカッ、往生しろふぎゃみゃ――ニャァ♪」
 刃先はさき突き抜けちまったら・・・・・・・・・甲羅からが割れちまいかねねぇからな。

 つぅおりゃっ――!!
 シュカカンおらっ――ニャァ――――ガッ、ギィンッ!
 やべぇっ!
 甲羅こうらがあまりにもかたくて、両方りょうほうとも折れちまった!

「ゴチャギ、ギッィィィィッ!?」
 ゴドズゥン!
「ふぅ――ニャァ♪」
 なんとか仕留しとめめられたが――すぽん♪
 折れた包丁ほうちょうを、指輪ゆびわ魔法具まほうぐ格納かくのうし――
 ヴッ――ぱしん。
 元通もとどおりになった包丁ほうちょうを、取り出す。
 短くなった・・・・・気が……しないでもない。

「(おいこれ欠けたが、かに甲羅こうらなかのこってねぇかぁ?)」
 欠けひとつ無く、つなぎ合わされても――
 折れたぶん目方めかたは、ちゃんと目減りする・・・・・

 ふぉん♪
『解析指南>〝食物転化〟スキルを使用することで、食材としての安全が確保されます』
 かてぇ食いものやわらかくしたり、にがさやえぐみ・・・を取りのぞほかにも――
 そんな使つかみちがあったのか。

おにぎりみゃにゃこの蟹を仕舞ってみゃにゃぎゃぁおいてくれやぁにゃにゃにゃや――ニャァ!」
 あ、其方そっちお前が伸した奴・・・・・・・も、わすれるなよ。
 甲羅こうらが割れて、ひっくりかえかにを、おれはゆびさした。

 ビステッカと約束やくそくした、かにいもを揚げた料理めしつくためにも――
 食材しょくざいいくらでも、必要ひつようだからな。

 さて――がさがさ、カチャカチャカチャ♪
 岩壁いわかべに空いたあなから、這い出てきたのは――
 さっきあなおくに見えた、べつかに

 そして、かべともる『▼▼▼ピピピッ♪』『▼▼▼ピピピッ♪』『▼▼▼ピピピッ♪
 みっつの気配・・
 ゴゴゴゴンボゴゴゴン、グワラララッ!
 ゴゴゴゴンボゴゴゴン、グワラララッ!
 ゴゴゴゴンボゴゴゴン、グワラララッ!
 かべみっつのあなが開いた。

あーにゃー穴だらけにみゃぎにゃーしちまいやがってうにゃみゃにゃにゃ――ニャァ!」
 がさがさ、カチャカチャカチャ♪
 がさがさ、カチャカチャカチャ♪
 がさがさ、カチャカチャカチャ♪
 さらべつかにどもが、姿すがたあらわした。

このぉに゛ゃー――蟹太郎どもめふっぎゃにゃー――ニャァ!」
 おれは――すぽん♪
 包丁ほうちょう仕舞しまい――ヴッ♪
 もう一度いちど太刀たちを取り出した。

   §

はぁふぅひぃにゃぁにゃあぁ……硬えなっにゃぎゃこん畜生みゃぎゃぁ――ニャァ♪」
 もう一匹いっぴきを、たおしたまでは良かったが――
 そのあとがいけねぇ。

 ドゴガァァァァンッ――――ガチャガチャッ、がさがさがさささっ!
 はさみ一閃いっせんしたあと、ものすげえはやさで、逃げるもんだから。
 はさみの付け根と脚先あしさきを、突くことが出来できねぇ!

 ぽきゅぽぽきゅきゅむん――♪
 逃げ込んだあなに、近寄ちかよれば――――シュガ、ガギィン♪
 透かさずはさみが、飛び出してくる。

 はさみに合わせて――シュッカァァン!
 太刀たちを振り抜くも――ガギュギギチッ!
 兎に角硬かくかたくて、ちっともとおらねぇ。

 つうか、とおらねぇどころか――ガキィィン!
「ぐっ!? はなせぇ、はなしやがれぇぇっ!!」
 太刀たちうばおうとする、始末しまつで――

「みゃにゃぎゃぁー♪」
 ぽぎゅごぉむん――「ギュギッ!?」
 おにぎりが跳び蹴り・・・・を、食らわせてくれなかったら――
 太刀かたなを、うばわれていたところだ。

「ぶくぶくぶく――!!」
 かに半身はんみ状態じょうたいあなに、ひそんでやがるから――
 鋏一はさみひとつで、強化服二匹分おれたちにひきぶん手足てあししのいでやがる。

 太刀かたなつよい、はさみを持ち――
 全身ぜんしん甲羅からが、魔法まほうはじうえに――
 あたまも、わるくねぇと来たぜ。

「(おい迅雷ジンライ、この世界せかいかにわぁやべぇ! まもりにはいられると、おにぎりとおれが二人ふたりがかりでも切りくずせねぇ!)」
 倉庫そうこをチラ見して、相棒ジンライたすけをうてみる。

「(最初さいしょから強敵きょうてきであると、意をけっしていどんだのでは
 おう、わかったから、たすけろやぁ。

 それでもおれたちは、魔法まほうたよらねぇから――
 そこそこたたかえてるとおもう。
 これで、リオレイニアとかロットリンデみたいな、魔法一点張まほういってんばりのやつだと――

「(はい。まず苦戦くせんすることは、まぬがれないか)」
 だよなぁ……大申女ロットリンデが、泣きごとを言うはずだぜ。

「にゃぎゃぁぁー
 ぽきゅむん――ゴギャギン!
「ぶくぶくぶく――?」
 おにぎりの岩塩こぶしを喰らっても、はさみには傷一きずひとつ付かねぇ。
 くだける、しおかたまり

「ぱくぱくぱくぱく――ぶくぶくぶくく♪」
 ひるみもせずに、落ちた岩塩がんえんを――
 ひろってくちはこぶ、余裕よゆうまでありやがる。

「(本来ほんらい陸上りくじょうではいきを吸えずくるしいはずなのですが、洞窟蟹どうくつがにたちは――生活魔法せいかつまほう〝みずのたま〟を使つか水分補給すいぶんほきゅうをし、呼吸こきゅうをしていると類推るいすいされま)」

 ふぉん♪
『イオノ>>リオレイニャちゃんに聞いたけどさ、生活魔法で出せる水わあ、ぜーんぶ真水って話だったわよ?』
 五百乃大角いおのはらは、一行表示ティッカー使つかってきた。
 がたごとん――カチカチチカチ、ピピプー♪
 なんかのおとが、倉庫むこうから聞こえる。
 真面目まじめ仕事しごとを、してくれてるようだな。

「(あー、まて真水まみず……それで、おにぎりが投げたしおかたまりを、せっせとくちはこんでやがるのか?)」
「(はい。洞窟蟹どうくつがにたちはうみわたって、しま辿たどり着いたとおもわれま)」
 ふむ。茹でりゃぁ丁度良ちょうどよい、塩加減しおかげんなんだろうが――

先ずはあの鋏をみゃにゃぎゃにゃ落とさねぇとっにゃぎゃふぎゃぁー、〝全自動射撃LV3みゃぎゃにゃぎゃにゃ鉄丸を込めとけみゃぎゃぎゃぎゃあ――ニャァ!」
 おれは号令ごうれいをかけ――
 ふぉん♪
『イオノ>>駄目わよ! 折角の天然のスープを、こぼすことわ許しません!』
 ――即座そくざ却下きゃっかされた。

 がたごとん――カチカチチカチ、ピピプー♪
 仕事しごとをしてくれてる以上いじょう、〝女神加護〟をあたえてやらんとならんかぁ。

「やっぱり面倒めんどうなことに、なっちまったぜ――ニャァ!」
 ったくよぉぅ、めしからむと……いつもこうだぜ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

手違いで勝手に転生させられたので、女神からチート能力を盗んでハーレムを形成してやりました

2u10
ファンタジー
魔術指輪は鉄砲だ。魔法適性がなくても魔法が使えるし人も殺せる。女神から奪い取った〝能力付与〟能力と、〝魔術指輪の効果コピー〟能力で、俺は世界一強い『魔法適性のない魔術師』となる。その途中で何人かの勇者を倒したり、女神を陥れたり、あとは魔王を倒したりしながらも、いろんな可愛い女の子たちと仲間になってハーレムを作ったが、そんなことは俺の人生のほんの一部でしかない。無能力・無アイテム(所持品はラノベのみ)で異世界に手違いで転生されたただのオタクだった俺が世界を救う勇者となる。これより紡がれるのはそんな俺の物語。 ※この作品は小説家になろうにて同時連載中です。

【全12話/完結】リタイア勇者たちの飲み会

雲井咲穂(くもいさほ)
ファンタジー
◇12/20:::HOT90位ありがとうございました!RPGで言うところの全クリをした後、富も名声も女も時間も何もかもを満喫しつくした「元勇者=リタイア勇者」たちと、設定上やられ役=悪役キャラの魔王や魔女たちが繰り広げる、ほのぼの居酒屋同窓会。 自己中神様にハレンチ女神。不倫二股ヒロインたちも登場して、毎夜毎夜飲みまくる、胃袋ブレイク。 (いろいろ増えるよ。登場するよ) ※加筆修正を加えながら、ゆっくり更新中です。 ※第二回お仕事コン楽ノベ文庫賞の受賞候補作品でした。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...